宮廷遊撃部隊・十四番隊   作:らりるれリッター

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第23話 地下にて

 

 

 

-- 瀞霊廷・双極の丘付近 --

 

 

 

「……なあ、春麗」

 

 

総合救護詰所にて4人の旅禍(りょか)たちと顔を会わせてから約1時間後、

双極の丘へはあと崖に沿うように作られる階段を上るだけといったところで、雷山が下を向きながら狐蝶寺を呼び止めた。

 

 

「どうしたの?」

 

「微かにだが、地下から霊圧を感じないか?」

 

「え?」

 

 

雷山が突然言い出したことに、狐蝶寺も初めのうちは何のことと言いたげにしていた。しかし、狐蝶寺自身も意識して霊圧を探ると雷山の言う通り、地下から微かにだが複数の霊圧が感じ取れた。

 

 

「……あ、ホントだね。雷山くんよくこんな微弱なの分かったね」

 

「昔から霊圧探査は得意なんだよ。それにしてもこの霊圧どこかで覚えがあるような……」

 

 

雷山は地下にある霊圧になんとなく覚えがあるような気がしていたが、感じ取るのがやっとなほど微弱だったために誰の者か特定するには至っていなかった。

 

 

「気になるなら確認だけでもしていく?処刑の時刻までまだ少し時間もあるんでしょ?」

 

「……そうだな。ここに来て不確定要素は残しておきたくない」

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

「わー、すごく広いね」

 

「ああ、まさか双極の地下にこんな空間があるとは知らなかったな」

 

 

地下に降りるとそこには広大な空間が広がっていた。同時に、地上では微弱だった霊圧がはっきりと感じ取れるようになり、そこには六番隊副隊長・阿散井恋次に四楓院夜一、そして黒崎一護がいることが分かった。

 

 

「成程、どうりで覚えのある霊圧なわけだ。阿散井恋次に四楓院夜一、それから黒崎一護ときた」

 

「あー、だから覚えがあるって言ったんだ」

 

「ああ、3人共1度霊圧を感知したことがあるからな……っと、いたいた」

 

 

雷山たちは3人の霊圧が固まる方向へ歩いた。少し行くと、尾がヘビの猿と相対する阿散井、黒ずくめの男のと相対する一護とそれを見守る夜一の姿があった。

 

 

「つい数日前に殺し合いをしていた2人がどんな経緯で同じ空間に居るんだ?」

 

「!!」

 

 

突如聞こえた声にその場に居た全員は目を向けた。一度顔を会わせている夜一は置いて、雷山の事を初めて見る阿散井と一護は隊長羽織を見に纏う雷山を見て警戒していた。

 

 

「……雷山悟」

 

「雷山?あれが……」

 

 

夜一が不意にこぼした雷山という言葉で阿散井は目の前の隊長羽織を身に纏う死神がつい先日、藍染の後任として五番隊隊長に就任した雷山悟と知った。

 

 

「随分と回復したみたいだな。阿散井副隊長」

 

「雷山……隊長、いったい何をしにここへ……」

 

 

阿散井は仮にも護廷十三隊隊長である雷山が秘密裏に卍解の修得の鍛錬を行っている一護をどうやって見つけ出し、何故現れたのかを失礼承知で警戒心を露わにして聞いていた。

対して雷山もそれには気付いており、つい先日阿散井からしたら死去した隊長と入れ替わりで就任した死神が突然現れればこんな反応になっても仕方ないと気にせずにいた。

 

 

「そんなに警戒せずとも黒崎一護の邪魔などするつもりはない。双極に向かう途中、地下から霊圧を感じたものでな、これからのことを考えて不安要素を消しておこうと様子を見に来ただけだ。それで、3人揃ってこんな地下で何をやっているんだ?」

 

 

そう言う雷山は黒崎一護と相対している、恐らくは斬魄刀の具象化と思われる黒ずくめの男が目に留まった。雷山はその姿に見覚えがあった。それは遠い昔、尸魂界(ソウル・ソサエティ)に侵攻して来たとある男の姿と似ていた。

 

 

「阿散井も一護も卍解の修業じゃ」

 

「……卍解の修業?阿散井はともかく黒崎一護はもうそこまで成長しているのか。それで首尾は順調なのか?」

 

「分からぬ。じゃが、儂は奴が卍解に至る者じゃと信じておる。それに奴自身も卍解に至る者じゃと本能的に分かっておるのじゃろう、でなければ時間もないこの状況で微塵の焦りも見せずに修業に打ち込めなどせぬ」

 

「ふっ、あんたは随分と黒崎一護という死神代行を買っているみたいだな」

 

「話の最中にすまねぇが、雷山隊長。1つだけ確認させてほしい」

 

「構わないが、いったい何の確認だ?」

 

「雷山隊長は、俺たちの味方と捉えてもいいのか?」

 

 

雷山にそう話す阿散井の眼には”覚悟”が現れていた。それは朽木ルキアを助けるために場合によっては敵になるものすべてを斬り捨てる覚悟であった。

 

 

「……味方か。まあ、今はその認識で間違いない。今、我々は朽木ルキアの処刑阻止を前提に動いているからな」

 

「分かった。雷山隊長がこちらに付いてくれるなら俺も多少の無茶が効く……って雛森!?」

 

「……へ?」

 

 

阿散井はそこで初めて雛森の姿に扮した狐蝶寺の存在に気が付いた。しかし当の本人は阿散井の事を微塵も知らないため素の反応で返してしまった。

 

 

「えーっと……君、誰なの?」

 

「なっ……!?どうしちまったんだよ。まさか藍染隊長が亡くなったショックで……」

 

「ん?おい、春麗。『陽炎写(かげろううつし)』を解いてやれ」

 

 

阿散井の態度に違和感を持った雷山は阿散井の視線の先、つまりは自身の隣に視線を向けた。そこには雛森が立っていた訳だが、雷山はそこで狐蝶寺が雛森の姿のままこの場にいたことを思い出した。雷山にとっては隣に雛森がいるのは何ら不自然の無い光景であったためである。

 

 

「え?ああ、そうだったそうだった。今は雛森って子の姿になってたんだった」

 

 

そう言うと狐蝶寺は右手を顔の前まで持って行きゆっくりと下げ始めた。するとさっきまでの雛森の姿から頭に風車の髪飾りをつけた女性の姿へと変わっていった。

 

 

「こいつはいったい……」

 

「えーっとね。今のは”縛道の八十七”『陽炎写(かげろううつし)』って言う鬼道でね……」

 

「春麗、阿散井はそれを聞きたいんじゃない。驚かせて悪かったな。こいつは俺の……まあ幼馴染である狐蝶寺春麗と言う死神でな。今は訳あって雛森の姿に扮してもらっていただけなんだ。本物は今頃隊舎の中で眠っているはずだ」

 

「そうそう、雷山くんに頼まれてちょっと雛森って子の姿だけ借りてるんだよね。あ、大丈夫だよ。絶対悪いようにはしないから」

 

「お、おう……なら良いんだが……」

 

 

阿散井は本能的に目の前の狐蝶寺春麗という死神に苦手だと感じた。その上、鬼道に関してはあまり詳しいとは言えなかった為、理解が及ばず苦笑いするしかなかった。

 

 

「……じゃあ、一護。俺は先に行くぜ」

 

「ああ」

 

 

一護は振り返らず返事をした。一方の阿散井は数歩行ったところで雷山に対して頭を下げた。

 

 

「雷山隊長、協力感謝します」

 

「阿散井、お前懺罪宮(せんざいきゅう)に行くつもりだろ?そこに俺たちの仲間である銀華零白と山吹雷花という死神がいる。もし必要とあらば手を貸すがどうしたい?」

 

「いや、そこまで面倒を見てもらう訳にはいかねぇ、俺1人でやります」

 

「……そうか、いい覚悟だ。だが、命は無駄に燃やすなよ」

 

 

その後阿散井は懺罪宮(せんざいきゅう)に朽木ルキアを救出するために向かっていった。阿散井を見送った後、雷山の視線は再び斬月の顔に向いていた。それは眼に殺気すら籠っているほど鋭いものだった。

 

 

「どうかしたのか?」

 

 

雷山の異様とも言える光景に対して、夜一も思わず声をかけてしまった。

 

 

「いや……四楓院夜一、あいつは何て名前なんだ?」

 

「恐らくあれが一護の具象化なのじゃろう。確かあやつは自らを斬月と名乗っておったが……」

 

「斬月、か」

 

「……?」

 

「いや、気にすんな。昔似たような顔をしたやつがいた気がしたんだが、多分俺の記憶違いだな。ひとまず、俺たちは先に双極の丘に行って処刑に備える。行くぞ、春麗……じゃなくて雛森」

 

「……あっ、そっか。”縛道の八十七”『陽炎写(かげろううつし)』」

 

 

狐蝶寺が鬼道を発動すると同時に陽炎のようにその姿が歪み始め、狐蝶寺春麗と言う死神から雛森桃という死神へと姿が変化した。

 

 

「これでよし!それでは参りましょうか。雷山()()♪」

 

 

 

-- 瀞霊廷内・清浄塔居林(せいじょうとうきょりん)付近 --

 

 

 

「なんや、えらい静かやな」

 

「うん、結局誰にも会わずにここまで来ちゃったしね」

 

 

椿咲、浮葉、猿柿の3人は清浄塔居林(せいじょうとうきょりん)へと繋がる通路を歩いていた。3人とも鬼道で霊圧を消して隠密行動しており、いつ奇襲を受けてもいいように慎重に歩みを進めていた。

 

 

「全滅しているという中央四十六室は置いても、まさかその護衛の死神すらいないとは……」

 

「肝心の藍染君の霊圧すら感じ取れないほど物静かでかえって不気味なくらい」

 

「今はいないと取るべきか。私たちと同じく霊圧を消して潜んでいると取るべきか……」

 

「前者でも後者でも進むしかないよ。藍染君に天誅(てんちゅう)を下さないといけないし―――……ッ!!浮葉君!!」

 

「なっ!?」

 

 

何かの気配に気づいた椿咲は咄嗟に浮葉を弾き飛ばした。その直後抜刀した椿咲と何者かの刀がぶつかり合いけたたましい音があたりに響いた。

 

 

ガキンッ―――――――!!

 

 

「……驚いたな」

 

「それはこっちの台詞(せりふ)、私は奇襲なんて野暮な戦い方教えた記憶はないよ」

 

 

ガキンッ!! ガンッ!! ヒュンッ!!

ズザアアアァァァ…

 

 

椿咲と何者かの斬撃の打ち合いは片や頬に小さな切傷を受ける形で片や無傷で距離を取る形で一旦の決着を見た。そして傷を受けたことでモヤの様にぼやけていた何者かの姿が徐々に鮮明になって行った。

 

 

「南美隊長、もしかしてあれが」

 

「うん、間違いない。やっぱり生きてた」

 

「ふっ」

 

 

不敵な笑みを浮かべている男の名は、藍染(あいぜん)惣右介(そうすけ)

護廷十三隊五番隊隊長であり、メガネをかけた現世で言う二枚目俳優という言葉が似合う死神。椿咲たちを奇襲したのは今回の案件の首謀者である藍染惣右介本人であった。

 

 

「念のために聞くけど、こんなところで何やってるの?ここは藍染君のような護廷十三隊の一介の隊長じゃ立ち入ることすら禁止されてるはずだよ?」

 

「それは椿咲隊長にも言えた話じゃないですかね」

 

「私はもう護廷十三隊じゃないからね。ちゃんと許可を得て来ているよ」

 

「ほぅ、どこの誰に?」

 

「中央四十六室に」

 

「面白いことを言う」

 

 

その言葉を最後に椿咲と藍染は露わにして睨み合い膠着状態となった。

辺りに異様な緊迫感が漂う始めた頃、先に動いたのは椿咲だった。

 

 

”浮葉君、メインは私が戦うからバックアップお願いね”

 

「…………」

 

 

動く直前、椿咲は目線で浮葉にそう合図を送っていた。

一方の藍染は自身に向かってくる椿咲にとても策があるようには見えず、自身のある種、師ですらある椿咲のその愚行を不審に思っていた。そして藍染は自身の間合いに入ると同時に斬魄刀を横一閃に振り抜いて椿咲を斬り捨てた。

 

 

「かはっ……!!」

 

 

藍染に斬られた椿咲は吐血しながらその場に倒れ込んだ。しかし倒れると同時に椿咲の身体がまるでノイズが走るように歪んで消えてしまった。

 

 

「……成程」

 

 

ガキンッ!!

 

 

「無策で斬りかかるとは貴女らしくもないと思いはしたが、こういうことでしたか」

 

 

藍染は背後から急に現れた椿咲の不意打ちを完璧に防いで見せた。本来なら驚くべきことではあるのだが、藍染の実力の一片を知る椿咲はさも当然であることと認識していた。

 

 

「さすが藍染君だね。この程度じゃ受けられちゃうか」

 

「僕のことを甘く見ない方が良い。椿咲隊長の知る藍染惣右介など実力や性格も含め、もう何処にも居はしない」

 

「私が知る藍染君は何処にも居ない?それこそ面白いことを言うね。まるで今までの藍染君の軌跡を私が全く見ていないような口ぶりだ。”破道の七十五”『氷霜斬(ひょうそうざん)』」

 

 

その瞬間、椿咲の斬魄刀から冷気が漂い始め、徐々に藍染の斬魄刀と柄を握る手を凍らせ始めていた。

 

 

「これは……」

 

「鬼道に詳しい藍染君なら分かるでしょ?」

 

「……さすがは"初代"の名に霞むことの無かった"二代目"と言うべきか」

 

「褒めても何も出ないよ。さあ、どうするの?このままだと全身凍っちゃうよ?」

 

 

椿咲の言う通り徐々にではあるが鬼道による凍結が進行してきておりこのままでは身動き一つとれなくなることは必至だった。しかし藍染はそんなこと意に介さず落ち着いており、自由になっている左手を密かに椿咲に向け一言呟いた。

 

 

「『雷孔砲(らいこうほう)』」

 

 

ドゴォォォォォォォォォ!!!!

 

 

 

-- 瀞霊廷・懺罪宮(せんざいきゅう) --

 

 

 

「それではこれより極囚・朽木ルキアの護送に入ります。銀華零白殿、山吹雷花殿、極囚護衛の任感謝します」

 

 

藍染惣右介と椿咲たちの戦いが始まったちょうどその頃、

銀華零と山吹は極囚・朽木ルキアを迎えに来た鬼道衆の面々と共に双極の丘へ出立しようとしていた。

 

 

「はい、よろしくお願いします。(わたくし)、銀華零は先導を、山吹は後ろから追従しそれぞれ護衛いたしますね」

 

 

数歩歩いたところで朽木ルキアは何かに気付いたように歩みを止めた。

 

 

「恋次……!?」

 

 

朽木ルキアがそう言葉を発したことで銀華零も先程から六番隊隊長・朽木白哉と戦っている霊圧が同隊副隊長・阿散井恋次の物であることを知った。

 

 

「……成程、先程からの霊圧は……」

 

 

銀華零も山吹も1度この場で阿散井と相対していたため霊圧を知るところではあった。しかし、卍解を会得したことで強大となった阿散井の霊圧は従来の霊圧を知る者たちからすれば違う者の霊圧を写っていたため気付くのが遅れていた。そして、銀華零も山吹も朽木ルキアと同じく阿散井の霊圧が消えかかっていることに気が付いていた。

 

 

”銀華零隊長、あたしが彼の救援に向かいましょうか?”

 

”いえ、ここで下手に動くことは出来ません。朽木ルキアさんと阿散井六番隊副隊長には悪いですが、ここは我関せずで貫きましょう”

 

”……分かりました”

 

 

「おはよう、ご機嫌いかが?ルキアちゃん」

 

 

銀華零たちも含めて声のする方へ目を向けると三番隊隊長・市丸ギンが歩いて来ていた。

 

 

「市丸、ギン……」

 

「アカンよ。ギンやのうて市丸隊長や。いつまでもそれやったらお兄様に叱られるで?」

 

「……失礼しました。市丸隊長」

 

「嫌やなぁ。本気にした?気にせんといて、僕と君の仲やないの」

 

 

市丸は飄々とした態度でそう言って笑みを浮かべていた。一方のルキアはそんな市丸の態度を不審に思い警戒していた。

 

 

「……話に割って入って申し訳ないですが市丸三番隊隊長、ここへは何用ですか?あなたは極刑の立ち合いの為に双極の丘に招集を受けているはずですが」

 

「何用ってそない重苦しい言い方されたら困るけど、散歩がてらルキアちゃんにちょっと意地悪しに」

 

 

それを聞いたルキアはさらに目の前に居る市丸の事を警戒した。それは銀華零と山吹も感じ取っており、山吹は不測の事態に備えていつでも抜刀できるように密かに構えていた。

 

 

「……意地悪しに、ですか?申し訳ないのですが、危害を加えようというつもりなら力づくでも排除しますよ?」

 

「嫌やなぁ、冗談やて」

 

「…………」

 

「はぁ……」

 

 

市丸は自身の揺さぶりとも言える言動に一切反応を示さない銀華零と山吹を見て余程警戒されていると察した。それと同時に101年前の事件で関わった狐蝶寺春麗と同じ【宮廷遊撃部隊】に属しているだけはあると称賛していた。

 

 

「なんやえらい警戒されてるみたいやね」

 

「あたりまえですよ。今はいつ旅禍(りょか)やそれに属する勢力が朽木ルキアさんを奪還しに来るか分かりませんからね。たとえこの場に来たのが山本総隊長だったとしても警戒に値しますよ」

 

「ふーん、まあこれが最後やから堪忍して」

 

「……手短にお願いしますよ」

 

 

相手は何を考えているか分からない市丸ギンだったが、銀華零の本来の身分を知らぬ鬼道衆たちからすれば隊長への無礼と移るために危険を承知で市丸とルキアの間から退いた。

何があってもすぐ動けるよう密かに斬魄刀に手をかけて

 

 

「ルキアちゃん、阿散井くん死なせたないやろ?助けたろか?」

 

「は……!?」

 

 

市丸のその一言は覚悟を決めていた朽木ルキアの心を大きく揺さぶった。市丸ギンがそんな自身にメリットの無いことをするわけがない、しかしもし本当なら阿散井恋次も黒崎一護も皆助けてもらえるのではないかと、

 

 

「……嘘や」

 

 

ルキアの頭にポンっと手を置いた市丸はそう言うとルキアを素通りして去って行った。

 

 

「バイバイ、ルキアちゃん。次は双極で会お」

 

「あああああぁぁぁぁ!!」

 

 

朽木ルキアは我を忘れて叫んだ。そうでもしないと死ななくても済む、生きたいと揺れ動いてしまった心が壊れてしまうからだった。

 

 

「市丸ギン!!あなたって人は!!」

 

希望をチラつかせて絶望へ叩き落とす。そのあまりに残酷である所業にさすがに銀華零も声を荒げて怒った

 

「ふっ……」

 

 

ヒュンッ!!

 

 

「……ッ!!」

 

 

次の瞬間、市丸の顔の横スレスレを風が通り抜けていき、切れた頬から血が垂れた。それは誰の目にも明らかで銀華零が放った鬼道だった。

 

 

「次同じことをすれば、その不愉快な顔を刎ね飛ばしますので相応のご覚悟を、市丸ギン」

 

「……肝に銘じておきますわ」

 

「山吹さん、朽木ルキアさんは?」

 

 

銀華零は市丸が去って行ったあと、ルキアとそれを介抱する山吹に目を向けた。ルキアは一応落ち着きを取り戻したように見えるが、死への恐怖からか全身がまだ震えていた。

 

 

「何とか落ち着きましたが……」

 

「……酷ですが、このまま行きましょう。時間がズレればズレるだけにこちらの手数も少なくなってしまう」

 

「はい」

 

 

 

-- 瀞霊廷内・清浄塔居林(せいじょうとうきょりん)付近 --

 

 

 

ドゴォォォォォォォォォ!!!!

 

ズザアアアァァァ……

 

 

「くっ……」

 

 

爆発と同時に椿咲は地面を滑りながら後退して来た。

椿咲は藍染が鬼道を放つ直前に微弱な鬼道を当てると同時に後ろに飛びダメージを極限まで0にしていた。

 

 

「さすがは椿咲隊長。やはりあの程度では大したダメージも受けませんか」

 

「……藍染君、そろそろ小手調べはやめなよ。そろそろ処刑も始まるころだけど、いいの?」

 

「さすがに僕の目的は割れていますか……いいでしょう。こちらも時間があまりないのは事実ですからね」

 

 

椿咲は浮葉に近づき小声で話しかけた。

 

 

「……浮葉君、分かってると思うけれど、外はもう夜が明けたくらいだから私の『月華(げっか)』は使えない。卍解しても良いけど外の雷山隊長たちを邪魔する可能性も否定できないからあまり使いたくはないんだ」

 

 

椿咲の斬魄刀『月華(げっか)』は文字通り夜になったらその真価を発揮する斬魄刀であった。この弱点は卍解すれば関係なくなるが、それに付随して雷山たちの妨害をしてしまう可能性は否定できなかった。そのため椿咲は卍解はどうしてもと言う時の奥の手として使おうと考えていた。

 

 

「しかし、そうなれば私の斬魄刀しかありませんが……」

 

「大丈夫。私たちだけが受けるわけじゃないし、浮葉君は関係ないでしょ?」

 

「……分かりました。しからば、私の斬魄刀メインで行きましょう――――――

 

 

――――――”()(ひた)せ”『虚空(こくう)』」

 

 

 





虚空(こくう)

【十四番隊・第一将”先鋒”】浮葉刃の持つ斬魄刀。

解放すると同時に自身の半径1㎞圏内に居るものすべてを閉じ込める異空間を作り出す。この異空間の中には何も存在せず、外から認識もすることも出来ずに外からも中からも物理的な破壊も不可能。
中にいる者は全員徐々に霊力を奪われて行く。この効果から逃れられるのは、斬魄刀の所有者である浮葉一人だけ。そしてある一定量貯まると同時に自動的に卍解状態になる。
デメリットは浮葉自身も中に閉じ込められる上に、普通に攻撃が通るため相手の攻撃を躱さなければならないこと。
解号は『()(ひた)せ』
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