Kivotos with the Lostbelt 作:2匹目の蝉
歩みを進めていった先、交差点にある階段。こういったものがあるという事実が意味することというのは、すなわち。
“地下道に行く、ってこと?”
「あー、地上住みだとそういう言い方しちゃうかあ。うん、まあ感覚としては近いんだけどね、あたし達は船内区画って呼んでる。行けばそう言いたくなるのも分かるんじゃないかな?」
そこまで言うなら、と中に入ってみる。かなり深いところまで階段を下っていき、そこの景色を見ると、確かに理解できないわけではないものだった。
地下街らしい綺麗な壁があるが、天井は作られておらず、その内装が剥き出しになっている。様々なパイプや電線が張り巡らされており、それが透明な筒で保護されている。わざと見せているのだろう。
「内側に入ると急に、これが船だと実感しやすくなるのか。しかし、ここで銃撃戦などが起こると運航に問題が出るのでは?」
「そこは保護チューブがすっごく頑丈だから問題無いんじゃない? あんまりそんなの見たことないけどねー。なに、やる予定あるの?」
「逆に聞くが、ないと言い切れるか?」
全く言い切れない。どうもキヴォトスという土地にあるとは思えない平和さがここにはあるようで、銃を持ち運ばない生徒の姿も見受けられるが、ドンパチする時はする。
まして、試練というものは戦闘を含むものである可能も高い。最後にはそうなるとしても、こんな巨大船を崩壊させるわけにもいかないのである。
“こんな精密機械が、大陸船団の内側の空間を埋め尽くしてるわけだ。すっごく整備が大変そう”
先生の素朴な感想だが、あえて何も言うまい、とばかりにノーコメントを貫かれた。ここまででイリアには話したがりという印象が強く染み付いていただけに、若干の違和感を与えるものだった。
この辺りのことに、答えたくないような事柄がどうやらあるらしい。その辺りを解き明かすのも、変わらず先生達のすべきことになる。
さて、進んでいくにつれて船内区画の中でも少し「街外れ」の方面までやって来て、よりメカメカしいところになった。イリアの足が止まったのは、その一角にある、壁の見た目とほぼ同化しているドアの前。
「よーし、着いたよ。ちょっと遠くまで行かなきゃいけないけど、そのぶん秘密の集まりにはちょうどいいんだよね〜」
ドアには鍵がかかっているが、イリアが手を触れてから数秒のタイムラグを経て開いた音がした。曰く、生体認証がこれひとつでできるらしい。手の形や皺、指紋はもちろんのこと、血流やリンパ、体型といったもののデータを照合しているという。定期的に使わないと認識してくれなくなるのが厄介なんだとか。
成長期の子供の場合だと、ひと月使わないと認証ができなくなるらしい。
“カンナはどう? まだ伸びる?”
「いきなり何を聞くんですか? もう止まる頃ですよ、いくらなんでも。私以外には突然聞くのは控えてくださいね」
「あの〜……開けていい?」
“あ、どうぞ”
せっかくの秘密の部屋オープンという雰囲気を台無しにしつつ、その向こう側に入り込んでいく。
部屋の中には、3人の生徒がいた。かなりくつろいでいる。かなり行儀の悪い座り方をしながら大型のコンピューターをいじる者、大きすぎるクッションに覆いかぶさる者、傍から見たら不良過ぎるいかにも武闘派な者。これにイリアをプラスすると、実に個性的な面々。
「遅いってイリアさあ、急に集合かけといて。ってーかナニ? 知らん人がなんかふたりいるけど、もしかしてその関係の用事?」
「そーそー、もしかしたら協力してくれるかもって」
コンピュータいじりの少女は、大きくため息をついた。当然と言えば当然だ。あまりに気楽な気持ちで勝手に知らない人を連れて来たのだ。
パンク系ファッションで固めている刺々しい印象もあいまって、なかなか怖い奴。だがその印象とは真逆の行動に彼女は出た。
「
“……え?”
「え? じゃない。アテシの名前、ナノってんの。とりあえず信用しとくってこと、分かんない?」
それはまあ、確かに、信用が無い相手に名乗るという行為は良くないことなので、信用されているということは分かるのだが。
「本当に信用するのか? 私達はそちらからすれば素性不明。ましてこんな、その、お転婆そうな人間からの紹介だぞ?」
「いやまー、イリアがそーゆー世間知らずで騙されそうっぽいのは分かるけどもさ? だけどアテシの幼馴染としての経験則を言うとね、
そういう基準で人を信用することを決めるのも、それはそれで危ない気がするのだが。見た目の印象に反して、けっこうお人好しなところが伺える。
だとしたら、信じてもいいような、そんな気もするところがある。
「そーそー、なんか不思議なんだよねー。これオカルトとかじゃないから、信じきっちゃっていいよ。あ、わたしは
こちらはどうも、見た目通りのんびり系らしい。クッションの上でグータラしている様子は、少しホシノを彷彿とさせるが、あちらとの違いは本当に裏が無さそうなところだろうか。
「なんだこれ。自己紹介しなきゃいけない流れかよ、これ? まあ付き合い浅い私でも、こいつが遊びでこういうことするとは思えないけどな……だからって信じすぎだろうが」
「もう、意地っ張りなんだから! まあレイアらしいっちゃらしいか」
「ちゃっかり名前出すんじゃねえ! ……ああそうだよ、
というわけで、これがイリアの愉快な仲間達というわけである。なるほど、個性的を地で行く面々ばかりである。そういう者たちに好かれるという星の下に生まれているのだろう。
先生も大概、そういう星の下にあるようだが。
「というわけで! 皆さんの旅路を支える仲間になってくれる(はず)という感じの、反王政グループでーっす!」