Kivotos with the Lostbelt   作:2匹目の蝉

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2-14:花開かなかった世界との闘い

「……ほんとに、先生? 見間違いじゃない?」

 

 ユカリに案内された先にいたのはキキョウ。挨拶をするよりも前に、真っ先にこの言葉が出てきた。

 

“うん。キキョウ達がいてくれるのは本当に心強いよ”

「嘘。だって、ここは……もう、元のキヴォトスに、百鬼夜行には戻れないはずなのに……!」

 

 泣きながら先生の胸に飛び込むキキョウ。その勢いのまま押し倒される先生。いつも思うことながら、どうも生徒は力が強い。完全に無力な状態で仰向けになり、しかも泣きじゃくられているので時々物凄く強い力がかかるので参った。

 

「あーはいはい、そこまでにしときな作戦参謀……改め、代理さま。まあ気持ちは分かるけども。本当にどうなってるんだ? 内乱時代に戻ったかと思ったら知った顔、皆アタシ達を知らないのかと思ったら……先生?」

 

 レンゲが実に簡潔にあちら側の現状に対する認識を教えてくれたので、先生的には助かる。先生が連れてきた生徒達が呆然とする中、ユカリとレンゲが二人がかりでキキョウを引き剥がし、ようやく落ち着いた。

 落ち着いたところで、ここで事実を話すのは覚悟がいる。異聞帯の住人であるミチルとツクヨには、徹底的に隠してきていたのだ。多少の違和感は覚えているかもしれないが。

 

“なるほど。レンゲが言うところだと、君達はタイムスリップか何かをしたと思っている、違うかな?”

「……! そう、これが噂の、たいむすりっぷ、なのではないかと身共は思っていましたし、先輩方も納得してらっしゃいました。違うのですか?」

“寧ろ真逆なんだよね。()()()()()()()()()()()()()()()()っていうか……いや、変な例えはよそう。ツクヨとミチルにも初めて聞かせることになるけど、ありのままを話すよ”

 

「異聞帯。この前先生がブツブツ言ってた、平行世界のようなもの……とも、違うか。上書きで現れてる以上、そして可能性として存在することがほぼ完全に否定されるものであること、それはよくあるイメージと決定的に違うから」

 

 初めて聞く概念に興味が出てきたのか、らしくもなく考えを整理するために早口で呟くキキョウ。今に限っては、まるで研究がいいところまできた時のミレニアム生のようにも見える。

 変な扉を開いてしまったような気もするが、それでも頭脳面で貢献できるメンバーが増えるのはありがたい。別に他の面々が頼りないわけではないが。

 

“よかったら、そっちの身にも何があったか聞かせてくれないかな? 前までいたゲヘナ異聞帯の経験からしても、こっち側のまま異聞帯に移されたケースにも差があるんだ”

 

 僅かに要素が残るケース。異聞帯の生徒に人格と記憶だけ入るケース。そのまま本人であるケース。ほかもあるかもしれない。彼女らは本人であろうが、その他にもシチュエーションの変化があるというもの。

 何より、アヤメは状態が状態ゆえに仕方ないとして、ナグサがいないのは気にかかる。

 

「では、身共がお話させていただきます。あれはアヤメ委員長の元に、お見舞いに伺おうとした日のことでした──」

 

 

 昏睡状態が続くアヤメ。その元を訪れたところで、返事は返ってこないし、起き上がってもくれない。それでも訪れることには意味がある。酷い裏切りをされた後だとしても。

 そのような思いで、彼女の元に百花繚乱の一同はよく来ていた。あの塔が現れたのは、その移動の最中であった。困惑しているうちに、異音と閃光が走ったかと思えば、散り散りになっていた。

 

 幸い、遠くには離れていなかったらしく、数時間後には3人が合流した。だがそれと同時に、違和感にも気付いていた。どうもここは、自分達が知っている百鬼夜行ではない。

 数日間調べるうちに、どうもここは内乱時代なのではないか、と言いだしたのはユカリであった。なんて突拍子もないことを、などと言うレンゲとキキョウではない。何しろ特異な現象が立て続けに起きるキヴォトス、平行世界との接続が確認されたのも最近の主要な出来事として認知されている。

 

 大預言者クズノハによって設立された百花繚乱によって、内乱時代は終わった──そう、言われている。彼女の姿はないが、その精神は各々のうちにある。ならば、同じことをする力になれるだろうか。どうせこの時代に、生きることになるのであれば。

 そう思い立ってからは早かった。百花繚乱軍という勢力を立ち上げた当初は周囲の誰もが懐疑的だったが、()()()()()()()()()()という精神を貫く彼女らはだんだんと支持を集めていた。

 

 確実に知名度を上げ、所属する者も、その活躍も増えつつある百花繚乱軍。そのような話が広まれば、聞きつけてやって来てくれるものかと思って期待していたが──ナグサは、結局今に至るまで来ていない。

 

 

「──というわけで、百花繚乱軍は少しずつ、確実に拡大していきましたの」

「正直、虚しい気持ちにも寂しい気持ちにもなったけれど……先生が来てくれるのを待つ時間だと思えば、報われたかなって思うかも」

 

 気付けば考え事に一区切りつけていたキキョウは、先生に会えた喜びをかなり強調してくる。かなりの不安感もあっただろうが、おそらく彼女に限ってはそれ以上の何かがある可能性が高い。

 

「それで、そっちは……忍軍に入った、のか? 外部の人間を引き入れるとかアリだったんだ、あそこ。それで契約を結ぶ形でアタシ達に近付こうとしたんだとしたら、無茶し過ぎだと思うけどな」

“まあ、それはレンゲの言う通り。かなり無理を通したよ。でもその甲斐はあった”

「はは、まあね。それじゃあ、改めて。アタシ達は、専属契約を結んでほしくて、この場所に面談のために呼び出した。そっち側の意思を聞きたいんだ」

 

 もちろん、契約を締結すると即答──したいところなのだが、ひとつ問題がある。

 

“一応、こっちの代表は私じゃないんだよね。そして、代表にあたる人は……”

「はいはーい! 皆何言ってるか全く分からないんだけど!」

 

 何一つ事情を知らないミチルに、しっかりと事実を受け入れてもらう必要があるのであった。

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