宮廷遊撃部隊・十四番隊   作:らりるれリッター

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第18話 表に出てきた雷神狼

 

 

 

-- 瀞霊廷・一番隊隊舎内 --

 

 

 

ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!

 

 

「まったく元柳斎のやつこのクソ忙しい時に……」

 

 

一番隊隊舎内、雷山はイライラしながら歩いていた。それは普段なら鬼道で姿を隠しながらやって来ているところを完全に忘れているほどであり、一番隊隊士たちは初めて見る雷山の事を必死に止めようとしていたが、雷山のあまりの剣幕にすれ違う者は誰も雷山に対して話しかける事すらできず、ただただ避ける事しか出来ていなかった。

何故雷山がイライラしているのか。それは数分前に遡る――――――

 

 

 

 

 

□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■

 

 

 

 

 

「―――……以上のことから藍染惣右介の目的は朽木ルキア氏の処刑ではなく」

 

「朽木ルキア本人ってわけか」

 

 

-- 瀞霊廷・十四番隊詰所 --

 

 

雷山は藍染惣右介の内定調査より戻った浮葉、椿咲両名から報告を受けていた。

報告によれば、藍染の目的は朽木ルキア本人。詳しく言えば、朽木ルキアの霊体の中に隠されているあるものであることが分かった。

 

 

「失礼します。雷山隊長は中にお見えでしょうか」

 

「え?今の声って……」

 

 

突然、襖の外から聞こえた声に椿咲は驚いた。通常、十四番隊詰所に来客がなどあり得ないためであった。それと同時に外から聞こえた声について椿咲と浮葉は聞き覚えがあった。

 

 

「雷山悟は中にいる。入って来ていいぞ」

 

「失礼致します」

 

 

そう言って開けられた襖の奥にいたのは一番隊副隊長・雀部(ささきべ)長次郎(ちょうじろう)忠息(ただおき)であった。

 

 

「えっと、何故雀部副隊長がこちらに来れるんですか?十四番隊(わたしたち)って山本総隊長しか知らないと聞いたんですけど」

 

 

椿咲の言う通り【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”は瀞霊廷内広しと言えど、【護廷十三隊総隊長】である山本元柳斎しか知り得ないことであった。

しかし、実際にはそれは誤りでたった1人だけ例外が存在した。それが元柳斎の副官を務める雀部であった。

原則として情報のやり取りは狐蝶寺が担うことになっているが、何かしろの理由ですぐに十四番隊へ情報を流す必要が生じた際は、狐蝶寺を呼ばずに代わりに雀部が十四番隊詰所まで来て情報交換を行っていた。

 

 

「確かにそれは嘘ではないが、春麗がすぐに一番隊隊舎へ行けない場合もあるだろう?そんなときに総隊長たる元柳斎がこっちへ来るわけにもいかない。だから例外的に副官の雀部だけはこの場所を知っていて、ごく稀にやって来るんだ。それで、春麗を呼んでいる暇がなかったというのは分かるが、いったい何用なんだ?」

 

「元柳斎殿より雷山隊長へ伝令です。至急、一番隊隊長執務室へお越しください」

 

「この忙しい時にか?」

 

「はい、元柳斎殿は火急の事態につきと」

 

 

雷山は平静を装っている雀部の細かな態度と元柳斎の火急の事態という言葉で、何か自身を呼び出さないとならない事態が起きたのだろうと察した。

 

 

「……一応何があったのかだけでも聞かせてもらえるか?」

 

「今しがた入った報告です。五番隊、藍染惣右介隊長が何者かに殺害されました」

 

「…………」「ッ!!」「え!?」

 

 

雀部の言った五番隊隊長・藍染惣右介が殺害されたという報告は十四番隊を別の意味で驚かせた。

 

 

「……はぁ、分かった。すぐに向かおう。椿咲と浮葉は先程の情報の精査、そして春麗が戻り次第、現在位置を探るところまで進めてもらえるか?」

 

「……承知しました」「……分かりました」

 

 

雷山が指示したことの意図を察した二人は深刻そうな顔をしていた。それは雀部も気付いていたが、その真意を察することは出来なかった。

 

 

「頼んだぞ」

 

 

雷山はそう言うと瞬歩でその場を去った。しばらくの沈黙の後、浮葉が口を開いた

 

 

「……南美隊長、急がねばならないですね」

 

「うん、春麗さんにもこのことを共有してから……だね」

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

現在に至る。雷山はちょうど忙しくなったこのタイミングで火急の事態とは言え、呼び出したことに対してイライラしていたのだった。

 

 

「【宮廷遊撃部隊・十四番隊部隊長】雷山悟。馳せ参じたぞ」

 

「うむ。入れ」

 

 

少しの間の後、中から元柳斎の返答が帰ってきた。それを合図に雷山は隊長執務室の中へ入った。

 

 

「失礼する。まったく、こんな忙しい時に何の用だ?藍染惣右介を殺した奴を探し出せってか?」

 

 

雷山はすでに藍染惣右介に関してとある情報を得ているため何が起きているかを元柳斎以上に把握していた。しかし、この場でそれを口外することも察せられることも避けるべきと判断しており、知らぬ存ぜぬを貫いていた。

 

 

「否、おぬしには別の要件があって呼び出した」

 

「は?それはどういう……」

 

「此度の旅禍の件で事態は火急であると判断し、【護廷十三隊総隊長】山本元柳斎重國の名のもと、【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”に対して正式に、五番隊隊長代理を要請したい」

 

 

『 隊 長 代 理 』

それは副隊長に隊長と同等の権限を一時的に貸与する”隊長権限代行”とは違い、文字通り十四番隊の1人を一時的に護廷十三隊隊長へ復職させる制度である。この制度は隊長職の欠員が数十年、数百年の長きに渡ると判断される場合に【護廷十三隊総隊長】【宮廷遊撃部隊・十四番隊部隊長】両名の行使決定権、任命権を以て適応することが出来るが、十四番隊が発足して以降一度たりとも要請されたことがなかった。

 

 

「……一応聞くが、誰を五番隊隊長代理に任命するつもりなんだ?」

 

「おぬしをここへ呼んだ時点で答えになってはおらぬか?」

 

 

元柳斎が隊長代理の話を出した時点でなんとなく自身に対してなのだろうと予想していた雷山だったが、あえて誰を指名するかを問うた。

それは元柳斎も分かっており、暗に雷山に五番隊隊長代理に就任してほしいと答えた。

 

 

「……はぁ、情けない話だな。そこまで例の旅禍(りょか)護廷十三隊(おまえたち)は引っ掻き回されているのか?」

 

旅禍(りょか)の情報を未だ手に入れられぬ宮廷遊撃部隊(おぬしら)には言われとうない台詞じゃ」

 

 

雷山はたった6人の旅禍(りょか)に引っ掻き回されて『 隊長代理 』という奥の手まで使用してまで雷山を引っ張り出してくる【護廷十三隊】の情けなさを、

元柳斎はその旅禍の情報を意図的かどうかは置いて今だ護廷十三隊に流していない【宮廷遊撃部隊】の体制をそれぞれ挑発していた。

 

 

「まあ、ひとまず五番隊隊長代理の話を受けるのは良いが、それをどうやって各隊長に伝えるんだ?今集めている余裕なんかないだろし、正直に十四番隊の事を話すつもりもないだろう?」

 

「各隊長へは追って沙汰する。まずは早急に任に就いてもらいたい」

 

「前から思っていたことだが、何をそう急いでいる?それに隊長がいなくともしばらくの間なら副隊長で代替が効くだろ」

 

「……藍染惣右介の遺体が発見された際、錯乱した五番隊副隊長とそれを止めるために斬魄刀を解放した三番隊副隊長の騒ぎがあっての。両名とも拘置処分になっておる」

 

「はぁ……?」

 

 

その話を聞いた時雷山は困惑した。

現五番隊副隊長・雛森桃は雷山も知っており、雷山自身の評価では隊長が戦死した程度では錯乱しない聡明な人物という印象を持っていたからである。

 

 

「……はぁ、随分と若い衆は血気盛んで賑やかなことだ。では正式に【宮廷遊撃部隊・十四番隊部隊長】雷山悟の名において、五番隊隊長代理を拝命する。さっそくその五番隊副隊長に挨拶に行くとしよう」

 

「待て。おぬしまた勝手な行動を……!!」

 

「任せておけ、上手いことやる。それに隊長代理の身分が現副隊長に挨拶も無しとは礼儀がなってないだろ?」

 

 

そう言って雷山は去って行ってしまった。雷山が出て行って少し間が開いた後、元柳斎は自身と千年来の付き合いがあるが故に言う事を聞きにくい雷山を、唯一(たしな)めることが出来る銀華零がいないこのタイミングで五番隊隊長代理に選んでしまったことを少し後悔していた。

 

 

 

-- 瀞霊廷・懺罪宮(せんざいきゅう) --

 

 

 

「はい、これが白ちゃん斬魄刀。そしてこれが山吹ちゃんの斬魄刀ね」

 

 

そう言う狐蝶寺の姿は懺罪宮(せんざいきゅう)にあった。雷山の指示で十四番隊詰所に置かれていた二人の斬魄刀を手渡すために、

 

 

「狐蝶寺隊長、ありがとうございます」

 

「春麗ちゃんがとんぼ返りして来た時は何事かと思いましたが、戦時特例ですか。そこまで旅禍(りょか)の方が進軍しているのですか?」

 

「うん、少し前に六番隊副隊長の子が負けちゃうくらいにはね。あ、そうそう!雷山くんから旅禍(りょか)の子の名前とか特徴の情報を預かってきたんだった」

 

「さっそく聞きましょう。この会話を誰かに聞かれるわけにはいかないですし」

 

「そうだね。結構急ぎ足になっちゃうと思うからよく聞いてね」

 

 

その後、狐蝶寺は雷山から預かった情報を話した。今回、尸魂界(ソウル・ソサエティ)にやって来た5人の旅禍の名前と特徴、その案内役が四楓院夜一であり、協力関係を築けたこと、つい先ほど起きたことの情報を添えて

 

 

「成程、案内役は夜一さんでしたか。確かに雷山さんの言う通りうってつけの人物ですね」

 

「他5名の旅禍(りょか)の皆さんの情報は頭に入れました。狐蝶寺隊長、わざわざありがとうございます」

 

「いいって♪私の仕事の1つだし♪それよりさ、藍染くんのこと白ちゃんと山吹ちゃんはどう思う?」

 

「藍染五番隊隊長が斬魄刀で突き刺されていた話ですよね」

 

「うん。副隊長の子たちはそう言ってたんだけど、どう見ても磔になってた死体が藍染くんじゃないんだよね。けど、副隊長子たちが全員見間違えるわけもないし、どういう事なんだろって」

 

「そうですね……詳しくは分かりませんが、斬魄刀の能力、或いは技の一種と考えるのが妥当と私は考えますね。それにこの件は一度、雷山さんに伝えてみるのも手とは思います。南美ちゃんや浮葉さんが内定調査を行っているわけですし」

 

「……そうだね、そうしてみるよ。……あ、あともう1つあるんだけど、さっきの騒ぎの時に市丸くんと目が合ったような気がするんだよ」

 

「姿も霊圧も気配も消している状態でですか?」

 

「うん。これは私の勝手な憶測になるんだけど、101年前に顔を会わせている私は特にだけど、藍染くんたちにすごい警戒されているんじゃないかなって思うんだよね」

 

「…………」

 

 

狐蝶寺の話を聞いた銀華零は顎に手を当てて考えていた。そして一言、『成程』と呟くと狐蝶寺に自身が考えられる可能性として狐蝶寺の推測に対して答えた。

 

 

「確かに、可能性としては大いにありえますね。それにもう1つ、これは私たち二人が今まさにそうなのですが、ここ最近急に遠征より戻ってきたという死神が増えている状況です。すでに十四番隊の存在を可能性程度でも知っているのならば、怪しまないわけはないでしょう」

 

「そっかぁ……101年前の事件でひよ里ちゃんや浦原くんを助けたことは一切後悔してないし、むしろ誇りに思ってるけど、今になってこんな動きにくくなるなんて思いもよらなかったよ」

 

 

"@&%’*?~"

 

 

その時、遠くから何者かの話声が聞こえてきた。恐らくは戦時特例が発令されたことを伝えに来た護廷十三隊の死神だと思われた。

 

 

「ありゃ、誰か来ちゃったね。よいしょっと……」

 

 

朽木ルキアが収容されている懺罪宮(せんざいきゅう)の通路は1本しかなくこのままでは護廷隊士と鉢合わせると考えた狐蝶寺は橋の欄干(らんかん)に足をかけてその上に乗った。

 

 

「え、ちょっと狐蝶寺隊長……?まさか―――」

 

「じゃあ、見つかっちゃう前に私は帰るけど、白ちゃんも山吹ちゃんも頑張ってね!」

 

 

次に狐蝶寺が何をやるかを悟った山吹はそれを止めようとしたが、その言葉を遮るようにして狐蝶寺は激励の言葉を2人に投げると同時に背中からまるでバンジージャンプの要領で飛び降りた。

 

 

「狐蝶寺隊長!?」

 

 

この高さから落ちればまず無事では済まないため、山吹は思わず橋の下を覗き込んだ。

 

 

「またね~♪『暴風芽吹(ぼうふうめぶき)』!!」

 

 

山吹が覗き込んだことに気付いた狐蝶寺は手を振りながら落下していた。

そしてある一定のところまで落ちると同時に地面と向き合うようにして、自身の斬魄刀を解放した。そしてそのまま空中を飛び跳ねるようにして去って行った。

 

 

「はぁ……」

 

「相変わらず無茶しますね。春麗ちゃんは」

 

「ホントですよ……まさかこの高さから飛び降りるとは思わず、さすがに肝が冷えましたよぉ……」

 

「ふふっ」

 

 

銀華零はその場にへたり込んでしまった山吹を見て懐かしむように笑うと、視線を双極の方へと移した。

その視線は少し険しいものとなっていた。

 

 

 

-- 五番隊隊舎内・特別拘禁牢 --

 

 

 

牢の中では五番隊副隊長・雛森(ひなもり)(もも)が1人正座して先刻の一連の騒動について深く考え込んでいた。

 

「藍染隊長、私は……」

 

"お待ちください!如何に総隊長からの許可を得ていたとしても今は……"

 

"あー、うるさいうるさい!緊急任命とは言え、新任の隊長が現副隊長に挨拶も無しとは副隊長の面目ないだろ。分かったら散った散った!"

 

「え、なに……?」

 

 

その時、外では見張りの死神と雛森も聞いたことの無い声の人物が言い争っていた。ひとしきり言い争った後、見張りの死神が渋々折れたようで、

 

"くれぐれも問題の無いように"

 

と何回も念押ししている声が聞こえてきた。

 

 

「そんなの言われなくても分かってるわ!こちとら何百年も……っと、すまんな。随分と騒がしくして」

 

 

雛森は入って来た死神の姿をまじまじと見つめていた。隊長羽織を着ていることから隊長なのだろうと推測することは出来たが、雛森は目の前に立つ人物の顔を見たことがなかった。

 

 

「お前が今の五番隊副隊長の雛森桃か?」

 

「えっ……?あなた、誰ですか……?」

 

「ああ、名乗り遅れてすまないな。追って沙汰が届くと思うが、藍染惣右介隊長の死去に伴い緊急任命で五番隊隊長に着任することになった雷山悟だ。よろしくな」

 

 

厳密に言えば、一刻の猶予が無い状態で強制的に隊長に任命する『緊急任命』と『隊長代理』制度は似て非なるものであったが、『隊長代理』は話すわけにはいかない秘密事項であったために、雷山はあえてそう言い回しをした。

 

 

「は、はぁ……」

 

 

一方で、目の前で緊急任命とは言え五番隊隊長に着任したという死神を前に雛森は困惑していた。雷山その雛森をひと目見て"やつれている"という印象を持った。自身の隊の隊長が突然死去とあればそうなるのも不思議ではないと思ったが、それと同時に副隊長がここまで消耗するほどに藍染が慕われていた事実と、それほど本性を隠し続けていた藍染に対してさすがの雷山も恐怖を覚えた。

 

 

「まだ状況が飲み込めないだろうが、今は俺が新しい五番隊隊長になったということだけ覚えておいてくれればそれでいい。じゃあ、そこから出てくるのを楽しみに待ってるぞ」

 

「あ、あの!」

 

 

ひとしきりの会話を終えて去って行こうとする雷山を雛森は呼び止めた。

 

 

「私、市丸隊長が何か隠しているような気がして……もし可能ならば―――」

 

「……雛森副隊長。それ以上はいけない」

 

 

雷山は本来の立場上、市丸と藍染が繋がっていることを知っていた。その中で意図せず市丸が何か隠していることに勘付いた雛森を称賛していた。しかし、雛森の副隊長としての立場上、他隊とは言え隊長を証拠も無しに疑うことは止した方がいいと名前を呼ぶことで諭した。

一方の雛森も途中まで言ったところでただの憶測で隊長である市丸ギンを疑っていると言っていることに気が付いた様子だった。

 

 

「……あっ、すいません。私、勝手な憶測でこんなことを……」

 

「気にするな。慕っていた隊長が死んで誰も彼も疑いたくなるのは分からない話じゃない。まだ調べもついていない状況で誰か藍染隊長を殺したか分からないからな。推測だとしても市丸隊長が何かを知っているかもしれないということは頭に入れておくよ」

 

「い、いえ……」

 

「まあ、焦らずに行こう。冷静に物事を見なければ、見えるものも見えなくなるものだからな」

 

「……?」

 

 

雷山は自身が含みを持たせていった言葉の意味について、分からずにキョトンとする雛森を置いて出口に向かい歩き始めた。

出て行こうとした際に入れ違いに十番隊副隊長・松本(まつもと)乱菊(らんぎく)が入って来た。松本は拘禁牢から出てくる、隊長羽織を身に纏いながらも、自身も一切見たことがない雷山の姿を見て不審に思った。

 

 

「あんたは……誰?」

 

「ん?」

 

 

話しかけられた雷山は目の前で(いぶか)しむ死神と対して、咄嗟に腰からぶら下げられる形で身に着けている十番隊の副官証を見た。

雷山は情報として現十番隊副隊長は松本乱菊という人物だったと記憶していたため、目の前に立つのがその松本本人であると知った。

 

 

「不審がるのも無理はないが、そんな腫物(はれもの)を見る目で見ないでもらいたいな。まあ、それは置いて自己紹介でもしておこう。俺の名前は雷山悟。そのうち追って沙汰が届くだろうが、藍染惣右介隊長の死去に伴い、緊急任命で五番隊隊長に復帰することになった者だ」

 

「雷山悟?」

 

「ああ、とりあえず今は五番隊副隊長の雛森に就任したという挨拶をしに来てただけだ。では、俺はこれで」

 

 

そう言うと雷山はその場を去って行った。その時、雷山は松本乱菊が手紙らしきものを持っていることに気が付いたが、特に気にも留めなかった。

 

 

松本が雛森へ渡すこの手紙が事をさらに大きくするとも知らずに――――――

 

 

 

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