Kivotos with the Lostbelt   作:2匹目の蝉

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第二章:魑魅魍魎乱世 妖魔夜行 -咲かずの花々の彩-
2-0:帰還、それに次いで


 方舟は、D.U.のガレージに帰還を果たした。異聞帯の最終決戦にてある程度の損傷をしながらも、動作は何も異常が無く、しっかりと停止した。

 そして、連邦生徒会との通信も繋がるようになった。

 

『先生、無事でしたか!? いえ、ゲヘナ自治区との通信が復活したことは確認済み、なのですが……本当にやったんですね!?』

“そうだよ、私達はやったよ。心配してくれてたんだね、でも大丈夫。これからもやれるさ”

『良かった……! 先生だけじゃない、生徒の皆さんも、協力者の方々も、大変だったでしょう?』

 

 啜り泣く声が混じっているあたり、相当気にかけていたらしい。無理もない。何があるか分からない旅に出た、キヴォトスにとってかけがえのない人物が、なんの音沙汰も無い状態が何日も続いたのだ。

 

“大変だったのはそうだね。どんな感じだったのかは、今から報告書を書いてまとめるよ。その間皆は準備期間、もしくはゆっくり休んでほしいな。何かあったら連絡してね”

 

 

 連邦生徒会の会議室。ここにいるのはリンとウタハだけ。本当は先生も伴うはずだったが、報告書もある上、D.U.が孤立していたために普段より少ないとはいえ、溜まっていた仕事もあるため、欠席していた。

 

「先生は待たなくてよかったのかい? 正直、私はこういう話し合いに向いてるタイプではないよ?」

「構いません。基本的には、方舟の行き先に関する話ですから、むしろ技術面を総括する立場のあなたが重要なのです」

 

 方舟の行き先は、ある程度固定される。ゲートが観測できなければ、異空間の出入り口を認識できないため、安全面を鑑みるとワープ航行ができないのだ。

 つまりこれは、ゲートに関する話題ということになる。

 

「なるほど。確かに情報の整理も兼ねて、聞いておきたいところではあったね。聞こうか」

「はい。まず前提として、最初に行く異聞帯は、ゲヘナしかありませんでした。これは、ゲヘナ行きのゲートのみが観測可能だったことによるものです」

「うん、その通りだ。そして空想のサンクトゥムタワーを停止させることが、それを打破することにも繋がるというのが、私の予想だった」

 

 その夜が的中しているかどうかは、まだ確認できていない。聞けるのかと思うと、少しソワソワする。

 

「結論から言えば、その通りでした。ゲヘナ異聞帯消滅と共に、ゲートが()()()()()()、観測可能になりました」

「ふたつ……もそうだけど、その時の観測データも気になるね。後でユウカと分析したいから、話が終わったら貰いたいな」

 

 ぜひ、と表情ひとつ変えることなく、しかし柔らかな声色で言いながら、リンはスクリーンに映像を映し出す。キヴォトスの地図で、ほとんどの地域が赤く塗られている中、D.U.とゲヘナは青、百鬼夜行と一部の沿岸地域が黄色であった。

 

「赤は、異聞帯が発生していることが確認、あるいは推定される地域です。青は異聞帯が現在存在しない地域、そして黄色は、ゲートから行ける場所と予測される範囲となります」

「ゲートはふたつ、じゃないのかい? 随分と変な分布だけど」

「ええ、そうです。行き先と、簡易的な観測結果がこちらです」

 

 今度はウタハが普段使いしているデバイスの方に送られてきた。そこにはリンの言う通りの情報が載っている。理解にある程度専門的な知識を要するようなものも多く、これで簡易的なものなのかといいたくなるようなものなのだが、大事なのはふたつ。「場所」、「異聞深度」であった。

 片方には、こうあった──「出現地域:百鬼夜行 異聞深度:E」と。だが目を引いたのはもう片方。「出現地域:キヴォトス周辺()()()() 異聞深度:C」とのことだった。

 

「ええ? いや、海の上にタワーが出たとは聞いていたが……ええ?」

「ここまでの情報を総括するに、異聞帯が発生するということは、それだけの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということです。海の上を中心にそんなものがあるということを、認めなければなりません」

「いや、そうなんだが、ねぇ……オデュッセイアか? だとしても……想像がつかないぞ。ゲヘナがあれだっただけに尚更」

「想像するだけ、意味もなさそうですが。何せ、文字通り想像を絶してくるのが異聞帯であると、実感したばかりのはず」

 

 そう言われると、確かにと言わざるを得ない。とはいえ、異聞深度という指標も気にしたいところだ。海上異聞帯がゲヘナを下回るCなのも驚きだが、百鬼夜行はそれを遥かに下回る最低ランクのEとある。

 これは汎キヴォトス史との乖離度とほぼ同義と見ていい。つまり、百鬼夜行はまだ想像の範疇にある世界である可能性もあるわけだ。

 よって。

 

「最終決定権は、先生に委ねるつもりだと予め言っておくけどね。私の意見としては、先に百鬼夜行かな。より危険そうな環境に備える準備期間を設けつつ、何か異聞帯内で独自のアイデアや技術を盗んで、方舟を改良したい」

「私も、近い意見です。もちろん百鬼夜行異聞帯を、簡単と捉えているわけではありませんが。オデュッセイア、考えてみれば不自然なくらい我々の歴史では()()()()()()()()()。それでいて、細かな影響は確実にあるのが特徴です」

 

 キヴォトスにおいて莫大な市場規模を有する海上交易の殆どに関わり、観光や兵器販売の大きな事業に携わっている。文化面でも晄輪大祭の起源とされ、影響力が大きいはず。それがオデュッセイアである。

 それに比例するように規模も大きいのだが、そんな学園でありながら、立地の影響もあってか、陸地のいざこざに直接関与することをとにかく避けていたところがあった。

 

 この話し合いの結果は、この日の夜に、時空間の観測データ、それに対するウタハとユウカの見解と共に先生の元に送られた。百鬼夜行異聞帯に、先生側の状況が落ち着き次第出向く意向である、と。

 仕事は山ほどあるが、その隙間を縫うようにして返信をするだけなら簡単だ。日付が変わる直前には、モモトークを返した。

 

“それでいこう。機材の整備は皆で協力して、休み休みやってね”

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