Kivotos with the Lostbelt   作:2匹目の蝉

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2-31:人のいない街

 一般に、銃とは遠距離武器である。射撃武器である。したがって、攻撃が命中した瞬間に、フィードバックされる感覚は存在しない。それでも、手応えのあるなしは習熟していれば分かるし、そのような水準の訓練をキヴォトスの住人は基本的に受けている。

 だが、音声、視覚の情報を正確に受け取り、まるで肌感覚かのように感じることができるほどの者が存在する。それは才能として有していることもあるが、小鳥遊ホシノは技術としてそれを得た。

 

「うん、この感じ。やっぱりほとんど妖魔だと思う」

 

 敵軍に発見されて反撃として撃ったホシノは、襲いかかってきた兵に1発ずつ当てた感覚から、そう推測した。連射とリロードの高速さに味方も見惚れるが、ボーッとしてはいられない。

 

「あの、今相対している敵兵だと、どれくらいが……?」

「見える範囲はみんな妖魔だよー。つまり遠慮とかしなくていいから、吹き飛ばしちゃおう!」

 

「あれ? バレてる?」「ありゃ、ちょっと強いかも?」「でもこれだけいたら勝てるでしょ」

「イヤ、ソモソモ人ノ言葉ワザワザ使ウ必要アル?」「ナイヤー!」

「tIhp/;!」「40k:kay‘ j-G9!」「7R4-y8!」

 

 人のフリを完全にできるようになった、完成された人型妖魔といった存在らしい。いつかの任務で会ったものとは一線を画す性能だが、バレたらその正体をアッサリと現した。どうやら、戦闘性能自体は妖魔としての方が発揮できるらしく、偽装能力を強化していったようだ。

 新式の妖魔がここにいる辺り、妖魔の大元により近そうだ。

 

「いや〜参っちゃうな〜……ほんとに」

「ですね、こんなにたくさんの、それも言葉を話せるような妖魔が」

「いいや? 数がふた桁くらいの集団で、私のことをどうにかできると思われちゃってるっていうのが本当に参っちゃうんだよ」

 

 なんだったら、自分より装備が優れた集団との戦いは、かつては日常ですらあった。ホシノは知っている。少なくとも純粋な技量という面では、どうあがいても他でもない、自分が最強であるのだと。

 圧倒的な数の暴力をさらなる個の暴力で蹴散らしながら進むホシノの後ろに守られながら、忍者3人は相談していた。

 

「おお、ホシノ殿って、本当はこんなに強かったんですね!」

「感心してる場合じゃないよ〜。なんか建物に入ってこれたんだから、調べないと!」

「そう、ですね。警備はもう、あちらで打払ってしまっているという感じですし……」

「念のため、あまり離れないようにはしましょう」

 

 そこら中のコンピューターや書類を探れないかと探していくが、そもそも収納らしきものが無さすぎる。本当にこの施設は利用されているのだろうか? 

 そしてものの数分で文字通り塵と化しているが、かなり大規模な警備をしているからには何かがありそうだが、それはこの印象と合わないのではないか? 疑問は尽きない。

 そんな中で、いつの間にやら習得していたコンピュータースキル(ユウカ仕込みだろうか?)でイズナがかなり重要そうな文書データを抜き出すことに成功してしまった。

 

「……あの。すみません、これって書いてあること、信じられるものでしょうか?」

「なになに──人口強制、減少策、って……?」

 

 そのような計画が、進行していたというのだ。いや、進行していたではなく、している。この計画は現在進行形で、段階が進んでいるのだ。

 宣戦布告にもあった。偉業は、次の段階へ進むと。その偉業というものこそが、おそらくはエビス、ひいてはこの地の人口を極限まで減らして()()()()()()()()()()

 

「つまり……百鬼の人達を、みんな殺し尽くそうってことなんでしょうか? なんの目的で?」

「目的なんていいよ。大事なのは、そんなのは絶対に許しちゃいけないってこと! 百花繚乱軍の人達と過ごしてて思ったんだよね……人殺しは、いけないって。何も悪くない、普通の人を、顔も見ないでするならなおさら」

 

 いつになく頼もしい目でツクヨの方を見るミチル。これくらいの顔をこっち側の部長も見せてくれたらなぁ、などと考えながらもイズナは深く頷いた。

 何が何でも勝たねばならないという決意を固めながら、ホシノに追いつこうと走る。

 ホシノは上階に到着し、ほとんどを殲滅しきっていた。弾薬も自身の持つ型に合うものが保管されているのを見付けていたようで、消耗が少なく、抜かりがない。

 

「こっちはだいたい終わったよー。それで、何か見つかった?」

「見つかった見つかった、これは物凄いやつだよ! ほら見て!」

 

 件の文書をホシノにも見せると、普段の穏やかでどこか怪しい目つきから豹変する。怒りとも、悲しみとも、決意ともとれるその目は、あの日までに見せたら、きっと独りで突っ走る合図だったもの。

 だが、今はそう感じた時こそ、周りと協力するよう心がける。そうすべきだと、教わった。

 

「これ、書いた人は本気でそれが正しいと思ってたの?」

「なの、かな? 信じたくはないけど……」

「狂ってる。誰にだって大切な人はいる。死んでほしくない人がいる。書いてある通りなら、最後の一人になるまで続ける気みたいだけど、それって最後は自分でやんなきゃいけないんだよ? どんなに強く思い込んだって、耐えられるわけない!」

 

 自分はひとり失ってから歯車が狂った。4人失って、うちひとりは自分で手を下して、孤独になって壊れた存在も知っている。その存在は全てを殺し尽くして、またさらに壊れた。

 そういうものなのだ。そうするべきだと思いこんでも、それは辛いことなのだ。エビスは人間味を可能な限り排除しているようだが、それは完全なものになるとはとても思えない。

 

「……うん。ごめん、ちょっと興奮しすぎたね。それじゃこんな警備をギチギチに置いてまで守りたい物、探そっか」

 

 落ち着いたように振る舞いつつ、歩調はどうも落ち着かない様子で、奥へ奥へと進んでいく。最奥にあったのは、やはりコンピューター。

 やはりまたデータの抜き出しを試す。なかなか難しそうだったが、どうにか写しを得ることに成功し──その中身にあった怪文書に、隠しがたい驚きを見せることになった。

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