宮廷遊撃部隊・十四番隊   作:らりるれリッター

18 / 30
第17話 転換点

 

 

 

-- 瀞霊廷内・懺罪宮(せんざいきゅう) --

 

 

 

狐蝶寺は雷山の命により朽木ルキアの警護の任を務めている銀華零白と山吹雷花に情報を伝えに来ていた。

それはつい先刻、雷山が中央四十六室・地下議事堂内部に潜入して得た『中央四十六室全滅』の情報。

 

 

「……分かりました。しかし、まさかそこまで事態が深刻な状態とは……」

 

「うん。さすがに私もビックリしちゃったよ」

 

「念のために聞きますが、事実なのですよね?」

 

「雷山くんが実際に見て来たそうだから」

 

「春麗さん、その件はやはり藍染惣右介の仕業なのですか?」

 

「雷山くんはそうだと考えているよ。藍染くんの目的が目的だから四十六室を皆殺しにするのが手っ取り早いって」

 

「……分かりました。という事はやはり」

 

「冤罪ではないんだろうけど、藍染くんが中央四十六室を騙って朽木ルキアちゃんを処刑したがってるのは事実なんだろうね」

 

 

 

-- 瀞霊廷内・とある路地 --

 

 

 

「……誰じゃ?」

 

 

1匹の黒猫が道を歩く。

数歩行ったところでその歩みをやめ、辺りに問いかけた。

 

 

「…………」

 

「隠れておらんで姿を見せたらどうじゃ?」

 

「上手く気配は消していたつもりなんだが、よく分かったな」

 

 

その瞬間、黒猫の目の前の空間が陽炎(かげろう)のように歪み始めた。それは一瞬モヤが濃くなったと思えば、すぐに晴れていき徐々に人の姿が露わになっていった。

黒猫はそれを見て高位の鬼道であると見抜いた。

 

 

「それで気配を消していたとは儂も随分と甘く見られたものじゃな」

 

「そりゃ畜生相手に本気出すやつがいるかって話だ」

 

 

黒猫は目の前に現れた隊長羽織を身に纏う死神を見て警戒感を露わにしていた。

黒猫の正体の人物と雷山との間に面識はなく互いに名前しか知らない状態だったため当然と言えば当然だった。

 

 

「そんなに警戒しなくても取って食おうってわけじゃない。少し話がしたい」

 

「儂と話したいとな。ならば、まず名乗れ。おぬしはいったい何者じゃ?」

 

「ああ、それはすまないことをした。俺は【宮廷遊撃部隊(きゅうていゆうげきぶたい)十四番隊部隊長(じゅうよんばんたいぶたいちょう)】雷山悟だ」

 

「雷山……成程、おぬしが雷山悟か」

 

「今度はこちらが1つ注文をつけよう。その猫の姿、解いてくれないか?どうにもその状態だと話しにくくてしょうがない」

 

「……いいじゃろう」

 

 

黒猫が霊圧を少し開放すると同時に猫の姿が徐々に人の姿に変わっていき、最終的には褐色肌の女性の姿になった。そして雷山はその姿に見覚えがあった。

 

 

「……その昔、猫に変化する(すべ)を持つとは噂で耳にしたことはあったが、本当だったんだな。先代護廷十三隊二番隊隊長・四楓院(しほういん)夜一(よるいち)

 

「儂のことを知っておるか」

 

「ああ……ってその前に服を着ろよ。猫の時より話しづらくなったじゃねぇか」

 

「今は持っとらん。儂は気になどせぬし、それに女子(おなご)の裸などおぬしにとっては今更でもあろう」

 

「余計な誤解を招く表現は止してくれ。お前が良くてもあとで白と春麗に殴られんだよ。仕方ない、術を解かせて早々悪いが猫に戻ってくれ」

 

「やれやれ」

 

 

夜一は面倒くさいと言いたげにため息を吐くと再び黒猫の姿に戻った。

裸を見られても気にしないと夜一は言ったが、雷山にとって夜一がどうこうではなく、そんな状態で話していたと銀華零、狐蝶寺に知られれば逆鱗に触れるのは目に見えていたからである。

 

 

「それで、何故あんたを知っているかだったか。そんなものあんたが四楓院のじゃじゃ馬姫って有名だったからに他ならない。それに101年前の事件の際、白から報告も受けている。まさか旅禍(りょか)を連れて戻って来るとは思っていなかったが」

 

「……旅禍(りょか)を伴って尸魂界(ソウル・ソサエティ)に踏み入った儂をひっ捕らえようという腹積もりか?」

 

「少し話がしたいと言ったろ。そんなことをするつもりは毛頭ない」

 

 

夜一は雷山が言う事が真実がどうか判断しかねていた。しかし、仮に逃げるにしても瞬神(しゅんしん)と謳われた自身の歩法でさえ雷山相手では逃げ切るのは不可能であると考え、ここは大人しく話をするべきと判断した。

 

 

「……分かった。話を聞こう」

 

「今回、我々【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”は朽木ルキアの処刑阻止を前提に動いている。その中でお前が連れて来た旅禍(りょか)たちと協力関係を結びたいと考えているんだ」

 

「成程、そこで他の背格好と名前を教えろと言う訳じゃな」

 

「ご名答。名前も外見も知らずにどうやって協力するんだって話だ」

 

「1つ聞く。おぬしら”十四番隊”は処刑阻止に動くと言うたが、それを信用する証拠は?」

 

「ない。だが、今回の処刑騒動が藍染惣右介によって仕組まれたことだというのは大方予想はついている」

 

「……生憎じゃが、それを信じるほど儂らはお人好しではないぞ」

 

「だろうな。だがお前も分かっているはずだ。我々の協力があれば朽木ルキアの救出が尚の事容易になる事も、他5人の旅禍(りょか)が死ぬ可能性が限りなく0になることも」

 

 

夜一は今の5人がバラバラになってしまった状況を鑑みて、戦力としては十分すぎるほどの雷山率いる”十四番隊”の協力を得るのも悪くはないと考えていた。

 

 

「……分かった。儂が連れて来たのは全部で5名。ただし、はぐれてしまったため、どこにおるかは儂も知らぬ」

 

「それに関してはこちらで探すからいい。仮に捕まったとしても何かしろの理由を付けて殺すことだけは阻止しよう」

 

「その言葉、信じてよいのじゃな?」

 

「今この場でお前に嘘を吐く理由もメリットもこちらにはねぇよ」

 

「分かった。では、話そう」

 

 

その後、雷山は今回の旅禍とされている黒崎(くろさき)一護(いちご)石田(いしだ)雨竜(うりゅう)茶渡(さど)泰虎(やすとら)井上(いのうえ)織姫(おりひめ)志波(しば)岩鷲(がんじゅ)の5人の名前とその特徴を聞きだした。

 

 

「ひとまず、名前と特徴だけじゃが確かに伝えたぞ」

 

「……黒崎に石田?」

 

 

雷山はその名前に聞き覚えがあった。そう、それは今から200年前現世で相対した滅却師(クインシー)の生き残りたち。

 

 

「四楓院夜一、黒崎一護と石田雨竜って言うのは滅却師(クインシー)か?」

 

「いや、一護は違う。何故じゃ?」

 

「……気にするな。昔似た名前のやつと相対した覚えがあるだけだ」

 

 

ドンッ!!

 

 

その時、夜一と雷山は六番隊副隊長・阿散井(あばらい)恋次(れんじ)の霊圧を感じた。そしてその霊圧の中に夜一にとっては知る。雷山にとっては知らぬ霊圧が含まれていた。

 

 

「この霊圧は阿散井恋次の……」

 

「成程、これが黒崎一護か」

 

「雷山悟よ。悪いが、儂は先を急ぐ、ひとまず協力感謝する」

 

 

夜一は雷山にひと声かけるとそのまま霊圧のする方へと去って行った。

 

 

「……目的は達したな。しかし案内役で来たのが話が通じる四楓院夜一で助かった。浦原相手では下手に言いくるめられる上に嘘を吹き込まれてしまうからな」

 

 

雷山は先ほど阿散井恋次と黒崎一護の霊圧を感じた方角に目を向けた。十四番隊の共通認識の1つに旅禍(りょか)が隊長格と戦闘を始めた場合は死に瀕するリスクを負う前に割って入ってでも止めるべきがあった。

 

 

「……仕方がない。様子だけでも見に行くか」

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

「……出遅れたか。もうかなり人が集まっているな」

 

 

雷山は阿散井恋次と黒崎一護が戦っていた場所の近くまでやって来ていた。

戦闘自体はすでに終わっていたが、辺りに多くに人だかりが出来ているのが見えたために迂闊に近づけなくなっていた。

 

 

「阿散井は護廷十三隊が勝手にやってくれるから捨て置くにしても、黒崎一護は何とかしなければな。"縛道の二十三"『指円望遠(しえんぼうえん)』」

 

 

雷山は自身の右目の前で片眼鏡のような形に指で円を作ると人だかりの中を探り始めた。

 

 

「……おお、阿散井恋次の方は派手にやられたな。他に倒れている奴は……なしか」

 

 

倒れる阿散井恋次の周りには恐らく自身と同じく霊圧を感じやってきた三番隊副隊長・吉良(きら)イヅル、その他隊士数人だけがそこにあり、黒崎一護も四楓院夜一の姿はその場になかった。

 

 

「黒崎一護がいない以上手出しはは無用だな。しかしついこの間三席と五席を倒したところだろうに、もう副隊長を倒してその場から逃げ(おお)せることが出来るレベルの実力か……」

 

 

雷山は少し前に十一番隊第三席・班目(まだらめ)一角(いっかく)、同第五席・綾瀬川(あやせがわ)弓親(ゆみちか)両名が旅禍(りょか)に撃破されている情報を得ていた。

それに対して雷山も黒崎一護という死神代行の成長スピードに驚嘆していた。

 

 

「こりゃ、うかうかしてると我々の出番もなく、本当に黒崎一護だけで朽木ルキアを助け出してしまうかもしれないな」

 

 

 

               ・

    

 

               ・

 

 

               ・

 

 

               ・

 

 

               ・

 

 

 

 

 

 

"六番隊副隊長・阿散井恋次の敗北――――"

 

 

その情報は瞬く間に瀞霊廷中を駆け巡ることとなった。

護廷十三隊の席官だけではなく副隊長とは言え、隊長格にも被害が及んだことに【護廷十三隊総隊長】山本元柳斎重國は危機感を覚え、火急の事態であるとして戦時特例を発動した。

これによって隊長、副隊長を含む上位席官の斬魄刀常時携帯及び、全面開放を許可する決断をした。

 

 

 

-- 瀞霊廷内・十四番隊詰所 --

 

 

 

「雷山悟。帰還した」

 

「雷山くんお帰り~♪さっそくだけど、これ見てよ。結構大変なことになったよ?」

 

 

襖を開けると銀華零、山吹の元から先に戻ってきていた狐蝶寺がいた。

狐蝶寺は1枚の報告書らしきものを雷山に手渡した。内容は阿散井恋次が旅禍に敗北したというものだった

 

 

「……なんだ、阿散井恋次の件か」

 

「あれ、知ってたの?」

 

「案内役と話しをしたついでに現場を見て来たからな。随分とまあひどくやられてたな」

 

「あ、そう言えば聞いてなかったけど、案内役って誰なの?」

 

「ん?分かってなかったのか?四楓院夜一だよ」

 

「あー、だからじゃじゃ馬姫って……」

 

 

狐蝶寺はその時、少し前に雷山が『じゃじゃ馬姫に会えていない』と言っていたことを思い出し、あれは四楓院夜一のことを言っていたのかと気付いた。

 

 

「他の5人の名前と容姿も聞いてきたぞ。名前はそれぞれ黒崎一護、石田雨竜、茶渡泰虎、井上織姫、志波岩鷲と言うそうだ」

 

「志波岩鷲?志波ってもしかしてあの志波家?」

 

 

普段人の名前などあまり覚えていないような狐蝶寺でもさすがに元五大貴族の一角の名は聞きなじみがあった。

 

 

「直に見てないし霊圧も感じ取ってないから何とも言えないが、恐らくそうだろう。まあ、すでに志波空鶴が絡んでいるから他にも志波家の誰かが絡んでいてもおかしくはないけどな」

 

「ふーん。あ、あと山本元柳斎(おじいちゃん)からの伝令が来てね――――――

 

”今回の阿散井恋次の件は火急の事態と判断する。よって今より戦時特例を発動し、上位席官の斬魄刀常時携帯及び、全面開放を許可する"

 

――――――だって」

 

「戦時特例か。まあ、副隊長とは言え隊長格が1人やられたんだからごもっともな判断だな。春麗、二度手間になってすまないが、白と山吹の所へ斬魄刀を届けに行ってくれないか?ついでに四楓院夜一と接触に成功したという情報も持って」

 

「おっけーい♪戦時特例云々も伝えて来ればいいよね?」

 

「ああ、頼んだぞ」

 

「はーい!じゃあ行ってくるね!」

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

「うーん、私としては朽木ルキアちゃんを懺罪宮(せんざいきゅう)から出しちゃえばすぐに終わると思うんだけどなー……」

 

 

狐蝶寺はあまり表立って行動するべきではないことは分かっていたが、それでも朽木ルキアを先に救い出してしまえば、藍染惣右介が派手に動き出すのではないかと考えていた。

 

 

「まあ、でもこれは雷山くんも思いついていたことだろうし、それをやらないってことは他に考えがあるんだろうなー」

 

 

狐蝶寺は雷山から聞いてないが故に知る由もなかったが、雷山自身もかつて猿柿ひよ里を匿った時同様、朽木ルキアを懺罪宮(せんざいきゅう)から出してしまえば藍染惣右介とて動かざるを得ない状況を作れるのではないかと考えていた。

しかし、それと同時に藍染は101年前の事件、及び今回の中央四十六室皆殺しを誰にも気づかれずにやってのける人物。

まだ何も策も用意しておらず、ましてや証拠もない状態で迂闊にそんな行動を起こせば、十四番隊が賊軍として扱われ、護廷十三隊との不要な戦争となる可能性が大いにあった。そして最悪のパターンとして戦争の最中、朽木ルキアが藍染一派の手によって殺されてしまう可能性があったためにやるべきではないとこの作戦を見送っていたのであった。

 

 

「あっ!いけないいけない。こんなこと言うと白ちゃんが怒っちゃうんだった」

 

 

 

 

 

"きゃああああああああーーーーーー!!!"

 

 

 

 

 

「え?なに今の悲鳴……」

 

 

突如として悲鳴が聞こえ、狐蝶寺も思わず立ち止まってしまった。

 

 

「うーん、何かあっても嫌だし一応様子だけでも見に行こうかな……」

 

 

狐蝶寺は進路を変えて悲鳴が聞こえた方へ向かった。

 

 

「あ、藍染隊長が……!!」

 

「藍染隊長ーーーーー!!!」

 

 

狐蝶寺が着くと、そこでは副隊長が複数人集まって壁の上部を見て絶句していた。そう、彼らの目には五番隊隊長・藍染惣右介が胸に斬魄刀を突き立てられる姿が映っていた。

 

 

「え、藍染って……あれが?」

 

 

斬魄刀が突き立てられる死神の姿は狐蝶寺の目にも映っていたが、一点だけ副隊長たちとは違っていた。

 

 

「なんでみんな藍染くんって……」

 

 

狐蝶寺がふと眼下を見ると、【三】と書かれた隊長羽織を身に纏う死神が一人歩いて来ているのが見えた。

狐蝶寺はすぐにそれが三番隊隊長・市丸ギンであることに気が付いたが、1つ驚愕する事態が起きた。

 

 

”……え?”

 

「…………」

 

”気のせいかな。いま目が合ったような……”

 

 

狐蝶寺は現在、姿と霊圧を消す鬼道を使っているに加え、気配も消しているため目が合うことなどほとんどあり得ない状態であった。しかし、"なんとなく"程度の違和感だったが、狐蝶寺は市丸と目があったような気がした。

 

 

「何や?朝っぱらから騒々しい。……おや、これは一大事やね」

 

 

市丸はまるで他人事かのようにそう言いながら副隊長たちの前に姿を現した。

その顔には笑みが浮かんでおり、まるでこうなるのが分かっていたかのようだった。

 

 

「……お前か!!」

 

 

少しの間の後五番隊副隊長・雛森(ひなもり)(もも)が市丸に斬りかかるべく動いた。

彼女は市丸の態度ととある幼馴染から受けた忠告である、三番隊に気をつけろの言葉で市丸が藍染を殺したと思っていた。

 

 

”え、ちょっと!?”

 

 

その行動はさすがの狐蝶寺も驚きを隠せずにいた。そして、雛森が斬りかかろうとしている最中市丸が彼女を殺すために死覇装(しはくしょう)の袖口から手を出したのも見えた。

 

 

”このままじゃあの子……雷山くんごめん!”

 

 

このままでは雛森は市丸に殺されると判断した狐蝶寺は、割って入って止めるべきと斬魄刀に手をかけ動こうとした。しかし、それより早くそして意外な形で彼女は命を拾うことになる。

 

 

ガキンッ――――――!!

 

 

「吉良くん、どうして……」

 

 

市丸と雛森の間に割って入った人物。それは三番隊副隊長・吉良(きら)イヅルだった。

吉良は寸でのところで雛森の斬撃を受け止めていた。

 

 

「僕は三番隊副隊長だ。どんな理由があろうとも隊長に剣を向けることは僕が許さない」

 

「お願い、退いてよ。吉良くん……!!」

 

「それは出来ない」

 

「退いて!退いてよ!!」

 

「ダメだ!!」

 

「退けって言うのが分からないの!?」

 

「ダメだというのが分からないのか!!」

 

「くっ……"(はじ)け"『飛梅(とびうめ)』!!」

 

 

解号を唱え、始解した雛森の斬魄刀は七支刀の形へと変化した。それと同時に能力の影響か爆発し、辺りを爆風と煙が包んだ。

 

 

「こんなところで斬魄刀を……浅薄(せんぱく)……!!」

 

 

怒りのあまり我を忘れて斬魄刀を解放する雛森に対して吉良は浅はかすぎると考えた。

 

 

「自分が何をやっているのか分かっているのか!公事と私事を混同するな、雛森副隊長!!」

 

 

吉良の言葉に耳を傾けず、雛森は再度爆撃を放った。それは自身を阻む吉良へは向かわず、市丸の方へ向かっていった。

 

 

ドォォォン...

 

”ちょっとぉぉぉ!!血気盛んなのは良いんだけどさぁぁ!!”

 

 

市丸の方へ向かった爆撃だが、大きく外れて狐蝶寺のいる場所の近くへと着弾した。一方、吉良は自身の上司である市丸への明確な攻撃を受けて雛森を斬る覚悟を決めたようだった。

 

 

「……そうか。それなら仕方ない。僕は君を敵として処理する。"(おもて)()げろ"『侘助(わびすけ)』!!」

 

 

雛森、吉良両名の件がぶつかろうとしたその時、護廷十三隊十番隊隊長・日番谷(ひつがや)冬獅郎(とうしろう)が割って入りその場を収めた。

 

 

「動くなよ。どっちも」

 

「日番谷くん……」

 

「捕らえろ。二人ともだ」

 

「日番谷くん!!」

 

 

雛森は日番谷に対して何故止めたのかと言いたげな顔をしていた。

 

 

「雛森、剣でやり合いなんかやってる場合かよ。藍染隊長をあそこから降ろしてやるのが先なんじゃねぇのか」

 

 

日番谷に諭された雛森は目を落としていた。

 

 

「総隊長への報告は俺がする。そいつらは拘置だ。連れて行け」

 

 

雛森は十番隊副隊長・松本(まつもと)乱菊(らんぎく)、七番隊副隊長・射場(いば)鉄左衛門(てつざえもん)に抱えられ連行されていった。途中すれ違う市丸ギンを睨みながら、

 

 

「すんませんなぁ、十番隊長さん。三番隊(うち)副隊長(もん)まで手間かけてもうて」

 

「……市丸、てめぇ雛森を殺そうとしたな」

 

「……はて、何のことやら」

 

 

とぼける市丸だったが、右腕だけが不自然に死覇装の袖口から出ていた。

 

 

「今のうちに言っておくぜ。雛森に血流させたら俺がお前を殺すぜ」

 

「そら怖い。悪い奴が近づかんように、よう見張っとかなあきませんな」

 

「どうなさいました!市丸隊長、日番谷隊長!……なっ!?これは、藍染隊長が……!!なんという……」

 

「藍染隊長を降ろしてやってくれ」

 

「は、はい!」

 

 

その後、磔にされた死神の身体は降ろされ総合救護詰所へ搬送されて行った。

 

 

「よいしょっと……」

 

 

騒ぎが治まった直後、雛森の爆撃を受けないように物が気に隠れていた狐蝶寺は辺りを探りつつ出てきた。

 

 

「なーんか、もっと大事になっちゃいそうだね。……って野次馬してる場合じゃないや。早く斬魄刀届けに行かなきゃ!」

 

 

 

 

 

" 護廷十三隊五番隊隊長・藍染惣右介死去 "

 

 

旅禍(りょか)侵入事件の最中に起きたこのもう1つ事件は【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”発足以来1度も使われなかった制度、そして1人が表舞台に出てくる最大の転換点となった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。