宮廷遊撃部隊・十四番隊   作:らりるれリッター

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第21話 狼と蛇と竜

 

 

「失礼します。五番隊第十一席・火波(ひなみ)(だい)です!雷山隊長はおいでになられますでしょうか!!」

 

 

それは忙しない足音の後、そう名乗る五番隊の死神による報告によって始まった。

 

 

 

-- 五番隊隊舎内・隊長執務室 --

 

 

 

「雷山悟は中に居る。入ってきても構わんぞ」

 

「失礼致します」

 

 

火波は一声かけるとゆっくりと襖を開けて片膝を付いたまま報告を始めた。先程まで響いていた慌ただしい足音が物語るように冷静を装う火波の顔には焦りが滲み出ていた。

 

 

「申し上げます。先程、各隊牢番から入った緊急報告で、阿散井副隊長、雛森副隊長、吉良副隊長の3名が牢から姿を消されたとのことです!」

 

「……は?」

 

 

少しの間の後、雷山は間の抜けた返事をしていた。血気盛んな阿散井は負けた相手である一護を捕えようと牢を飛び出すのはまだ分かるとして、気の動転で騒ぎを起こした残る2人は落ち着きを取り戻した今、数日もすれば出られる牢をわざわざ脱獄するとは思えなかったからである。

 

 

「3つとも牢が破られたのか?」

 

「いえ、破られていたのは……」

 

 

雷山は3人が3人共異なる理由で牢を破壊していったものだと思っていた。しかし実際に帰ってきた現場の状況の報告に雷山の表情は険しくなった。そして雛森が脱獄した理由を考えた結果、ある一つの可能性に辿り着いた。

 

 

「……分かった。俺もすぐ特別拘禁牢へ向かおう。報告ご苦労だった、とりあえず火波十一席は元の仕事に戻ってくれ」

 

「はい、失礼致しました」

 

 

そう言うと火波は静かに襖を閉じた。それと同時に雷山は刀置きに置いてあった斬魄刀を手に取り腰に差した。

 

 

「雛森はもう少し冷静な奴だと思ってたんだが……まったく、若い衆が血気盛んなのは良い事だが、何故こうも副隊長は今も昔も問題ばかり起すんだ」

 

 

そう言う雷山の脳裏には椿咲南美の姿があった。ただし今のではなく、大昔の、まだ五番隊副隊長の席次だった椿咲南美の姿。

今から約400年前のこと、椿咲はほぼ毎日様々な問題を起こしていた。

他隊からの書類を無くす、フラッとどこかへ消える、当時の四番隊副隊長に渋茶のようなものを飲ませて卯ノ花を怒らせたり、元柳斎に悪戯を仕掛けて返り討ちに遭うなど、

雷山は趣味に使っていた時間も返上して、毎日対応に追われる忙しない日々を送って居た。程度は大きく違えどまさにこの状況と同じように、

 

 

「……だが、まあ忙しないと言うのも嫌いではないけどな」

 

 

そう言う雷山の顔には笑みが浮かんでいた。雷山自身はあまり表立って行動せずコソコソする【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”としてではなく、実動部隊である【護廷十三隊】のように前線仕事の方が性に合っていたからである。

 

 

「さて、行くか」

 

 

 

-- 五番隊隊舎内・特別拘禁牢 --

 

 

 

拘禁牢に着くとすでに、護廷十三隊十番隊隊長・日番谷(ひつがや)冬獅郎(とうしろう)と同隊副隊長・松本(まつもろと)乱菊(らんぎく)の姿があった。

二人は牢番から話を聞いているようだったが、遠すぎて聞こえなかった。しかし近づくにつれて会話の内容が聞こえてきた。

 

 

白伏(はくふく)?いったい何故そんなものを……」

 

「そんなもん決まってる。松本、お前は先に帰ってろ。俺は雛森を助けに行く」

 

「戻るのはお前も一緒だぞ。日番谷十番隊隊長」

 

 

声をかけられ振り返った日番谷は初めて見る雷山の姿に誰だと言いたげな顔をしていた。

 

 

「雷山隊長……」

 

「雷山?」

 

 

雷山自身が名を言う前に、松本が呟いた一言で目の前の人物が元柳斎より沙汰があった藍染の後任の五番隊隊長・雷山悟だと知った。

 

 

「あんたが伝達のあった藍染の後任と言う……」

 

「ああ、五番隊隊長・雷山悟だ。よろしくな。話を戻させてもらうが、雛森の捜索は俺に任せてもらおうか」

 

「……何故だ?」

 

他隊(よそ)の隊長に五番隊(うち)の副隊長を任せられないからだ。いくらお前が雛森の幼馴染だったとしてもな」

 

「…………」

 

 

日番谷と雛森の関係を口にした瞬間、日番谷が明らかに自身に対して警戒心を向けたことを雷山は感じた。日番谷と雛森が幼馴染と言う情報は長く護廷十三隊に属していれば知っていてもおかしくはない話だが、つい最近復帰したばかりの雷山という死神が知っているはずがなかったためである。

 

 

「どこでそれを知った」

 

「”我々の情報網をなめないでもらおう”とだけ言っておこう。ひとまず、お前は()()()()()()()()()()()()吉良イズルの方を追ってくれ。まあ、お前も吉良の行く当てについては想像がついているだろうけどな」

 

「……分かった。雛森はあんた任せる」

 

 

少しの沈黙の後答えた日番谷の声色には不服や不満があった。

雛森のことを気にかけている日番谷は信用ならない雷山と言う五番隊隊長に任せることに不安があったからだった。しかし、雛森は五番隊副隊長であり、仮にも五番隊隊長である雷山に任せるほかないと大人しく引き下がったのだった。

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

「……さすがは”鬼道の達人”と称されることはあるか」

 

 

日番谷たちと別れた後、雷山は1人かすかに残っている雛森の霊圧の残滓(ざんし)を追って歩いていた。

 

 

「副隊長でありながら俺にも感じ取りにくくするほど霊圧を消すことが出来るとは、鬼道に関して言えば副隊長時代の椿咲にも並ぶ実力だな……」

 

 

雷山は自身にすら霊圧の残滓(ざんし)をあまり感じさせない雛森の実力を称賛していた。鬼道の腕前だけなら九十番台の鬼道も扱っていた副隊長時代の山吹、椿咲に匹敵すると、

しかし雷山の鬼道の実力はそのさらに上を行っており、限りなく0に近い残滓(ざんし)を正確に辿りながら少しづつ雛森に追いつきつつあった。

 

 

「……お、いたいた」

 

 

雷山の視線の先には辺りを窺いながら走っている雛森の姿があった。霊圧を鬼道で消しているためうっすらとしか感じられなかった。

 

 

「藍染隊長、私は絶対に……」

 

「"絶対に"なんだ?」

 

「……ッ!!」

 

 

声をかけられた雛森がハッと驚き振り返ると、そこには雷山の姿があった。雛森は牢を破ったことで追手とは言わないまでも誰かが捜索に乗り出すとは思っていたが、こんなにも早く、そして雷山自身が来るとは思っていなかった。

 

 

「雷山、隊長……何故ここに……?いえ、そもそも……」

 

 

その時、雛森は如何にしてこの場を脱しようかと考え始めたのを雷山は雰囲気で感じ取った。そしてこのまま逃げられるのもまた面倒だと考え、ひとまず落ち着かせるためにあえてその雰囲気に気付かないフリをした。

 

 

「はぁ……それで牢を破ってまでどうしようって言うんだ?初めて会った時に俺は言っただろ。"物事を冷静に見なければ見えるものも見えなくなる"と」

 

「……はい、しかし藍染隊長が遺した手紙には……」

 

「手紙?」

 

 

その時、雷山は少し前、五番隊の特別拘禁牢で松本と会った際に、彼女の手に手紙らしきものをがあったことを思い出した。

 

 

「……それには何が書いてあったんだ?」

 

「それは―――……ッ!!」

 

 

手紙の内容を雷山に伝えようとした雛森だったが、直後に何かに気付いたようにハッと顔を上げた。続けて雷山もすぐ近くに日番谷と市丸がいることを2人が放つ霊圧で感じ取った。

 

 

「この霊圧は日番谷と市丸か。やはり……」

 

「見つけた……雷山隊長、申し訳ありません。"破道の三十三"『蒼火墜(そうかつい)』」

 

 

雛森は雷山に向けて鬼道を放った。雷山はまさか雛森が自身に攻撃してくるわけはないという油断と日番谷と市丸の方へ気を取られていたため反応が遅れた。

 

 

「バカ野郎……!!」

 

 

ドォォォン!!

 

 

「ゴホッゴホッ!くそっ……」

 

 

雛森の放つ鬼道が着弾する直前、雷山は咄嗟に別の鬼道をぶつけて相殺していたためダメージは無かった。しかし煙が辺りを覆ったため雛森を取り逃がす形となってしまった。

 

 

「あのバカ……」

 

 

雷山も全速力で雛森の後を追い日番谷たちの元へ向かった。

 

 

「あ゛ぁ゛!!」

 

 

ドタッ!!

 

 

「……!」

 

 

雷山が突く直前雛森の悲鳴と何かが落ちる音が聞こえてきたため雷山は尚の事急いだ。

 

 

「おい、雛も――――――」

 

 

辿り着いた雷山が見たものは、柄に滲んだ血が付いた斬魄刀と共に倒れる雛森とすぐ近くに立っている日番谷。そしてその光景を見ていたであろう、市丸と吉良の姿だった。

 

 

「これはこれは十番隊長さんだけやなく五番隊長さんまで」

 

「……おい、これはいったいどういうことだ?」

 

 

次の瞬間、地面より金色に輝く鎖が飛び出して日番谷、市丸、吉良の3人に巻き付いた。

 

 

「「―――……!?」」

 

 

その正体は雷山が放った鬼道、"縛道の六十三"『鎖条鎖縛(さじょうさばく)』であり、あまりにも一瞬のことで副隊長である吉良はおろか、同じ隊長である日番谷と市丸も躱すことが出来なかった。

 

 

「なんのマネだ。雷山……!!」

 

 

そう言う日番谷の目や声色には怒りが見て取れた。雷山はこの状況から察するに市丸が雛森に何かをしたのだろうと考えたが、推測に過ぎず念のために日番谷にも縛道をかけていた。

 

 

「誰も彼もこの場から逃げられるのを防ぐためだ。俺は言ったろ。"これはいったいどういうことだ?"とな」

 

 

そう言う雷山の目にも明らかな怒りが見て取れた。この場で知る者はいないが、雷山は護廷十三隊隊長だった頃から部下のことを最も大事にしていた。それは例え相手が離反人や謀反を起こした者だとしても最後まで庇う程だった。代理とは言え隊長職を担う今、副隊長である雛森の姿と彼女が血が滲むほど強く握っていたであろう斬魄刀を見て怒らぬわけがなかった。

 

 

「……やだなぁ。僕はそこの十番隊長さんが傷付いて我を忘れた女の子を思い切り殴ろうとしてたんを止めようとしたんよ?」

 

 

雷山はすでに市丸が今回の事件の首謀者の1人であることを知っており、その言葉をまったく信じてはいなかった。

 

 

「だが、結果としては止められなかったんだろ?……いや、そもそも止める気がなかったと言えばいいか?」

 

「はて、何のことやら」

 

「ふんっ、まあいいだろう」

 

 

そう言うと雷山は3人にかけていた縛道を解いた。自由になると同時に日番谷が雷山に詰め寄った。

 

 

「雷山、詳しい話は後だ。ひとまず、お前は雛森を連れてこの場を離れろ。俺は市丸と決着(ケリ)をつける」

 

「頭を冷やせ、日番谷冬獅郎。こんなところで戦おうとしてる隊長を見つけて何もせず立ち去れるわけもないだろ。それに、頭に来てるのがお前だけだと思ったら大間違いだからな」

 

「なに……?」

 

 

日番谷はその時、いつ抜刀したか雷山の手に斬魄刀が握られていることに気がついた。

そして日番谷と市丸は感じ取った。雷山から溢れ出る殺気と霊圧に、

雷山が放つ霊圧は、まるで全身に雷撃を浴びて身体が痺れるような霊圧をしていた。

 

 

「アカンなぁ、五番隊長さん。こないなところでそないな霊圧を出されたら……」

 

 

その霊圧を前に市丸は自身の腰に差す斬魄刀に手をかけた。それをまるで合図とするかのように雷山は市丸との距離を一気に詰めていた。その瞬歩はその場に居た者の全員の目に残像ですら映らなかった為、驚愕させていた。

 

 

ガキンッ!!

 

 

「言っておくが()ろうというのなら手加減はしないぞ」

 

「なんや加減できる思うとるみたいやけど、僕のこと甘く見てない?」

 

「なに?」

 

 

市丸は雷山の一瞬の隙を突き、自身の斬魄刀で雷山の斬魄刀を弾いた。バランスを崩した雷山は後ろに一歩踏み出すことで体勢を整えたが、市丸には逃れられてしまった。

 

「ちっ……」

 

「ほな、行くで」

 

 

ガンッ!!ガキンッ!!キンッ!!ヒュンッ!!

 

 

市丸は刀身が短いことを利用して乱れ打ちの要領で雷山に猛攻を仕掛けていた。一方の雷山はその猛攻を1つ残らず捌き切って見せた。

 

 

「さすが藍染隊長の後任を任されてる五番隊隊長・雷山悟。恐ろしい実力や」

 

「……お前、まさかとは思うが」

 

 

雷山は今の攻防で市丸が一切本気を出していないと見抜いた。自身のことを本当になめているのか、はたまた罠か、そう考えその事を指摘しようとしたその時だった。

 

 

「下がってろ、雷山!"霜天(そうてん)()せ"『氷輪丸(ひょうりんまる)』!!」

 

「は?……バカ野郎っ!!」

 

 

日番谷は市丸が雷山と打ち合いをしていてこちらから意識が外れた一瞬の隙に、斬魄刀を解放していた。そして上空に飛び上がると同時に撃を仕掛けた。

 

 

「”雷斬居合(らいざんいあい)(しゅう)”」

 

 

氷の竜が雷山ごと市丸を飲み込もうとした瞬間、咄嗟に雷山は斬魄刀を弾くことで市丸と距離を取りそのまま抜刀術で自身の周りに疑似的な雷の結界を張った。

 

 

「ったく、血気盛んなことは大いに結構。だが、俺を巻き込む気か日番谷冬獅郎め……」

 

 

悪態をつきながら雷山が市丸がいた方へに目を向けると、すでに市丸の左腕を氷と柄から伸びる鎖で捕えている日番谷の姿があった。

 

 

「終わりだ」

 

「"射殺(いころ)せ"『神鎗(しんそう)』」

 

 

解号と共に日番谷から見て死角、市丸の隊長羽織の内側から刀身が伸びる市丸の斬魄刀『神鎗(しんそう)』が飛び出してきた。間一髪で躱した日番谷だったが刀身が伸びる先には倒れる雛森の姿があった。

 

 

「避けてええの?死ぬで、あの子」

 

「雛森!!」

 

「まずい、雷斬(らいざん)―――……」

 

 

雷山が市丸の斬魄刀を止めるべく斬魄刀の能力を使い、雛森のもとへ高速移動をしようとしたその時だった。

 

 

ガキンッ!! ズザアアアァァァ…

 

 

「松本……!!」

 

 

雛森に刃が届こうとした直前、松本が割って入り市丸の刀を何とか受け止めていた。

 

 

「申し訳ありません。氷輪丸の霊圧を感じて戻ってきてしまいました」

 

「…………」

 

「刀をお引き下さい、市丸隊長。退かなければここからは私がお相手致します……!!」

 

「ふっ……」

 

 

市丸は不敵な笑みを浮かべて斬魄刀を元の大きさまで戻した。

雷山は今の一幕で雛森に危険が及んだこと、この場に集う自身を含めた3人の隊長のの副官が集ったことで、場を治めた方がいいと判断した。

 

 

「……市丸ギン。俺は正直、このまま続けてもいいと思っている。しかし、そうなれば3人共それぞれの副隊長を失うことにもなる。そこでこれで手打ちにしたいと思うが、お前はどうしたい」

 

「……ええよ。この場はこれくらいで堪忍や」

 

「待て、市丸!!」

 

「十番隊長さん、僕に構うより五番副隊長さんをお大事に」

 

 

そう言い残すと市丸は瞬歩でその場を去って行った。市丸が去った後、残された吉良と気絶している雛森をそれぞれ隊舎に送り届けた。

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

「お前が来てくれなかったら、雛森は死んでいた……ありがとう、松本」

 

「いえ……」

 

 

ベッドに寝かされている雛森を前に日番谷と松本はそんな会話をしていたが、重い空気が漂っていた。少しの間の後、雷山が静寂を破った。

 

 

「……色々聞きたいことがあるがその前に、俺からも礼を言わせてくれ、松本副隊長」

 

 

雷山はそう言うと松本に対して深々と頭を下げていた。雷山はあの場面で咄嗟に自身の斬魄刀『雷斬(らいざん)』の能力を使おうとしていた。そしてギリギリのところで市丸の斬魄刀を止めることは出来ただろうと考えていた。しかしそれでも松本が身を挺して雛森を守ってくれていたことには変わりなかったからである。

 

 

「頭を上げてください。雷山隊長」

 

「俺に聞きたいことがあるんだろ。雷山」

 

「ああ、俺が来る直前、あの場で何があった?」

 

 

雷山があの場に着いたのは日番谷が雛森を空中で叩き落としていた場面であり、それに至った経緯を一切知らなかったためそれを日番谷に聞いていた。

 

 

「簡潔に言うが……」

 

 

その後、雷山は藍染の手紙の事とその内容について、その内容によって雛森が錯乱しあの状況になったと日番谷から説明を受けた。

すでに雷山は藍染の死が偽装であることを知っているため内容について特別驚くべきことは無いと判断した。

そして手紙には"日番谷冬獅郎が双極の開放によって尸魂界(ソウル・ソサエティ)を破滅させようとしている"とも書かれており、藍染の目的から考えて、朽木ルキアの処刑の後のことが目的であることから目逸らせるためののフェイクだろうと考えた。

 

 

「…………」

 

「おい、雷山。どうした?」

 

「……ああ、悪い。2つほど聞くがまず、手紙に書いてあるようなことをお前はやろうとは考えてないんだよな?」

 

「考えているわけないだろ」

 

「……ではもう1つ、これは俺と藍染前隊長に面識がないから聞くが、奴はそんな内容の手紙を書くような奴だったのか?」

 

「いや、俺の知ってる藍染は尻拭いを部下にさせるようなことを頼む腰抜けではなかった」

 

「そうか。つまりは改竄、という事になるか」

 

「そういうことになるが……」

 

 

日番谷は何かを言いかけた後、数秒黙り込み唐突に雷山に質問を投げかけた。

 

 

「雷山、お前はいったい何者なんだ?」

 

「……!!」

 

 

まさかの質問に雷山も一瞬驚いたが、数秒黙り込んだ後静かに口を開いた。

 

 

「……そうだな。ここまで来て、隠す道理はないか」

 

 

雷山が意味深に発した言葉に松本はいつでも抜刀できるようにと身構えていた。

 

 

「そう身構えなくてもいい。別にお前らをどうこうしようという話じゃない。日番谷冬獅郎、お前の予想通りかは知らないが、確かに俺はただの五番隊隊長と言うわけではない。改めて、俺は【宮廷遊撃部隊・十四番隊部隊長】雷山悟だ。今は訳あって五番隊隊長に就いているだけに過ぎない」

 

「……!」

 

 

雷山に正体を明かされた日番谷と松本だったが、聞きなれない【宮廷遊撃部隊】という言葉に驚きを隠せないでいた。

そしてその時、雷山たち3人の元に漆黒のアゲハ蝶が1匹飛んできた。それは伝達などで用いられる地獄蝶(じごくちょう)だった。

 

 

”隊長並びに副隊長各位に、御報告申し上げます。極囚・朽木ルキアの処刑の日程について最終変更がありました。最終的な刑の執行は、現在より29時間後です。これは最終決定です。以降日程の変更はありません。以上――――――”

 

 

「隊長、これは……!!」

 

「ああ、ついて来い松本。処刑を止めるぞ」

 

 

日番谷は地獄蝶からの伝令を聞き、雷山との話を切り上げてその場を去ろうとしていた

 

 

「おい、どこへ行く」

 

「雷山、俺たちは今から四十六室に向かう。その【宮廷遊撃部隊】と言うのが何かは後回しだ。その気があるのなら俺たちに協力をしてほしい」

 

「心配するな、我々はすでに動いている。そうだな、そちらが四十六室に向かうならばこちらは双極の丘へ行き、最悪の場合『双極』を破壊してでも処刑を止めよう」

 

「……そうか。協力に感謝する。行くぞ、松本」

 

 

日番谷は雷山の言う【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”がどういう部隊か分からずとも何かしろの形ですでに動いていると知り、安心したようにそして、これからだ本番だと気を引き締めるような顔をして松本共に中央四十六室に向かって行った。

 

 

「……しかし29時間後か。こちらも急がないとならないな」

 

 

 

 

 

 

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