宮廷遊撃部隊・十四番隊   作:らりるれリッター

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第25話 動乱②

 

 

 

-- 瀞霊廷・双極の丘 --

 

 

 

「来たか、恋次!」

 

「ぎゃあ!!」「ぐあ!!」

 

 

一護のその声と同時に鬼道衆の悲鳴が聞こえその場に居た隊長格一同は目線をそちらに向けていた。見ると肩で息をしながらもルキアを助けるためにやって来た阿散井の姿があった。

 

 

「はぁはぁ……うっ……」

 

 

身体中包帯姿の阿散井は応急処置をされている様子ではあったが、万全の状態とは言い難く。斬魄刀を杖代わりにして何とか立っている様子だった。

 

 

「……よし」

 

 

一護はおもむろに今まさに抱えているルキアを投げようとする体勢に入った。もちろんその一連の行動が何を意味するかはルキアと阿散井も一瞬察し必死に止めようとしていた。

 

 

「何をするつもりだ貴様……」

 

「待てよ。お前まさか――――――」

 

「受け取れ!!」

 

「きゃあああああああああああああ!!!!」「バカ野郎!!」

 

 

ドンッ!!ズザアアアァァァ…

 

 

阿散井はルキアと共に後ろに弾き飛んだがルキアを何とか受け止めていた。2人は一護の突然の暴挙に怒りを見せていた。

 

 

莫迦(バカ)者!貴様ぁ!!」

 

「落としたらどうすんだこの野郎!!」

 

「連れてけ」

 

「何……?」

 

「良いからさっさと連れてけよ!死んでも離すなよ!」

 

「…………」

 

 

阿散井は何も言わずにルキアを抱えると来た道を戻るように走り出した。阿散井は一護がこの場に居る全員を足止め、或いは倒してやるという覚悟を汲み取ったのだった。

 

 

「あ、阿散井……」

 

「何を呆けているのだうつけ共!追え、副隊長全員でだ!」

 

 

一方で副隊長たちは一連の流れに気を取られ唖然としいた。

砕蜂はその状況を打開すべく、狐著寺の斬撃を捌きながら唖然としていた副隊長たちに指示を出した。

 

 

ガキンッ!!

 

 

「私と()り合ってるのに随分と余裕そうだね……!!」

 

「くっ……!!」

 

「…………」

 

「はっ」

 

 

山本元柳斎は雀部に目線を送り、暗に追えと命じた。言葉はなくとも山本元柳斎の意図を汲んだ雀部は山吹の足止めを中断して阿散井を追い始めた。そしてそれに続くように二番隊副隊長・大前田希千代、四番隊副隊長・虎徹(こてつ)勇音(いさね)も続いた。

 

 

「”放電(ほうでん)”!!」

 

 

バチバチバチィ!!

ドゴォォォォォォォォォ!!!!

 

 

雀部を始めとする3人の副隊長が阿散井を追ったのを見た雷山は足止めをしようと動こうとしていたが、山本元柳斎がその行く手を阻んでいた。

 

 

「……はぁ、少しは自由に動かせてもらえないもんかね」

 

「…………」

 

「何も言わずか。……山吹!!」

 

 

雷山はこの場にいる十四番隊4人の中で唯一自由に動ける山吹に対して、阿散井の援護をするために追従しろと名前を呼ぶことで暗に伝えた。

 

 

「はい!阿散井副隊長にはあたしが同行します!」

 

「ああ、任せたからな!」

 

「”縛道の五十六”『雷鳴光(らいめいこう)』!!」

 

 

山吹は叫ぶと同時に落雷が起こった。それは一瞬の事だったが、山吹はその場から消え失せて見せた。一方の副隊長たちは阿散井に追いつきそうな位置まで来ていた。しかし移動した一護に阻まれ立往生を余儀なくされた。

 

 

「邪魔だ!!」

 

 

大前田のその言葉を前に、一護は斬魄刀を地面に突き刺して見せた。それは斬魄刀を使わずともお前たちを倒せる挑発であり宣戦布告と受け取った3人の副隊長は始解することで一護を排除しようと考えた。

 

 

「”(はし)れ”『凍雲(いてぐも)』」

 

「”穿(うが)て”『厳霊丸(ごんりょうまる)』」

 

「”()(つぶ)せ”『五形頭(げげつぶり)』―――……ぐはっ!!」

 

 

3人が始解すると同時に一護は大前田の懐に入り込み、まずは大前田を掌底で弾き飛ばした。それは大前田の斬魄刀を破壊し、そのままの威力で体まで届くほどであった。

 

 

「ふん!!」

 

 

大前田がやられたのを見て即座に突きを繰り出した雀部だが、簡単に躱され逆にスカイアッパーのような払い手を受け気絶してしまった。

 

 

「そんな……」

 

 

斬魄刀も使わずに2人の副隊長を一瞬にして倒した一護の実力に勇音は驚愕のあまり立ち尽くしていた。しかし、そこは副隊長を任される実力者であり、一瞬で我に返ったが既に遅く、鳩尾を突かれて他2人と同じく気絶してしまった。

 

 

「退いてもらおう、銀華零白」

 

「無駄ですよ。懺罪宮(せんざいきゅう)で思い知ったでしょう?あなたでは私を退かすことはできない」

 

(けい)を撒く手段はある。できれば使いたくはない手段だがな」

 

「……ッ!!」

 

 

その時、白哉は一瞬にして銀華零の前から消え失せた。銀華零も理解が追い付いていなかったが、同時にこの光景に見え覚えがあった。

 

 

「隠密歩法・四楓の参『空蝉(うつせみ)』……ですか」

 

 

空蝉(うつせみ)』は相手に残像を見せるほどの歩法であり、すでに白哉の姿は一護の元にあった。白哉が放つ一撃は一護の隙を突いたかと思われたが、一護は簡単に斬撃を受け止めていた。

 

 

「見えてると言ったろ。朽木白哉」

 

 

因縁の対決とも言える戦いを始めた白哉と一護をよそに山本元柳斎は雷山を始めとした”十四番隊”や京楽、浮竹に怒りの眼差しを向けていた。

 

 

「雷山悟……いや【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”よ。おぬしら自らが何をやったのか分かっておるのか!?」

 

「説教か?残念だがそれを聞いてやる暇はないぞ」

 

「黙れ!!」

 

 

怒号と共に辺りに強大な霊圧が響いた。それだけ山本元柳斎が激怒していることが伝わった。

 

 

「……随分とまあお怒りだな。それだけ今の我々”十四番隊”の行動と、教え子たちが燬鷇王(きこうおう)を破壊したことが許せないのか?」

 

 

「…………」

 

 

雷山が京楽と浮竹の名前を出した時、山本元柳斎が一瞬だけ2人の方にチラッと視線を向けたことに気付いた。その反応からして先程の雷山の問いは図星だった。

 

 

「どうやら図星みたいだな。京楽の次男坊と浮竹を庇うわけではないが、俺たちの行動とあいつらの行動は全くの無関係。あいつらは俺たちみたく強硬な手段ではなく別な方法で朽木ルキアを助けようとしたわけだな。間違いなくお前の教え子は良い隊長だ……―――」

 

「うお!?」

 

 

ドサッ……

 

 

刹那、一護によって倒された勇音を心配して駆け出した清音を追った仙太郎の声と何かが倒れる音が響いた。

雷山を始めとしたその場に居た者は何事と音の方へ目を向けた。

 

 

「せっかく俺が良い話をしてやってると言うのに……は?」

 

 

音のした方を見た雷山は目を疑った。そこには狐蝶寺が相対してるはずの砕蜂が立っており、清音に手を下そうとしていたためである。

 

 

「何故あそこに砕蜂が……春麗のやついったいなにやってる」

 

 

雷山が今さっきまで狐蝶寺と砕蜂が相対していた方へ視線を向けると、倒れ込む狐蝶寺と介抱する銀華零の姿がそこにあった。

 

 

()ってて……ごめんね、白ちゃん」

 

「大丈夫ですよ。私の回道で何とかしますから」

 

「…………」

 

 

雷山は再び砕蜂の方へ視線を向けると考えた。

奴はいったいどのようにして春麗を退けたのか、と

しかし同時に、砕蜂が清音を殺そうとしている場面を前にそれを考えている場合ではないと砕蜂に対して攻撃しようとした。

 

 

「待て、砕蜂!!」

 

 

一方で浮竹も自身の部下である清音に手を下そうとしている砕蜂を止めるべく駆けだした。

 

 

ドンッ!!

 

 

「動くな」

 

「元柳斎、殿……!!」

 

 

その浮竹の行く手を阻んだのは山本元柳斎だった。雷山は「いつの間に移動しやがった」と思うと同時に実力、霊力共にほぼ互角の自身とではなく、先に京楽と浮竹の対処へ動いたのだと判断した。

 

「……老獪(ろうかい)なジジイめ」

 

「罪人を連れて逃げたのは副隊長。斬ってすげ替えれば代えは利く、あとでゆるりと捕らえよ。じゃが、儂が許せぬのはおぬしらじゃ。おぬしらは隊長としてしてはならんことをした。それがどういうことか分からんおぬしらではなかろう」

 

「よぉし、仕方ない。それじゃあ、いっちょ逃げるとするか。浮竹」

 

 

京楽は浮竹の肩を掴むとわざとらしくそう言ってのけると同時に瞬歩で消えた。京楽は考えた。この場で山本元柳斎と相対するのは避けるべきと、その為にも浮竹の部下2人を置いてこの場を去るべきと、

 

 

「待ってくれ、京楽!まだ俺の部下が!」

 

「落ち着け。あんなところで山じいと戦ってみろ。それこそみんな巻き込まれて死んじまう。僕らは雷山隊長みたく上手くは戦えないよ。それに2人なら大丈夫さ、雷山隊長もいるし、あそこにもう1人僕らの仲間が近づいてるのを感じないか?」

 

「……?」

 

「隊長……」

 

「いつまでも見物と言うのもな……」

 

 

清音は京楽と共に消えた浮竹の事を案じている様子だった。一方で山本元柳斎が話していたために、静観に徹していた砕蜂は清音を処断するために一瞬で清音に近付き顔面を蹴り上げた。

 

 

「がはっ…!!」

 

 

蹴り上げられた清音は衝撃で倒れ込んだ。それと同時に砕蜂は清音の胸辺りに足を乗せて移動できないようにした。

 

 

「貴様らの行いは十三隊席官の矜持を忘れた恥ずべき裏切りだ。……だが安心しろ。これ以上その醜態を晒す前に今すぐ私が葬ってやろう」

 

「うがっ!!」

 

 

砕蜂が足に力を入れると清音は苦しそうにうめき声をあげた。

 

 

「止めときな、砕蜂」

 

「―――……ッ!!」

 

 

雷山は清音を助けるべく砕蜂に対して斬魄刀を付きつけていた。砕蜂は一瞬感じた殺気と共に斬魄刀を突き付けられたことで反射的に足の力を緩めてしまった。

 

 

「何を勘違いしているのか知らないが、お前いつから他隊の隊士を裁けるほど偉くなったつもりだ?」

 

「雷山、貴様……」

 

「こいつらに浮竹の行動を止めなかった責任を問いたいと見るが、おまえ隊長を止められる三席がどこに居ると思ってる?101年前のお前だって隊長であった四楓院夜一を止められなかったろ?」

 

「ッ!!」

 

 

雷山の正体を知らない砕蜂は、101年前の事件を口にした雷山に対して警戒心を露わにしていた。

つい最近隊長に復帰した雷山が何故、101年前の事件を知っていると思ったからである。

 

 

「貴様どこでそれを……」

 

「さあな、知りたかったら実力で斬り伏せてみな。俺としては一撃もらってる春麗の借りもあるし一戦くらい付き合ってやるつもりだ」

 

 

雷山は春麗を倒した何かしらの方法を、砕蜂は単純に格上の実力者である雷山を警戒してお互いに睨み合いの膠着状態になった。それを打開したのは突如として乱入した”何者か”だった。

 

 

「……?」

 

 

”なんとなく”そんな理由で雷山と砕蜂はお互いに同じ方向へ目を向けた。その直後、砕蜂だけがその場から消え失せた。しかし、雷山は見ていた。顔に何かの布を巻き付け覆面としている何者かが、通り抜けざまに砕蜂だけを連れ去るようにしていったのを、その時自身に対して言葉をかけていたことを、

 

 

「…………」

 

 

雷山は”何者か”が去って行った方向を見て先程投げかけられた言葉を思い出していた。

そして、その人物に1人だけ心当たりがあった。

 

 

『雷山悟。おぬしには悪いが砕蜂は儂が相手をする。後始末は任せるからの』

 

「『雫肉唼(みなづき)』、皆さんを治療しますよ」

 

 

雷山の背後ではこの場に唯一残る四番隊隊長・卯ノ花烈が先程の一件で負傷した者たちの応急処置を開始しようとしていた。

 

 

「……一応聞いておくが卯ノ花。お前は俺の相手でもするのか?」

 

「そんなことはしませんよ。四番隊隊長ともあろうものが、怪我人を差し置いて自ら戦いに身を投じることなどしませんから」

 

「麒麟寺からの請負か」

 

「四番隊隊長としての矜持ですよ」

 

「そうか。……卯ノ花、ひとついいか?」

 

「なんでしょう?」

 

「この後すぐ清浄塔居林(せいじょうとうきょりん)に向かってくれないか」

 

「……何故でしょう」

 

 

そう答える前に卯ノ花は一瞬だけ驚いた表情を見せた。雷山は知る由もなかったが、あることが気になっていた卯ノ花はこの後に清浄塔居林(せいじょうとうきょりん)に向かおうと考えており、雷山から不意にその場所の名前が出たからである。

 

 

「椿咲と浮葉、そして猿柿ひよ里の3人がそこにいてな、負傷していれば治療してもらいたい」

 

「……分かりました。こちらとしても後ほど向かおうと思ってはいましたので」

 

「もしやと思ったが、やはりお前……」

 

 

雷山も卯ノ花が一瞬だけ驚いた表情を見せたことは気付いていた。そして何故椿咲たちがそこに居るのか聞かなかった理由と自身が向かおうと考えていたと答えたことを加味して、卯ノ花も藍染が清浄塔居林(せいじょうとうきょりん)に潜伏していることに勘付いているのだと分かった。

 

 

「……一応言っておくが、お前が考えている奴がそこにいるのもまた事実だ。お前なら大丈夫だと思うが、一応気を付けろよ」

 

「あなたに言われずとも分かっていますよ。ですが情報をありがとうございます。さあ、行きますよ『雫肉唼(みなづき)』」

 

 

卯ノ花は解放して生物のように変わった自身の斬魄刀の口に倒れている副隊長たち、背中に自身と勇音を乗せて飛んで行った。

 

 

「……さすが卯ノ花だな。大した情報も得られないだろうに、推測だけで奴らの潜伏場所を当てるとは」

 

「このまま卯ノ花隊長を行かせてもよかったのですか?」

 

 

戦っている一護と白哉以外に誰もいなくなったため始解も警戒心も解いた銀華零が歩いて来ていた。狐蝶寺も一緒に居り、砕蜂から受けた毒の解毒処置は終わっている様子だった。

 

 

「いくら藍染一派の3人がいたとしても、椿咲と浮葉がいる状況下で卯ノ花に勝つのは不可能に近いだろ。それに万が一の場合にも備えておきたいしな」

 

 

雷山の言う万が一は椿咲と浮葉が藍染に敗北し深手を負っている状態の事を指していた。自分たちがいる双極の丘から清浄塔居林へはどんなに急いでも30分はかかるため、とても助けが間に合うとは思えなかった

 

 

「それで、私たちはどうすればいいの?」

 

「ひとまずはここで待機だな。朽木ルキアの処刑阻止の完遂で藍染一派がどう動くかが分からんからな。動きがあるまでここで様子を見よう」

 

「オッケー♪」

 

 

 

-- 瀞霊廷内・清浄塔居林(せいじょうとうきょりん)付近 --

 

 

 

「はぁはぁ……」

 

 

うつ伏せに倒れる猿柿と斬魄刀を杖代わりに片膝を付き、肩で息をする浮葉の目の前では藍染と椿咲が斬り合っていた。それは同じ”十四番隊”の浮葉と言えどとても助太刀に参戦できるレベルを超えていた。

 

 

「南美隊長の実力が私よりの上なのは承知していましたが、まさか藍染惣右介がその南美隊長と互角以上に戦えるとは……」

 

 

ガキンッ           ガンッ!!            ガ   

                   ン         ン 

       ガキンッ          キ          ッ

                  ガ               ガキンッ

 

ヒュンッ!!

ズザアアアァァァ…

 

 

幾度か打ち合いをした藍染と椿咲は斬魄刀同士で弾きあい、お互いに距離を取るような形になった。

 

 

「”破道の六十六”『氷嵐(ひょうらん)』」

 

「”破道の七十三”『双蓮蒼火墜(そうれんそうかつい)』」

 

 

ドゴォォォォォォォォォン…

 

 

「……随分と腕を上げたみたいだね、藍染君。まさか鬼道まで互角とは思わなかったよ」

 

「そろそろ退いてはもらえないですかね。椿咲隊長」

 

「愚問だね」

 

「仕方が無い御人だ」

 

「―――……あれま、これはどういう状況なん?」

 

「あ、藍染、隊長……?」

 

「「!!」」

 

 

椿咲と浮葉は声が聞こえた方向へ思わず目を向けていた。そこには市丸と連れてこられたであろう本物の雛森の二人が立っていた。

 

 

「あれは市丸……まさか加勢するために……」

 

「その隣に居るのは確か……」

 

「戦いの最中に考え事とは、貴女らしくないですよ。椿咲隊長」

 

「しまっ……―――」

 

「”縛道の六十一”『六丈光牢(りくじょうこうろう)』」

 

 

一瞬の隙を突かれた椿咲は藍染の使った鬼道によって動きを封じられてしまった。

 

 

「くっ……!!」

 

「椿咲隊長、貴女に殺しはしないと言うわけにはいくまい。せめてこの僕の剣で止めを刺しましょう」

 

 

藍染の斬魄刀が椿咲に届こうとしたその時、突如として藍染の刃が椿咲をすり抜ける形で通過した。藍染も一瞬何が起きたのかと驚いた表情を見せたがすぐにある縛道の椿咲が発動させたのだと理解した。

 

 

「”縛道の七十二”『鏡界転(きょうかいてん)』……」

 

 

「……成程、身動きを封じられた中ではその鬼道しか打つ手がない。しかしそれは身を護ると同時にしばらくの間僕に手出しも出来ない諸刃の剣だ、貴女はもう少し冷静沈着だったはずだが……」

 

「冷静だよ。冷静に考えたからこそ、この場でむざむざと藍染君に斬り捨てられるより次につなげることを選んだんだよ」

 

「そう言うことにしておきましょう」

 

 

キン……

 

 

時間をかければ椿咲を倒すことも出来た藍染だったが、今はそんなことに時間をかけている暇も時間もないため、次の行動に移るべく斬魄刀を鞘に収めた。

 

 

「驚かせてすまなかったね、雛森くん」

 

「藍染隊長……!!亡くなられたはずじゃ……」

 

 

雛森は藍染が死んだと思っていたため、目の前にいる藍染を見て驚愕しそして、生きていたことに喜びの涙を流していた。

 

 

「その事を説明しようと思っていたんだが、ここは危険だ。いったん避難するために付いて来てくれるかい。雛森くん」

 

「はい……はい……!!」

 

「念のためだ。ギンも付いて来てくれるかい」

 

「……はい、藍染隊長」

 

 

藍染は薄ら笑みを浮かべて雛森と市丸を連れて別な場所へと消えていった。

 

 

 

-- 瀞霊廷・とある路地 --

 

 

 

「あー、もう!止まってってば!」

 

 

双極の丘で朽木ルキアを受け取った阿散井と雷山の命で付き添っている山吹が一定の距離を保ったままで走っていた。

 

 

「どこの誰だが知らねぇが、ルキアを死んでも離すわけにはいかねぇんだ!そのためにも止まるわけにはいかねぇの分かんだろ!」

 

「だーかーら!あたしは雷山部隊長の命であなたたちを護ろうとしてんの!その護衛対象が走り回ってちゃ、意味ないの!!もう、なんで話が通じないかな!?」

 

「ッ!!」

 

 

阿散井は目の前に立ち塞がる人物を見て立ち止まった。阿散井が止まったことで山吹はようやく追いつくことが出来た。

 

 

「やっと止まった……ってお前は!」

 

 

そこで山吹も立ち塞がる人物に気が付いた。目の前には藍染一派の一人、護廷十三隊九番隊隊長・東仙(とうせん)(かなめ)が立っていたのだ。

 

 

「東仙隊長、なんでこんなところに……」

 

「下がって!!」

 

 

東仙が腕を動かしたのと同時に山吹が阿散井と朽木ルキアを庇う様にして間に割って入った。

 

 

「間違っても動かないでよ。両方とも」

 

 

そう言う山吹からはとてもつない威圧感と霊圧が溢れ出ていた。

 

 

「……なるほど。お前も”十四番隊”という事か」

 

「あたしは【十四番隊(じゅうよんばんたい)第二将(だいにしょう)次鋒(じほう)”】山吹(やまぶき)雷花(らいか)。あんたたちの目的は知ってる。だから、ここで朽木ルキアさんをみすみす渡したりはしない。”炎天(えんてん)渦巻(うずま)け”『炎風(えんぷう)』!!」

 

 

始解すると同時に山吹の斬魄刀は刀身が消え、柄だけの形となった。それを見た東仙は見たことがない形と思うと同時に、目の前の自身以上の霊圧を放っている死神と正面から戦うことは避けた方が良いと判断し短期決戦を狙っていた。

 

 

「……仕方があるまい。予定外の事象だが、この場で処理するとしよう」

 

 

東仙が刀を構えたことで山吹は反射的に身構えた。通常の場合それが正解なのだが、長年の経験から取ったその行動が逆に仇となってしまう、

 

 

「”卍解”―――――――

 

 

東仙の”卍解”という言葉が聞こえた次の瞬間には山吹の視界は闇に包まれていた。山吹はしまったと思ったが時すでに遅く、東仙の卍解空間の中に捕らわれてしまった。

 

鈴虫終式(すずむしついしき)閻魔蟋蟀(えんまこおろぎ)』」

 

「やられた……!!」

 

 

山吹は頭では東仙の卍解に捕らわれていると理解していたが、目も耳も霊圧探査すらできないこの状況にさすがに理解が追い付いていなかった。そしてその背後には東仙が迫っていた。

 

 

「さらばだ、十四番隊。これがお前たちの無意味な戦いの結末だ」

 

 

ザシュッ――――――――――!!

 

 

 





炎風(えんぷう)

【十四番隊・第二将”次鋒”】山吹雷花の持つ斬魄刀。

解放すると同時に斬魄刀の刀身が消えて柄だけの格好となる。これは物理的に無くなった訳ではなく、刀が放つ熱気と風が融合することで極限まで刀身が見えにくくなっているためである。
能力は『熱気と風を併せて周囲を焼く』というもの。熱気は相手の皮膚をじわじわと焼く、吸わせて中から焼くなど、多様の使い方がある。また、この熱気は相手の持つ霊力によって体感温度が変わる。
(雷山で70℃ほど、隊長格で100℃~120℃、一般隊士で160℃~200℃くらいになる)
熱と風を操ることから尸魂界(ソウル・ソサエティ)の歴史上でもかなり珍しい”炎熱系”と”風嵐系”の二系統を持つ斬魄刀。
解号は『炎天(えんてん)渦巻(うずま)け』

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