Kivotos with the Lostbelt   作:2匹目の蝉

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2-2:怪なるもの

 数十分も歩けば、かなり建物の多い街にやって来た。人通りも少しはあり、しっかり店もやっている様子。通貨も同じものが利用できそうだ。

 

“これはかなり運が向いてる。何せ情報収集に書店が使えるわけだからね。通貨単位が一緒でも同じデザインの現金が使えるかは気がかりだけど”

「そこは信頼してもいいんじゃないの? それよりもこっちのお金を外に持ち帰れるかが問題な気がするけどな〜」

 

 一応ここにあるものは、タワーがシミュレーションとして生成した物体という扱いだ。一切の物品の持ち帰りができない可能性も十分にある。いや、その可能性の方が高い。

 お釣りが出るのは避けたいところである。あるいは、立ち読みしていくか。

 

“私達の知ってる街並みと配置は違うのかな、やっぱり。辿った歴史がかなり近そうだから、もしかしたらとか思うけど”

「少なくとも、この街並みは知らないです。ですから本屋さんの場所は分かりません……ごめんなさい!」

“やっぱり、そうだよね。いいよイズナ、気にしないで。とりあえず探そう。情報は大事だよ。そうだ、情報といえば、何か気付いたことはある?”

 

 チラチラと、首を左右に向けながら考え込むイズナ。その表情はだんだんと曇っていき、不安げなものになっていった。どうやらだんだんと、小さな違和感に気付いた様子。

 

「上から見た街の大きさから考えてみても……おかしいと、思います。もうちょっと人が歩いててもいいし、もうちょっと街が賑やかでも……」

 

 確かに、人通りに関しては建物の密集ぶりや、各種の店が跡地ではなくしっかりやっているらしい様子からして、もう少し多くても不思議ではない。まして、百鬼夜行は何かと街の活気が特徴であるので、余計に不自然に見えてくる。

 少し前に関与した出来事だったからか、ニヤが「花鳥風月部」に対して使っていたという方便のことも、先生は自然に思い出していた。百鬼夜行は何かにつけてイベントをやり、「お祭り」を連綿と続け、古くからこの地に根差す「怪異」を退けていた、と。

 

 これは、あくまで方便であるはずだ。そのような前提で聞かされた。だがそれにしては、その言葉通りのことがあの日は起きすぎていた気がするし、「方便だ」と()()()()()()()が、方便である可能性も否定できない。

 それに、あの言葉は確実に、理に適っている。

 

“イズナ、重要な情報だよ。いっそう調べる必要性が出てきたと言っても過言じゃない。地図がどこかにあればいいんだけど……とにかく、歴史情報を探れそうな場所を!”

 

 街をアロナにマッピングしてもらいながらうろうろすること、30分ほど。そろそろ疲れてきそうなタイミングで、ようやく古本屋にありついた。

 ありついたのだが。

 

「……閉まってない?」

 

 入口の戸を開けようとして、ガタンと小さな音を立てる。なるほど、本日休業か……と思ったのだが、イズナは聞き逃さなかった。

 

「今誰か、『ひいっ!』とか、言いましたよね?」

“そうなの? ホシノ、聞こえた?”

「全然、って言いたいけど言われてみれば?」

 

 今度は戸を叩いてみる。するとハッキリと聞こえた。

 

「おいおいおいおいおい、どうなってるんだ? 警報機は動いてないのか? さては真っ先に魑魅(すだま)の輩がスピーカーを潰しでもしたか? くそっ、市民を襲うのがそんなに上等か!」

「わわわわ、何のこと何のこと〜!? 私達お客さんだよ〜!」

「悪いけど今日は臨時休業だ! もしかしたら店じまいかもな! あんたこそただの客ならなんで出歩いてる、()()()()()()まったく!」

 

 中年男性と思われる店主はその後も、最近の若者は危機感がないだの、最近動きが無いから皆呑気になっただの、とにかく散々に言いまくっていた。何かを強く恐れているというのは分かるが、それが何なのかは全く伝えてくれない。

 ある意味その内容を知りにここに来たのに、とんだ仕打ちである。しかもそのとんだ仕打ちは、これで終わりではなかった。

 

 鳴り響く警報音。人の本能が、あるいは動物の本能が危機感を覚える不快な音と共に、あまり多くなかった通りの人々も各々隠れ場所を探し始める。

 

『妖魔警報発令。妖魔警報発令。速やかに身の安全を確保し、警報解除までその場を離れないでください。繰り返します……』

 

 店主らしき声が「警報機」、「スピーカー」と呼んでいたものはこれのことか。街を訪れたタイミングはかなり悪かったらしい、などと思う暇もなく、それはやって来た。

 

「あれって……まさか!?」

 

 イズナの目が道の向こう、遠くに捉えていたのは、怪談に謳われるような、怨念を様々な形でこの世に留めているもの──怪異の類。

 

「なーるほど、あれが出た警報ってこと。でも大丈夫、私達が来たんだからね。対処するよね、先生?」

“いやあれはまずいよホシノ! あれはまともな銃では基本的に対処ができない、そうなる条件もちゃんと揃ってる! だから……”

「悪いけどそういうの知らないんだよねー。試すだけ試させてくれない?」

 

 こう言って自分を一番に信じて突っ込んでいくのは、ホシノの悪癖と言える。だが今回ばかりはこの悪癖が功を奏した。

 怪異らしき敵に突っ込んでいき、イッキに距離を詰めるなり、愛用のショットガンを放つと、次の瞬間にはひとつ群れを殲滅していた。

 

 殲滅していた。

 

“……あれ?”

「いや、でも普通の武器でも一時的に食い止めるくらいはできたはずです! もう少し様子を見ても……いいや、これはやっぱり、ちゃんと倒せちゃってます。似てるだけで、違うのでしょうか」

 

 困惑しながらも、他の集団を撃ったり、忍具も使ってみる──手応えがちゃんとある。百鬼夜行の古くからの脅威とは、かなり違うようだ。

 

“とにかく! ちゃんと戦いになるっていうのは幸運だ。街の人達の安全も心配だし、片付けていくよ!”

 

 どうやらこの異聞帯でも、様々な困難がつきまとってくるようだ。

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