Kivotos with the Lostbelt   作:2匹目の蝉

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1-26:紅蓮地獄大戦 -マーレボルジェ-

 最精鋭も、最高戦力も、倒すべき相手がいる。そんな状況にあって、戦車隊らは少し手薄になってきた。彼女らを犠牲にしても、手強い方をなんとかすれば勝てる見込みがあると見てのことであろうが、他のことをしっかり考える余裕を汎キヴォトス史勢力に与えることになった。

 

「ちょうどいいところにいるね。あの舟の人達に相談したいことがあるんだ。通信機器は持ってるかな、カンナさん」

「持っている、どうせなら渡そう。私は君達ほど強くはない以上、余裕もない」

 

 基本的に先生の端末を介して通信をしていたが、持っておいて良かった。すぐさまカスミは接続を行う。

 

『はい、ユウカです』

「私から話すのは初めてだったかな、カスミだ。どうせなら魔王討伐に直接助力をしたいと思うんだが、手持ちの銃器は効くと思うかい?」

『必要なデータをピックアップして有効性を算出するから、ちょっと待ってて。できれば、この場でサンプルを増やしてもらうともっと助かるのだけれど』

 

 お安い御用、と適当な相手を撃って時間を潰す。射撃の威力、レールガンの出力、当てている位置、魔王の肉体……様々な分析により、通常の銃撃がどれだけ通るかを検証する。

 

「……流石に、もう分かったか聞くのは気が早いかな?」

『分析と概算はもうできたわ。えーっと、足首周辺を中心に、手持ちの銃弾でも傷つきそうな脆いポイントがありそう。マーキングして見せたいところだけれど、視覚情報は先生にしか遅れないから、申し訳無いけど頑張って探して。嫌がらせみたいに大型兵器で狙いやすいところはみんな硬いのね』

「仕事が速いな。なら、隙を見て探ってみるとしようか」

 

 ちょうどくるぶしの辺りまで来たので、何発か狙いをズラして撃ってみる。1発だけ、手応えがあった。

 それと同時に、魔王の意識範囲内に入ったという感覚が生じる。動きがどうしても一瞬固まる、そんな恐怖の感覚。だが怯まないと決めた。

 きっと自分なら、乗り越えられると信じて。

 

 

「戦う理由があるのは良い。それが私怨ならなおのこと。そうだろう?」

 

 マコトの言葉は、ヒナには響かない。彼女にとって、戦いとは動機よりも、それによって何を得られるか、何が起きるのかの方が大事なのだろう。強者でありながら、その力の使い方は私欲によるものはほとんど無い。欲求に従って戦うことはあまりない。

 だが今回ばかりは、間違いなく、マコトという人物をひねり潰さんとする、そういう種類の欲望に従っている。ひとつケリをつけたい気持ちがある。

 

「私怨というのは、ちょっと大袈裟かしら」

「知りたいものだな、そちらでは私は何をしているのか。お前にどのようなことをしているのか。向けられている感情を正しく理解できないのは、悔やまれる」

 

 興味をそそられながらも、内心その理由が分からないことにマコトは戸惑っていた。この異聞帯に、「空崎ヒナ」は元々いなかった。したがって彼女は、最近現れた邪魔者でしかない。

 ここまで追い詰められたすべてのキッカケでこそあるが、それにしては必要以上に執着している自分がいる。自分が自分でなくなるかのような感覚。

 もしや、このシチュエーションを作りたかったのか? 

 

 まっさらな白紙の上に世界のテクスチャを貼り付けるのなら、元々あったものを考慮する必要はない。だが、空想のサンクトゥムタワーは、元々キヴォトスがあるその上に異聞帯を呼び出した。

 下地に合わせた空想が、下地をある程度残したまま上書きされたのだ。ヒナはそれに取り残された存在であり、アルは下地が残っている事例だった。そういう事例の存在は、マコトも把握しているところ。

 

「いや……()()()()()()()()。やはり私は、お前の相手でなければなるまい!」

 

 マコトも、いや、もしかするとほぼ全ての者が、多かれ少なかれ、そういった面を持っている同類なのだろう。ほとんどその部分を残さず、誘発するものもないために、それを自覚できていなかっただけなのだ。

 

「急にいい顔になるのね。うん、それくらいでいてもらえた方が助かる。そういう顔をしてるマコトが、一番見慣れてるもの」

「そうだろうな、そんな気がしたよ。なるほどな、であるのならば、償わせるだけではない。純粋に競い勝つに値する!」

「私も、同じような感覚。戦うことにやりがいを感じられるなんて。私も異聞帯に揉まれたものね」

 

 身体能力としては、ほぼ同じくらい。武器に大きな差はあれど、あるのは純粋な力比べ。遮蔽物も舟と魔王の体くらい、頭よりは体を使った戦い。

 それ相応に、弾薬消費も激しい。見てから回避する技能を互いに身に着けている上で、それを全力で行使しているため、当たらないことといったらない。常に先読みが求められ、先読みすらも見てから回避する、異次元のアクロバット。

 

「──過ちて、改めざること」

「……?」

 

 何か、不穏な呟きが聞こえる。気が昂ぶっているとはいえ、無意味に呟く内容でもあるまい。何か仕込まれていないかと、警戒するヒナ。

 高速で動き回っているのだ。どこかしらに仕込みが入っていても容易には気付けない。銃口に注目しているだけに、余計に。

 

「──過ちて、認めざること」

「……! 見えた、けれど正体が分からない……あれは?」

 

 地面に何か仕込むのが見えた。地雷、とも違う。気にしないというのは無理があるのだが、その正体を確かめようなどと考えると、それを狩られる。

 否。確かめようとするまでもなく、仕込んだものが気になって、動きが鈍ったならば、そこを見抜かれる。

 

「──過ちならざるを、過ちとなすこと!」

 

 3回目の仕込み。直後に起爆する。

 超小型の爆弾だ。これ自体はそれなりに威力があるとはいえ、ヒナ相手にその効果を期待できるとは、マコトも流石に思ってはいない。

 ただこの爆弾、強烈に光って、濃い煙を残すのだ。

 

「この世界は、どのような形の過ちを犯してきたか、それは分からん。だがひとつ言えるのは、それ故に()()()()()()()()()()()ということだ!」

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