Kivotos with the Lostbelt   作:2匹目の蝉

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2-30:方舟と偽り者の船団

 エビスから送られてきたのは相変わらず意味深なメッセージであるが、要は言いたいことはひとつ。これから、各地で虐殺をするということである。

 キヴォトスの住民は、自分がいる建物が爆破されたくらいでは本来死ぬものではないが、しかしここは異聞帯。まして、まだ文面でしか関わったことがないにもかかわらず、一般的な異聞帯住民とは格の違う殺意に溢れているのが明らかときた。それが個のものではなく、集のものとして振るわれるとなれば──想像もしたくない、おぞましい力となるだろう。

 

「放置していたら多くの街が壊滅するし、こっちに大挙して押し寄せてくる可能性も高い……技術班目線では多少不安だけど、すぐに出るべきだ。エアトンさん、同意していただけるかな?」

「なに、兵装については我々が全力を尽くして間に合わせました。機械の具合については責任を持ちますとも」

「なるほど、あなたも大人というわけか……承知したよ」

 

 技術班リーダーのふたりは、方舟の直接出撃について「可能」という判断を下した。それが伝わるとすぐに、方舟に乗れる者はオペレーションや艦上防衛のための準備を行い、百花繚乱軍も招集と編成を急ぎ行った。

 相手は大型の空中飛行艦。したがって、高火力の武器を積める車両を可能な限り用意する。やはり潤沢とは言い難いリソースだが、可能な限りやるしかない。

 

“あの映像自体は、イメージ映像だね。飛び立っているという報告の直後に来た映像だし、実際にどこからも報告は入っていない”

「どの方角に行っているように見えるか、忍軍チームは把握してる?」

“かなりバラつきがあるらしい。手が届く限りを尽くすよ”

 

 キヴォトスに数多くある不可思議な力を持つオーパーツを集めに集めて強化したこの方舟であったとしても、ひとつしかない以上限界はある。同じものは他にどこにもなく、よって同じことは自分達以外にできない。

 全てを守ることはできないが、方舟が敗れたら全てが終わる。そのつもりでやりたい戦いだ。

 

“舟の準備はできているみたいだ。百花繚乱軍の方の準備は?”

「ユカリはあと5分でどうにかするって。レンゲはもすぐにでもって言ってた。シミュレーションを少し回してから発進でいいと思う」

 

 キキョウの提案のもと、防壁機能や新兵装の挙動、故障時の対応をモニターの向こう側の仮想世界で確認をしたら、その予測の通り用意が整ったようだ。

 

 “それでは、予告された各地での民間人を巻き込んだ攻撃をなるべく阻止、最悪でも敵機殲滅。それからは待ってはいられない、エビスに攻勢を仕掛けて陰陽軍を助けてから、決戦に入る! 出撃! ”

 

 飛び立ってから間もなく、飛んでいる船団の影が見えた。ミチル達の報告通りに、分散しながらも的確に目的地を見据えている。

 一番近くを飛行しているのは、2機が並んでいるもの。そこまで大きくない集落を目指している。気付かれる前に撃墜して、消耗を防ぎたい──ところであったが。

 

「防壁、緊急展開! やっぱり気付かれてる、そううまくはいかないものね……」

 

 ユウカの反応で、先制攻撃からとりあえずは守られた。方舟の特殊防壁は展開直後は極めて強力であり、突然の全力の殺意も逸らした。

 方舟のコピーであるのなら、探知能力も同等以上ということなのか。ともかく、見つけ次第攻撃くらいがいい、ということを学んだ。

 

“ならこっちも同じ手を使うだけ! 神秘性レーザービーム、発射だ!”

 

 チャージは極めて迅速。キヴォトスの神秘の力を利用したレーザーは、威力のタイムパフォーマンスが極めて高い。コストパフォーマンスは最悪なくらいだが、一瞬の速攻にはかなり適する。

 そして敵艦は、どうも防御についてはかなり疎かであるらしい。高火力兵器を撃ち込んだとはいえ、一撃だ。

 

「なるほど。あちら側がモノを全くもって大切にしない思想だということは分かった。アイデアを盗むだけ盗んで、使い捨て扱いってところだね。あまり褒められた思想じゃない」

 

 皮肉っぽく言っているが、ウタハは静かに、しかしとてつもなく怒っている。孤立したD.U.でできる限りを尽くして短期間ではあるが必死に造った方舟に、これまた短期間になったが素晴らしいアイデアを受けて改造を施したのだ。そのアイデアの元が、まさかこんな無駄遣い&使い捨て思考だとは思わなかった。

 正直、設計図を見た時には、()()()()()()()()()()()()()()()()()と、あくまで技術者目線でだが、感じていた。だがこれでハッキリした。このエビス軍という者達、何か根本的に一般的な価値観と相容れないものを持っている。

 

「先生。一刻も早くこの偽り者の船団を撃退しよう。そして明かすんだ、こんなものを生み出して平気でいられるのは一体どういう理屈があってのことなのか!」

 “い、いつになく本気だね。ともかくここのコピーは撃墜した、次の目的地を設定して針路をとろう、急いでユウカ!”

「は、はい!」

 

 移動の最中、先生は異聞帯の万魔殿のことを思い出していた。彼女らは確かに敵対したが、その理由は生存のために仕方のないことというものに近く、かつそのあり方は同情や理解をする余地があるものであった。

 一方でこちらは、今のところそれらしいものを一切見せてこない。ここまで接近され、またこちらからも接近しているにも関わらず、未だに()()()得体が知れない。

 何より、人間味があまりに薄い。これが何を意味しているのか? 

 

 次に辿り着いたのは、軍事基地を擁する中規模な都市の付近。基地への空爆の初動に既に至っていたようだ。

 視認できるだけで10機はある。当然ながら先制攻撃でいくつかは落とすが、それでもかなり残る。ただ、ここからはおそらくはこれが標準になるだろう。

 

 “ここからが本番……気合を入れていくよ! ”

「地上のあんた達はようやく出番だよ。気は抜いてないよね!」

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