Kivotos with the Lostbelt   作:2匹目の蝉

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2-8:妖魔と怪異と魑魅魍魎

 早速、百花繚乱軍の出す依頼をひとつ選んで受けることにした。他の勢力の占領地との境界に、暴走する第三勢力の兵器が残っており、邪魔なので破壊してほしいとのこと。

 おそらくは侵攻か交渉を行いたいのだろう。邪魔だが自軍の戦力は消耗したくない、なるほど納得がいく。百花繚乱がこれをやっている、というのがなんともモヤモヤするところだが、だからこそ本人達に会ってちゃんと話し合いたいところだ。それに、それを踏まえても、新興であるなら人員は貴重だろうし、外注できることはしたい。

 ()()()()()()()()()()()()。そこを頼りにすることは、合理的なはずだ。

 

「返信が来てたら、明日の朝に出発だって。昨日は大変だったんでしょ? なんか骨折してる人もいるし、それで今日は移動だし……まぁ、部屋はたくさん空いてるから、自由に選んで使って!」

 

 ミチルのお言葉に甘えて、それぞれが個室を貰った。忍軍の忍者屋敷というのは基本的にシェアハウスで、多くの場合は8人程度のグループになって一緒に暮らし、一緒に戦場に出る。だがミチルはツクヨ以外について来る者がなく、ゆえに部屋も余りまくりだった。

 

「我らが部長が異聞帯だとさらに……って言っちゃうと良くないかもですけど、お辛そうな境遇になってますね」

“まあイズナの存在って、けっこう大きかったと思うよ。そしてこの世界はイズナ抜きで構成された。まあ無理も無いね、ちょっと知ってるミチルより……しょぼくれてるっていうか、そんな感じなのは”

 

 年齢もそのままであるなら、あの歳で大成する気配もないのは、戦闘力を重視される社会ではかなりの劣等感にもなりうる。相当精神的に追い詰められていても決して不思議ではない。

 だが同一人物であるなら、その優秀さを先生とイズナは知っている。ホシノも話には聞いている。互いにとって、これは幸運な出会いだった──と、この一日に満足してそれぞれが選んだ部屋で眠るのであった。

 

 

 翌朝。予定通り、朝食の後に軽く準備を済ませたら出発する。依頼元との契約で手配された車両に乗って、1時間半ほど飛ばしていく。そして現場付近までやって来た。

 

“ここからは歩きだね、地図情報に関しては任せて。それにしても、今更だけど……ホシノ、本当に来てよかったの? ”

 

 ホシノの左腕はまだ、全く治癒していない。固定して治るのを待つ段階であるが、その上で安静にするのが常識である。驚異的な身体能力が、多少の無理を許しているのだろう。その上で、普通じゃない。

 心配されているのをよそに、涼しい顔で構えの確認をして、うんうんと頷く。

 

「大丈夫、一応昨日の夜のうちに練習したし。やっぱり夜は何かしてないと落ち着かないんだよね〜」

“……あんまり無理はしないでね”

 

 それから歩いていくこと十数分、指定区域に入ってしばらくしたポイントにて、最初の攻撃を受けた。

 

「あれは!」

 

 イズナが真っ先に気付いて見た先には、やはり怪異──のようなもの。あれが「兵器」であるらしい。汎キヴォトス史の目線から見ればなんとも歪な存在だ。

 

「やっぱり妖魔だね! よーし、今こそ修行の成果を見せる時ぃっ!」

 

 ミチルが張り切っているのは分かるが、覚えのない単語が紛れ込んでいた。

 

“妖魔?”

「はい、古くからあった怪異の存在を、人に広く扱えるものに落とし込んだもの……それが、妖魔という兵器です。詳しくは、これが終わりましたら」

 

 ゆっくりと説明を聞いている暇は無い。指定区域は意外と広く、推定目標数も決して少なくないのだ。囲まれる前にどうにかしたい。

 それにしても、落とし込んだものというのは、格を落としたという意味であろうか。通常の武器による攻撃もちゃんと通る。本来であればクズノハが特効武器を開発して追いやった存在が、異聞帯では特殊性を失ってもなお有効な汎用性、量産体制を得たらしい。どうやらその辺りも、収拾のつかない状態になっているようだ。

 

「おっけー、それじゃさっさとやっちゃおうか。先生の背中はおじさんに任せてね、ニンジャの皆は自慢の忍術で目の前の敵を蹴散らしちゃってよ」

「おじ……? まあいっか。早速大物きたよー、ツクヨも続いて!」

 

 大物と呼ばれた妖魔は、多足の獣の姿をしている。いつぞやの「猫鬼」とも違う、犬もしくは狼のような姿。見るからに強敵。

 また、汎キヴォトス史におけるそこまで突出した何かを(あくまでイズナとの比較では)持たないミチルとツクヨが、この世界でも忍者としてうまくいっていないということを聞いていた以上、先生はそこまで実力を信じられなかった。なので実力を測り、それに応じて戦闘支援を……と、思っていたのだが。

 

「妖魔でも獣は獣! 忍びの豆爆弾をくらえ〜!」

「流石です……! では、こちらも!」

 

 ちゃんと訓練された「忍者」の基準を、少し舐めていたかもしれない。ミチルが大量の小さな爆弾の爆音で怯ませながらダメージを与えつつ、それに合わせてツクヨがグレネードを撃ち込む。いい連携だ。この時点でなかなか完成度が高い。

 だが更にそこにイズナが驚きを加える動きを見せてくれる。

 

「ずばばばばーん、と投げて、どどどどーん、と撃ったら……じゅびびびっびびびびびーん、と突き刺すのです!」

 

 いつの間にか仕掛けていたクナイが射出され、それが致命傷となったか、大型妖魔はたちまち消滅してしまった。鉤縄を使っているらしいが、あの忍具を自分で改造した機構なのだろうか。

 イズナはイズナで、実のところ専門的な訓練を受けているわけではない独学のはずなのに、忍者としての完成度が高すぎる。

 

「すっごーい! 何それどこで教えてもらえるの!? 本当に忍軍にいた子じゃないんだよね!?」

「えへへ……まあ、好きで頑張っていましたので! 憧れの本物の忍びの方と肩を並べられることが、イズナには誇らしいです!」

 

 ──少しだけ。

 少しだけ、これは本当のことではない。彼女の心は複雑だった。大好きな部長と同じ姿の、本物の忍者は、どこかよそよそしい。だから、誇らしいと同時に、()()()

 それでも、心はどこかで通じているのか、息はものすごく合う。共に妖魔を蹴散らしていく中で、それは素直に嬉しいことだと噛みしめるイズナだった。

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