宮廷遊撃部隊・十四番隊   作:らりるれリッター

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 (むかし)(つく)るのは(いま)への軌跡(きせき)
 (いま)(つく)るのは未来(みらい)への(いしずえ)
            
            
             雷山 悟
             銀華零 白
             狐蝶寺 春麗



300年以上前 十四番隊発足篇
第1話 遊撃部隊の発足


 

 

ここは今から500年前の尸魂界、

今まさに1人の死神が護廷十三隊総隊長・山本元柳斎重國より招集を受けていた。

 

 

「……まったく、引継ぎだってまだあるこんな忙しい時に一体何の用事だ。元柳斎のやつ」

 

 

背中に【五】の文字が刻まれる隊長羽織をなびかせて悪態をつきながら歩く一つの影があった。

彼の名は、雷山(かみなりやま)(さとる)。当時の護廷十三隊五番隊隊長……もとい、元五番隊隊長であり、その経歴も相まって名前を聞けば誰もが知る有名人の1人だった。

 

 

 

-- 一番隊隊舎・隊長執務室前 --

 

 

 

「護廷十三隊前五番隊隊長・雷山悟。馳せ参じたぞ」

 

「うむ。入れ」

 

 

少し間があいた後、中から返答が帰ってきた。その返答を合図に雷山は中へと入って行った。

 

 

「いったい何用だ、元柳斎」

 

「あら、雷山さんまで」

 

「白に春麗?何故お前らがここにいるんだ?」

 

 

雷山が中へ入ると先客が二人いた。

片方は銀華零(ぎんかれい)(はく)と言い、背中まで伸びる銀色の髪と瞳が特徴の女性。

もう片方は狐蝶寺(こちょうじ)春麗(しゅんれい)と言い、茶色のミディアムヘアーと頭に付けられている風車の髪飾りが特徴の女性。

二人とも雷山の幼馴染であり、すでに引退して護廷十三隊去っている元隊長でもあった。

 

 

「雷山くんこそどうしたの?」

 

「元柳斎に呼び出されたんだよ。こっちは新隊長着任の儀が終わって、最後の引継ぎやらで忙しいってのに」

 

「新隊長着任の儀?あら、という事はつまり……」

 

 

 

- 新隊長着任の儀 -

それは副隊長以下の席官が隊長へと昇進したときに取り行われる儀式で、簡潔に言えば現役の隊長と新しい隊長の顔合わせをするお披露目会みたいなものである。

かつて隊長であった銀華零は、雷山が先程発したその一言で五番隊隊長が代替わりしたことを知った。

 

 

 

「ああ、そう言う事だ。本人は随分と泣きそうな顔をしていたけどな。それはそうと引退した元隊長3人を呼び出していったい何を考えているんだ。山本総隊長さんよ」

 

 

「単刀直入に言う。雷山悟、銀華零白、狐蝶寺春麗。おぬしら3名共に瀞霊廷にこれから創設するとある組織に属してはもらえぬか?」

 

 

「……は?」「……はい?」「???」

 

 

雷山はなんとなく言わんとしている意味を理解して"また面倒くさそうなことを言って来やがって"と言いたげに、

 

銀華零は"病気を理由に引退した私をまた隊士に据えるとは一体何をおっしゃっているのでしょう"と聞き捨てならないと言いたげに、

 

狐蝶寺は”創設?組織?意味が分からないなー”という風に首をかしげて、三者三様の反応を示していた。

 

 

「えっと、それはつまり護廷十三隊に復隊してほしい……ってことですか?だとしたら申し訳ないのですが……」

 

(いな)、おぬしらに属してもらうのは【宮廷遊撃部隊(きゅうていゆうげきぶたい)】通称、"十四番隊(じゅうよんばんたい)"」

 

「宮廷遊撃部隊?つまるところ護廷十三隊の下部組織ってところか?」

 

「下部組織ではない。護廷十三隊の援軍、護廷十三隊隊長職の一時的な代理などを担うことを想定しておる」

 

「そんなもの護廷十三隊がもとより担っているだろう。それに元柳斎(おまえ)八千流(やちる)もいるんだ。わざわざ俺たちがその宮廷遊撃部隊ってのに属して残る程でもないだろ」

 

 

雷山がそう語るには彼の一つの信条にあった。それは、

 

”今の瀞霊廷は今の護廷十三隊が守っていくべきである”

 

雷山自身つい先日まで五番隊隊長として瀞霊廷の守護に従事していて、実力も現役の隊長たちより高いと自負していた。それは(まご)うことなき事実だが、それを理由に現役たちを押し退けてまでいつまでも自分たちが出張って来るのは如何なものかと考えていた。

 

 

「おぬしの考えも分かる。無理を言っておることも」

 

 

勿論、長く付き合いのあった元柳斎も雷山がその考えを持っていることは分かっていた。元柳斎自身も500年間、自らが総隊長をやらねばならぬほど、自身より強い死神が生まれていないという元柳斎なりの悩みも相まってその考えに賛同すらしていた。

 

 

「しかし、雷山悟よ。おぬしは先程、儂と卯ノ花隊長を例に挙げておったが、儂等2名共に己の立場を考えず無策のまま敵陣に突っ込むと、そう考えておると言うわけか?」

 

 

普通の交渉では雷山は首を縦に振らないと分かっていた元柳斎は、別の切り口から崩しにかかった。そう、それは先程例にあげた自身と卯ノ花が不用意に前線に出るから問題ないと、雷山はそんな浅はかな考えをしていたのかと言わば挑発する形を取った。

 

 

「おぬしがそのような浅はかな考えをするとは思いもよらなかった」

 

「山本総隊長!いくらなんでもそれは……」

 

 

銀華零はいくら何でも雷山に対してそのようなことを言うのはいただけないと抗議しようとしていた。一方の雷山は元柳斎がわざと自身を挑発するように言っていることは分かっていた。

 

 

「……はぁ」

 

 

しかし、彼の性格上言われっぱなしも癪に障るため、観念したようにそしてどことなくわざとっぽくため息を吐いてみせた。

 

 

「そう言い返されてはこちらの負けだな。だが、結論を出す前にこちらも1つ条件を提示させてもらいたい」

 

「良い、申してみよ」

 

「ああ、こちらが出す条件とは1年間の準備期間の設定だ。俺は休息期間として、白と春麗の2人はある程度の戦いの勘を取り戻すための準備期間としてだ」

 

「……1年の準備期間か」

 

「それがダメだというのならば、この話はこれでおしまいだ。俺たちはもう二度と瀞霊廷に現れることは無くなる」

 

「誰も断るとは言うてはおらん。その条件とやらは受けよう。しかし、期間は1年足らずで良いのか?」

 

「……白、春麗。二人とも、勘を取り戻すのにどれくらい要る?」

 

 

雷山の唐突な質問に二人とも「え?」と間の抜けた返事をしてしまっていた。数分の沈黙が流れた後、まず銀華零が”まあ、1年あれば……”と答え、続けて狐蝶寺も”私もそれくらいあれば何とかするよ”と答えた。

 

 

「ほらな、十分だったろ?」

 

「……」

 

 

雷山は”そんな心配など俺たちには不要だ”と自信ありげな表情で元柳斎を見ていた。一方の元柳斎も”まだまだこの3人のことを分かりきってはおらぬな”と少し笑みを浮かべていた。

 

 

元柳斎(おまえ)が笑みを浮かべているところなんて初めて見たな。まあ、この際それはどうでも良いんだが、それにしても何故その話を持ち掛けたのが俺たちなんだ?」

 

 

雷山は自身が隊長を務めていた間に殉職や捕縛、処刑を除いて護廷十三隊を去って行った隊長が山ほどいることを知っていた。その中で何故今このタイミングで、しかも雷山悟、銀華零白、狐蝶寺春麗の限られた3人だけにこの話をしているのかと疑問に思っていた。

 

 

「それぞれ隊長を500年近く務めておったおぬしらを、遊ばせておくわけのは勿体ないという儂の判断じゃ。勿論、中央四十六室からの許可も取り付けておる」

 

「実力を高く買ってくれているのは感謝するが、こうして集められる前に、せめて可能性があるという程度でも話を通しておいてもらいたかったな。さて、」

 

 

雷山は元柳斎に対して正式に回答をする前に、1つだけまだ残っている問題について言及しようとしていた。

それは今現在まで、自身と元柳斎の2人だけで話を勝手に進めている形となっており、銀華零と狐蝶寺(ほかの2人)がこの話をどう思っているのか、この先どうしていきたいのかを聞いていなかったことである。

 

 

「白、春麗。最後に確認なんだが、少しいいか?」

 

「はい?」「なに?」

 

「今のいままで、俺と元柳斎が話を勝手に進めてしまっているが、お前たち2人は何か異論とか、こうしてほしいなどの条件や要望ははないのか?ハッキリ言ってしまえば、その”宮廷遊撃部隊”とやらは俺1人いれば十分だと思っているんだ。無理して2人が付いてくる必要もないし、春麗はともかくとして、白はまだ病気が治りきってないだろ?」

 

 

銀華零白が隊長を辞めた理由、それは”自身が患っている病気が隊長の激務で悪化の一途を辿っていたから”である。その事は雷山も元柳斎も分かっていたことで、狐蝶寺春麗が看病の為に同時に隊長職を退位する要因にもなっていたことであった。

雷山は激務になることが容易に想像できる”宮廷遊撃部隊”の業務で、再び銀華零の病気が悪化してしまうのではないかを危惧していた。

 

 

「またその話ですか。私としては病で死ぬのも戦いで死ぬことも同じこと、ならばその最期は虚しく病によってではなく慣れ親しんだ幼馴染(とも)の隣で散りたいのです」

 

 

それを聞いた雷山は最初こそ驚いた顔をしたが、すぐに懐かしむように笑った。

銀華零白はその昔、山本重國なる死神から護廷十三隊の話が持ち掛けられたとき、病を理由に雷山と狐蝶寺から反対されていた。その中で銀華零は上述の言葉を言いのけて雷山たちを説得したことがあった。

 

 

「懐かしいな。元柳斎に護廷十三隊の話を持ち掛けられたときに白がそんなことを言い出したんだっけな」

 

「うんうん。それで山本元柳斎(おじいちゃん)の目の前で3人で大喧嘩したんだっけね」

 

「そんな昔の事なんか思い出さないでください。それに、ここ最近は調子も良くなってきていますし大丈夫ですよ」

 

「春麗はどうなんだ?」

 

 

「私?私は大丈夫だよ♪なんか流魂街で平和に暮らすのもいいけど、こっちもこっちで面白そうだし♪」

 

 

狐蝶寺はいつもの調子に見えたが、銀華零の方はやはりまだ少しだけ本調子ではないことを雷山は見抜いていた。しかし、銀華零も言った通り、彼女は昔から幼馴染3人で走り回って共に過ごしている時が一番体調としては万全だったと雷山も思い返し彼女の意思を汲もうと考えた。

 

 

「……分かった。それでは元柳斎、正式にその”宮廷遊撃部隊”の話は受けよう。必ず、1年の後に発足させると」

 

「相分かった。では、話はこれで終いじゃ。雷山悟、500年に及ぶ隊長業務、ご苦労であった」

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

「しかし、元柳斎のやつ本当に急に話を持ってきやがって」

 

 

一番隊隊舎から五番隊隊舎へ向かう道中、雷山は愚痴をこぼしていた。

 

 

「まあまあ、それだけ山本総隊長も私たちのことを信頼しているという事ですよ。何があってもこの3人なら大丈夫だと」

 

「俺としては良いようにこき使われているようにしか思えないけどな。しかし、白が言った”幼馴染(とも)の隣で散る”の言葉も相まって、この状況はまるであの時みたいだな」

 

 

雷山たちは500年前の出来事を思い出していた。

それはある日、流魂街で暮らしていた時のこと、高い霊力を持つ3人がいると噂を聞きつけやって来た”剣の鬼・山本重國”と初会合した時の記憶。

剣の鬼は言った「護廷に属する気はないか」

雷神狼(じんろう)は言った「そんなものお前みたいなのがいれば十分だろ」

 

あれから時が経ち、立場も変わり、挑戦など無関係と思っていた3人に突如として湧いてきた”宮廷遊撃部隊”の話。

 

 

「精一杯やってみようよ♪あの時もそうだったんだからさ♪」

 

「そうですね」

 

「ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして1年後、

 

ここに、【宮廷遊撃部隊】通称、”十四番隊”発足――――――

 

 

 

 

 

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