宮廷遊撃部隊・十四番隊   作:らりるれリッター

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第24話 動乱

 

 

 

「なんだ、思っていたよりも随分と集まりが悪いな」

 

 

 

-- 瀞霊廷・双極の丘 --

 

 

 

「遅すぎるくらいかと思っていたんだけどな」

 

 

清浄塔居林(せいじょうとうきょりん)にて椿咲たちが藍染と接敵した頃、雷山たちの姿は双極の丘の上にあった。

他の隊長格が複数人居る中で、雷山はわざとらしく言葉を発していた。この何時間か前に一度、雷山と雛森に扮する狐蝶寺は準備の名目でこの場に来ていたが、それを護廷十三隊、とりわけ山本元柳斎に悟られることを避ける為だった。

しかし集まりが悪いと思ったのもまた事実であり、雷山の本心から出た言葉でもあった。

 

 

「……貴様が藍染の後任と言う」

 

 

双極の丘には現状、一番隊、二番隊、八番隊の3隊しか隊長、副隊長両名が揃っていない状況だった。その中で、唯一雷山の事を知らない二番隊隊長・砕蜂(ソイフォン)が話しかけてきた。

 

 

「ああ、まずは初めましてと言っておこう。俺が藍染前隊長の後任の雷山悟だ。よろしくな」

 

「ふんっ、馴れ合いはせん」

 

 

握手のために手を差し出した雷山だが、砕蜂は同じ隊長とは言えどそこまでの関係など築かないと言いたげに握手を拒んでいた。

 

 

「…………」

 

 

一方の雷山も歴代のいろんな隊長たちを見て来ているので、砕蜂の態度も珍しくもないと何も言わずに列に並んだ。

 

 

「雛森副隊長……!?」

 

 

雷山が並んだと同時に右隣に居た副隊長が雛森に扮した狐蝶寺に話しかけてきた。八番隊副隊長・伊勢七緒(いせななお)である。

 

 

「もう体調はよろしいのですか?その、藍染隊長の件で……」

 

 

雷山は目の前で話す人物が伊勢七緒であることは知っていた。そしてその顔にどこか見覚えもあった。それはかつての八番隊隊長・鹿取(かとり)抜雲斎(ばつうんさい)であり、自身も知らないうちに神官の家系である両家が繋がったのかと思っていた。

その一方で、七緒に話しかけられている狐蝶寺は何を言えば、言って良いのか分からず困り果てていた。

 

 

”雷山くん!?いきなり話しかけられちゃったけど、どうしたらいいのこれ!?”

 

「あの、雛森副隊長……?」

 

「……すいません。実はまだ本調子ってほどではなくて…」

 

 

その時、狐蝶寺は声にこそ出さなかったがとても驚いていた。自身は一切声を発していないのに聞いたことの無い声が聞こえ始めてきたからである。その正体は雷山が鬼道の一端を用いて自身の声を雛森の声に聞こえるように偽装していたものである。

 

 

「なら、無理はせずに休んでいてください」

 

「いえ、藍染隊長からの最期の手紙に書いてあったんですよ……これからの五番隊をよろしくと」

 

「!!」

 

 

雷山の言っていることは大胆な嘘であった。しかしこの場に居る全員は藍染の手紙の内容を一切知らないため真偽を確かめる術がなく疑わずに信じていた。

 

 

「せめて、副隊長としての責務は果たさないと……お騒がせしてしまってすいません。七緒さん」

 

「……雷山隊長、少々お話をよろしいでしょうか?」

 

「そんな(かしこ)まらなくても良いぞ。それで、何用だ?」

 

「藍染隊長に代わってという厚かましい行為ですが、雛森副隊長の事をよろしくお願いします」

 

 

そう言うと七緒は深く頭を下げた。それを見た雷山は山吹並みに真面目な奴だなと思いつつ、ニカッと笑いそれに答えた。

 

 

「ああ、任せておけ」

 

 

その後しばらくして銀華零の先導で極囚・朽木ルキアが到着した。ルキアを定位置まで連れて行くと銀華零と山吹を始めとした鬼道衆の部隊は下がった。待機の為に雷山から見える位置に着くと同時に銀華零は雷山に対して目で合図した。

 

 

”お待たせしました。雷山さん”

 

”ああ、護衛ご苦労さん。何も異常はなかったか?”

 

”それがですね、懺罪宮(せんざいきゅう)で市丸ギンが……”

 

”市丸ギン?”

 

 

銀華零は雷山に懺罪宮(せんざいきゅう)で市丸が接触してきたことを報告した。懺罪宮(せんざいきゅう)にルキアが収容されている間は、藍染一派の誰が来てもおかしくはないと雷山は考えていたが、こうもあからさまに行動に移してきたことを疑問に思っていた。

 

 

「雷山隊長、少しいいかい?」

 

 

雷山が市丸が懺罪宮(せんざいきゅう)に来たのは自身らのけん制のためかと思案している時、不意に笠を被り女物の着物を隊長羽織の上から羽織る死神に声をかけられた。護廷十三隊八番隊隊長・京楽(きょうらく)春水(しゅんすい)だ。

 

 

「何の用事だ?京楽の次男坊」

 

「いやぁ、大した話じゃないんだけどさ、浮竹から話は聞いていてね。実際のところどうなのさ」

 

 

京楽は250年前に雷山が【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”という組織に属していることを雷山本人から知らされていた。その彼が再び、銀華零や狐蝶寺といった十四番隊の仲間と共に秘密裏で動いていることを親友である十三番隊隊長・浮竹(うきたけ)十四郎(じゅうしろう)から聞いており、その目的を遠回しに聞き出そうとしていた。

 

 

「さあ、何のことだか分からんな。浮竹十三番隊隊長もどこで聞いたのか知らんが、噂話はこんなところでするものじゃないぞ」

 

 

もちろん雷山も京楽のその考えは分かっており、元柳斎もいるこの場で迂闊にそんなことは言えないと暗に返答していた。

 

 

「そう言えば当の本人の姿が見えないが、何処にいるんだ?まさか、そんな訳はないのだろう?」

 

「随分と手間取っているみたいだね。大丈夫、ここには向かっているはずだよ」

 

 

雷山は京楽の言う、手間取っているの言葉が引っかかったが、それを追求すればこちらも先の問いに答える必要が出てきてしまうため、あえてスルーした。

そして他の隊長も藍染一派も現れずに時間だけ過ぎ、処刑開始の時刻がやって来た。

 

 

「……時間じゃな。それではこれより、術式を開始する」

 

「随分と集まりが悪いな」

 

「へぇ?」

 

 

砕蜂のその呟きに同・二番隊副隊長、大前田(おおまえだ)希千代(まれちよ)が反応した。

 

 

「隊長、副隊長が揃っているのは総隊長殿の一番隊と我ら二番隊、雷山の五番隊と京楽の八番隊のみ、十一と十二は仕方ないとして、他の連中はどういうつもり……四番隊の卯ノ花まで来ておらぬとは―――……ッ!」

 

 

その時、砕蜂は白哉が歩いて来ていることに気付いた。白哉はルキアを一瞥(いちべつ)すると何も言わずに列に並んだ。

 

 

「朽木ルキア、何か言い残しておくことはあるかの」

 

 

山本元柳斎がルキアに対してそう質問しているとき、狐蝶寺は雷山に合図を送っていた。

 

 

"藍染くんというか例の3人誰も来ないけど、どうするの?"

 

"そうだな……さすがにもうこれ以上は待つのは止した方がいいな。双極が完全に開放されたら俺たちでも簡単には手が出せなくなる"

 

"……じゃあ?"

 

"ああ、"

 

 

「……作戦変更、だな」

 

 

雷山は静かに目を開けてそう言うと腰に差してある斬魄刀に手をかけた。

 

 

「……雷山、貴様何をするつもりだ」

 

 

先程雷山が呟いた”作戦変更”という言葉を聞き、不審に思った砕蜂はその様子を見ていて、雷山をけん制するつもりでそう言った。

 

 

「砕蜂、先人の経験として言っておくが、けん制する前に行動にするべきだぞ。斬魄刀に手をかけているなら尚更な。”縛道の五十六”『雷鳴光(らいめいこう)』」

 

 

雷山が鬼道を使うと同時に落雷が起き、雷山の姿を隠した。それと同時に、雷山は瞬歩を用いて山本元柳斎が立つ場所へと一気に移動した。

雷山は高い実力を誇る【宮廷遊撃部隊】でも【護廷十三隊総隊長】山本元柳斎重國を無傷で止めておけるのは自身しかいないと思っており、それは十四番隊、護廷十三隊含めて、誰も反論のしようがない事実であった。

 

 

「"雷光(らいこう)(ひか)りて雷鳴(らいめい)()らせ"『雷斬(らいざん)』!!」

 

 

雷山は移動している途中で抜刀し、そのまま斬魄刀を解放させた。解放した雷山の斬魄刀は刀身がギザギザの形をした刀となった。

 

 

ガキンッ!!バチィ!!

 

 

けたたましい轟音と共に剣と剣がぶつかる音が響いた。しかし、雷山の剣は山本元柳斎には届いておらず、間に副官である雀部(ささきべ)が割って入り雷山の斬撃を受け止めていた。

 

 

「何をなさるつもりですか。雷山隊長……!!」

 

「退きな雀部、お前とて分かってるだろ?いくらお前でも()()()()()()俺を抑えることなど出来ないとな!!」

 

 

雷山が刀を振るうと雀部は力負けして吹き飛んだ。それを見た山本元柳斎は斬魄刀を杖状の封印状態から解いて臨戦態勢に入れるよう構えていた。

 

 

「雷山、おぬしどういうつもりじゃ」

 

「どうもこうも、見ての通り処刑を阻止させてもらう。"縛道の六十三"『鎖条鎖縛(さじょうさばく)』続けて"縛道の七十三"『倒山晶(とうざんしょう)』」

 

 

雷山が山本元柳斎に向け手を伸ばすと同時に、地面から金色の鎖が山本元柳斎の身体巻き付いた。それに続くようにして周りを四角錐状の結界が取り囲んだ。

 

 

「あの山じいがこうも簡単に……」

 

 

鬼道によって動きを封じられた元柳斎とそれを容易く行った雷山の様子を見て京楽は思わずそう呟いていた。それと同時に七緒は雷山を止めるべく動こうとしていたが、それを京楽が制した。

 

 

「七緒ちゃん、動いちゃダメだよ」

 

「しかし隊長……!!」

 

「雷山隊長は七緒ちゃんや僕にどうこうできる相手じゃないよ」

 

「そんな……」

 

 

雷山はいつの間にか現れていた卯ノ花の方をチラッと見た。山本元柳斎を除けば卯ノ花が自身らにとっても厄介な相手となるため、警戒していた。そして、卯ノ花が動く気配がないことを確認すると、すぐさま銀華零と山吹に指示を出した。

 

 

「白は朽木白哉を、そして山吹は朽木ルキアをそれぞれ頼んだぞ!」

 

「はぁ……結局はこうなってしまうのですね」

 

「今度こそ、気兼ねなくこのセリフを言えます。朽木ルキアさん!あたしあなたを助け出して見せる!」

 

 

雷山のその号令と共に待機していた銀華零と山吹の二人も動き始めた。【宮廷遊撃部隊】の事を知らぬ者たちの目には隊長(クラス)の実力を持った者が一気に3人も暴れ出した反乱に映り、辺りは大混乱に陥った。

 

「くっ……こうなれば……!!」

 

 

混乱の中、その場で数少ない動ける隊長である砕蜂が手始めに山吹を抑えにかかろうとしたその時だった。

 

 

「はいはーい♪暴れないでねー♪」

 

 

気付くと雛森に扮した狐蝶寺が背後に立っており、斬魄刀を首筋に当てていた。それは暗にその場から動けば殺すことも厭わないと脅しているようだった。

 

 

「何のつもり……待て、貴様何者だ……!?」

 

 

他隊の副隊長とは言え、本物の雛森を知る砕蜂はとてつもない威圧感と殺気を放つ背後の雛森に違和感を持ち、偽物だと看破した。

 

 

「……まあ、これだけ暴れていれば私が本物の雛森ちゃんだって思うわけないよね。ひとまず初めまして♪」

 

 

雛森に扮した狐蝶寺が手を顔に持って行くと同時に『陽炎写(かげろううつし)』が解かれて、雛森の姿から徐々に元の狐蝶寺の姿へと変化していった。

 

 

「これは、鬼道か」

 

「正解♪私は【十四番隊・第四将”副将”】狐蝶寺春麗。よろしくね♪えーっと、砕蜂ちゃんだっけ?」

 

「くそっ……」

 

 

狐蝶寺に背後を取られた砕蜂は隠密機動として容易く背後を取られたことに悔しそうに呟いていた。

 

 

「よし、あとは朽木ルキアを奪取すれば―――……ッ!!」

 

 

雷山はハッとした顔をして四角錐の結界の方を見た。一瞬だけ山本元柳斎の霊圧が結界から漏れたからだった。

 

 

ドゴォォォォォォォォォ!!!!

 

 

少しの間も置かずに、突如として雷山が張った四角錐の結界が消し飛び、山本元柳斎の強大な霊圧と膨大な炎が噴き出した。

雷山は放った程度の縛道ではわずかな時間しか山本元柳斎の動きを封じることが出来ないと分かっていたが、ここまで早い復帰は雷山の想定を超えていた。

 

 

「ちっ、”百降雷壁陣(ひゃっこうらいへきじん)”!!」

 

 

雷山は刀を振るい溢れだした炎を雷の陣で覆って、周りに被害が及ぶのを防いだ。強大な炎と雷の二つがぶつかり、相殺する形で炎と雷が消し飛んだ。辺りが見えるようになると雷山と山本元柳斎が向かい合うようにして立っていた。

 

 

「まったく、相変わらずの傑物ぶりだな。10秒は足止め出来ると思ってたんだが」

 

「あの程度で儂を縛れると思うとるとは、随分と甘い算段を立てておる。のう、雷山」

 

「思ってねぇよ。仕方がない、本気で行くか」

 

「そこを退いてください!!雀部さん!!」

 

 

その時、山吹の怒号が辺りに響くと同時に雷山の視線はそちらに向けられていた。見ると雀部がルキアの救出に向かっていた山吹の行く手を阻んでいた。

 

 

「貴女こそ自分が何をやっているのか分かっているのか、山吹隊長!!」

 

「雀部め……ちっ、余計な真似を」

 

 

雷山が雀部に向かって雷撃を放とうとしていた。山本元柳斎から自身から一瞬だけ気を逸らした雷山の決定的な隙を見逃さなかった。

山本元柳斎は雷山の周囲に炎の壁を形成することで雷山の雷撃を防いだのだ。

 

 

「雷山くん!!」

 

 

雷山が炎に包まれたことで動揺した狐蝶寺は雷山に加勢しようと動こうした。しかしその一瞬の隙を突いて砕蜂が抜け出し狐蝶寺に一撃を入れた。

 

 

ドスッ!!

 

 

「い゛た゛っ!!」

 

 

砕蜂に一撃を入れられてしまった狐蝶寺は衝撃で後方へ弾き飛ばされてしまった。

 

 

「鬼道衆何をやっている!今すぐに術式にかかれ!!」

 

「え……は、はいっ!!」

 

 

唖然としていた鬼道衆だったが、砕蜂のその怒号で我に返り双極解放の術式に取り掛かった。

 

 

「痛ったいなぁ!!」

 

 

ガキンッ!!

 

 

「くっ……!!」

 

 

弾き飛ばされた狐蝶寺だったが、そのダメージはないに等しくすぐに砕蜂に斬りかかった。一方の砕蜂も寸でのところでその斬撃を受け止めていた。

 

 

「……春麗のバカ、こちらは気にするなと言っただろうに……」

 

 

その言葉と共に炎の中から無傷の雷山が現れた。雷山は炎の壁に取り囲まれた際、咄嗟に雀部に放とうとしていた雷撃を自身の周りに展開させることで防いでいた。

 

 

「雷山くん、ごめんって!」

 

「……雷山、おぬし何を企んでおる。わしから見て十四番隊としては随分と杜撰な作戦じゃが……―――」

 

 

山本元柳斎はその時十四番隊メンバーの残り2人、椿咲南美と浮葉刃がいないことに気が付いた。

 

 

「……椿咲南美と浮葉刃はどこにおる」

 

「すべて話したら信じるのか?否、少なくとも今はまだ信じないだろ。それが答えだ」

 

「答える気はなしか。……良い、この際おぬし1人をこの場に止めておけばじきに終わる」

 

 

雷山は山本元柳斎が朽木ルキア救出へ向かう山吹の元へ動くことを身を挺して防いでいるが、それは逆もまた然りであり雷山が山吹のフォローに動くことを元柳斎が防いでいた。

 

 

「このじじい言わせておけば……」

 

 

バチ……バチバチバチ……

 

 

雷山は再び雷撃を放とうとしており、そのためか彼の持つ斬魄刀から小さな静電気やスパークが引っ切り無しに起きていた。

 

 

「…………」

 

 

一方の山本元柳斎も雷山の放つ雷撃をまともに受ければ大ダメージは必至であり、防ぐ為にそのタイミングを計っていた。

 

 

「放d……」

 

 

ドゴォォォォォォォォォ!!!!

 

 

その時、双極の開放術式が終わり膨大な霊圧と炎が双極の矛から溢れだした。それは徐々に鳥の形、さながら不死鳥(フェニックス)のように変わっていた。

双極が解放された真の姿であり、その名を『燬鷇王(きこうおう)』。

そして先程まで地面に立っていた朽木ルキアの身体もいつの間にか双極の磔架(たっか)へと浮かび上がっており、処刑の準備が整いつつあった。

 

 

「これが……」

 

「双極の開放……!!」

 

 

その場に居る隊長格のほとんどは双極の開放を見たことがないものがほとんどだったため、皆空を見上げて息を飲んでいた。一方の雷山は"双極の開放"を止めることが出来なかったため、やりたくはないと考えていた最後の手段に出ようとしていた。

それは雷山の卍解による"双極の破壊"であった。

 

「卍k……―――」

 

 

ドゴォォォン!!

 

 

「ッ!!」

 

 

雷山が卍解をしようと構えた直後、けたたましい音と共に燬鷇王(きこうおう)の動きがある一点で止まった。……いや、()()()()()という表現が正しかった。

それはその場に居た隊長、副隊長全員が気付いたことであり、全員等しく燬鷇王(きこうおう)の目の前部分に目を凝らしていた。

 

 

「……?」

 

 

一方、死を覚悟して目を閉じていた朽木ルキアは目の前に立つ人物を見て驚いた。

 

 

「一護……!?」

 

「よう。助けに来たぜ、ルキア」

 

 

罪人を貫こうとした燬鷇王(きこうおう)の一撃を止めたのは、今まさに瀞霊廷中を騒がせている旅禍(りょか)の1人、黒崎一護当人であった。

隊長格と倒しているとはいえ、双極をたかが旅禍(りょか)1人が止めた事実を下に集まる隊長格たちは信じられないと言いたげに見ていた。

 

 

莫迦(バカ)な……止めたというのか!?斬魄刀百万本にも匹敵する破壊能力を……奴はいったい何者だ……!!」

 

「……七緒ちゃん、もしかしてあの坊やが旅禍(りょか)の彼の言っていた……」

 

「はい、外見的特徴も隊員たちの報告と一致します」

 

「……そうか。雷山隊長や僕たちよりも先に間に合ったのは彼の方だったわけだね」

 

懺罪宮(せんざいきゅう)で山吹さんを倒した時に彼の実力の一端を見たつもりだったのですが、まさかここまでとは……」

 

「双極って止められるものだったの……!?」

 

 

斬魄刀百万本にも匹敵すると言われている燬鷇王(きこうおう)の攻撃をたった一本の斬魄刀で受け止めた事実は百戦錬磨の”十四番隊”をも驚かせることだった。

 

一護に処刑を阻まれた燬鷇王(きこうおう)は雄たけびのような鳴き声を上げると同時に一度距離を取った。それは一護に対して二撃目を放つためであり、その行動に一護も気付いており迎撃しようとしていた。

死神代行・黒崎一護と双極・燬鷇王(きこうおう)がぶつかり合おうとしたその時、突如として燬鷇王(きこうおう)の首に縄のようなものが巻き付いた。

 

 

「あれは……」

 

 

その正体が双極を破壊することの出来る四楓院家の宝具だと見抜いた雷山は自身の背後へと目を向けた。そこには巨大な盾のような宝具を持つ浮竹の姿があり、ついさっきまで列に並んでいた京楽も合流するように飛んできた。

 

 

「浮竹隊長、何を……」

 

「―――……ッ!!止めろ!!奴ら双極を破壊するつもりだ!!」

 

 

浮竹の持つ盾が双極を破壊できる四楓院家の宝具だと紋を見て気付いた砕蜂はすぐさま大前田に止めるよう命じたが、時すでに遅しだった。

 

 

「よう、この色男。待たせてくれるじゃないの」

 

「悪い、解放に手間取った」

 

 

そんな会話をしながら京楽と浮竹の二人は宝具の盾の部分に斬魄刀を突き立てた。すると2人の霊圧が紐ようなものを伝わり燬鷇王(きこうおう)を爆散させた。その衝撃はすさまじいものであり、炎を纏った燬鷇王(きこうおう)だったものが地上に降り注いだ。

 

 

「なんだが知らねぇが、こっちは」

 

 

一護は双極の磔架(たっか)に乗ると霊圧を込めて斬魄刀を突き刺した。凄まじい光と轟音と共に磔架(たっか)が爆発し、ルキアを捕らえていた部分が跡形もなく消し飛んでいた。それはありえない光景でもあり全員等しくまるで時が止まったようにただ茫然と眺めていた。

 

 

 

 

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