Kivotos with the Lostbelt   作:2匹目の蝉

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2-9:明日を保証すること

 それからは、特別苦労することはなかった。どうやらあの連携忍術で仕留めた個体が一番の大物であったらしく、ほとんどは完全消滅、沈黙を確認した。若干量が残っているが、心配はいらないらしい。

 

「妖魔は成長もしないし、自分で子供を作ったりもしないから。ああいうくらいのだと、そこらへんの動物にも負けると思うよ」

 

 というのが、ミチルの見解であるらしい。ツクヨも同意しているので、そういうものと考えて帰路につくことにした。

 

『妖魔について、特有の反応を検知しました。これにより、入念な確認をせずとも妖魔の機能停止を私達が判断したり、周囲に接近している反応をキャッチしたりできるようになりましたよ!』

 

 アロナがそう言いながら見せてきたのは、周辺数百m範囲内の妖魔の反応マップ。かなり弱い個体以外全滅、というのがこれでハッキリと分かる。

 欲を言えば、もう少し範囲がほしいところ。シッテムの箱に当てるパッチは普通のプログラミングでできるものなのだろうか? その実験の意味合いも含めて、ウタハに頼んでみるのもいいかもしれない。

 

 こういった妖魔狩りの依頼が、忍軍に入る依頼の大多数を占めるのだという。最前線であれば「ちゃんとした」妖魔が人と共に戦っているが、往々にしてその処分は杜撰で、こういった元戦場での暴走が各所で見られるのだとか。

 しかも(主に魑魅軍が)まだこういった雑なやり方をしているので、キリがない。そのため、忍軍はもちろん、その他のフリーの者達も含め、傭兵にまかせる手っ取り早いお使いのような扱いなのだそうだ。

 

「とはいえ、大事なポイントでの依頼や、被害の大きい場所の問題を解決すれば……その分依頼主には、注目していただけます! ……私は、注目って言われるとちょっと、緊張しますけど……」

 

 というわけで、異聞帯解消に向けては、進展を信じて日々微速前進するしかないわけなのであった。

 逆にいえば、このタイミングで一箇所に留まり、落ち着いて物事を考えることができる。そういうわけなので、先生は夜、自室に自分だけでいられるタイミングを見て方舟との情報共有を行なった。

 

 

“という感じで、ホシノは重傷にも関わらず並以上の戦闘スキルを発揮してる。忍軍の人達とイズナは好相性。時間をかけてでも、今は百花繚乱軍との接触を目指すってところだよ”

『やはり数日で大きく進展したゲヘナが順調すぎただけ、ですね……分かりました』

 

 対応したのはユウカだった。ウタハは自然環境などが本当に汎キヴォトス史と大差ないか、生徒の標準スペックはどれほどと見られるか、そういった分析に忙しいのだという。

 ユウカがキーボードを操作する忙しない音が、先生の耳にも入ってくる。今後の計画の練りづらさについても、悩んでいることだろう。

 

『ハッキリと、言わせてもらいますね。この異聞帯は、ゲヘナと比較しても相当に危険性は高いと思います。向き(ベクトル)は違うのですが、絶対的な大きさをもし数値化できるとしたなら、それはもう断然』

()()()()()()()()世界だったのがゲヘナなら、()()()()()()()()のが百鬼夜行。キヴォトスでここまで、殺意というものを躊躇なく向ける人は見たことはなかった”

 

 殺意そのものは、前に見たことがある。エデン条約に関わるいざこざには、それが溢れていた。だがそこに躊躇はあったはずだ。無かったとしても、決定的に歪んでいたはずだ。

 だがあの妖魔なるものがある意味当然のように受け入れられ、魑魅軍は実にあっさりした殺意を向けてきた。実に正常な精神から、それは向けられていたと思うのだ。

 

『明日の保証がない、ですか。ですが、だからといって私達は明日の保証ができる世界にするために戦っているわけではないんですよ』

“そうだよねぇ……時々そのことを、忘れてしまう。いや、忘れたくなるのかもね。先生っていうのは、守るためや正すためには戦えるものだ。でも、滅ぼすためには、やっぱり別のモノが要る”

 

 一度、それをやるために自ら戦いの前線で指示を出した。自らの手で、滅ぼすことへと導いた。直接でなくとも、その感覚は抜けない。

 そしてユウカはそれを、本質的には理解できない。彼女は後方支援サイドにずっといた。同じ覚悟は、当然せおっているつもりであったが、全て任せられる立場だったのだ。

 それでも、言うしかない。

 

『先生は──ちゃんと、守るために戦えています。あの日も、言ってくれたじゃないですか。それがきっと正しいのだと、信じる。私達の決意は、そこにあるんですから』

“うん。やっぱりユウカには……いや、皆には敵わないな。とにかく今は、最終目標に至るための術を考えないと”

 

 

 毎日妖魔狩りをしつつ、依頼内容はステップアップするように調整すること、1週間余りが経過した。百花繚乱軍にも信頼を与えることができたのだろうか。直接名指しでの依頼がついに舞い込んできた。

 依頼を受けた瞬間に、屋敷の中にはミチルの普段聞かないような叫び声が響いた。

 

「うぇああぁ〜〜っ!?!?」

「どどど、どうなさいましたミチル殿!? って、大仕事が来てるではないですか!」

「やった、頑張って良かったです……!」

 

 忍者一同は肩を組んで喜び……たかったが、それぞれの身長差が大きすぎるためにそこは自重する。一方でホシノと先生は、落ち着いてそこに書いてある内容についてじっくりと確認をしていた。

 

“いよいよ、人が操っている妖魔を相手取って侵入を食い止める、か……”

「あっちが時間を指定して来てくれるわけじゃないんだもんね。できるだけ早く決めたいんだけど、皆はどう?」

 

「あ、ごめん。聞いてなかった」

「同じく、誠に申し訳ございません……」

「えっと、今回の内容はどのようなものなのでしょうか……?」

 

 なんだか不安にさせるようなやりとりである。このままで大丈夫なのだろうか、と思わせておいて大丈夫なのが彼女らであると、とにかくそう信じることにした。

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