宮廷遊撃部隊・十四番隊   作:らりるれリッター

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第11話 流魂街魂魄消失事件

 

 

十四番隊発足より398年後(浦原喜助が隊長に就任して9年後)――――――

 

 

 

-- 瀞霊廷・十四番隊詰所 --

 

 

 

「流魂街の住人が衣服を残して消えている事件?」

 

 

雷山は浮葉からここひと月の間に瀞霊廷をにぎわせているとある案件についての報告を受けていた。

それは、後に数多くの死神の運命を大きく変える事件だった。

 

 

「はい、雷山部隊長は9年前に報告した一件は覚えていらっしゃいますか?」

 

「9年前?……ああ、浮葉が流魂街まで調査に行ったというあの一件か」

 

「はい、最初に確認された9年前に調査したときも今回と同様の状態でした。そしてここひと月の間には複数件の発生が確認されています。原因は私どもの調査結果も含めて未だ不明です」

 

「ふむ……その"衣服を残して"というのが気になるな。素っ裸で失踪するやつなんかまず居ないし、何より死んだなら衣服ごとなくなるはずだしな」

 

 

死神や流魂街の住人などの霊体は衣服を含めてすべて霊子で構成されている。通常、死すれば衣服ごと霊子に分解されて消えてなくなってしまうため、衣服だけを残すことは異常事態と言わざるを得ない状況だった。

 

 

「これから再度調査に向かおうと考えておりますが、如何いたしますか?」

 

「ああ、調査(それは)は構わないが、その前に護廷十三隊はどう対応すると?」

 

 

雷山はこの異常事態について護廷十三隊が何もしていないとは考えてはいなかったが、調査することに関して被りが起きないようにまずは十三隊側の動きを知ってから指示を出そうと考えた。

 

 

「九番隊に調査を命じ、先遣隊10名が2日前、隊長以下10名の部隊が先ほど流魂街に向けて出立したと」

 

「九番隊……今の隊長は確か六車(むぐるま)だったか。よし、では――――――」

 

「はいはーい!私も調査に行くよ!1人より2人な方がいいでしょ!」

 

 

雷山が浮葉に調査を任せようとしたまさにその瞬間、待ってましたと言わんばかりに近くで聞き耳を立てていた狐蝶寺が話に割って入って来た。

タイミングから考えて自身も浮葉の調査に同行させろと狐蝶寺が言い出したのだと雷山考えた。

 

 

「おい待て、勝手に決めんなよ。九番隊も動いている中、簡単な調査なら浮葉ひとりでも十分すぎるし、そもそも春麗の担当は調査じゃないだろ」

 

「えー、良いじゃんたまにはさあ」

 

「……私はご一緒でも構いませんよ。雷山部隊長、春麗隊長にも調査に同行してもらうのは如何でしょう?」

 

 

今にも駄々をこねそうな勢いの狐蝶寺を見かねた浮葉は、雷山に許可を求めていた。勿論、狐蝶寺に対して浮葉が気を遣っていることを雷山は分かっていたため、浮葉の為に渋々許可しようと考えた。

 

 

「はぁ……あまり春麗を甘やかすなよ。では、浮葉と春麗の2人で十四番隊としての独自調査を頼めむ」

 

「承知しました」

 

「オッケー♪任せてよ♪」

 

 

浮葉は一礼すると、狐蝶寺は手を振ると、瞬歩で調査に向かっていった。

浮葉刃と狐蝶寺春麗、2人の十四番隊メンバーが向かったことで(じき)に解決するだろうと雷山は思っていた。しかしそれから数時間が立った時、瀞霊廷に緊急事態を知らせる木の板を叩く音が響き渡ると同時に事態は一変した。

 

 

 

 

カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!―――――

 

 

”緊急招集!緊急招集!各隊隊長は至急、一番隊舎へ集合願います!―――――”

 

 

「雷山さん!」

 

 

その声と共に十四番隊詰所の襖を勢いよく開けて銀華零が入って来た。先程の声色から想像できる通り、その顔には焦りが見えていた。

 

 

「白、何があった?」

 

「先程入った緊急通達です。六車(むぐるま)九番隊隊長、同久南(くな)副隊長の霊圧反応が消えたと報告が」

 

「例の消失事件の前線部隊か。浮葉と春麗はまだ戻ってないのか?」

 

「はい、戻って来ていません。それどころか消息不明になっております」

 

 

銀華零が焦りを見せている理由は主に2つあった。

1つは、十四番隊メンバーが向かったにもかかわらず九番隊に異常事態が発生したこと、

もう1つは、その九番隊と同じ辺りにいるであろう浮葉刃と狐蝶寺春麗と言う代え難い2人の十四番隊メンバーの消息が未だ掴めていなかったからである。

それは雷山にも言えることで焦りこそ見せてはいなかったが、浮葉と狐蝶寺ほどの実力者が居ながらこんな事態になることは信じ難いことであった。

 

 

「まさか、あの二人がいてこんな事態になるとは……」

 

「雷山部隊長!!」

 

 

その時、浮葉が勢いよく入って来た。普段の彼からは想像もできない程の焦燥感がその顔に出ていた。

銀華零も雷山もひとまず浮葉の無事が確認できたことで安堵したが、今はその浮葉が焦りを見せている理由を聞くことが先決と判断した。

 

 

「浮葉、春麗はどうした?」

 

「それも含めて簡潔にですが、ご報告申し上げます。1つ、流魂街の消失事件が死神にまで被害が及びました。1つ、その調査の為に野営していた六車(むぐるま)九番隊隊長及び、久南(くな)九番隊副隊長以下複数名の席官の霊圧消失を確認。1つ、その後(ホロウ)のような霊圧を感知したため、春麗隊長が警戒のためその場に残り私が即時帰還いたしました」

 

「その場に残った?……成程、春麗のやつカッコつけやがって」

 

 

雷山は狐蝶寺が浮葉を報告のためにと理由をつけて庇った結果なのだろうと察した。

勿論、自身が狐蝶寺の立場なら全く同じ行動をしていたために責める気はさらさら無かったが、不測の事態が発生している中でその行動をとらなくとも良いだろうとは考えていた。

 

 

「分かった。前線に【十四番隊・第四将”副将”】がいることを鑑みてもこの非常事態は火急の事態と考える。そこで前線には”部隊長”たる俺が直接応援に出向く。白は護廷十三隊の対応を確認後、俺に共有を頼む。帰って来て早々悪いが、浮葉は念のために椿咲、山吹両名にこの緊急事態を伝え即時帰還を指示。そして、俺たちの方で何かあれば椿咲、山吹の帰還を待ってからバックアップを頼む」

 

「承知いたしました」

 

「雷山さん!」

 

 

銀華零は斬魄刀を腰に差し襖に手をかけた雷山を呼び止めた。現地の状況が不明な現場に赴こうとする雷山を見て、その現地にいる狐蝶寺のことを思って、銀華零の表情には『心配』の二文字が現れていた。

 

 

「絶対に無茶だけはしないでください」

 

 

雷山は銀華零の表情がかつて痣城剣八の討伐に向かう時に自身と狐蝶寺に向けていた表情と重なっていた。

”また心配させているな”

そう感じた雷山は必ず狐蝶寺と共に帰って来てやろうと決意していた。

 

 

「ああ、春麗を連れて五体満足で帰って来るよ」

 

 

そう言い残すと雷山は襖を閉じて狐蝶寺春麗、及び九番隊の救援へと向かった。

 

その道中、護廷十三隊の対応として銀華零から情報の共有があった。

曰く、現地への派遣は三番隊隊長、五番隊隊長、七番隊隊長、八番隊副隊長、鬼道衆副鬼道長の5名。

その他、二番隊隊長は別命あるまで、四番隊隊長は総合救護詰所にて待機。

六番隊隊長、八番隊隊長、十三番隊隊長は瀞霊廷の守護。

そして、十二番隊隊長と【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”はそれぞれ隊舎と詰所にて待機。ただし、十四番隊部隊長にあっては至急一番隊隊舎へ召喚されよとのことだった。

 

 

「召喚だと?このクソ忙しい時に元柳斎のやつ何考えてやがる……」

 

 

初めは無視してでも現地に向かおうと雷山は考えたが、現地には狐蝶寺がいるに加え複数名の隊長格が派遣されたためまだ時間はあると雷山は判断して一番隊隊舎へと向かった。

 

 

 

-- 尸魂界・流魂街とある平原 --

 

 

 

「うーん、どうしよう」

 

 

浮葉を瀞霊廷に返した後、最前線に残っていた狐蝶寺は自身のおよそ100m前から放たれる(ホロウ)のような死神のような霊圧を前にしてどうしたものかと攻めあぐねていた。

それにはとある理由があった。

 

 

「雷山くんに私は後先考えずに戦うからあまり暴れるなって言われてるからなぁ……」

 

 

狐蝶寺は自身の持つ斬魄刀の能力と戦闘スタイルによって戦闘を行うと毎回のように辺りを荒らしてしまっていた。それは【宮廷遊撃部隊】の存在を隠すことにどうでも良さを感じる雷山をして、

”さすがにやり過ぎだろ”

と称されるほどで、余程の事態で無ければ1人で戦闘はするなと言われていた。

 

 

「けれど始解しなきゃ大怪我しそうなんだよなぁ。……それにしてもこの霊圧はいったい何なんだろう?間違いなく(ホロウ)なんだけど、不思議と死神っぽくもあるだよね」

 

「はっ……はっ……」

 

「……あれ、誰かが近づいて来てる?」

 

 

狐蝶寺はここへと近づいて来ている一つの霊圧を感じ取った。それは数刻前に浦原の命で九番隊の元へ向かっていた十二番隊副隊長・猿柿(さるがき)ひよ()のものだった。

狐蝶寺も霊圧の高さから副隊長と予想した。初めは護廷十三隊の救援が来たのかと思ったが、人数が1人であったためにその可能性はないとすぐに判断した。

 

 

「!!」

 

 

狐蝶寺がから遅れること数秒、目の前の(ホロウ)のようなものもひよ里の霊圧に気づいた様子で、攻撃態勢に入っていた。

その気配を察知した狐蝶寺はこのままでは走って来ている副隊長が不意を突かれる形で攻撃を受けると判断した。

 

 

「まずい、このままじゃあの子……!!」

 

「なんやあれ……」

 

 

ひよ里の方も暗がりの中に何かいることに気が付いた様子だったが、既に(ホロウ)のようなものはひよ里を攻撃の間合いに入れていた。

 

 

「’#%$‘*@!!!!!」

 

「なっ……!?」

 

「”微風(そよかぜ)()()()へと()し、静寂閑雅(せいじゃくかんが)()()らん”『暴風芽吹(ぼうふうめぶき)』!!」

 

 

ガンッ――――――!!

 

 

(ホロウ)のようなものの攻撃がひよ里へと届く直前、ひよ里との間に始解して巨大な扇へと変化した斬魄刀を持って狐蝶寺が間に割って入り攻撃を受け止めていた。

 

「大丈夫!?ケガはない!?」

 

「あんた誰や……」

 

 

ひよ里は間に割って入った隊長羽織を纏う死神を見てそう呟いていた。仮にも副隊長の地位を任されている自身も見たことがない目の前の死神にさすがのひよ里も戸惑いが隠せていたなかった。

 

 

「ごめんね、名乗る訳にはいかないんだ。それよりも君は早くここから逃げて!これは私たちの管轄だよ」

 

 

目の前の信じがたい光景を前に、突如現れた狐蝶寺の言うことはひよ里にとってみてももっともな事だったが、ひよ里にも去ることが出来ない理由が目の前にあった。

 

 

「逃げられるわけないやろ……目の前に()るんわ拳西(けんせい)や……!」

 

「拳西?拳西って……」

 

 

その時、雲間から月明かりが差してきた。周囲が明るくなったことで狐蝶寺も目の前にいる(ホロウ)のようなものの正体を知ることとなった。その正体は、背中に【九】の文字が書かれた隊長羽織を身に纏い、顔には(ホロウ)の面を着けた九番隊隊長・六車拳西だった。

 

 

「……成程ね。どうりで(ホロウ)の霊圧なのにどことなく死神っぽくもあったわけだ」

 

「’#%$‘*@!!!!!」

 

「”蛇睨(へびにら)み”」

 

「……!」

 

 

(ホロウ)()した六車は狐蝶寺にの斬魄刀によって弾かれて一旦距離を取る形となった。そこで六車は再び狐蝶寺に対して攻撃を仕掛けようとした。しかし狐蝶寺は強大な霊圧と殺気、威圧感を虚化した六車に向け、その足を止めさせた。

 

 

「副隊長さん、この隊長さんがあなたの知り合いなのは分かったよ。だけどね、このまま放っておけば被害が甚大になるのはあなたも分かるでしょ?だから悪いけど、殺してでも隊長さんをここで止めさせてもらうよ」

 

「’#%$‘*@!!!!!」

 

 

ドンッ!!

 

 

(ホロウ)化した六車はまるで自身を鼓舞するかのように雄叫(おたけ)びを上げて狐蝶寺に向けてパンチを繰り出した。しかし、ある一点を境にして拳が止まり動けなくなっていた。

それは、狐蝶寺の持つ斬魄刀『暴風芽吹(ぼうふうめぶき)』の効果によるものだった。

 

 

「無駄だよ♪私の『暴風芽吹(ぼうふうめぶき)』の防御風は、例え雷山くんの『雷斬(らいざん)』でもそう簡単には破れないものだからね♪」

 

 

「大丈夫か!?ひよ里!」

 

 

ひよ里を呼ぶ声に狐蝶寺は一瞬だけ目を向けた。そこには隊長羽織を見に纏った黄色で長髪をした死神を先頭に隊長が計3名、副隊長が1名の部隊がやって来ていた。

その数と来た人物たちからして護廷十三隊の救援部隊が到着したものと狐蝶寺は考えた。

 

 

「……ありゃぁ、ホントに拳西なのか?」

 

「さあな」

 

 

目の前で見知らぬ隊長と相対する(ホロウ)の仮面をつけた六車を指して、アフロヘアーの隊長、愛川(あいかわ)羅武(らぶ)が呟いていた。

勿論、そんなことは今現着した誰にも本人かは判断がついていなかったが、黄色で長髪の隊長、平子(ひらこ)真子(しんじ)は目の前のみ知らぬ隊長を(いぶか)しんでいた。

 

 

「聞きたいことは山ほどあるが、ひとまずあんたは何者(なにもん)や」

 

「……”縛道の九十九”『(きん)』」

 

「!!??」

 

 

狐蝶寺が唱えると同時に杭とベルトが六車を捕らえた。捕らえられた六車はそのまま地面に倒れ込み動けなくなった。

平子の問いに答える前に狐蝶寺は落ち着いて話せる環境を整えるべく六車を杭とベルトによる最高位の縛道で封じ込めたのだった。

 

 

「疑われてるみたいだね。殺気が痛いよ」

 

「当たり前やろ。九番隊が消息を絶った地点に見知らぬ隊長がおったら誰でも疑う」

 

「それもそうだね。仕方がない、本当は雷山くんに止められてるんだけど、ここで変にいざこざを起こす方が問題だよね。私は【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”所属、第四将”副将”狐蝶寺春麗」

 

「【宮廷遊撃部隊】の狐蝶寺春麗?聞いたことあらへんな」

 

「当たり前だよ。”十四番隊”の存在は意図して隠されているんだから。本来もこうやって話すこと自体が総隊長のおじいちゃんにすごい叱られることなんだからね」

 

「……なんや、えらいことに首を突っ込んでまった感じやな。そんで、拳西(けんせい)のあの有り様はなんや?」

 

 

平子は(ホロウ)の仮面をつけて霊圧も(ホロウ)そのものへと変貌している六車のことを聞いていた。しかし、狐蝶寺も何があったのかを実際に見ていた訳ではなく、とても説明できるほどの情報を持ってるとは言い難かった。

 

 

「残念だけど、私も説明できるほど情報を持ってるわけじゃないんだよね」

 

「ほなら、まず拳西がなんでこうなったかを調べる必要が……」

 

「それは十四番隊(わたしたち)の管轄になるから君たちはこの子を連れて瀞霊廷に帰還してよ。まだ完全にこの隊長さんも無力化できたわけじゃないし」

 

「アホか。俺たちは護廷十三隊やで、そうじゃなくとも拳西を置いて戻れるわけないやろ」

 

「はぁ……分かったよ。じゃあ、拳西(かれ)の霊圧が急に小さくなった場所を教えてあげるから調査するなら満足するまでしてきてよ。その代わり、」

 

 

そこまで言って狐蝶寺はおもむろに自身の横で座り込んでいた猿柿(さるがき)ひよ()を脇に抱えるようにして持った。

突然のことにひよ里も驚いていたが、すぐに離せ問いわんばかりに暴れ出したが、副隊長の腕力に負ける狐蝶寺でもないため抑え込まれていた。

 

 

「この子は先に瀞霊廷に帰すけど、構わないね?」

 

「アホか!ウチはまだ……」

 

「狐蝶寺さんと言うたか。あんたが何者(なにもん)か知らんが、そいつ連れてってくれ、こっちはやかましいのが居らんくなって清々する」

 

「なんやと!?真子ハゲこらぁ!」

 

「ほら、言い合いなんかしてないで帰るよ」

 

「&%#$‘*‘!!!」

 

 

その時、どこに隠れていたか六車と同じく(ホロウ)化していた九番隊副隊長・久南(くな)(ましろ)が頭上より襲撃して来た。

 

 

「ローズ!」

 

「ッ!!」

 

 

久南(くな)はかかと落としの要領で三番隊隊長・鳳橋(おおとりばし)楼十郎(ろうじゅうろう)の頭に足を振り下ろした。

八番隊副隊長・矢胴丸(やどうまる)リサの声で防御態勢を取ろうとした鳳橋(おおとりばし)であったが、少し遅く攻撃を受けてしまった。

その衝撃は凄まじくクレーターが出来る程だった。

 

 

(ましろ)か」

 

「”縛道の七十五”『五柱鉄貫(ごちゅうてっかん)』」

 

 

久南(くな)の攻撃が平子を襲おうとした時、上空より五本の鉄柱が降り注ぎ久南(くな)を五体に乗る形でその動きを封じた。

 

 

「ハッチ……」

 

「間に合ってよかった。信子さん、この状況はいったい……」

 

 

それは一瞬のことだった。

突然狐蝶寺を始めその場にいた全員の視界が真っ暗の闇に染まった。それと同時に今さっきまで感じ取っていた霊圧や声、気配すら消え失せてしまっていたが、唯一脇に抱えるひよ里だけその存在を認識できたため、触覚だけは生きているのだと察するに至った。

しかしそこまで察するほど冷静さは残っていた狐蝶寺を以て、急なことで身体が理解に追い付いていなかった。

 

 

「なにこれ……どうなってるの?……ッ」

 

 

自身の背後から何者かが刀を振るったことによる僅かな空気の流れを感じ取ったことで狐蝶寺は何者かの斬撃を完璧に躱して見せた。

躱す際に空中へ飛んだ時に脇に抱える状態のひよ里をお姫様抱っこのように正面で抱え直した。

 

 

「……バカな」

 

「何や!?何が起こった!?」

 

「それは分からないけどその前に、君は誰?」

 

 

視界が元に戻った後、辺りの状況は一変していた。狐蝶寺と抱えられていたひよ里を除く4人が斬られて地に伏していたのだ。

そしてその4人を斬ったと思われる背中に『六車九番隊』と書かれた隊長羽織とは別の白い羽織を見に纏う死神が一人立っていた。狐蝶寺はその死神を見たことが無く名前も分からなかったが、平子が呟いた一言で名前を知ることとなる。

 

 

「東仙……お前、自分とこの隊長を裏切ったんか……!」

 

「東仙?君が今回のこの事件の首謀者ってことでいいのかな?」

 

 

その死神は平子のことは気にせずに狐蝶寺が自身の斬撃を躱したことを信じられないと言いたげな目で見ていた。

 

 

「何か言ったらどう?黙り込んでても話は進まないよ?”自分とこの隊長を裏切った”って言われてたけど、それは事実なの?」

 

「裏切ってなどいませんよ。彼はただ、忠実に僕の命令に従ったにすぎない。どうか彼を責めないでやってもらえませんか」

 

 

地面に倒れ込む平子と東仙と相対していた狐蝶寺は声がした方へ目を向けていた。そこにはまだ幼さが残る1人の死神を連れて、とある死神が歩いて来ていた。

 

そう、後に大逆の罪人と呼ばれる死神が、

 

 

 

 

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