Kivotos with the Lostbelt 作:2匹目の蝉
ルシフェルの放つ攻撃は、光の弾である。その神秘の力をエネルギー体として構築し、質量に変換して弾丸のように放っている。
既存の銃弾に近い性質のものもあれば、そうでないものもある。しかも、それを体に接していない場所から発することができる。
これは、魔術の類だ。神秘の地でありながら、キヴォトスではすっかり、オカルトの域にまで衰退しているこの技術であるが、本物の神秘の根源そのものは、これをかなりの高水準で行使する。
“あれの持つエネルギーは、通常の銃弾より高い。単なる神秘の力が入った攻撃とは違う”
『肯定。現状の分析ではある程度強い程度ですが、倍ほどの威力とすることも不可能ではないと推定されます』
“……戦車の残骸がいくつか転がってるのが、遮蔽になるかな? うまく利用して戦ってくれ、特にアルにとっては大事だと思う”
あちら側の攻撃の脅威度は測ることができたところで、次はこちら側の攻め手の有効性を確かめていきたい。
弾幕が激しく、接近はかなり困難。回避が現実的になるくらいの距離をとったり、遮蔽に隠れたりしているが、そうしていてはろくに当たらない。敵はほとんど移動していないが、かなりの高所に浮いている。
ゆえに、足元まで行けたところで、ショットガンなど近接射撃武器は有効性が低く、火炎放射器に至っては完全に射程外。
「完全に射程がある私頼りじゃない! っていうか、本当にこれ効いてる!?」
スナイパー職アル、全く手応えを得られずというところ。一応方舟のコンピュータの計測は「有効」としているのだが、有効なだけであり、これで勝とうとするのは非現実的なのは明らかであった。
──
──情けないことよ。そのような者がいながら、前哨戦で使い果たすとは、人とはその程度ということか。
「ムカつく〜っ! 部長、あいつのとこに飛び込んでいい!?」
「よせ、乗るなメグ。だがそうだな、君が飛び込んで一気に畳み掛ける、それ自体はアリだろうさ。タイミングは今じゃないがね」
今突っ込んだところで、返り討ちにあうのがいいところ。それ以上にまずいことになる可能性などというのも、いくらでも考えられる。
動揺が広がりうる。巻き込みが発生しうる。敵を刺激しうる。
現状において、有利に働きうる要素はひとつだけある。圧倒的にこちらを見下しているがゆえに、ルシフェルはあらゆる策を無意味と考えている。なので、その策の内容については何一つ興味がない。
聞かれていても、一瞬で忘れてしまうことだろう。したがって、いくらでも相談はできる。絶え間ない攻撃をかわしながら、にはなるが。
“まず、敵がなぜ圧倒的に優位にあるかを考えよう。攻撃能力もそうだけど、やっぱり一番は高さだ”
「実のところ、メグが全力でジャンプすれば届きはするんだ。あまりにも危なすぎるからやってないがね」
“それって──”
カスミが意図していることは、先生にもよく伝わっている。だがここで、改めて言語化することで、その覚悟を問う。
先生だけにではなく、他の皆にも。かの魔王を人と同じ地上に堕とすための策を詳細に話す。
“それを君が言ってしまったら、私も反対はしにくい。それはもう苦渋の決断のはずだ。その上で言うけど、あまりいい作戦ではないよ”
「分かっている。失敗したらいよいよ勝ち筋も無くなるだろうさ。でも……これ以外にやりようは無さそうだ。今動ける人で、一番強いメグに全力を出してもらって無理なら、最初から不可能も同然だ」
メグも静かに頷く。子供にこんな覚悟を背負わせるというのは、なかなかに申し訳ない。ならば大人はそれ以上を背負うまでのこと。指導者として、先生も意を決していた。
一言、やろう、と強く言ってみせた。
──どうした、身の程を弁えたか?
──コソコソと何をするかと思えば、少しも手を出して来ないではないか。
やはりルシフェルは話をしているという事実には辛うじて興味があるようだが、内容は何一つ分かっていない。感覚そのものが違い、認識することができないのだろう。
そして、まさかそれが自らを撃ち落とすための具体案だとは夢にも思わない。次第に、これを戦いだと思う意識も消えていった。すなわち、ただの愉しみと思うようになる。
──だが、
──ひとつ、ここは思い切ってやるのも、また一興か。
「また、あれをやるつもりか!」
“そのようだねカンナ、ちょっと撹乱頼めるかな? カスミも頼むよ”
「了解です、少しでも注意を逸らしましょう」
あの惨事を作り出した攻撃を、もう一度行おうとしている気配。だがそれと共に、弾幕はすっかりそう呼べるほどのものでなくなり、単純な誘導と回避が行えるレベルになっていた。
適度にちょっかいを出せば、注意も向く。まだ少し、機械的な部分が残っている。
無駄に足掻いているだけにしか見えていないようだ。ほぼ射程から外れている射撃も、遠方から来る狙撃も、鬱陶しいので対処はするが、それだけ。だがそれは、決定的に慢心であった。
──小手先で殺すも、小手先にもならん小石当てで勝負するも、もはや面倒だ。
──次は抜からぬ。取るに足らぬ有象無象よ、滅びるがいい!
赤黒い球体が、ルシフェルの背後に浮かんでいく。列をなすそれは、まるで翼を象っているよう──と思えば、その後ろに本物の翼が現れる。
そして、再び滅びの光が放たれる──
はずだった。しかし目の前に現れたモノが、それを一歩遅らせる。手を一切出していなかったために、何一つ気にも留めていなかった存在。
しかし間違いなく、何度も一番強い戦力として、彼が一切聞いていなかった話に上がっていた人物だ。
「やっぱりあった、そんなの使って飛んでたんだ! 魔王のクセにキレイな見た目でずるい!」
メグのガトリングは、翼の方をしっかり狙っていた。