Kivotos with the Lostbelt 作:2匹目の蝉
「つまり、先生殿は連邦生徒会から派遣された調査員じゃなくて、いや連邦生徒会の方から来たんだけど、私達の考えるのとは違って……?」
“突然言われても信じられないし実感もわかないと思う。いや、こっちだって実感がまだないくらいだよ。でもそういうことらしい”
何度言われてもわけがわからなかったミチルは、そこからただ唸るだけになってしまった。
「すみません……ちょっと、ゆっくり考えさせてください。契約については、その、いいと思いますので」
“うん、ごめんねツクヨ。よろしく頼むよ”
とにかく、ここは異聞帯の住人がいない方が話がしやすい。ここで、お互いが持っている知見を共有するのは有効であろう。
そして、できればこの場でちゃんと考えておきたい。この世界を、最終的に滅ぼすことについても。
話し合いは基本的に、キキョウと先生の間で進んだ。というより、余計な口を挟まずに任せるのがベストだと、他の4人が判断していた。
「とりあえず、私達が一緒に戦うっていうのは、決定事項ってことでもういいと思うけど……何のために? 先生は、何を目指せばいいと思ってるわけ?」
“この異聞帯が、なぜ成立したか。存在の要は何なのか知り、これを打倒することが先決だ。私の見立てでは、おそらくそれはクズノハにある”
あるのだが、どうにも違和感があるというのも事実。内乱時代がなかなか終わらなかったからといって、それは存在を否定された可能性たりえるか? キヴォトスの可能性を断っているのか? そもそも、
そしてそういったことには、キキョウも思い至っていた。
「やっぱりおかしいと思う。これはどこかで狂った歴史ではあっても、全く違う歴史じゃない。あんたもそう思うでしょ?」
“その通り。こういうケースで考えられるのは──”
「水面下で、何かが進行している。違う?」
“……そういうことだよ。その鍵になりそうなものにも、心当たりがある”
エビス軍。歴史的に見ても、あまりに立ち回りが不自然すぎるあの軍勢が、何か噛んでいる可能性は高い。よって、ここで具体的に名前を出さずとも、キキョウはそれを察知することができた。
その上で、考え込む。つまるところエビス軍をどうしたいのか。その領域を通過して、北方の黄昏の寺院に行こうというのか? それとも打倒をするというのか? そもそも、汎キヴォトス史と同様にそこにいるというのか?
「いや、それどころか、あれも
“あー、ストップ。ちょっと考えすぎてるよ、キキョウ。そもそもすぐになんとかできるとは思っていないからね。それ以上に、やるべきことがある”
今すぐエビス軍をどうこうする話をしたいわけではない。あくまで、そこは現状最終的に行き着く目標として見据えられる対象である、というだけだ。
そのための最初のステップについてを、まずまとめる必要がある。そのために、ここで方舟に通信を繋ぐ。
『こちらウタハ。どうしたんだい先生、急用?』
「ウタハ……もしかしてミレニアムの、エンジニア部の部長? 噂は聞いたことがあるけど」
『私のことを知っている生徒がいる!? つまり汎キヴォトス史側の生徒であることは確定ということだね、流石先生だ!』
たまたま巡り合いがあっただけ、流石というわけではない……と、謙遜の言葉は心の内にしまい込んで、要件を簡単に伝える。
“彼女がどうやら百花繚乱軍の代表だったらしい。私達は今から契約を結ぶわけだけど……どうだろう、方舟を百花繚乱軍の戦力として受け入れてもらうというのは?”
「!」
驚きでキキョウは言葉が詰まる。どういったものをイメージすればいいのかも分からないというのもある。
『そうは言ってもだよ。着陸できるスペースはあるんだろうね? 飛行して移動する分にはどうにか撃墜の危険を最小限にできるけど、多少の広場程度じゃ収まらないくらい方舟は大きい』
確かに、その辺りの下見はしていなかった。提案しようという思いが先行してしまっていたか。これは反省点である。
キキョウに聞こうにも、こちらはこちらで方舟の巨大さを分かっていない。方舟はサイズとしてはイージス艦級のものより一回り大きいくらいで、これを空中浮遊させて、地上に着陸させ、さらなる調整を経てより見た目に合った水上での運用を安定化させる予定である。そういったことをキキョウにも伝えた。
「……ちょっと大きすぎない? いや、用意できなくは、ないけど……ユカリ、ちょっとお使い頼める?」
「はい、何でしょうか?」
「先生に図面は印刷してもらうから、それを見ながら方舟を置く場所があるか確認して。たぶん訓練場に置けると思うけれど」
「訓練場……ああ、あの広い場所なら確かに! 承知いたしました!」
“悪いね、ユカリ。欲を言えば、多少モノをどかしたりしてでも確保してもらえると嬉しいな。それくらい有用だからさ”
というわけで、話は大方固まった。
ミチルからも後から確認をした上で本契約をするが、とりあえず仮契約をする。そしてコスモの方舟を百花繚乱軍の領域内に駐留させ、そのための土地を確保する。必要な支援をそこから行う。そういった形で合意することになった。
寝泊まりをする場所も確保してもらった。百花繚乱軍の寮の部屋を各自与えられた形で、忍者屋敷よりもプライベートスペースは広がった。
「ここが先生の部屋だよ。好きに使って」
“何から何まで助かるよ。ありがとうね、キキョウ”
「お礼はいい。それにしても、昨日まで忍者屋敷でシェアハウスねぇ……」
何か背筋に悪寒が走るような気持ちになりつつも、先生は自室のセッティングを開始した。
しばらくして、ユカリからの報告が入った。方舟が余裕をもって留まれるだけのスペースがあった、とのことであった。