Kivotos with the Lostbelt   作:2匹目の蝉

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2-21:魑魅軍の現実

 ミチルとイズナが基地に近付いていく道中で、魑魅軍の兵士だと思われる二人の生徒が話しているのを見かけた。末端の兵士からでもなにか聞けるかもしれないと、聞き耳を立てる。

 

「聞いたー? なんか所々でよそのヘリが飛んでるみたいじゃん」

「みたいだねー。怪しい奴いた?」

「いない。っていうかさ、いたところで勝てると思う? 戦うのがそんな得意でもないのにこんなところに送られてさ、妖魔がいなかったら今頃死んでるって」

 

 兵士の質が低下しているのだろうか。頑張れば見つけられそうなくらいのカモフラージュで動いているミチル達にも気付いていない。メモをそれなりに堂々ととっているのに。

 

「はぁ〜……魑魅もさ、いつまでもつのかな」

「エビスが頑張ってくれるって。おかげで陰陽の奴らも私らにビビってんの」

「うちらにビビってるんじゃないじゃん、それ! 頼りっきりじゃまずいんだよ、最近あいつらちょっと見切りつけてきそうな気がするし!」

 

 末端であっても、魑魅視点だとエビスとの癒着に近い関係が認識できるようになっているらしい。そのようなことをメモに書き、聞き流しながらこっそりと立ち去る。去り際には、こんなことが聞こえてきた。

 

「あいつら戦争を続けることにしか興味がないんだもんねー。なんでも殺すのがそんなに大事かな」

「何年先になったら変われるんだろうね、百鬼ってところはさ」

 

「こちらイズナ、目的地に到着しました。侵入経路は……ここの窓ですかね?」

“うん。ガラス窓だけど、割らないで取り外せる。工具は受け取ったよね”

 

 それはミチルが懐に忍ばせている。この工具は窓のみならず、鍵付きのドアなどであっても、一般的なものであれば金属製でもこじ開けてしまえるもの。これはエアトンがかつて()()()()()()()()商品の一つであったらしい。今更ながら、この協力者も大概恐ろしい者である。

 枠だけを的確に歪ませ、窓は静かに、スルリと外れた。なんと便利なことか。この他にも、様々な汎キヴォトス史自慢の技術者のツールがこの作戦には投入されている。

 

 屋内には、流石にやる気のある監視設備の数々が待ち構えていた。カメラ、センサーがそこかしこに配置されている。その全てを誤魔化しながら移動することはどうしても不可能である。こういった監視機器の類は、破壊しても怪しまれるのが悩ましい。

 一応、映像を誤魔化す方法自体はあるのだが、精度の高いものをリアルタイムで行うことはできない。なので、できる限り迷うことなく、短時間で情報を集める必要がある。

 

「案内図みたいなのは……まあ、たぶん無いよね。部屋の名前はドアの上に書いてあるけど」

「まあ、無いと覚えるまで不便すぎますから」

 

 コンピュータールームか、書類の保管庫でも見つけることができればすぐに済むのだが、そううまくはいかない。何より、書類などであれば切り刻むなり焼くなりで処理をしている──そう考えて、ミチルの脳裏にひとつ道具のシルエットが思い浮かぶ。

 

「ねえイズナ。実は会議室のゴミ箱って、宝の山だったりしないかな?」

「いや、こんなことは言いたくないんですけど、本気で言っておられるのですか? いくらなんでも、形が残るように情報管理なんて──」

 

 イズナの静止も聞くことなく、ミチルは目の前に見えた空いている会議室に、鍵など容易に破れるとばかりにズカズカと入り込む。しかもそれを後押しするように、通信に乗ってくる声が。

 

『おっと、私謹製のシュレッダー復元マシーンバージョンδを使うんだね! それはすごいよ、そのサイズでありながらかなり細切れにされた紙片も復元データを作れるんだ! 時間はかかるけどね、ちょっと試してみたらどうかな!?』

 

 興奮したウタハが入り込んできた。「まあ使わないとは思うけれど」と言いながら彼女がミチルに持たせた、前々から開発してはいたスキャナー。だが魑魅の想像以上の意識の低さ、ミチルの発想の方向性などが噛み合って、出番が来た。

 方舟のコンピュータにデータを送って処理させることにより、べらぼうな高精度を実現したこともあり、意外と現実的な策になっているのかもしれない。

 

 会議室のゴミ箱を探すと、あった。書類の細切れが、どっさりと入ったものが。

 キヴォトスもなかなか完全なペーパーレス化とはいかない社会だが、異聞帯の百鬼夜行は少なくとも数百年レベルでほとんどガラパゴス化した文化圏になっており、紙の利用はかなり盛んなようだった。

 

「この量は……うん、ちょっと凄いかも。この紙クズを、この筒みたいな穴に通す感じ?」

『そうそう、使い方はバッチリだね。やりやすくなるように漏斗もセットだよ。うまくいけば、短くても10分はかなるけど、元々あった内容がだいたいわかるようになる』

 

 というわけで、それを待つ間、部屋を探ってから次に探索すべき部屋を探すということにした。ただこの空っぽの会議室には、やはり目ぼしいものは置いていなかった。大層な棚はあったものの、ほとんど空だった。

 

「なんにも無かったねー」

「はい。どこに何の部屋があるのかというのも、よく分かりません。主殿、何か助けになる情報は?」

 “えーっと……一応、断片的に他の基地の地図情報が作られていってる。構造が完全に同じとは思えないけど、傾向はあるね。一番下の階は、探りやすそうなところは特にないかも”

 

 探りにくいが、探る価値のあるものというのはあるかもしれないが、それはもうかなり漁った。上階に潜入し、コンピュータなどから情報を得たい。

 

 移動中に、ウタハから報告が入った。文書のうちのひとつが、復元に成功したらしい。文書というよりは、図面というべきものだが、その内容はかなり驚くべきものだった。

 非常に巨大で、これ自体を移動基地として使えるような船。しかもそれは水上用ではなく、陸海空全てに対応したものである。つまるところ、こういうことだ。

 

『この図が意味するところというのはひとつ……私達の方舟の、()()()()()を立てられている』

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