宮廷遊撃部隊・十四番隊   作:らりるれリッター

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第22話 処刑の前日

 

 

 

-- 瀞霊廷・十四番隊詰所 --

 

 

 

日番谷と別れた直後、雷山はすぐに本来所属する十四番隊詰所へ帰還した。そこでは浮葉刃、椿咲南美、狐蝶寺春麗の3人が慌ただしく動いていた。

 

「雷山部隊長、大変です。朽木ルキアさんの処刑日程が……」

 

「ああ、聞いている。奴らの居場所は分かったのか?」

 

「はい!それはもうバッチリです!」

 

「よし、ではこれも踏まえて今から緊急会議を行う」

 

「じゃあ、白ちゃんと山吹ちゃん呼んでくるね!」

 

 

会議を行うとした雷山に、狐蝶寺は朽木ルキア警護の任に就く銀華零と山吹を呼びに行こうとしたが、それを雷山は止めた。

 

 

「待て春麗。わざわざ呼びに行かなくてもいい。その時間も惜しいからな」

 

「え、いいの?」

 

「こんな状況だからこそ、あの2人には朽木ルキアのそばに就いていてもらいたい。故に呼び戻すことはしない。それに……ッ」

 

 

そう言うと雷山は歯で自身の左手の人差し指を切った。その後右手の掌に【十四】と血文字を書き右腕を伸ばした。

 

 

「手段がない訳じゃない。"裏縛道(うらばくどう)(よん)(どう)"『継接(つぎはぎ)』」

 

 

 

"裏縛道(うらばくどう)(よん)(どう)"『継接(つぎはぎ)

それは自身の血と霊圧を媒介に発動する通常とは異なる鬼道でその効果は、他者と自分の空間を繋げて亜空間を作り出すというもの。この空間には鬼道を使った者が指定した者しか召喚することが出来ず、また鬼道が解かれれば中に居た者はそれぞれ元にいた場所に戻される。この亜空間内と外では時間差がおよそ5倍であり、外での1時間は亜空間中で5時間となる。

雷山はどこからでも指定した者を呼べる点、内外との時間差の点を利用して、主に時間が無くなった場合や遠くにいる者と直接顔を合わせて話し合うことに使っている。

 

 

 

「まったく、1月(ひとつき)と経ってないのに、随分と久しぶりに会う気がするな。白に山吹」

 

 

雷山が伸ばした腕の先に巨大な【十四】の文字が現れ亜空間が生成された。その空間内には十四番隊詰所にはいない銀華零、山吹の姿もあった。こうして約2週間ぶりとはなるが十四番隊のメンバーが全員揃った。

 

 

「ええ、それだけ内容の濃い毎日が続いていましたからね」

 

「ああ、良くも悪くもだな。山吹、具合はどうだ?黒崎一護に手痛い一撃をもらったと聞いたが」

 

「うっ……、それに関してはお恥ずかしい限りです。鳩尾にもらいましたが、もう万全の状態です」

 

「別に恥ずかしがる話ではないぞ。黒崎一護の成長速度がおかしすぎるだけだ。さて、前置きはここまでにして、今から緊急会議を行う。議題についてだが、皆も知る通り朽木ルキアの処刑日程が今から約29時間後、明日の正午に変更になった。これは敵が本格的に動いてきたという事になる」

 

「それですが、さっそく私から1つ報告があります」

 

 

そう言うと椿咲は一歩前に出ると同時に書類1枚を片手に報告を始めた。

 

 

「今回の案件の首謀者である藍染君の情報に関してです。まず、私も藍染君とされる遺体を確認してきました。結果から言うと、やはり死を偽装していました。そして、藍染君の斬魄刀『鏡花水月(きょうかすいげつ)』ですが、記録にある『霧と水流の乱反射による同士討ち』ではなく私の『月華(げっか)』と同様の幻覚を見せる能力であると思われます。でなければ先程の遺体の件について説明が付けられません」

 

「1つ質問を、南美ちゃんは藍染惣右介の斬魄刀の能力については心当たりがないのですか?」

 

 

椿咲が藍染の斬魄刀の能力について推測しか出せていないことについて銀華零が質問を投げかけた。銀華零は椿咲が五番隊隊長に就いていた頃に藍染と会っているのを知っていた。その事から藍染の斬魄刀について推測しか出せないのはさすがにおかしいと言わざるを得ないからだった。

 

 

「恥ずかしながら全くです。確かに藍染君が始解を習得したのは私が五番隊隊長の頃という事は間違いないのですが、藍染君の始解に関してはただの一度も見たことがないのです」

 

「……それだけ当時隊長だった椿咲のことを警戒していたのかもしれんな。これだけのことをやってのけようとしている奴だ。椿咲の表面的な態度に騙されずに本当の実力を見抜いていたのかもしれん」

 

「褒めても何も出ませんよ。私からは以上です」

 

「それでは続けて私からは死を偽装した藍染惣右介の現在位置を御報告致します」

 

 

椿咲が下がると入れ替わりで浮葉が一歩前に出て来た。

 

 

「先程の南美隊長の報告にありました『鏡花水月』の能力を以てしても身を隠せる場所は限られています。その中で我々でもなかなか発見できなかった点を踏まえますと、中央四十六室に関連した場所。例えば、『清浄塔居林(せいじょうとうきょりん)』に身を潜めている可能性が高いです」

 

 

清浄塔居林(せいじょうとうきょりん)

それは中央四十六室構成員のためにある居住区域の事である。ここは非常時も含め護廷十三隊、十四番隊などいかなる人物の立ち入りも許されていない完全禁踏区域に指定されており、中央四十六室を支配下に置いているのならば、身を隠すのには持って来いの場所であった。

 

 

「成程、『清浄塔居林(せいじょうとうきょりん)』か。確かにあそこなら見つかる心配は限りなく0に近いな。ひとまず、椿咲も浮葉も内定調査ご苦労だったな」

 

「いいえ、”第一将”として当然の仕事をしただけです」

 

「雷山隊長、これからどうするんですか?」

 

「当初の予定通り、白と山吹を除いた全員で藍染一派に強襲を仕掛けようと思う。白と山吹については双極の丘へ朽木ルキアの護送に従事してもらいたい」

 

「そのことですが、【十四番隊】の『参謀』として提案があります。まず、藍染惣右介への強襲は南美ちゃん、浮葉さん、ひよ里さんの3名で決行する。これの理由については―――……」

 

 

【十四番隊・”第五将”『大将』】である銀華零はどのような作戦をどのようにして進めるか決める参謀の役割を担っていた。そこで銀華零は藍染のもとへは十四番隊の中で最も藍染の事を知る椿咲、斬魄刀の能力で閉じ込めることも可能な浮葉、そして自ら希望する猿柿の計3名を向かわせる提案をしていた。

 

 

「そして双極の丘へはまず、護送で私と雷花さんが向かいます。そして雷山さんは処刑の立ち合いである五番隊隊長として、春麗ちゃんはその付き添いとして向かう」

 

 

対して双極の丘へは最大で12名の隊長が集結するという事で戦力を集中する必要があった。そこで、極囚の護送の名目で銀華零と山吹、処刑の立ち合いのため五番隊隊長として雷山、何らかの形で付き添いとして狐蝶寺の計4名で向かう提案していた。

 

 

「私は雷山くんの付き添いね。……あれ、ちょっと待って?」

 

「どうしたんだ春麗?」

 

「私が雷山くんと一緒に双極の丘に行っちゃってもいいの?」

 

「そのままの姿で行くのはもちろんダメだろうな。そうだな……春麗には『陽炎写(かげろううつし)』で雛森に扮してもらおうか」

 

「えぇ~!?」

 

 

雷山のその一言は狐蝶寺を驚愕させた。狐蝶寺自身は雛森を知らず、まずかな違和感で周りの隊長格を騙せるわけがないと思ったからである。

 

 

「さすがに無理だって、私その雛森って子知らないからバレちゃうよ!」

 

「軽い返答は俺がするから任せろ。春麗はただ黙って隣に立って居ればいい。それとも"蝶形花(ちょうけいか)"の異名を持つ狐蝶寺春麗ともあろう者が護廷十三隊の若僧たちを騙す自信はないって言うのか?」

 

「…………ふふっ」

 

 

雷山の軽い挑発を聞いた狐蝶寺は肩を震わせていた。傍から見ると怒っているように見えたが、雷山が自身の実力が高いと遠回しで言った事に対して嬉々として笑っていたのだ。

 

 

「まったく雷山くんはズルいなぁ……いいよ、やってあげる♪」

 

「さすが話の分かる悪友(とも)だ。白の案について何か意見はあるか?」

 

 

雷山は全員に対してその他に作戦に対して異なる意見はないかと問いを投げかけた。その場にいる全員とも、静かに頷き異論はなしとしていた。

 

 

「……異論はないな。よし、その作戦で行こう」

 

「にひひっ♪楽しみだなぁ……久しぶりに本気で戦えそうだし♪」

 

 

狐蝶寺は現在の護廷十三隊隊長、或いは藍染一派、はたまた両方と本気で戦えるであろうことに喜んで笑みを浮かべていた。

 

 

()りあうのはいいが、間違っても殺すなよ」

 

「分かってるって♪」

 

「雷山部隊長、朽木ルキアさんの身の安全を最優先と考えればよろしいですか?」

 

「……いや、朽木ルキアもだが、お前たち2人の身の安全も最優先だ。そこは間違えるなよ」

 

「承知しました。ありがとうございます!」

 

 

山吹は自身らの身の安全も案じてくれている雷山に感謝していた。

 

 

「では雷山さん、後ほど双極の丘でお会いしましょう」

 

「ああ、白に山吹。朽木ルキアの護送頼んだぞ」

 

「はい、彼女にとっての死地に赴かせるのは心苦しいですが、朽木ルキアさんを必ず送り届けますよ」

 

「"裏縛道(うらばくどう)(よん)(どう)"『継接(つぎはぎ)』"(かい)"」

 

 

雷山がいくつか印を結ぶと生成されていた亜空間が徐々に崩壊し始めた。そして完全に消滅すると同時に元の十四番隊詰所に風景に戻った。

 

 

「よし、では春麗。準備ができ次第すぐに双極に向かうぞ」

 

「え、もう行くの?早すぎない?」

 

「ああ、まだいくつか確認と準備をしたいことがあってな」

 

「オッケー♪」

 

「それでは私たちも行きますか。浮葉君、ひよ里ちゃん」

 

「ええ、私たちの戦果が今後を大きく左右すると言っても過言ではないですしね」

 

「浮葉、そんな重く考えなくてもいいぞ。強襲が成功すればよし、失敗しても藍染たちをどこかに誘き出せればそれもよしくらいでいい」

 

「お気遣いありがとうございます。しかし、【十四番隊・”第一将”『先鋒(せんぽう)』】たる私が失敗するわけにはいきませんから」

 

「もう、浮葉君硬すぎるって!」

 

「……まあ、無事に行って帰って来てくれればそれでいい、頼んだぞ」

 

「はい!」「はっ!」「……」

 

 

浮葉は一礼、椿咲は猿柿に声をかけ、猿柿は何も言わずにそれぞれ3人は瞬歩で清浄塔居林(せいじょうとうきょりん)に向かっていった。

 

 

「そう言えば、春麗。雛森の容姿って分かるか?」

 

「大丈夫だよ♪藍染くんの死体騒ぎの時に見てるから。"縛道の八十七"『陽炎写(かげろううつし)』」

 

 

 

-- 四番隊隊舎・総合救護詰所前 --

 

 

 

「……それで、雷山くん。なんでここに居るの?双極に行くって聞いた気がするんだけど」

 

 

雷山と雛森に扮した狐蝶寺は四番隊隊舎の前に来ていた。狐蝶寺は双極の丘に向かうものだとばかり思っていたため、何故ここに来たのだろうと不思議に思っていた。

 

 

「双極に行く前にいくつか確認と準備をすると言ったろ。ここも用事の1つだ」

 

「用事って八千流(やちる)ちゃんに?」

 

「いいや、違う。というよりも春麗」

 

「ん?どうしたの?」

 

「どうしたのじゃねぇよ。あまり不用意にその名を言うなって話だ。大昔にそれを1回やってしばらく口きいてもらえなくなったことあったろ」

 

「あ、そうだったそうだった。じゃあ、卯ノ花ちゃんじゃないなら誰に?」

 

「ちょっと旅禍(りょか)たちの顔を見に」

 

 

 

-- 四番隊隊舎・総合救護詰所内 --

 

 

 

「雷山隊長、雛森副隊長?」

 

「ん?お前は……」

 

「失礼しました。私は四番隊第十三席・青海(おうみ)(しゅん)と申します。卯ノ花隊長に御用件ですか?」

 

 

救護詰所に入った雷山はてっきり卯ノ花か誰かが応対するものだと思っていたが、四番隊隊長・卯ノ花(うのはな)(れつ)と同隊副隊長・虎徹(こてつ)勇音(いさね)は双極の丘へと出立する準備をしていたため、第十三席の青海(おうみ)という死神が応対していた。

 

 

「いや、急に押しかけて悪いんだが、旅禍(りょか)たちに面会は可能か?どうしても聞きたいことが出来てしまったんだが」

 

「……?はい、面会は可能ですが、しかし……」

 

 

青海は自身の上官である卯ノ花と同じ隊長である雷山がこんなところにいても良いのかと言いたげにしていた。

 

 

「……まあ、言いたい事は分かる」

 

「し、失礼致しました!」

 

「気にすんな。そして心配無用。ちゃんと時間には行くつもりだからな。それより、この下で良いのか?」

 

「はい、旅禍(りょか)たちはこの下の医療牢に収容しております」

 

「分かった。春……雛森、人払いを頼んだぞ」

 

「…………」

 

「おい、雛森。大丈夫か?」

 

 

雷山は狐蝶寺が雛森と呼ばれて反応できていないことに気付いて肩を叩くことで"お前は今雛森に扮しているんだぞ"と気付かせた。

 

 

「……え?あ……はい、かしこまりました」

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

「邪魔するぞ。お前らがつい先日、尸魂界(ソウル・ソサエティ)にやって来た旅禍(りょか)たちだな?」

 

「……誰だ?」

 

「いや、俺も見たことがねぇ奴だ……」

 

 

牢の中にいる3人の中で最も護廷十三隊の事を知っているであろう岩鷲でさえも目の前の隊長を知らなかったため、3人はついに自分たちを始末しに来たのかと警戒心を露わにしていた。

 

 

「まずは自己紹介でも、俺は護廷十三隊五番隊隊長の雷山悟だ」

 

「雷山悟?……隊長が俺たちにいったい何の用だ」

 

「ふむ……ガタイのいい奴が茶渡泰虎、ヒョロヒョロの眼鏡が石田雨竜、そして残る2人の特徴がないお前が志波岩鷲だな。なるほど、確かに四楓院夜一が言っていた通りだな」

 

「ッ!!」

 

 

目の前の雷山と名乗る隊長が四楓院夜一の名前を出したことは石田、茶渡、岩鷲の3人を驚かせた。

 

 

「何故夜一さんのことを……まさか」

 

「ん?ああ、違う違う。誰も四楓院夜一を捕らえてなどいない。あのじゃじゃ馬姫を捕らえられる奴なんか限られるしそんな骨の折れることを好んでやるやつなんかいない。俺はただ、本人に直接会ってお前らの事を聞いただけだ」

 

「俺たちのことを、どうするつもりなんだ……?」

 

「どうするつもりもない。いくつか聞きたい事があってな。黒崎一護は今どこにいるか知っているか?」

 

「知らない。それにたとえ知っていたとしてもみすみす話すわけにはいかない」

 

「人払いはしているから気兼ねなく話してもらっていいんだが、仕方ない。……信じられないだろうが、俺はお前らの味方の死神だ。さっき護廷十三隊五番隊隊長と言ったが、あれも今は特例で担っているだけに過ぎず、本来の所属は宮廷遊撃部隊と言う」

 

「それを信じる根拠がどこにあるってんだ!知らねぇもんは知らねぇ!」

 

「はぁ……強情なのも困ったものだな。では質問を変えよう。お前ら3人、そこから出る気はあるか?」

 

「……は?」

 

「理解できないだろうが、今は人手が足りなくてな。お前たち3人にも協力してもらえたらと思ったんだ」

 

 

"……隊長!!お止めを!!"

 

"ギャー!!何をなさいます!ご乱心!!ご乱心!!"

 

 

雷山がそう言った時、遠くから徐々に何かが破壊される音、悲鳴、誰かが走ってくる音が入り混じった騒音が近づいて来ていた。

 

 

「……なんだ?」

 

 

ドォォォォォォン!!

 

 

雷山が不意に天井を見上げた直後、その天井が破られ誰が落ちてきた。

 

 

「だああぁぁぁぁぁ!!??」

 

「何だこれは!?」

 

「ゴホッゴホッ……まったく、誰だ床をぶち破って来るバカ野郎は」

 

 

土煙が晴れると岩鷲は天井をぶち破って入って来たもう一人の隊長を見て恐怖にひきつった顔を浮かべていた。

 

 

「て、てめぇは……ざ、ざざざ……更木剣八十一番隊隊長!?」

 

 

天井をぶち破って落下して来たのは十一番隊隊長・更木剣八だった。それと同時に引き連れて来たであろう十一番隊第三席・班目一角と同隊第五席・綾瀬川弓親が更木の背後から出てきた。

 

 

「おい、更木剣八。お前天井をぶち破ってまで何しにここに来たんだ」

 

「ああ?……なるほど、てめぇが藍染の後釜っていう雷山か。何をしにここに来ただ?こいつらを連れてく以外にあんのかよ。邪魔しようってんならここでてめぇを斬るぜ!」

 

 

そういう更木は腰に差す斬魄刀に手をかけていた。一方の雷山はこんなところで騒ぎを大きくしたくないと消極的だったが、衝突は避けられないかとも感じていた。

 

 

「イエーイ!剣ちゃんやっちゃえー!」

 

「わっ!やちるちゃん落ちちゃうよ!」

 

 

更木剣八と雷山悟。2人の隊長がぶつかり合おうとしたその空間を引き裂いたのは、旅禍(りょか)の1人井上(いのうえ)織姫(おりひめ)だった。

更木の背中に十一番隊副隊長・草鹿(くさじし)やちると共に引っ付いていた井上は草鹿が態勢を変えたことで不意に落ちそうになり声を上げた。

 

 

「この声……井上さん!?」

 

 

聞き覚えのある声を聞いた石田は更木の背中に乗っていた井上を見つけて声を上げていた。

その声は雷山にも聞こえており、井上という名前と夜一から聞いていた特徴から雷山は更木の背中にいる女性が井上織姫本人だと断定していた。

 

 

「はぁ……別に邪魔するつもりなんか更々(さらさら)ない。俺もちょうど連れて行こうかと思っていたところだったからな。連れて行きたければ勝手に連れてけ」

 

「……けっ、てめぇが何を考えてるかは知らねぇが、そう言うことならこっちは勝手にさせてもらうぜ」

 

「ああ、お前が陽動を引き受けてくれるならこちらが動きやすくなるからな」

 

「……オラ行くぞ」

 

 

雷山が言ったことを不審に思った更木だが、ここで時間を潰している暇も更木にはなかったために早々に入って来た天上の穴から旅禍(りょか)を連れて出て行った。

 

 

「待たせたな、春麗」

 

 

更木が去って数分後、雷山が地下から上がると腕を組んで壁にもたれ掛かる雛森の姿をした狐蝶寺がいた。

 

 

「ホントだよ。なんか走って来る変な隊長くんがいたし。それで、聞きたいことは聞けたの?」

 

「いいや、収穫ゼロだ」

 

「来た意味ないじゃん。どうするの?」

 

「出来れば、今のうちに黒崎一護をひと目見ておきたかったんだが、仕方ない。ここでの用事はもうないし、双極へ向かおう」

 

「オッケー♪」

 

 

 

 

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