Kivotos with the Lostbelt   作:2匹目の蝉

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2-4:陰の気来る

 とにかく前衛はホシノが張る。一発一発が重くとも、その堅牢な盾に揺るぎはない。守りを捨てた攻めのスタイルで突っ込んで全てを崩してもよかったのだが、彼女自身の無事が保障できないためにやらせなかった。

 イズナも本来ならメインの「忍具」である銃器が近接向けであり、前に出たいスタイルなので、実のところ後衛に回ろうとするのは相性が良くない。だがゲヘナ異聞帯にて舟で待機している最中に、戦闘記録から今までに体験したことのない戦いのための新忍具を作り出していた。これには、エアトンの部下の協力が大いに役立ったようだ。

 

「くそっ、後ろの奴を狙いたいのにちょこまかと……あいつ、()()か!?」

 

 そんなコメントを向けられたのがその忍具のひとつである、非常に扱いやすく創意工夫が凝らされたワイヤー付き鉤縄。今はまだ横方向の高速移動に使うくらいだが、訓練すれば立体的な立ち回りが可能になるだろう。

 加えて、守りのための道具を新たに手にした。

 

「新イズナ流忍法、傘弾きの術!」

 

 エアトンの部下の技術とイズナの夢、それに加えて()()()()()()()()()()()()()()によって生まれたこの忍具は、高速回転により硬い骨で銃弾、ひいては砲弾を弾く盾になる。ゲヘナの魔王の光弾すら、ホシノの盾で勢いを殺した状態なら弾き返せる優れものである。

 ゲヘナでの決戦で舟の護衛を担当したのも、これの実戦テストという意味合いがあった。

 

 そして、サブマシンガンよりも遠距離は頼りになる各種投擲物。小型爆弾、手裏剣など。ホシノがガンガン近距離に進んでいくために煙幕弾を放り込めないのは厄介だが、それは自分の近くで撃ち抜いて起動させればよし。

 

「この子たち……たぶん、確実に動けなくしておいた方がいいよね。どうする、先生?」

“そうだね、気絶させるのが一番だと思う。間違っても殺さないように”

「おっけー、じゃあ顎辺りかな。ちょうどいいくらいに脳震盪で倒れてもらう方法はよく分かってるんだ、任せて」

 

 確実に一番近くにいる敵の顎を下から突き上げるような角度で弾を撃ち込むと、見事にものの一撃でダウンさせてしまった。流石、この辺りの技量は誰も寄せ付けないものがある。

 これを見せつけられた相手側はたまったものではなく、無理矢理フォーメーションをバラけさせてまでホシノの裏側に回ろうとする。当然ながらそのうちひとりは追いかけられ、ダウンさせられた。

 

“あれは囲みにかかっているね。イズナ、使えるものはあるね?”

「当然ですとも! いつもより派手にやらせてもらいますっ!」

 

 イズナが使ったのは、またしても煙幕。敵を引きつけ、その上でかなり大量に煙幕弾を炸裂させたため、煙幕に全員を巻き込む形になる。

 無闇に行動できないでいる中で、後ろから強力な力で引っ張ってくるものが。

 

「なんだ、何に引っ張られ……ワイヤー!? いつの間に」

「これこそ! 新イズナ流忍法です!」

 

 リアクションを終える前に、完全に黙らされてしまった。残りも同じやり方で処理していき、目標全てを沈黙させてみせた。

 

“どうにか、もろに攻撃を受けることなく乗りきったね。頭を撃ち抜くとか、喉がどうとか、本当にそういうものだと思いたくはないけど……キヴォトスの外での銃撃戦みたいな、嫌な感じがしたよ”

「外では、銃ってすごく危ないものなんでしたよね。そう言いたくなるような空気、主殿も感じておられましたか」

「いやぁ……いつ以来かな、こんなに背筋がヒヤッとしたの。ヒナちゃんとやったときもこんな感じはしなかったな〜」

 

 などと感想戦を行いながら、街の方に戻ろうとする一行。しかしその後ろで、狙いをつける者がひとり。

 行動不能になっていなかった者が、残っていた。戦闘不能に限りなく近いながら、最後っ屁をかまそうという魂胆だ。

 その気配を感じ取ったか、振り向くホシノ。銃口が先生かイズナか、ともかく自分ではない方に向いているのを目撃した。

 

「やばい、後ろ!」

 

 咄嗟に庇うが、盾はもう折り畳んでいて機能しない。自分の体を盾にすることになる。そしてその盾は傷んだ。

 左腕に当たった銃弾は、強烈にホシノの肉体を打ち付けた。顔を大きく歪めながらも、反撃を撃ち込み、敵の持つ銃を弾き飛ばしたが、それから左腕を押さえて蹲ってしまった。

 

“ホシノ! 大丈夫、腕は上がる?”

「いやあ〜……ごめん、これ折れてるかも。本当に当たりどころが悪かったら命は無かったねぇ。ま、利き腕は生きてるから戦えるよ、へーきへーき」

“平気じゃない、方舟に一旦戻ってセナに診てもらってから判断を……”

 

 必死に戦い続けようとするホシノを制することに、先生もまた必死になっていた。引っ張っていこうにも力負けするのは間違いないし、間違って左腕を刺激するわけにもいかない。

 そんな危機に、救いの手が舞い降りてきた。

 

「おーい! あんた達か、ここを襲いに来た奴らをやったのは!」

 

 こちらに駆け寄りながら呼び掛けているのは、現地の武装した生徒だった。先程の者達とは違い、敵対している関係にならなさそうだ。

 

“うん、()()()()()()()()ところなんだけど、その矢先にこれでね。ちょうど二人は腕に自信があったから、抵抗させてもらったよ。ただ、片方が酷いケガをしてる”

 

 咄嗟にここに来た経緯を偽装しながら事情を話すと、だいたいのことは把握してくれた。

 

「ここで育ったおれが言うのもあれだけどよ、旅行で来るようなとこじゃねえって、ここは。ま、偉い人らに見捨てられたこの街を救ってくれた恩は並じゃない。いい医者がいるとこに連れて行ってやるから、ついて来な」

 

 願ってもないことだ。現地で治療が受けられるのなら、それに越したことはないのだ。なぜなら、方舟に戻って、もしくは呼び出しての治療というのは、探索の中断を意味する。それは可能ならば回避したことのいい手段であるはずだ。

 

“お願いするよ。その途中に、この辺りのことについても教えてくれると嬉しい”

「おう、車は出してやるから乗ってきな!」

 

 情報への足がかりを得たのは、まさに不幸中の幸いだっただろうか。

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