Kivotos with the Lostbelt   作:2匹目の蝉

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2-36:山道を切り開け

「はいはーい。ここからはおじさんが先導するよ。実はね、いいルート作っておいたんだよ〜!」

 

 また何気にホシノは普通じゃないことを言っている。ルートを作っておいたとは、道がある程度できるくらいには殲滅しておいたという意味である。一体どれだけ暴れながら戦場に向かったのか。

 ともかく、包囲戦がある程度落ち着いてきたところで雪山の方面に向かう。ルートを作っておいたとは言っても、防衛軍の再配備もしてきている。

 

“その上で、山道に行くためのルートは開いていない、と……思ったより壁は多いなぁ”

「あー、ちょっといいかな先生。黄昏の寺院なるものの情報と合わせて、マップを作成しておいたよ。これに従って進むのが基本になりそうだ」

 

 ウタハとユウカは超速攻でマップを作成していた。それによると、車両の通りやすい地形を中心のルートは十分に組めるようで、ある程度のところまで進めるようだ。ただし、それはある程度のところまで。

 情報を総合的に判断すると、雪山にはとてつもなく分厚い防衛線が張られていることが分かっている。回り込めるとは思えない要塞、城壁。キキョウもこれには頭を悩ませる。

 

「後ろから援軍が来ることが前提にない防衛戦、となると戦力差の話はむしろ私達に有利に働くけど、それでもいくらなんでも……」

“陰陽軍の皆にも繋ごう。一番の協力者でもあるし、この作戦において一番重要な存在でもある”

 

『で、あれば。お任せください。問題はどこにあるのか、しっかりと見つめ直す必要がありますから、まずはそこから』

 

 カホはそう言うと、モニターに画像を送ってきた。先程のマップに書き加えを行ったものだ。

 

“これは……一点突破?”

『はい。そもそもこういうものは一箇所を破ってしまえばいいものですが、その上で突破後にも機能を完全停止させたいものです。ですが今回は違います。極端な話、我々が食い止めて、皆さんを送るだけのこと』

『まぁ〜要するに? 必要なだけ山登りに行ければそれでもあなた方の目的は達成することが可能なのですよ!』

 

 なるほど、そういう目標意識でいけば確かにやりたいことは達成できる。それをやること自体は問題ない。

 それはそれとして。

 

“それって要は、ここは任せて先に行けってやつじゃないか! そういうことをされると私は心配だよ!”

「い、いやでも、それが最良の選択じゃない? いちいち全部相手にするのも──」

“今更かもしれないけど! 私は生徒に捨て身じみたことをされることはあまりいい気分がしなくてさ?”

 

 本当に今更だ。ゲヘナ異聞帯の時点で、既にそういう類の作戦を行うことを提案されて、渋々受け入れ、責任まで負ってみせている。それを鑑みると、今回の陰陽軍の案もまず受け入れ、前提とすらしそうですらある。

 ただ、その上で、相応に心を決めなければできようもないことをすると、しっかり伝えなければ。

 

『生徒……ですか』

“本来だったら、君達も。軍を結成して兵士として生きるんじゃなくて、生徒として、青春を謳歌しているはずなんだ。だから、私の心は君達にもそういう思いをしなくてもいい方法を望んでる”

 

 これで何か変わっても、変わらなくてもいい。そういう風に思われているということは、理解した上で行動してほしい。

 その思いは、伝わっただろうか。

 

『なるほど。お気遣いありがとうございます。その上で、ですが……ニヤ様?』

『どうせ未来のない戦いです。いや、こういう種類の覚悟も、あまり望んではおられないのでしょうがね。だとしても、だからこそ、()()()()()()()()()()()()()()()なのですよ』

 

“……わかった”

 

 ならもう、遠慮はしない。その前提で作戦をやらせてもらう。

 ホシノとミチルによる先導に従うこと、半日ほどで目標が見えてきた。どこもかしこも物理的に厚い壁、その上にも前にも、おそらくは裏にも大軍がいる。突破口になる場所はない。これは無理矢理にでも作らなければならないということを意味する。

 

 そこで、方舟から砲撃を行い空間を作ることにする。妖魔の思考形態からして、そのようなことをしても即座に穴埋めに入り始めるので、こちらもすぐさま突入、食い止め続けながら前方向だけはなんとしても進める。

 再装填でき次第、砲撃で壁そのものを壊しにいったり、あるいは地上の部隊も爆破するなどして要塞を破壊しながら前進する。可能な限り短期決戦にできると望ましい。

 

“ウタハ、ちょっといいかな”

「言わなくても分かるさ。行くんだよね、先生?」

“そういうことだよ。おそらくこれから、この異聞帯を支配する王の元へ直接向かうことになる。その対処と、空想のサンクトゥムタワーとの対面には私が必要なんだ。 キキョウも出ることを希望してるから、方舟は任せたい”

「分かった。ただ、シッテムの箱というものは非常に強力らしいけど、それでも先生の体は脆いんだ。どうか、気を付けて」

 

 キキョウと共に、砲撃の音が鳴り響くと共に外に出る。外の匂いに初めて触れたわけだが、なんとも嫌な匂いだ。自然物らしい匂いが何一つない。金属加工工場のような肺にも胃にも悪そうな悪臭が漂っている。皆をこんなところで戦わせていたのか、などと考えながら、そばに来ていたひときわ大きな車に乗り込む。

 

「……ふぅー……」

 

 息を整えながら、キキョウは無線通信のマイクを手に取る。彼女はそこまで大きな声を出すことが多いタイプではないため、物凄くこのタイミングで聞こえてきた声には驚いた──というのは、後にレンゲが語ったことである。

 

「百花繚乱軍、陰陽軍の一同に告げる! 私の名は桐生キキョウ、本来この百花繚乱の号を背負うべき人の『代理』として、この軍を立ち上げ、ここまで来た。そしてこの先に、百花繚乱軍を立ち上げた最大の理由がある! エビス軍に囲われ、山の奥に潜むという全ての元凶。それを止めることこそが、私達に課せられた責務だった。最後の道を作るために……お願い。力を貸して!」

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