Kivotos with the Lostbelt   作:2匹目の蝉

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2-32:反撃開始

 空が明るくなって、時間が経ち、日が登りきって、また沈みに行く頃。経過した時間に対して、体感時間は異様に長かったが、それでも各地での爆撃艦隊の阻止は一区切りとなった。残念ながら、これで滅びてしまった街や各勢力の拠点は多かったが、半分ほどはなんとか大惨事になるまでには止められた。あとは百花繚乱軍の元に向かってくるのであれば、それを防ぐことが必要だ。

 

“そろそろ攻めに転じるためのルートがどれだけ固まったか、見ておく?”

 

 シッテムの箱を方舟の台座に置くと、方舟のシステム内の様々な情報に簡単にアクセスできるようになる。ここでは、ミチル達から定期的に送られていた突入ルートについてのデータを呼び出し、モニターに出していった。

 

「へぇ。思ったより進みが速いじゃない。それに、『調査のため制圧』ってところが何個も……その辺りの仕事をしてくれてるのも、多少ありがたいかな」

 

 キキョウの想定の倍ほどは進んでいたので、思わずニッコリ。凄まじい殲滅能力で突き進んでいるのは、予想していた展開ではなかったか。

 ともかく、それについて行くように進軍していけば戦線を展開していける。雪山の谷間を囲い込み、陰陽軍を助け出し、一気に攻勢に出る準備を整えるのだ。

 

「敵艦隊、それにこれは……地上部隊も、北から来ます!」

“よし、迎え撃つ! 念のためアロナ、人間と妖魔の識別を!”

『は、はい!』

 

 列を成して艦隊がやって来る。これはもはや、慣れてきたというか、脅威度はかなり下がっているというところか。問題は地上部隊であり、その実力は未知数。

 衝突を目前に控えた時、アロナは驚愕しながらモニターに数値を出した。

 

『90%以上、なんだったらほぼ全部の敵兵が妖魔です! いつかのような、人型の妖魔です!』

“本気で言ってるのかな、それは? いや、人型妖魔は予想していたけど、9割は正気じゃないよ、うん”

 

 先生らしからぬ乱暴な言い方になってしまったが、実際正気ではない。その実態はもっと正気ではないわけだが。

 とはいえ、それはむしろ好都合。人の道に反する可能性すらある兵器を破壊するのであれば、そこに良心の呵責が入り込む余地はない。異聞帯全体に漂う攻撃的な空気に当てられたことも、このときばかりは追い風になる。

 

「これは、身共の考えに過ぎぬものですが……そうであるのならば、残してはおけませんわ。長きに渡るこの地の苦しみ、雨露霜雪の苦難を生み出すもの、汚点。少しでも市街に入れれば、いつ悲劇が起きるか分かりませんもの」

「魑魅は妖魔に関する技術提供をエビスからしてもらってたはずだ。ならきっと大元はエビスにある。絶対にそこを落とすぞ、ここはその前哨戦だ!」

「あんた達のその姿、先輩達の前で見せたいよ。総力で、一気に片を付けて!」

 

 

 結果は、もはや想像するまでもない。過程もまた、語るまでもない。機械的に破壊するための手段を考えて動いている兵器の群れに過ぎないものに、死力を尽くして自分達の街を守る、許されざる兵器を駆逐する、そのために団結する者達を打ち破れる道理なし。

 あえてその過程に触れるとするなら、ユカリが先頭に立ち獅子奮迅の活躍を見せると、それに感化された者達の士気が高まり、それからは一瞬だった。空中の艦隊は、方舟がほぼ落としてしまった。

 

「ふう、意外とあっさり追い払えたね。いや、移動に移動を重ねてこれだから、皆疲れてはいると思うけど……」

“噛み合っただけだよ、キキョウ。それにあれは本命の部隊じゃない。まあ、その本命は今から挟み撃ちにするんだけれど”

 

 むしろ、ついでで派遣したレベルがこれだとするなら、難攻不落だったのも頷けるくらいだ。バランサーとして、主に魑魅の勢力を今まで調整していたのだろうが、本命+魑魅となれば、確かにかなり苦しい思いをさせてきそうなもの。

 ただし、今回はそうはいかせまい。まずは百花繚乱の手で、エビス領域の占拠を進めるため、出発だ。

 

 忍び達の調査は大したものである。領域に入るだけなら驚くほど簡単なルートがあり、しかも一定の段階まで制圧が進んでいるので、拠点を得ることもできた。

 ここで、ミチルチームと通信を行う。侵入前に連絡をとったのを傍受などされて先手を打たれる可能性を考慮し、最低限の情報交換にここまで留めていた。実のところ、ルート情報を送ってもらうのも危ないと思っていたのだが、こればかりは必要だった。

 

“聞こえる? 今、私達もエビスの領域に突入したんだ。山の向こう側の街……街かな、これ? 拠点にできそうなところまで来たから、そろそろ良いかと思ったんだけど”

『こちらミチル、聞こえてるよ〜。また早いね、でもそれなりに見せたいものはできたかな。とりあえず、まずこれ』

 

 方舟のコンピューターに、「人口強制減少策」の文書が送られてくる。その内容は、一同の想像を絶するものであったが、同時に納得のいくものであった。

 

「文字通り、人の心がないね。だが今までのことに説明は確かにつく。問題は、最終目的が何であるかだ」

 

 ウタハは、エビスからの意味深なメッセージとも合うということに気づいてきていた。

 

「もしかすると、雨露霜雪の戦いというもの自体も、この計画の一環だった可能性があるわね……」

 

 ユウカの中には、その計画がどのように行われてきたのか、具体的なビジョンが浮かび始めていた。

 

「ひとつになるって……そういう意味? 色々、ありえない……」

 

 キキョウはただただ、これが恐らくは自分達の属する組織の創始者と同一の存在の意思が絡んでいるだろうことに失望していた。

 

“人々の苦しみが誰かに仕組まれていたなんてことほど、おぞましいことはないよ”

 

 そして先生は、静かに怒りを滲ませていた。

 

『あ〜、えっと。怒りたくなる気持ちはわかるけど、もうひとつあって。これなんだけど、見れる?』

 

 ミチルが送ってきたのは、先程のものより短いが、極めて難解な怪文書。そのデータに付けられたファイル名は、「神凪の殻」というものだった。




緊急でこの欄を書いております。
というのも、デカグラマトン編のストーリー更新によりブルアカの世界観に関する描写がかなり進んだのですが、それにより本作に影響が出そうになっています。
自分の解釈とのズレは少なかったのですが、それどころかむしろ合致する部分がどうも多そうで、オリジナル解釈だと思っていた所すらも見方によっては一致しているところがあり、いざズレが発生したらという思いがより強まって戦々恐々としている次第です。
そして細かい展開の変更を一部強いられることになってしまいました。とはいえ、これまでの内容を変えることは今のところありませんので、ご安心を。
以上、報告でした。
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