Kivotos with the Lostbelt   作:2匹目の蝉

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2-6:忍軍の中立地帯

 この地域一帯を統括しているらしい、陰陽軍の兵士であるという生徒の元に、先生達は呼び出された。

 

「単刀直入に、お尋ねします。あなた方は、ただの観光客ではない。違いますか?」

“それで合ってるよ。君の仲間には、一部嘘をついてたことになる。申し訳無い”

 

 ここで嘘をつく意味はない。むしろ、異聞帯のことにふれない限りにおいて、正直になっておいた方がいい。そうイズナ、ホシノにも指示をしていた。

 

「いえいえ、むしろその場ではそう偽るのが一番だったでしょう。いや、それでもこの支部の医療班をダイレクトに紹介するのはどうかと思いますが……とはいえ、我々は皆さんを認知できました。それで、あなた方は、実際どのような立場なのです?」

“私達は、そうだね……連邦生徒会に任命された、調()()()だ。何しろ政情が不安定すぎて、ほとんど内情は把握できてないからね”

 

 これはもちろん、半分くらい本当であるが、半分くらい嘘である。この時点で持っている情報から、何も知らない外部の人間として一番いい肩書きをその場で考えた。

 これくらいのことをされると、ホシノもイズナも下手に口を出せるようには思えなくなってきた。言葉を使ってことを進めるには、やはりこの先生という人物は頼りになる。

 

「連邦生徒会……てっきり、無関心でいるのかと思っていましたが。とはいえ、お気の毒です。この長い乱世に、安全な場所はほとんどありません。我々陰陽軍の庇護下に、仮に入ったとしてもです」

“仮に、か。つまり入ることはできないんだね?”

「私の一存では、当然判断できかねます。ただ、我々の首長は、統一後を見据えて協力を断るでしょう」

 

 論理としてはこうだ。この百鬼夜行の戦乱を終わらせ、陰陽の名の元に統一を成し遂げることが彼女らの目的である。そこで連邦生徒会はもちろん、他の自治区の公式な支援を受けながら統一をした場合、傀儡化してしまうのではないか、ということを大いに恐れているのだ。

 ここは乱世だ。同盟関係を作るにしても、()()()()()()()()()()()()()()()、という問題から対立するのが常であり、それは避けたいというのがスタンダードな思考だったわけである。

 

「ですが、良い提案はすることができます。特定の勢力に肩入れしないことを誓った人々の、中立地帯があるのです。そこにいるだけいれば、とりあえずは安全です。加えて、そこでの働きに加われば、ある意味この地において一番の自由を得られるのです」

“自由、か……”

 

 活動の自由、所属の自由、そういったものはありがたい。だがここまでで読み取れた情勢、そして「ある意味」という前置きからして、不穏さを感じ取らない方が無理があった。

 だがどうせ、そんなものからは逃げられまい。先生は承諾する気でいた。だが、あえて尋ねる。

 

“ホシノとイズナはどう思う? 話に乗っておくべきか、それとも自分たちでどうにかするか”

「イズナはいいですよ!」

「私は……うーん、こういうの警戒しちゃうなあ。でも無視しても得しないよね、いいよ」

「では、そちらに向かう乗り物は手配しましょう。可能な限り安全は確保しますよ。そちらの狐のお嬢さんは、特にあそことの相性も良いものと見えます」

 

 

 というわけで、翌朝にそちらへ向かうことになった。道中の安全のために、時刻関係の予定は全て組んでもらった。その上で、装甲車での護送となる。

 運転手は、獣人の中年男性が担当した。やはりと言うべきか、生徒ばかりが軍事に関わっているというわけではないらしい。生徒の価値は戦力と吸収力にあるのだろうか。

 

「あちらさんには、予め話を通してあるらしい。到着したら歓迎してもらえるはずだぜ」

“それはそれは、本当にありがとうございます”

「俺がやったんじゃない。ま、あの娘らには伝えとくよ。そいじゃ、出発!」

 

 悪路も豪快に進んでいく。壊れやすい物を運ぶことも意識しているからであろうか、揺れが少なくなるように車は設計されているようだ。

 お陰様で、ホシノがちょうどよく眠れるくらいの揺れ具合だ。アビドスの哨戒に出る日常から離れても、夜はあまり眠れない彼女のことである。この場は寝かせてやることとしたのであった。

 そして揺られること、およそ2時間。何やら物々しい雰囲気の街並みに入ってきた。

 

「ホシノさん、起きてください。そろそろみたいですよ!」

「うぅ〜ん……あれ。なんか覚えのない建物がいっぱい」

 

 まだ寝ぼけているらしい。景色は把握できているが、その意味が判別できていない。先生が頭を軽くポンポンと叩くと、少し頭に興奮のスイッチが入ったのか、シャッキリと目が覚めた。

 

“ここが、目的地?”

「そう。ここが、どの勢力も襲撃しないという約定を定めた中立地帯……忍軍、忍びの者達の里だ」

 

 

 里、という名称はずっと使っているのだろう。今ここにある景色は、建築こそ伝統的様式を保っているが、その機能、規模は完全に市街地である。襲撃されないという要素は、商売人達にとっては嬉しいことこの上ないのだろう。忍びの里である以上面倒事が多そうだが、情勢的に大きすぎるメリットだ。

 それはそれとして、イズナのテンションが上がっている。忍者として大成したいという夢を追い続ける彼女にとって、本物の忍者文化が残っている土地というのは憧れも憧れだった。車を降りるなり、運転手に軽くお礼を言ったらすぐに駆け出していく。

 

「おお、これが本物の忍者屋敷というものなのでしょうか!? 参考に写真でも撮って、忍術研究部で企画の材料に……」

「お〜〜い! 陰陽軍の人が言ってた人達だよね〜!?」

 

 それを呼び止めるのは、明らかに覚えのある声。忘れようのない、聞いたことがあるならば一発で分かる声。そしてその声の主が、百鬼夜行異聞帯の忍者の里にいることに、完全に納得がいく人物だった。

 

“君は……”

 

 うまく初対面の人間としての振る舞いをしようとする先生だったが、言葉が詰まった。何せ、目の前にいたのは忍術研究部の部長、千鳥ミチル──()()()()()()()()()()()()()()()()()()だったのだから。

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