宮廷遊撃部隊・十四番隊   作:らりるれリッター

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第12話 藍色の暗躍

 

 

-- 瀞霊廷・一番隊隊舎 --

 

 

 

一番隊舎内の隊長執務室前。そこに雷山の姿はあった。通常なら礼儀として部屋の入る前に名乗りを上げるところだが、雷山にその余裕と時間は現状持ち合わせていなかった為、無礼承知ですぐさま部屋の中へと入った。

 

 

「火急の事態につき失礼する。元柳斎、こんな時にいったい何用だ?」

 

「おぬしを呼んだ理由は無論、此度の魂魄消失案件に関してが1つ。すでに伝わっとると思うが、おぬしら十四番隊は事態の詳細が判明するまで、詰所内で待機を命ずる」

 

「……残念だが、すでに我々は動いている。いや、動いてしまっていると言った方が正しいか」

 

 

雷山がそう言うと同時に元柳斎は片目を開き見据えていた。”また勝手な行動をしたのか”と、

それは一般隊士、下手をすれば隊長格すら冷や汗をかくほどの威圧感が出ていた。

 

 

「たぶんお前が思ってることとは違うぞ。九番隊が調査に出るって言うもんで、十四番隊からも2名ほど調査に派遣していただけだ。そのうち浮葉だけ帰還し、1人が残る状態になったとはいえ、前線の状況が不明なために俺が直接出向こうと考えていたんだ」

 

「成程……十四番隊としての状況は分かった。が、先に行った通りのためすぐに呼び戻してもらおう」

 

「無理だ、と言ったら?」

 

「何故じゃ?……待て、もしや前線に残る十四番隊は」

 

「【十四番隊・第四将”副将”】狐蝶寺春麗」

 

「…………」

 

 

元柳斎はよりにもよって狐蝶寺が前線に残っているのかと言いたげな顔をしていた。それと同時に雷山が自らが出て行こうとする理由も理解していた。

狐蝶寺ひとりでは前線に向かわせた始末特務部隊と衝突する可能性が否定できず、その荒れた場を纏める出来るのは雷山など限られたものしかいないと元柳斎自身も分かっていたからである。

 

 

「俺が前線に出向くの、問題ないよな?」

 

「まさかとは思うが、おぬしはこれを見越して狐蝶寺を向かわせた訳ではあるまいな?」

 

「そんな面倒な手間をかけるなら初めから俺が行ってる。俺は初め浮葉を調査に向かわせるつもりだったんだが、春麗がついて行くと聞かなくての結果だ。では、事態の鎮静化を図って来る」

 

 

雷山はそう言い残すと元柳斎の返事を待たずに走って出て行った。

 

 

その頃、

時同じくして、

 

 

 

-- 尸魂界・流魂街とある平原 --

 

 

 

「裏切ってなどいませんよ。彼はただ、忠実に僕の命令に従ったにすぎない」

 

 

地面に倒れ込む平子と東仙と相対していた狐蝶寺は声がした方へ目を向けていた。そこにはまだ幼さが残る1人の死神を連れて、五番隊副隊長・藍染惣右介が歩いて来ていた。

 

 

「藍染……!やっぱしお前やったんか」

 

「気付かれていましたか。さすがですね、平子隊長」

 

「五番隊副隊長、藍染惣右介くん……だっけ?一応聞くけど、救援じゃないよね」

 

「貴女は……」

 

 

狐蝶寺は分からなかったが、藍染は何やら一人で納得しているように見えた。藍染はここへ来る前から始末特務部隊の隊長格たちとは別の霊圧を感じ取っており、どこかで覚えがあると思っていた。そして、直に狐蝶寺の姿を見てその霊圧がはるか昔に隊長を引退して死亡したとされる狐蝶寺春麗のものだと断定していた。

 

 

「何故貴女がこの場に居るのかは今は置いておきましょう。要、少しの間相手をしてやってもらえないか」

 

「はっ……!」

 

「ちょっと!?」

 

 

ガキンッ!! ガンッ!!

 

 

「話を戻しますが平子隊長、あなたが僕を疑っていることには気が付いていましたよ。あなたはきっとこう考えていたはずです。僕は信用できない男だと、だから自らの隊の副隊長に据えることで僕を監視しようと、そう考えた」

 

「……そうや。俺はお前が母ちゃんの子宮ん中()る時から危険やと思うとった」

 

「ええ、深く疑ってもらい感謝していますよ。おかげで、あなたの後ろをついて歩く僕が別人になっていても気が付かなかった」

 

「ッ!!」

 

 

平子は驚愕していた。自身は藍染が危険だと思い最大限警戒していたにもかかわらずその警戒をすり抜けて別人にすり替わっていたことに、

 

 

「敵に事象の全てを誤認させることが出来る、それが僕の斬魄刀『鏡花水月(きょうかすいげつ)』の真の能力です。その力を指して”完全催眠”」

 

「”完全催眠”やと……!?」

 

「平子隊長、あなたは鋭い人だ。もしあなたが他の隊の隊長のように副官に心を開いていたなら、僅かな所作や癖の違いに違和感を覚え、見抜いていたかもしれない。あなたが僕を何も知らないでいてくれたおかげで、そこに倒れることになったんですよ、平子隊長」

 

「藍染……!」

 

「ああ、それからもう一つ。あなたは僕を選んだと言いましたが、実際は逆です」

 

「なんやと?」

 

「隊長の副隊長任命権と同様に、隊士にも着任拒否権がある。行使されることは稀ですが、それでも僕は副隊長にならない選択肢もあった。では、何故そうしなかったか?理想的だったからです。あなたのその僕に対する疑念と警戒心が僕の計画を進めるうえで好都合だった。分かりますか、()()()()()()()()()んじゃない。()()()()()()()()()んです」

 

「藍染!ぐはっ……!」

 

 

藍染に攻撃を仕掛けようとした平子だったが、突然、口から白いものが吐き出され、顔の左半分を覆い始めた。

 

 

「安い挑発に乗っていただき、ありがとうございました。しかし、やはり軽い興奮状態の方が(ホロウ)化の進行状況は早いみたいだね」

 

(ホロウ)化やと?」

 

「知る必要はない」

 

 

その時、上空から人影が一つ落ちて来た。その正体は東仙要。

狐蝶寺はひよ里を抱えたままの状態だったが、九番隊第五席の立場である東仙相手ではそれでも十分すぎるほどの実力差があった。

 

 

「ぐはっ……」

 

「何席かは知らないけど、君に敗ける程私は弱くないよ。って、君たち大丈夫!?」

 

 

東仙を弾き飛ばした狐蝶寺は平子をはじめとした負傷した隊長たちが白いものを口から吐き出して顔を覆いはじめている状況に驚愕していた。

 

 

「真子!?どないした!?」

 

「ぐああ……!!」

 

「藍染くんだっけ、これはなに?何をしているの?」

 

「貴女が知る必要もない。さて平子隊長、最期に1つ覚えておくと言い。目に見える裏切りなど高が知れている。本当に怖いのは目に見えぬ裏切りですよ。さようなら、あなたたちはとても良い材料だった」

 

「くそおおぉぉ!!」

 

 

狐蝶寺が藍染に攻撃を仕掛けようとしたその時だった。何かに気が付いたように藍染は飛び退いた。それと同時に黒いフードを被った何者かが斬りかかり藍染の左腕に巻かれていた副官証をひっかけ、弾き飛ばした。

 

 

「ほう……これはまた面白いお客様だ。いったい、何の御用ですか?浦原(うらはら)隊長、握菱(つかびし)大鬼道長」

 

浦原(うらはら)?浦原って確か……」

 

 

狐蝶寺は藍染が名前を口にしたことで目の前の黒いフードを被った何者かが死神、それも十二番隊隊長・浦原(うらはら)喜助(きすけ)であることを知った。

 

 

「き、喜助……なんで来たんや、アホか……」

 

「平子さん、何すか?その趣味の悪い仮面は」

 

「言うてくれるやんけ……」

 

「藍染副隊長、ここでなにを?」

 

「何も。御覧の通り、偶然にも戦闘で負傷した魂魄消失案件始末特務部隊の方々を発見し、救助を試みていたところです」

 

「お前、ようぬけぬけと……」

 

「何故嘘を吐くんすか?」

 

「嘘?副隊長が隊長を助けようとすることがおかしいと?」

 

「そこじゃない。戦闘で負傷した?違う、これは(ほろう)化だ」

 

 

【宮廷遊撃部隊】すら持ち合わせていないこの不可解な現象について(ホロウ)化と言い切った浦原の語りに藍染を除いたその場にいるは人物は息を飲んでいた。

唯一、藍染はやはり予想通り(ホロウ)化と断定してきた浦原に面白いと言った印象を持ち合わせていた。

 

 

「魂魄消失案件、次々に隊士たちが掻き消えるようにいなくなり、さらにはこの事態に至った。恐らくそれは(ホロウ)化の実験っす。……何者かのね。まあ、この状況でぼかす必要もない訳っすけど」

 

「……成程。やはり君は思った通りの男だ。今夜ここへ来てくれてよかった。ギン、要。目的は十分果たした、行くよ」

 

「待て、藍染!話はまだ……」

 

 

歩いて去って行こうとする藍染の行く手を今まで浦原が語ることを黙って聞いていた狐蝶寺が阻んだ。

 

 

「逃がすと思ってるの?これだけのことをやっておいて」

 

「逃げるとは思ってはいないさ、逃げる必要がないからね」

 

「それってどういう――――――」

 

「お二人とも!お退き下され!!」

 

 

突然響き渡った握菱(つかびし)の声に、浦原と狐蝶寺は目を向けていた。見ると握菱(つかびし)左腕を伸ばし右腕でそれを支えるような格好を取っていた。

咄嗟に鬼道を放つと察した浦原と狐蝶寺はひよ里を再度抱えて射線上から飛び退いた。

 

 

「”破道の八十八”『飛竜撃賊震天雷砲(ひりゅうげきぞくしんてんらいほう)』!!」

 

 

握菱(つかびし)が伸ばしている左手より蒼い雷撃が放たれた。それは勢いそのままに背を向けている藍染ら3人を飲み込もうとしていた。

巨大な雷撃が迫る中、藍染は背中を向けてまま薄ら笑みを浮かべて一言呟いた。

 

 

「”縛道の八十一”『断空(だんくう)』」

 

 

鬼道の防壁が生成され、握菱(つかびし)の雷撃をぶつかり合って爆発炎上した。その光景に、鬼道を放った本人である握菱(つかびし)は信じられないと言いたげにそれを見つめていた。

 

 

「……バカな。副隊長が詠唱破棄した『断空(だんくう)』で私の鬼道を止めた……!?」

 

 

”縛道の八十一”『断空(だんくう)

それは、八十九番以下の破道を全て防ぎきる効果を持つ縛道。しかし、それはあくまで実力が近しい者同士が使った場合であり、隊長と同等とも言われる鬼道衆の大鬼道長が放つ鬼道を副隊長が詠唱破棄した状態で止めることなど不可能であった。

握菱(つかびし)はそのことに対して驚いていたのだ。

 

 

「申し訳ない。(のが)してしまったようです」

 

鉄裁(てっさい)さん、彼はいったい……」

 

「ぐああぁぁぁ……!」

 

 

うめき声と共に平子がより一層苦しみ始めた。

それにより狐蝶寺も浦原も握菱(つかびし)も時間が無くなったことを察した。

 

 

「浦原喜助くん。ここに倒れてる隊長たちとこの副隊長の子を頼める?」

 

 

そう言うと狐蝶寺は一連の流れで気を失っているひよ里を浦原に手渡した。浦原はひよ里に対して申し訳ないといった目を向けたあと、静かに狐蝶寺を見据えた。

 

 

「……先代護廷十三隊十三番隊隊長・狐蝶寺春麗さんっすね。いったい何をするつもりですか」

 

「そんなもの決まってるでしょ。私はあの3人を捕らえに行くよ」

 

 

そう言う狐蝶寺の目には明らかな怒りと殺気が映っていた。

雷山と等しく狐蝶寺も護廷十三隊の後輩たちのことを大事に思っていた。それはどんな理由があったとしても仲間を手にかけることに対して怒りを見せる程に、

 

 

「待ってください!いくらアナタでも無茶だ」

 

 

浦原は大鬼道長である握菱(つかびし)鉄裁(てっさい)の鬼道を簡単に止める実力を持つ藍染惣右介相手にいくら先代隊長たる狐蝶寺でも単独では危険すぎると言っていた。

 

 

「失礼言ってくれるね。浦原くん、さっき君はこの白いものを吐き出す現象を(ホロウ)化と言い切ったよね。つまり君はこの現象に対して知識があるわけだ。対して私はこの場にいても右往左往するだけで邪魔にしかならない。そんな私にも出来る唯一のことはあの3人を捕らえること。適材適所ってやつだよ」

 

 

狐蝶寺の言っていることは屁理屈と捉えることも出来たが、一理あることもまた事実だった。

そして浦原にとってこの場で狐蝶寺を止めることの出来る理由は一切ないため、自身の不用意の為に狐蝶寺に危険が及ぶ可能性を考えながらも引き下がった。

 

 

「……分かりました。お気をつけて」

 

「任せておいてよ♪」

 

【挿絵表示】

 

 

 

狐蝶寺は左手を腰に当て右手に持つ斬魄刀を肩に乗せた格好で笑みを浮かべて答えていた。

しかしそれも束の間、狐蝶寺は霊圧を解放すると同時に辺りの空気と狐蝶寺の目つき、先ほどまでの狐蝶寺の雰囲気をガラッと変えた。それは浦原や握菱(つかびし)がゾッと戦慄を憶える程のものだった。

 

 

「……見つけた」

 

 

ただ一言呟いた狐蝶寺は瞬歩で去って行った藍染たちの後を追っていった。

一方で残った握菱(つかびし)は先程狐蝶寺が言っていた通り、浦原には何かこの現象を止める手立てに心当たりがあることを問うていた。

 

 

「浦原殿、この事の対処法に心当たりがある。そう捉えても良いか」

 

「はい、賭けのような方法ですが」

 

「承知。それでも何もないよりはいい」

 

 

握菱(つかびし)は立ち上がると同時にとある鬼道を使うべく構えた。

 

 

「今からこの場にいる全員をこの状態のまま十二番隊舎へと運びます。隊舎の設備があれば、彼らの命は救えましょう」

 

「この状態のまま……!?そんな、どうやって」

 

「”時間停止”と”空間転移”を使います」

 

「なんだって……!?」

 

「どちらも”禁術”使用は厳に戒められているもの。故に今よりしばしの間、耳と目をお塞ぎ願いたい」

 

 

辺りを眩い閃光が包むと同時に握菱(つかびし)の鬼道によって空間ごと転移していった。

その頃、狐蝶寺は藍染らがいる地点まで今一歩のところまで迫っていた。

 

 

「……!」

 

 

ガキンッ!!

 

 

奇襲を仕掛けた形だったが、藍染は狐蝶寺の斬撃を完璧に受け止めていた。普段の狐蝶寺なら驚く場面であったが、先ほど浦原の奇襲を躱していたり、大鬼道長の破道を止めたりと藍染の実力の一端を見ているため想定の範囲内としていた。

 

 

「僕にいったい何の用事ですか。狐蝶寺隊長」

 

「へぇ、私のこと知ってるんだ」

 

「当然ですよ。先代隊長を知らぬほうがおかしい話だ」

 

「尚の事おかしいね。公的記録じゃあ、私は300年くらい前に死んでいることになっているんだけど」

 

「……ええ、そうですね。しかし貴女はこうして僕の目の前にいる。記録よりも自身の目で見たことの方が信じるに値しますよ。狐蝶寺隊長」

 

「時間稼ぎのつもり?残念だけど、私は君とお話しするために来たんじゃないんだよね。大人しく捕まってくれないかな」

 

 

目の前の平子や自身以上の霊圧を放つ狐蝶寺を前に東仙は臨戦態勢をとり、市丸は何をしてもアカンと斬魄刀に手すらかけずに、藍染は不敵な笑みを浮かべてただ見据えていた。

 

 

「仕様がない方だ」

 

 

たとえこの場で逃げ(おお)せたとしても追いつかれると判断した藍染は自身の斬魄刀の能力で足止めをしようと考えた。

しかし、死神は霊圧を用いた戦いであるため藍染の斬魄刀の能力が確実に狐蝶寺春麗と言う死神に通用する保証もないためある意味賭けのような形となっていた。

 

 

「言っておくけど、副隊長だからって手加減するつもりはないからね」

 

「面白いことを言いますね。まるで手加減が出来ると言っているみたいだ」

 

 

狐蝶寺が動こうとしたその時、突如雷鳴が辺りに轟いた。狐蝶寺はその音が雷山の斬魄刀によるものだとすぐに気が付いた。

そして、その一瞬だけ目の前の藍染惣右介と言う死神から意識を逸らしてしまっていた。その隙を藍染を見逃さず、すぐさま鬼道を使って姿をくらませた。

 

 

「”縛道の七十二”『鏡界転(きょうかいてん)』」

 

「しまった」

 

「春麗!」

 

 

その声と共に雷山が瞬歩で現れた。その顔には狐蝶寺が無事でいた安堵の二文字が現れていた。

 

 

「雷山くんごめん!逃げられちゃった!」

 

「逃げられたって、例の虚みたいなやつのことか?」

 

「違う違う!五番隊副隊長・藍染惣右介くんだよ。彼が(ホロウ)化実験の首謀者だったんだよ!」

 

 

副隊長と藍染の名前を聞いた時、雷山は一瞬だけ驚いたように眼を見開いた。たった1人の副隊長が【護廷十三隊】、引いては【宮廷遊撃部隊】相手にこれだけのことをやり(おお)せた事に感嘆すら覚えた。

そしてもう1つ、椿咲から聞いていために人柄もある程度知っている、藍染惣右介と言う死神が大逆を働いた事実には予想外と言わざるを得なかった。

 

 

「……成程。(ホロウ)化と言うのも初めて聞く言葉だが、つまるところ浮葉が報告した例の(ホロウ)みたいなやつはその実験体という事か」

 

「そう言うことになるね。それでどうするの?藍染くんを追う?」

 

「ああ、だがその前に前線はどういった状況になってる?」

 

「え?……えっとね、救援部隊の隊長たちは藍染くんにやられちゃって(ホロウ)化しかけているんだ。その時に浦原喜助くんと握菱(つかびし)鉄裁くんが来てね。蒲原喜助くんが知識を持ち合わせてたみたいだから任せて来たよ」

 

「……分かった。春麗が任せられると判断したのならそれでいい。こちらは一足先に瀞霊廷に帰還しよう。藍染惣右介も向かうは瀞霊廷だろうしな」

 

「分かった」

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

”雷山さん、聞こえますか!”

 

「白か?心配をかけたな。春麗も無事だぞ」

 

 

雷山と狐蝶寺が瀞霊廷に帰還した時、銀華零より鬼道による呼びかけがあった。雷山は自身らが帰還したことを察知した銀華零が呼びかけして来たものだと思ったが、銀華零の口からは思いもよらない言葉が飛び出した。

 

 

”その前に厄介なことが起きました。つい先ほど、浦原十二番隊隊長と握菱(つかびし)大鬼道長に捕縛命令が出ました”

 

「捕縛命令?……何の容疑でだ?」

 

”命令を出したのは中央四十六室。容疑に関しては浦原十二番隊隊長へは禁忌事象研究及び行使・儕輩欺瞞(せいはいぎまん)重致傷の罪。握菱(つかびし)大鬼道長は禁術行使の罪の容疑です”

 

「……春麗、今回の首謀者は間違いなく藍染惣右介なんだよな?」

 

「うん。この眼で見たし自分から言ってたからね。それより白ちゃんはなんて言ってるの?」

 

「どうやら、藍染が先に手を打ったみたいでな。浦原と握菱(つかびし)に捕縛命令が出ている。罪状は儕輩欺瞞(せいはいぎまん)重致傷と禁術行使」

 

「え!?なら早く止めないと!」

 

「白、状況は分かった。今から元柳斎のもとへどういうことか確認をしてくる。椿咲と山吹は戻ってるか?」

 

”雷花さんは戻って来ましたが、南美ちゃんはまだですね”

 

「そうか……」

 

 

藍染のことを一番よく知る椿咲がまだ帰還していなかったことで雷山はこの後の対応が後手に回る可能性を考えたが、藍染の確保より情報を持つ浦原と握菱(つかびし)の身柄確保を優先するべきと考えた。

そしてその場合は山吹1人が戻っているのなら打てる手はいくらでもあると判断した。

 

 

「……よし、では俺はこの後元柳斎のもとへ向かい状況の確認をする。中央四十六室(ろうがいども)のことだまず無罪などあり得ないだろうから浦原、握菱(つかびし)両名の身柄確保を最優先とするために動く、身柄確保の部隊人員は白、浮葉、山吹の3名だ」

 

”……分かりました、準備しておきます”

 

 

普段なら中央四十六室の判決に手を出すという反逆とも取られかねない危険な行動を止める銀華零であったが、そのリスクを負ってでも浦原、握菱(つかびし)の身柄保護するべしと覚悟を決めていた様子だった。

 

 

”そして雷山さん、捕縛命令と共にもう1つ別の命が……”

 

「別の命?……は?」

 

 

その声に狐蝶寺は目を向けていた、そして雷山から怒りを感じ取った。

雷山は銀華零から伝えられたもう1つの命令のことに一瞬驚いた顔をした後、眉間にしわを寄せて怒りに満ちた顔をしていた。

 

 

「分かった。ひとまず準備を頼んだぞ。はぁ……」

 

「また何かあったの?」

 

「ああ、捕縛命令とは別な命が出たそんなんだが―――

 

 

雷山は途中まで言いかけた言葉を飲み込んだ。

 

 

―――……いや、春麗には話せないなこれは」

 

「なんで?雷山くんも知ってるでしょ。私の一番嫌いなことが隠し事されることだって」

 

「それを知った上で()()言うべきじゃないと判断したんだ。なぜなら、今白から聞いた件を教えれば春麗は確実に藍染惣右介を殺しに行くか中央四十六室を痛めつけに行くくらい怒ると思ったからだ」

 

 

雷山は長い付き合いの狐蝶寺の性格を知っていた。狐蝶寺は仲間を大切にする死神だと、そんな彼女が銀華零からの報告内容を聞いたらどうなるか、どうするか、そんなものは火を見るよりも明らかだった。

 

 

「…………」

 

 

一方の狐蝶寺は雷山に不満を感じていた。しかし同時に考えもした。何故、報告内容ではなく報告内容を聞いた後の行動を言ったのかと、

狐蝶寺は雷山は察してほしかったのだと考えついた。自身の性格を知る雷山が、自身がその行動に移すほどの内容である報告を受けたのだと、だからこの場は雷山への不満だけにとどめて大人しく休んでくれと、口には出さずに暗にそう言っているのだと。

 

 

「分かったよ。それじゃあ私は少し休ませてもらうね」

 

「すまないな。ついでと言っては悪いが、椿咲が戻って来たらこちらの手伝いに来るよう伝えてくれ」

 

 

 

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