Kivotos with the Lostbelt 作:2匹目の蝉
気付けばツクヨとシュロもだいぶ奥の方までやって来た。元々いたユカリの本隊の付近からはかなり離れてしまった。だが、それが功を奏した。
かなり近くで、大爆発が起きた。妖魔を倒すための攻撃の音とはかなり性質が違うことに、すぐに気付く。
「この爆発は一体……? 行ったほうがいいですか!?」
“……うん、行ってあげてほしいな。私は、ちょっと心当たりがある”
急いで向かった先には、ミチルが倒れていた。かなりボロボロで、微動だにしない。動揺してツクヨは動けないでいたが、シュロは真っ先にやるべきことをやった。
「……死んではいないみたいですねぇ。なんだぁ、面白く……じゃなくて。助けたいなら、運んでやったらいいんじゃないですかぁ? 手前の知ったことではありませんけどねぇ」
「──はっ、はい! でしたら、一緒にお願いします!」
「嫌ですぅ! 手伝う道理なんか……」
“えーっとね、一応は扱いは捕虜なんだよね。だから少なくとも私は、ツクヨの側から離れることを許さないよ。同行だけでもお願いさせてもらうね”
先生がある程度譲歩した言い方をしたのに、結局しっかりとミチルの脚を持ってツクヨと一緒に運んでいた。それがシュロである。
かなりの身長差ゆえになかなか運びづらそうにしていたが、それはそれとして大急ぎで制圧済みの基地で構える救護班の元に向かう。救護班曰く、ミチルは戦闘不能の傷を負ってはいるが、命に別状はなく、自爆したにしてはかなり軽傷だったという。
襲いかかってきたなりそこないが、クッションの役割を果たしたのだろう。
妖魔の湧きがかなり抑えられ、やがてはいなくなっていった。この瞬間から、人との戦いになりそうであったが、もはや魑魅軍は壊滅状態だった。ほとんどの兵士は即座に、残りも申し訳程度の抵抗をした後に投降し、組織的抵抗は完全に停止した。
こうして、血の海を作りかけた魑魅軍攻略戦は、もはや他のものとの戦いになりながらも、勝利という結果になった。
間もなく、魑魅軍は解体が宣言された。起こるべくして起こった事故により、かなりの広範囲が荒廃してしまったようだ。どうせ元より死に体だった、とも言えるだろうが。
ともかく、これでついに異聞帯における勢力バランスが崩れたわけである。停滞していた歴史が、ここに来て確実に、何かに向かって動いている。その実感と共に、ニヤと先生による対談が行われた。
“まず、私達は謝らなきゃいけない。君達が期待させてしまったような、穏健さのある解決はできなかった。夥しい血が流れて、正直なところこっちの被害も並大抵じゃない。期待外れなことをして、本当にごめん”
「にゃ、にゃあ〜〜……これは、どう申し上げればいいのやら。いや、確かに、事実として悲惨な戦いを強いられたようですが、むしろあの状況になったからこそ、工場をボロボロにできたところもあるというか……なんとも言い難いです」
人員喪失はかなり深刻だ。死傷による戦闘不能は、百花繚乱を中心とした連合軍側だけでも、戦闘員の1割ほどに及んだ惨状であった。
この結果が悔しくないはずもない。だがどうしようもなく、不甲斐なさを詫びるしかない。いや、謝るのも筋違いだろうか。結局は、勝手にやったことでもあるのだから。
「この成果を表現するのは、一言だけでしょう。はい、一言で言い表せないのではなく、
“……そうだね。近いうちに、直接戦いを挑まれることになると思う。その時のためにやるべきことも、考えておかないと”
完全に失望させてしまうような結果にはならなかった、それだけでもひと安心だった。気持ちを切り替えて、作戦を練らなければならない。今度もまた、ミチル達には少し無理をさせることになりそうだ。
ある程度の話し合いがまとまり、準備をしようと思っていた翌日のこと。状況は想定よりもずっと早く動いた。
早朝から、キキョウから可能な限り早く来るようにという呼び出しが、先生の元に来た。早起きは慣れたものだが、それでもあまりの突然のことに軽食を済ませる余裕もなかった。
“キキョウ、待った!?”
「十分早い。っていうか、思ったより早いくらい。どうせ何よりも優先させてここに来たんでしょ、あんたらしい」
“だって、可能な限り早くって”
気持ち的には、別に何か食べてくるとか、そういうことをしてからでも良かったのだが、こういうのは言葉通りに受け取ってくるのがこの人である。仕方ないので、本題に入った。
「まあ、一刻を争う事態ではある。何せ恐るべき相手から恐るべきメッセージが届いてしまったんだから。かなりしっかりとした文書データで」
恐るべき相手──それはつまり、エビス軍であった。北の地にて、何かを隠しているであろう者達から送られてきた文書には、このようなことが書いてあった。
魑魅は滅びた。陰陽は、その名を掲げながらも均衡を崩し、自らの理想へと邁進しようとしている。それに力を添えたのが貴殿らであることを、我々は熟知している。
貴殿らは、貴殿らを導いた者は、異物であることも、知っている。あるいは、我々が異物であるのか。何れにせよ、あり得ざる力で、遂には崩れ去った。
このこと自体は、喜ばしいことである。我々の行程は進んだ。我々の道程は延びた。故に、我々の偉業は次の段階へと進む。
そこに貴殿らは、不要である。陰陽も、その他の全ても、不要である。エビスのみとなり、更にその先を我々は目指す。この百鬼の状況維持の敵、前提維持の敵、この世を流し去らんとする大敵を討ち、抵抗の意思を壊し、我らの偉業を為すため、殺し尽くす。
これは宣戦布告である。これよりエビス軍は、百鬼の地に統合をもたらすための蹂躙を開始する。
先に逝け。そして、最後には共に見届けよう。全てがひとつになる、その時を。
2026年最初の更新ですので、挨拶くらいは書くべきと思い、書いております。
新年あけましておめでとうございます。新年早々風邪をひいて初更新が遅くなりました。
2025年末のFGO2部終章によって異聞帯の概念への解像度が上がると同時に、拙作の異聞帯解釈はどれくらい寄せようかというところに悩む日々です。キヴォトスの場合は白紙化していないという大きな違いもありますので。
ズラしている部分も含めて、本作を楽しんでいただけたらなと思います。