Kivotos with the Lostbelt   作:2匹目の蝉

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第三章:遊泳大陸船団 トリトン -海神の沈む時-
3-0:Parallel Universe Shifter


 少し長い異空間の航海を終えて、またD.U.に戻ってくることができた、その直後。連邦生徒会に通信を繋ぐよりも先に、ウタハがすぐに話を始めた。

 

「さて、ここから技術班総出で方舟の改造をするぞーっ! とりあえず作業に関わる人以外はすぐにここを出て欲しいな!」

“えっ、ちょっ……じゃあ他の生徒達は”

「シャーレの建物を使えばいいんじゃないかな。それじゃあ、なるべく早めに!」

 

 どうやら、やりたくて仕方なかったと思われる。急激に遠慮というものを無くしたウタハは先生と生徒達をつまみ出してしまった。

 不満を口にするレイサ。なだめるイズナ。ため息をつくカンナ。なんとなくそんな気はしていたユウカ。とりあえず寝たいホシノ。設備くらいは借りて出たかったと嘆くセナ。そんな生徒達を連れてシャーレのオフィスに来たが、そのタイミングでモモトークに入った伝言に気付く先生。

 

『リン先輩がずっと何か気にしてるみたいだったから、話を聞いてあげたら?』

 

 そんなメッセージを送ってきていたのはモモカだった。というわけで早速留守にしなければならなくなった。とりあえずはシャーレのカフェにいてもらうことに。

 

 先生からすると、行くのも慣れていそうで意外と慣れてもいない、連邦生徒会の会議室。そこでリンは待っていた。

 

“モモカから伝言されたんだけど、何か気になることがあったの?”

「はい、どうしても。先生にも、一緒に考えていただきたいと思うのですが……どうして、コスモの方舟はうまく稼働しているのでしょうか?」

 

 それは、言い始めてしまってはおしまいというものなのかもしれない。だが、世界を隔てる「壁」を越えることができるくらいだ。不明点は不安に繋がる。

 

“ウタハは、ヒマリからアイデアを借りたとか言ってるけどね。そうなると並大抵のことでは理解は──”

「……ナラム・シンの玉座。私達が触れた別時間軸の存在がこちら側に来られたのは、あれが前提となっていたように思います」

 

 次元、時間、実在性、存在が基本概念レベルで混沌とした領域。その存在が、道筋を繋げた。

 だが、今それはどこにある? 方舟が使っているゲートという移動手段の本質とは? それ以上に、もっと本質的な部分に疑念が生じている。

 

「そして、得られた情報については……私にも、専門知識は無いので断言すべきではないのですが、あれは別時間軸からの移動である、ということに注意が必要と考えます。広義で解釈したとして、平行世界にはなっても、異世界とはならない」

“けれど、ここまで見てきた異聞帯は、どちらかと言えばそのふたつでは「異世界」に近いね。つまり、私達が持っていた理論を総動員してもこのような結果は得られない、ってこと?”

「私個人の解釈に基づく、憶測ですが」

 

 そしてそのようなメソッドしか持ち合わせていなくても、実際にできてしまっている。これは、あまりに都合が良すぎる。この仮定、この説に基づくと、ある可能性が浮上してきた。

 

“玉座にあたるものは、検出できていなかった。けれど、もし……検出できないくらい、紛れてしまっていたら? 検出するまでも、なくなっていたら……?”

「この事件そのものが、私達の存在を織り込み済みで起こされた可能性も、想定しておくべきでしょうか」

 

 謎は増えたが、そのぶん方向性はある程度見えてきた。ともかく、次の目的地について考えることにした。

 百鬼夜行異聞帯の解消に伴い、前回のように新たにゲートが観測される可能性もあるために調べたが、結果は空振り。次の行き先は、海上異聞帯しかないようだった。

 

「ここを解決すると、一気にキヴォトスの大部分とのアクセスが得られます。社会的不安は和らぐものと思われます」

“規模が大きいなぁ。それにここに対応する学園は、オデュッセイア。実は今までそこまで縁がないんだよね”

「ああ、そういえば確かに。直接関わる機会は、ほとんどありませんでしたね。情報については、度々耳にしていたとは思いますが」

 

 とは言っても、情報は少ない。キヴォトスに来てからあまり経っていない頃にミレニアムの問題児代表ことコユキが起こした騒動の際に訪れたくらいだ。あとは、晄輪大祭の機嫌として知られていることであるとか、そのくらいか。

 生徒の名前も努めて知り尽くそうとしている先生であっても、やはりオデュッセイアに関しては把握できていない。

 

“まあ、よく知っている世界の情報は役に立ったり立たなかったりだけどね。でも名簿は欲しいかな”

「異聞帯の生徒が、こちら側と対応がとれる形で存在しているのですよね? 苗字は異なるものの、名前は同じ、見た目も近く、おそらくは空想のサンクトゥムタワーが既存の生徒に上書きする情報を与えて現実に定着させているという──」

“まあ、そういうこと、なんだけど。まあそこも分かんないんだよね、だってクズノハだって、記録には無いけどこっち側にもいたんだし”

 

 要するに、これは保険だった。

 対応する情報を照合することによって、その者が何者であるのかを判別する手段。あるいは、()()()()()()()()()()()()()、何らかの異常性を検出するためのデータ。

 

 名簿をシッテムの箱に保存して、会議室を出てすぐに、ウタハからモモトークが入った。方舟の改造にかかる工期の連絡。三日ほどほぼ休みなく作業すれば何とか、とのことだった。

 あまり無理はしてほしくないが、急ぎたい気持ちも理解できる。分かった、とだけ返して待つことにした。

 

 多少無理があったのか、工期はひと晩ほど余計にかかったが、何事もなくシミュレーションまでうまくいったようだ。

 目標の行き先は、第三の異聞帯。面積だけで言えば、ミレニアムやアビドスのものも大きく凌駕して最大の異聞帯となる。大海原での船旅に胸を躍らせたり、逆に不安を覚えたり。個々の様々な思いを乗せて、コスモの方舟は残された唯一のゲートへと向かった。




オデュッセイアなのでお察しいただけるかもしれませんが、本章はオリキャラ多め章になる予定です。
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