Kivotos with the Lostbelt   作:2匹目の蝉

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2-18:陰の時代

 まさかの、非常に嬉しい回答をニヤはしてくれた。まずそこをどうにかしなければならないと、心配をしていたので、肩透かし感すらある。

 だが、それが素直に運ぶのであれば苦労はない。ここから先もまた問題なのである。

 

“それはまた、どうして?”

「かなり、興味がありまして。あまりに無謀で、型破りで、それでいて生き残れている。何かを変えるやも、そう思うものでは?」

 

 言葉が足りない。先生はある程度察しつつも確信は持てず、キキョウとユカリに至ってはポカンとしている。それを察して、カホが補足を入れた。

 

「今や、不殺主義という考えは絶滅危惧種と言えます。陰陽軍は、相当に穏やかなやり方をしていると自負をしていますが、それでも必要に応じて手は下すもの。しかもこれは、余裕があるからこそのやり方です」

“小さな組織や勢力は、力で無理して道を切り開かないとやっていけない、と”

「まさに。優しさとは、苛烈さに押し潰されるのが常。実際に我々も、必要なだけの暴力でもって、辛うじて立場を維持しているのです。その中で、暴力に強い制限をかけてなお拡大する百花繚乱軍は、衝撃だったというわけです」

 

 よく言ったとばかりに、うんうんと頷くニヤ。そんな彼女に刺さるのは、キキョウからの冷たい視線。それに気付いたか、少し冷や汗が見える。

 

 ともかく、同盟を組むのであれば、何をしたいのか改めて明確にする必要がある。陰陽軍の目指す統一とは、どのような形なのか。代々受け継がれ、ニヤにまで至ったその思想。

 

「今のこの紛争は、なぜ血みどろであるか、お分かりですか?」

「雨露霜雪の戦いで、人々のタガが外れた。違う?」

「タガが外れただけでは、ここまで酷くはなりませんよぉ? 本当に恐ろしいのは、()()()()()()()()()()()()()()()なのです」

 

 報復に対する報復、それに対する──その流れが、いつしか殺し合いになる。殺しのタガが外れるのは、そのキッカケ、あるいは条件にすぎない。

 それによって、恐るべき事態になろうとした事件を、先生は知っている。巻き込まれたことがある。それが完遂されてしまう出来事が起きたのが、この世界ということなのか。

 

「陰陽軍の、基本方針。それは、『死の報復は、死を以て行ってはならない』というものです。そうしていかなければ、連鎖する。世は陰へと傾き、統一や調停がされても止まらなくなる。これは古い時代に唱えられた思想ですが、変わることはありません」

 

 カホの語った方針は、極めて厳格に守られている。どこかで止めなければ、人は命を奪い合い、争い続ける。たとえ理想論であろうとも、その思いを抱き続けなければならないのだと。

 

“じゃあ、その辺りは気が合うわけだ。こっちは必要なだけの暴力のラインも、もっと低いところにあるけれど”

「ええ、ええ。それはもう。ですから、共にこの地を統一することを目指していこうではありませんか!」

 

 結果論的には同じことなのかもしれないが、ひっかかる。単に統一するのと、エビス軍の領域の先を調べること、どちらが本質的に争いを終えられるかは、分からない。もしかしたらどちらでもいいかもしれないし、どちらもそうはいかないかもしれない。

 だからこそ、「異聞帯の攻略・解決」に、運ばせたい。そのため、あえてこれだけでは呑まないことを選びたい──というのが。

 

「ひとつになったとしても、この状態は終わるものなのですか?」

 

 ユカリの中に生じた思いであった。

 

「……というのは?」

「仲間であったとしても、どうしようもなく仲を違えることがあるのです。それでも本当に仲間なら、元に戻れるとは思いたいですわ。けれど……けれど。戻れなくなることだって、あるのです」

 

 その理由は、様々だ。自分を偽ることであったりする。人を信じられないことだったりする。騙されたことだったりもする。あるいは、ずっと抱えていた暗い何かだったりする。

 ユカリは、無垢ではいられない。純粋な心で「百花繚乱のえりーと」をやっていた彼女は、消えかけているのかもしれない。だがしかし、成長とはそういうものである。

 

「まして、無理に引き入れたのなら、どうなってしまうか……あえて、言わせていただきます。もはやこの地は、手遅れです」

「言いますねぇ。つまり我々の目指す道は、結局は無駄になることであるとおっしゃる?」

「……っ! それ、は」

 

 それでも、あくまでこれは素直な思いを打ち明けただけだ。そして、それはある意味、喧嘩を売るような発言でもあった。このことを突き付けられた際の返しを、ユカリは持ち合わせていない。

 その際に助けを出せるのは──

 

「ユカリ、下がって。あまり興奮しすぎないで」

「! ……は、はい」

「ごめんなさい、うちの部下が不用意なことを言ったかもしれない」

 

 キキョウが、とりあえず空気が悪くなりすぎるのは防いだ。しかし問題はここから。リターンを得るためには、ここからだ。

 嘘はそのうちバレる。バレたら、敵対する。だが幸いにしてそのようなことをする必要性もないし、その持ち合わせもない。ただ、ある程度真実味のあることで、どうにか誤魔化していけば、あるいは──やはり賭けだ。どこまで行っても。

 

「ただ、私達とあんた達じゃあ、前提が違う。天下統一と天下泰平はまるで別物、そして私達は天下泰平のためのビジョンを持ってる」

「大きく、出ましたねぇ……できることなら、そんなことを言えるようになりたかったものですよ。適当な出任せで言えることでもなし、聞く価値はあると思いますけれども……カホ、意見は?」

「素直に聞けば、嘘臭いかと。ただ、ニヤ様のお考えにも一理ありと、そう感じます。その場しのぎで言おうものなら、()()()()()()()()ことを誰もが理解する言葉なので」

 

 かろうじて繋がった。これで言いたいことが言えるというもの。同時に、地味ながら現地人に聞けていなかったことが聞ける。

 

「まず、前提として聞きたいことがあって。あんた達は……黄昏の大預言者の伝説について、どれくらい知ってるの?」

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