Kivotos with the Lostbelt 作:2匹目の蝉
彼女らは奮戦したと言える。しかし、無理があったのだ。
イロハ達は気付けばメグの異常な制圧力の前に隊に甚大な被害を出す羽目になってしまっていた。メグをどうにかしようと思えば、必ずアルが横槍を入れてくる。たったふたり、しかし無敵コンビが誕生していた。
更に不運が続く。ただしこれは、互いにとっての不運だ。流れ弾がいくらか、魔王の脚部、弱い部分に当たっており、反撃が飛んでくるのだ。
黒い巨人は、有効な攻撃をしてきた相手を
「こ、これはちょっと異常事態。すみませーん、一旦交戦中止っていうの、できますかね……?」
イロハの願いも虚しく、メグは光弾をかわしながら場を荒らしまくる。おまけに仲間達も玉砕上等という精神でより一層ガンガン攻めるようになっていった。
「イロハちゃーん、良くないですよそういうの。頑張るしかできることって無いでしょ」
「そうだよ、こんな大事なところでどうして諦めようとするの!?」
「ほら、この人もこう言って──なんだお前!?」
勝手にチアキの隣で会話に参加してくるメグ。しかも容赦なくそのまま蜂の巣にしようとしてくるので恐ろしい。払いのけたらそれをあっさりやめるし、それをされても思いっきり笑う。誰がどう見ても、これは舐めきった態度である。
「ちょっとメグ?
「うーん、それなんだけどね。見た感じ、助けはあんまり欲しくなさそうかも」
「そ、そうかしら? 助けられるなら、助けたいくらいには苦戦してるように見えるのだけれど……」
こんなの、などと言われ愕然とする万魔殿兵達の向こう側は、煙に包まれていた。そしてその中からヒナとマコトが同時に飛び出す。その飛び出し方からして、ヒナの方がかなり手痛い攻撃を受けたようだ。
「ほう、まだ立つか。私に合わせて出力を上げに上げた銃なのだが、随分としぶとい」
少し前に相手をしたアコと比較しても、その出力は段違い。崩れ落ちる直前まで一撃で持っていかれる、鈍くも強烈な痛み。鳩尾に砲丸を受けたように、呻き声ひとつ出せない、息が止まる苦痛。まさかこのような目くらましにやられるとは、迂闊だった。
だが耐えた。ここで耐えねば、汎キヴォトス史においてゲヘナをなんとか保っていた風紀委員長などではないのだと。それに、取っ掛かりは得た。痛みに耐え、精神をより強く固めることによって、本来なら繋がっていない回路が完成した、ような気がした。
「マコト。あなたはさっき、私に間違いは許されない、って言ったわね」
「……なんだ、何が言いたい」
「容赦なく仕留めきるまで、何度も執拗に攻め続ければよかったのに……初歩的な間違いをするものね。手の内を見せておきながら──っ!」
笑おうとすると痛む。こんな状態で戦えば、またセナに怒られるだろうか。
「虚勢を張って、情けない。それでなお戦えると? なら来るがいい、無駄な足掻きをしに──」
刹那、急に距離を詰められる。まるで重傷者の動きではないために、マコトの反応は一瞬遅れた。腕をいくらか撃たれたが、許容範囲内。それよりも、その距離詰めの速さだ。明らかに高速化している。
窮鼠猫を噛む、そんなことわざが存在する。鼠も猫も、この異聞帯においてゲヘナが封鎖されて、封鎖区内では絶滅状態になって久しく、故にこのことわざも死語であるが、もし知っていたなら、彼女の口から飛び出していたことだろう。
「本当にこちら側の存在ではないのか!? なぜここまでした上で、動きが良くなるなんてことがある!?」
「あら、良くなってる? それはよかった。それなら、きっと見せられる」
弾薬を装填し直して、それから手順を始める。いつも、確実に立ちはだかる者を仕留めきるために使う必殺の射撃のためのモードに切り替える。
イシュ・ボシェテ。ヒナがそう呼んでいる、自らのために編み出した珠玉の射撃術、そのためのチューニング。だが、今回はそれに一つ手を加えた。このひと手間により、絶対に外せない攻撃となったが、今なら確実に逃げる暇を一切与えずにいられると、確信していた。
絶対に止めなければ。とにかく打てる手を尽くそうと、必死に食ってかかるマコト。しかし、文字通りに手を尽くしきってしまったようだ。
「なに……っ!?」
弾切れ。手持ちもない。まさかここまで撃ち合いが続いていたとは。容赦のない現実が、襲いかかる。
戸惑って、動きも鈍る。それでも普通なら隙にすらならない一瞬だったが、今の空崎ヒナ相手では、全く話が別。
「モードチェンジ、装填、オプション、全てよし。出力、連射速度共に最大……実力行使、全力でいかせてもらう」
「────!」
「これが私の、全霊の一射。名を、終焉──エシュ・バアル」
それは、
それをまともに受け止めることになった。おそらく、ヒナと同様か、それ以上の傷を負うことになるだろう。普通ならキヴォトスの生徒であろうと命に関わりかねない威力だ。相手のタフネスにある程度信頼がないと撃てない代物である。
そして。
「今のは……効いた。なんてものを、隠していたのだ……お前はっ!」
その信頼よりも、本人は上だったのだ。まだ立ち上がれる。ギリギリの状態でも。そして確かに動ける気がする。なるほど、先程のヒナはこういう状態だったのか、と妙に納得した。
そのヒナはというと、しぶとく立つマコトの姿を見るなり、銃を置いた。
「こっちも手持ちの弾は、完全にゼロ。エシュ・バアルは、最大限に装填し直した弾を、一気に全部使い切っちゃうから」
「そうか。なら、これで同条件というわけだ」
もはや、銃撃戦はこれ以降成立しない。
「それじゃあ、これからどうしようかしら? ねえ、マコト」