Kivotos with the Lostbelt   作:2匹目の蝉

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2-25:破滅的なる人の業

「だから手前はずっとずっと、ずうっと! あいつらに言ってやってたんですよ、こんなのは風流でもなんでもないってねぇ! 百物語(かいだん)は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って!」

 

 延々と語り続けるシュロに、ツクヨと先生は付き合わされていた。一応救助活動を手伝ってくれているし、その語りは魑魅軍の思想や事情を知る手掛かりとしても使えるので、ちゃんと聞いてはいるのだが、なかなか鬱陶しい。

 

“まあ、納得はいかないよね。君達が扱っていた怪談と怪異は、脅威であり恐ろしいものでこそあったけれど、その存在に物語性があって、ちゃんとした私達の敵だった。それが人の手で貶められて、人の手に扱えるようなものにされ、今は手に余る怪物だ”

「ただの兵器扱いなんて、怪談家への冒涜ですよぉ! それともあれですか、お祭りやらが無くなった世界では怪談も要らないのでしょうかねぇ? 何考えて生きてるのか……本当に、反吐が出る。醜いなんてものじゃない」

 

 話についていけないか、終始オドオドして聞きながら救助を続けているツクヨが、何かに気付いたようだ。

 

「ところで……修羅、さんでしたっけ? あなたは妖魔がどうやって作られているかって、ご存知なんですか?」

「シュロですってば! ……えぇ、見せてもらいました。決して大成した怪談家ではない手前でも、この類のことに一家言はありますからねぇ。そして、見事に呆れ果てちゃって。神秘の力を込めた兵器なら、その辺の銃ともなーんにも本当は変わりやしないですよねぇ!」

 

 シュロも、なんだったら他の誰もが、認めたくない妖魔の実態というのは、本当に妖魔が兵器以外の何物ですらないというものだった。怪物でもなく、神話性もなく、そのくせ人の手には負えない。その結果がこれだ。

 あらゆるところが気に食わないだろう。だからこそ、この場は敵対をしないでいられる。

 

“なんだかんだで、君達の存在も含めての百鬼夜行でもある。取り戻すために、戦う気はないかな?”

 

 

「ああもう、キリがない! 次から次へと、これじゃあ攻撃資源(リソース)が尽きる!」

 

 レンゲは大型の妖魔は粗方制圧できていた。だが代わりに出てきたのが、本当の意味でのなりそこない。もはや怪異の模倣品や肉塊の形ですらなく、肉に近い材質なだけのロボットのパーツが自律して動いているようだった。先程までよりはかなり脅威度は下がっており、一体一体は片手間で倒せるレベルとなっているが、代わりに一向に尽きる様子がない。

 やはり放置するわけにはいかないのだが、無限に湧いてくる疑いが出てくるくらいの数の暴力。弾薬は確実に減っているのに、減る様子がない。

 

 だが、このようなことになった際に何をするべきか、その答えになるかもしれない行動は思い至っていた。そのために、ミチルが単独で動いていた。

 

「確か、暗号に書いてあったっていうのはこの辺り……あ、どう考えてもこれだ〜っ!」

 

 妖魔は、工場で自動機械により大量生産されているということは、忍軍の見つけた資料でわかっており、ミチルもその一つを知っていた。だがそれらを集めたことで、暗号が仕込まれていることが発覚。それは、工場の在り処を示していた。今回破壊工作を行った地域では、唯一と成る工場の在り処を。

 人気のない場所のただの地面のようでいて、その実隠し通路になっているところを発見した。ほとんど通り道になりそうにない場所だからか、調査に引っかからなかったわけである。おそらく出入りそのものも極端に少なかったのだろう。

 

「でも、ここから妖魔は出てきてなくて……あ、そういうことか。だからこの暴走ってこと?」

 

 各基地を爆破したせいで、各地に保管されていた妖魔が制御を失い、半端に損傷したのを補うために融合したのが、巨大化暴走の正体。一方で、工場の制御システムがおかしくなり、量産体制が暴走して、かつ各基地に妖魔を送るルートを通って各地から湧いてくる。それが無限湧きの正体なのではないか、とミチルは思い至った。

 であるのならば、いや、そうでなくとも。やるべきことはただひとつ。

 

「基地を壊した爆弾は残ってる。中を壊したらいいのも分かってる……生産ラインの初めの方が潰せれば、なりそこないも作れないよね!」

 

 扉というよりは蓋に近い、鍵はないが物理的に開けにくい入口から、中に入る。下っては同じような扉を開けてを繰り返し、おそらくは30mほどは降りた。

 見つからないわけである。ちゃんと入口以外から入るのもまず無理そうだ。入るのもまた、かなり大変だった。

 

 中には、気が狂いそうになる程の悪臭が充満している。一体どのようなものを使って作っているのか、想像もしたくないが、生産ラインの大元は発見できた。

 

「これって、妖魔……いや、その前にあった、怪異ってやつ? 死体なのかな……でも、死体が残るようなのだっけ……?」

 

 そのようなことは考えている場合ではない。大事なのは、生産したものが次の工程に進む機能を潰してしまえば、新たな妖魔の発生を止められるということ。

 爆弾を仕掛けたら、即座に退散……というところで、湿った足音が聞こえてくる。

 

「う、うわぁ〜! 見つかってる〜っ! 早く脱出しないと!」

 

 なりそこないが、ミチルの存在を嗅ぎつけて、稼働直後からすぐにそちらに向かうようになっていた。急いで出ようとするが、異様に階段を上る速度が速い。

 もう少しで脱出できるというタイミングで、その大群はミチルの脚に絡みついた。これでは先に進めないし、猛スピードでミチルを押し潰し、最後には喰らい尽くす可能性がある。

 

 だが、この異聞帯ではこのような時に覚悟を決めることができなければ、忍びではないのだ。()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()

 その使命は、全うしなければならないのだと。

 

「やっぱり、一人で行って正解だった。イズナと一緒に、いや誰と一緒でも、こんなことするわけにはいかないから!」

 

 工場は爆破された。爆風と、それによって飛び散った破片は、内部の設備を破壊し尽くしたが、外壁はあまりに強固であった。そのため、エネルギーは通路を通って逃げようとする。

 人が出入りするための、隠された出入口。ここは爆心地から近く、道も短いがゆえに、内側から完膚なきまでに吹き飛ばされた。

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