Kivotos with the Lostbelt   作:2匹目の蝉

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3-6:First Gate (OVERDRIVE)

 自称普通の女の子、石弓イリア。得体の知れなさが底の知れない域にある彼女は、言ってみれば国家反逆を企てているタイプの少女だった。

 

“……どういうこと? ”

「ずっと同じ王様に支配されてると、不満がある人も出てくるってこと。そういう人のリーダーになって、ガツンと一発やってやるのをあたしはずっと、小学生くらいの頃から密かに夢見てたんだよね〜。ま、見ての通り全然人集まってないけど」

 

 こんな様子でも、どういうわけか悪人ではないように思えてくるのが不思議である。そして立場的には協力者たりうる。本当に食えない人物だが、ここは良好な関係を保ちたいところだ。

 というわけで、先生とカンナも自己紹介。

 

“まあ、目的の方向性は似てるしいいか! 私のことは、まあ先生と呼んでほしいな”

「尾刃カンナだ。なんだろうか……情報を聞き出すことには、それなりに自信がある」

「情報ー? そういうのアテシも好きで集めてるよ。でも人から聞くのはそんなに。得意分野の差かな」

 

 ナノが早速距離を詰めようとしてきた。イリアの幼馴染で似たもの同士といったところか。

 彼女はこの集まりの中では頭脳担当というポジションが定着している。大きなコンピュータの中にはあまりにも大量かつ雑多な情報が、しかし綺麗にカテゴライズされてまとめられている。

 

「なるほど、この大陸船団で起きたことを網羅しているとばかりのボリュームなのは素晴らしい。ただ……目的に適うものばかりが、無いのでは?」

「王様に近付ける情報だけが全然見当んないよねー。2年くらい頑張ってんだけどさ、イリアほどマジになれてるわけでもないし、気付いたらただの歩くニュース記事になってたよね、アテシ」

 

 カラッとした笑い声を挙げるナノだが、おそらくイリア的には笑いごとではない。アイムとレイアは笑っていたが。

 2年も無駄な内容ばかりが積み重なってしまっては、確かに笑うしかないのかもしれない。あるいは単純に、ただの楽しい集まりになっているのか。だとしたら、ここには確かに青春がある。

 

「そういうことだよ、私らはそんなにうまくいってない。で、そいつらはうまくいってるって言いたいのか、イリアさんよ」

「うーん、そうっちゃそう、かも? でもレイアの期待するほどじゃないかも。一応、王様と直接電話できたことがあるってくらい?」

 

 ガタン、という音がみっつ。椅子が一気に倒れた。それほどの勢いで先生達に詰め寄った。

 

「それマジぃ? 電話番号とかわかる? 座標は?」

「何て言ってたのー!?」

「もったいぶることないじゃねーか! おい!」

 

“いや、落ち着いて。いやね、確かに私達は電話をもらったんだよ。ただ、あっちが一方的に勝手に回線をハックして伝えてきたあげく……”

「ありとあらゆる履歴が残らなかった。逆探知も不可能。内容としても、私達に試練を与え、その結果によっては会ってやってもいい、くらい。その内容は、何も」

 

 どこで何をすればいいのかも分からないので、協力者を得たかった、というところなのだが、ハッキリ言ってイリア達は若干微妙な感が否めない。藁にも縋りたい気持ちなので、協力関係になることは喜んでしたいところだが。

 結局情報待ちか、と思われたその時。ナノのコンピューターにノイズが走る。

 

「え、ちょ、何ぃ!? うっそお、ハッキングされてんだけど! どっから!?」

『我だよ!』

 

 この無駄にハイテンションで偉そうな声は、少し前にも聞いた覚えがある。強引な通信接続といい、間違えようもない。

 

「こんなところまで繋いできたのか、綿津見トリン! どうやって特定した!?」

「わだ……つみ……?」

「おうアイム知らないのか。王の名前を……王の名前!?」

 

 トリンからの強制通信は、方舟に限らず機械があれば入ってくるらしい。シッテムの箱に関しては、強力な防護がされているが故に無理そうだが。

 

『王は全てを見通しているからな。それにしてもなんだ? せっかく担当者を送って待たせているというのに迷って船内区画まで入ったのか? 我、遅延行為とか無粋だと思うんだが』

“君が目的地を教えないのがいけないんじゃないのかな?”

 

 しばらく考え込むような間があった。本当にその辺りを考慮していなかったらしい。

 それにしてもこの王、無粋というものを大層嫌うようである。

 

『あー、それは、その、すまなかった。なんとなーくそのうちに行くんじゃないかな、くらいの気持ちでいたのだが、見立てが甘かった。まさか市民目線でいくとはな! よその代表者らしい面をして同じく代表と話し合おうとするとばかり思っていたぞ』

“あいにく、私は政治家じゃなくて教育者だからね。生徒と同じ目線に立つのは当然のことだよ”

『良い良い、それもまた一興よ。うむ、やはり面白いな先生とやら。ならば少しくらい細かい指示をしてやってもよい! 心して聞け!』

 

 そんなに心していないような態度ではあるが、聞いてやることにした。

 

『まずはな、代議院に行くがよい。わかるか? 分からぬならそこにいる者に聞くのだ』

「どこなんだ、ナノ?」

「大陸船団のドドドド真ん中。ここから一番近い地上への出口はけっこー近いよ」

『うむ、良き連携。遣わした担当者もお主達を気に入ってくれよう。王から言われて来たと言えば、客人受付の者もすぐに対応するよう言っておいたからな、安心して行くといい。ではな!』

 

 やはり勝手に通信を切った。細かい指示と言う割にはざっくりとしているのもなかなかいけない。

 何をすればいいのか、ということがなんとなく程度にわかるのはまだマシといったところか。とりあえず行くことにした……のだが。

 

「ねーねー。近いのはいいんだけどさー、今けーっこう遅い時間なんじゃなーい?」

 

 アイムに気付かされた。今はかなり夜も更けている。仕方がないので、代議院に向かうのは翌日にした。

 

 一同はまだ知らない。この判断が、ある意味で最善の中の最善であったことを。

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