Kivotos with the Lostbelt   作:2匹目の蝉

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2-27: 唐突な、終わらせるための戦い

 宣戦布告メッセージに、色々言いたいことはあるが、とりあえず。

 

“早すぎるなぁ……それにもはや隠す気もないぞ。私達が異物であることをハッキリ認識してる。相応の知識は持っているという確証が、より強くなってるって感じ”

 

 隠す気というより、必要性を感じていないのだろう。どうせすぐにでも始末するのだから。やけに考えが機械的だが、それがまた気味の悪いところで、脅威的なところだ。

 さて、キキョウはどうやらもう少し違う所が気になったようである。

 

「この世を流し去らんとするって……ちょっと大袈裟な言い方じゃない? 私達はそんなことをするつもりじゃないんだけど」

“そういえば……言えてなかった。この機会を逃したらたぶん次はないし、ハッキリさせておこうか。私達は最終的には、異聞帯を住民ごと消し去ることになる”

「……は?」

 

 一瞬、わけがわからなかった。だがよく考えたらその通りだ。現実にIFが乗ってきた、それを追い払った、追い払われたものはどうなる? 

 確かに、それをしなければ、自分達の方が排斥される側になる。それは前に伝えられている。だからといって、仕方ないからといって。

 

「先生が、誰よりもそんなことを許さないはずの先生が、そんなことをやらされてるの……?」

“なんとか、割り切ろうとはしているけどね──”

「そんなわけ! あんたは、自分のために他の誰かを踏みつけにするのは良くないって、いつもの笑顔で言ってくれる人でしょ! 割り切ろうとするだけでも、苦しいって思うようなお人好しで!」

“参ったな、そんな風に言われるとなぁ……”

 

 キキョウが顔を真っ赤にして、目に涙を浮かべながら叫んだ言葉は、確かに当たっている。「先生」と、「立場を抜きにした個人」のうち、後者はある程度は納得しているのかもしれない。だが、前者の方がどうしても、苦しいと叫んでいる。

 この戦いが終わった頃に、自分は皆が信じてくれた「先生」のままでいられるだろうか、そんな疑念も彼の中に浮かぶ。

 

「……ごめん、興奮しすぎた」

“いいよ、それだけ私のことを真剣に心配してくれてるんだよね”

「心配だし、ここをやってもまだ5箇所あるんでしょ? いくらあんたでも、そう思わなきゃもたないって」

 

 その心配を蔑ろにするわけにもいくまい。どこまで先生というものが考えるのを許されるのか、考えるべきなのだろう。

 さて、キキョウとはこれらの情報を共有したが、他の面々、特にミチルとツクヨにどう伝えるべきかというのが悩ましいところだった。レンゲとユカリには、キキョウの方から伝えるとのことだ。

 

 宿舎の一室に、問題のふたりを呼び出した。ひとつ深呼吸をして、この戦いの残酷な行く末を伝える。

 

「話って? ちょっと任務は痛みがひくまで待ってほしいんだけど」

「わ、私は、いつでも……」

“そういうのじゃない。いや、これからのそういうのの話なんだけど、ね。当然負けたら終わりなんだけど、勝ったとしてもそれで終わりなんだ。汎キヴォトス史のため、この異聞帯は切り捨てられる”

 

 覚悟を決めて告げたが、それでもなお歯を食いしばって耐えるような顔を見せることになってしまう。だが一方で、聞いた両者はごく普通のことを聞いたような様子。ごく普通の会話でする、暗さの欠片もない表情を見せつけてきた。

 

「もしかすると、とは思っていました。元あるべき歴史に戻すっていうのは、そういうことなんじゃないかって……でも、だから! 納得して、この前だって頑張ったんですよ」

「そもそも、忍軍の戦い方っていうのはいつもこうだったんだから〜。最後には用済みとして扱われるとしても、全力を尽くす。ね?」

“用済みって……”

「頑張っても、()()()()()()()()()()のが雇われの忍びの定め! だから、役に立ちたい相手のためになるように命を使えるなら、なんだっていいんだよ」

 

 先生はうずくまり、すすり泣いた。自分のために覚悟を決めてくれるのが嬉しいのではない。悔しいのだ。

 子供が、こんなことを思わなければいけないのか。じゃあ自分のために生贄になってくれ、と頼まねばならないのか。納得がいかない。だが力は借りたい。

 自分勝手で、残酷だ。だが、時にはそうあらねばならない。

 

“……ミチルとホシノのケガが良くなったら、今までで一番危ないことを頼もうと思うんだ。頼みを聞いて、ここからも一緒に戦ってくれるかな?”

「承知っ!」

「いつまでも、どこまでもやらせていただきます!」

 

 真剣に自分達のことを思っている先生に、ふたりは一礼をして部屋を出た。本来なら、こんな振る舞いをするような相手はいなかったはずだ。だが今は、心の底から頭が下がる思いだった。

 

 この様子を、コッソリと見ていたのがレンゲとユカリだった。キキョウから聞かされたことがどうしても気になり、様子を見に来たのだ。

 あの人はきっと、苦しいはずだからと。

 

「先生はさ、自分勝手なことを考えてるって思ってるんだよな。あたし達に甘いくせに自分に厳しすぎだって、全く」

「何も先生のせいではありませんのに。それにしてもどのような方が、このようなことを計画したんですの? 身共は許せそうにありません!」

 

 実のところ、先生は色々と気にしすぎている。もちろん、何もかも受け入れるのがいいわけではない。ただ、生徒のためにと責任者たらんとしてきたのが、この事件との相性の悪さを見せているのだ。

 だがそれでも、異聞帯の中に何があるかということから目を逸らすということもできなかったのだ。リンにも言ったように、()()()()()()()()()()()()()と考えたくはないのだ。

 

「この世界でも、身共の居場所が出来てきたのに、壊さなきゃいけないのは、それはもう嫌です。けれど、やらないと本当にいたい場所に戻れないのですから、戦います」

「居場所……か。そうだ、やっぱりあの百花繚乱が心のあるべき場所なんだ。やるぞ──世界を滅ぼす戦いっていうやつを」

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