Kivotos with the Lostbelt 作:2匹目の蝉
その異聞帯の生徒は、名を
だが、一度も実戦に出たことはない。色々と、上手くいっていなかったようだ。そのための支援者、アシスタントとして送られてくる、と聞いていたらしい。
「と、いうわけで……今日から一緒に戦ってくれるんでしょ〜?」
“……”
そんなことは先生達は、少しも聞いていないのだが。自由とは何だったのか、と思いはしたものの、考えてみれば自由は自由。
「うへ〜……なんかこの子の声、調子狂わない?」
ホシノの妙に間延びしたような話し方も大概なので、ここはスルー。さて、一緒に戦うのか、という話だが。
「もちろんです! やれることは全力でやりますとも! ですよね、主殿?」
“……ああ、そうとも! それが最終的にも、私達の目的にも適うんだからね!”
イズナが凄まじくやる気なので、その勢いのまま同意した。結局のところ、それが最適である。一緒に、味方を作っていこうというわけだ。
そしてここで、ひとつ疑問が。
「あれ。そういえば流しちゃってましたけど、ここって中立ですよね? 何と戦うんですか?」
「あー、それそれ! 忍軍はね、色々なところからお仕事として依頼されて戦うわけ。とにかくたくさん受けてお金を稼いだり、自分だけのご主人を見つけたり、戦い方は自由! って感じ」
どこにも頼まれれば、
傭兵業で栄えている街なら、制圧するよりもいい条件で雇う方が効率的にもなりうる。
「私達的には、ちゃんとした協力者との繋がりを作れた方が都合がいいよねー。どういうところから依頼が来てるのか、見てみよっか」
ホシノの言うように、目的がある以上は一致が見られる相手に全力で肩を入れるのが良さそうである。そういうわけで、依頼を眺めながらどういった勢力があるのか説明してもらうことにした。
「えーっと、陰陽軍の人には会ってたよね。この地域を統一したい人達。それと魑魅軍、これは……なんだっけ、ツクヨ?」
「一番まとまりがない勢力ですが、所持兵器の性能が高いところです。刹那的、過激……なんて、言うんでしょうか……」
このふたつについては、既に遭遇している通り。同じ名前を持つ組織が汎キヴォトス史に存在するが、細部が異なる。そしてそれには、少なからず「お祭り」の欠落が関係していそうだ。
“そこが2大勢力かな?”
「いいえ、今の百鬼の地の強い勢力は、主にみっつです。先程までのものと、北の方にエビス軍というものがあります」
「まあこっちに全然依頼は出さないんだけどね〜。勢力拡大とか興味ないみたいだし、どことも仲良くしないし。でも負け知らずで、一番強い!」
百鬼夜行の北部、エビス分校のある地。異聞帯が出現する少し前辺りに、先生も赴いたことがある場所だ。なかなかに厄ネタになるものも多いため、怪しいとは感じられる。
とりあえずは、このエビス軍を崩すことが何かを起こすきっかけにできそうだ、などとも考えていた。
「それで、他にもたくさんあって、なんかもう覚えてらんないくらいあるんだけど、とりあえずここに全部あるから、ちょっと気になるのあったら言って!」
そう言ってミチルが見せてきたのは、忍軍向けのポータルサイト。依頼一覧として、数々の勢力の名前と、その横に受けられる依頼の数がズラリと並んでいた。かなりの多さに面食らい、先生でも流石に覚えのない名前のものもあったが、かなり覚えのあるものがあった。
その中でも、特に気になったものがある。その勢力は、仮説としてはこの異聞帯には存在しないと思っていたものだ。
“この……百花繚乱軍、って何?”
百花繚乱。長きに渡った百鬼夜行の紛争を調停した者達の名前。その概念は、誕生していないと予想していた。そのため、どうしても聞かずにはいられなかった。
「それ? なんか最近急に出てきて、すっごく大きくなってきてて〜。もしかしたら魑魅軍なんかよりも大きなっちゃうかも!? なんて感じで今話題なんだよね」
「まあ、歴史的に、そういった一時的に強まった勢力というのは、いくらかあったようですが……それは逆に、そういったものは程なく弱くなっていくということです」
最近急に出てきた、という事実が先生の中で何か繋がった。そうであるのなら、この現状と百花繚乱の名が並び立つ理由も理解できる。理解できると同時に、ひとつの新たな可能性を感じることができる。
その可能性に賭ける価値は、大いにある。過ったものを正すために、百花繚乱の概念そのものも大いに役立つことだろう。
“そこの出している依頼を、できるだけたくさん確認したい。集中的に受けて、お得意様になろうじゃないか”
「……え?」「……はぇ?」
「「えぇ〜〜〜っ!?」」
当然ながらあちらには、そういった事情も込みで考えていることは分からない。こんなに大胆な人にアシスタント、アドバイザーの役目を陰陽軍は与えたのか、と少し不安も混じった反応だ。
尤も、与えられた覚えもないが。それが先生には最終的に無関係というのも、結局は作用しているのか。
「主殿の考えは分かりますけれど、上手くいくんでしょうか?」
「まーまー。先生なら、
いつものような、自信に満ち溢れた顔。それは傍から見れば、根拠がなく見えるかもしれない。
だが、彼にしてみれば、根拠はあるのだ。それを心の底から、馬鹿正直なくらいに、信じているのだ。その口から、出る言葉も。
“きっと上手くいくよ。上手くいかせてみせる。私を思いっきり信じて、任せてよ”