宮廷遊撃部隊・十四番隊   作:らりるれリッター

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第27話 双極の丘にて

 

 

 

-- 瀞霊廷・双極の丘 --

 

 

 

「双極の丘、だと……!?」

 

 

雷山たちが動き出す少し前、阿散井は辺りを見て驚愕していた。ここはつい数刻前にいた双極の丘であり、自身は今さっきまで双極の丘よりずっと離れた場所にいたためである。

阿散井はすぐに東仙によって強制移動させられたことは分かったが、あまりに突然のことでまだ完全に理解が及んでいなかった。

 

 

「ようこそ、阿散井くん。朽木ルキアを置いて下がりたまえ」

 

 

声が聞こえると同時に阿散井は振り返り、その場に立つ人物に驚愕した。そこには数日前に死亡が確認されたはずの五番隊隊長・藍染惣右介が市丸ギンと共に立っていたからだった。

 

 

「藍染隊長……!?市丸……!?」

 

「要もご苦労だったね。……おや、その恰好はどうしたんだい?」

 

 

藍染は東仙に目を向けると同時に、何故か死覇装が焦げている姿を指して聞いていた。

 

 

「恥ずかしながら、”十四番隊”1人の始末に少々手こずりました」

 

 

 

 

 

□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■

 

 

 

 

 

「さらばだ、十四番隊。これがお前たちの無意味な戦いの結末だ」

 

 

 

-- 瀞霊廷内・とある路地 --

 

 

 

そこでは九番隊隊長・東仙要と【十四番隊・第二将”次鋒”】山吹雷花が相対していた。

東仙は山吹を自身の卍解空間内に捕らえることに成功しており、山吹は突然、目も耳も霊圧知覚も使えなくなったことに対応しかねている状態だった。

 

 

「こうなれば―――……ッ!!」

 

 

山吹が動こうとした直後、東仙は背後から山吹を斬りつけた。

与えられた傷が深く、打開策もまだない今のままでは一方的に(なぶ)り殺されると判断した山吹は、せめて東仙だけでも道連れにしようと考え、斬魄刀を構えた。

 

 

「雷山部隊長、狐蝶寺隊長……申し訳ないです。”灼熱旋風(しゃくねつせんぷう)”!!」

 

「……!!」

 

 

東仙は山吹の斬魄刀から放たれる熱風をその肌で感じ取っていた。それは到底、無事では済まないような温度であることは確かだった。

 

 

「くっ……このまま私を焼き殺すつもりか……!!」

 

「”十四番隊”を舐めないでよね!」

 

「やむ無し……!!」

 

 

東仙は深手を負わせたとは言え、卍解を解いた状態では山吹を始末できないと考えていた。しかし、同時にこのまま卍解空間を展開し続ければ山吹を始末できるが、自身が蒸し焼きになってしまう危険性があるとも考えていた。

二者択一を迫られた東仙はやむを得ず卍解を解いた。

 

 

「侮っていた―――……!!」

 

 

卍解を解き、山吹の攻撃に備えていた東仙はふと阿散井がいなくなっていることに気が付いた。

恐らくは自身が卍解をする瞬間にわずかにその範囲内から山吹と名乗る死神が2人を出したのだろうと推察した。

 

 

「仕方あるまいか。今は朽木ルキアを確保することが先決……」

 

 

東仙は朽木ルキアの身柄確保を最優先と考え、山吹のことはその場に放って置き、瞬歩を使って阿散井を追っていった。

 

 

「ま、待て……二人とも……今、助けに……」

 

 

バタッ――――――...

 

 

一方で、山吹は深手を負った上で身体への負担が激しい技を使ったために圧消費が限界を迎えてしまい、数歩行ったところで倒れ込んでしまった。

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

「……成程。それは災難だったね」

 

「いえ、私としては一生の不覚です」

 

「いいよ。こうして朽木ルキアを確保してくれたからね」

 

 

阿散井は藍染が生きていたことも衝撃だったが、何よりも衝撃だったのが先程藍染が言った言葉だった。

 

 

「藍染隊長、生きて……いや、それよりも今なんていった……!?」

 

「聞こえなかったかな。朽木ルキアを置いて下がれと言ったんだ。阿散井くん」

 

「……断る」

 

「なに?」

 

「”断る”と言ったんです。藍染隊長……!!」

 

「……成程」

 

 

阿散井を始末しようと市丸は腰に差してある斬魄刀に手をかけたが、すぐに藍染がそれを制した。

 

 

「いいよ、ギン。君は強情だからね、阿散井くん。朽木ルキアだけを置いて下がるのが(いや)だというのなら仕方ない。こちらも君の気持ちを汲もう」

 

 

藍染は歩きながらそういうと同時に鞘から斬魄刀を引き抜いた。

 

 

「抱えたままで構わない。腕ごとおいて下がりたまえ―――……」

 

 

ザシュッ!!

 

 

阿散井へ斬撃を繰り出そうとした藍染だったが、その時僅かな違和感を感じ取った。そして咄嗟に見えないながらも雷山の斬撃を躱した。その勘の鋭さに雷山をして称賛に値した。

 

 

「今のを躱すのか。腕の一本ぐらいもらうつもりだったんだが」

 

 

その声と共に藍染の目の前の空間が陽炎のように歪み始めた。すぐに藍染はそれが”縛道の八十七”『陽炎写(かげろううつし)』であることに気付いた。

 

 

「さすが護廷に入った頃に一度、椿咲に勝っているというだけのことはある。その実力大したものだ」

 

「……成程。君が要から報告のあった【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”か」

 

 

藍染が雷山を見るのはこれが初であり声すら聞いたことが無かった。しかし、名前は分からずとも圧倒的な威圧感を放つ雷山を前に【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”の1人だと看破していた。

 

 

「か、雷山隊長……!?」

 

 

阿散井が不意に呟いたその名前に藍染は心当たりがあった。それは、ついさっき会った椿咲南美の先代として名高い護廷の伝説。

 

 

「……そうか、君が”雷神狼(じんろう)”雷山悟か」

 

「……実力もさることながらその知識も大したものだ。”雷山”の名前を聞いただけでこの俺の正体を見破るとは」

 

「名前を知る手段はいくらでもあるんだ。こうして直に相対することになるとは思いもよらなかったが」

 

「それはお前たちが派手にやり過ぎたおかげだ。本来ならこうやって俺たちが表に出てくることなんかない」

 

「ふっ……しかし運命などと言う言葉を信じるつもりはないが、椿咲南美の次に雷山悟と相対することになるとは思いもよらない。だが、今は間が悪い。僕はこう見えても忙しいんだ」

 

「安心しな。これからは随分と暇になるだろうからな」

 

「成程。しかし君1人で隊長3人を足止めできると思っているのかい?」

 

「お前は俺が1人でこの場に来たと思っているのか?」

 

「…………」

 

 

藍染は椿咲が目の前に現れてから予想していたことがあった。それは101年前に初めて遭遇した【宮廷遊撃部隊】が総員で自身に対しての包囲網を敷いているのだろうと、それはこの場に雷山がいたことから正しい予想となったがそれだけではないのだろうと考えていた。

 

 

「ホントホント、君たちいちいち行動が長過ぎるんだよ」

 

「念のため言っておきますが、この場から逃げようなどと思わないことですよ。まあ逃げたところで藍染惣右介、あなた方の逃げる場所など何処にもありはしないわけですが」

 

 

その声が聞こえたと同時に市丸、東仙の背後が陽炎のように歪み始めた。2人はすぐに鬼道だと気付いたが、すでに斬魄刀を突き付けられておりその場から動くことは出来ずにいた。

 

 

莫迦(バカ)な……!!」

 

 

東仙は自身に一切悟らせずに背後を取って見せた狐蝶寺に驚愕していた。雷山が現れてからというもの東仙はいつでも動けるように辺りに対して警戒を怠っていなかった。にもかかわらず、今こうして狐蝶寺が姿を現すまでその存在に気付けなかったからである。

 

 

「なんやどこかで見かけた顔やね」

 

「言ったでしょう、市丸ギン。”次同じことをすれば、その不愉快な顔を刎ね飛ばす”と」

 

「……すんません藍染隊長。これはどうにもあきませんわ」

 

 

市丸は懺罪宮(せんざいきゅう)にて銀華零の実力の一端を見ていた。その事から背後を取られた今のこの状況ではどうあっても打開は不可能とあきらめた様子だった。

 

 

「悪いな、阿散井。地下で聞いたお前の覚悟に泥を塗る形となるが、ここからは我々の管轄なんでね。お前は(じき)に来る四番隊の救護班を待って治療してもらえ」

 

「雷山隊長、あんたたちは一体……?」

 

 

阿散井は地下で雷山たちに会った時にただの隊長ではないことに薄々勘付いていたが、目の前の光景を目の当たりにしてその正体について尋ねていた。

 

 

「別にそう(かしこ)まらなくても良いぞ。全て終わったら知ることになるだろうが、先に教えておいてやろう。俺たちは【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”だ。俺は訳あって五番隊隊長に一時復帰しているに過ぎないんだ」

 

「【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”……?」

 

「簡単に言えば、護廷十三隊の後援部隊だ。まあ、詳細はまた話してやるとして、今はこの3人を元柳斎たちに引き渡すのが先だ。……ああ、その前に」

 

 

雷山は何かを思い出したかのように声を上げた。雷山には東仙に対して聞きたいことがあったのだ。しかしこのままでは藍染を自由にしてしまうことから、雷山は幾重にも藍染に対して縛道を仕掛け拘束した。

 

 

「……よし、これだけ掛けておけば30秒は無駄話が出来るだろう」

 

 

雷山は東仙に近づきただ一言問いかけた。それは、”阿散井を追っていたはずの山吹をどうしたのか?”であった。

東仙は答えた。”予定外の事象のために排除した”と、

それを聞いた雷山は思わず笑ってしまっていた。

 

 

「はっはっは!随分と面白い冗談だな。お前が十四番隊(うち)の山吹が()っただと?」

 

「ふっ、余程のショックで信じることが出来ないと見える。だが安心しろ。お前たちもすぐに同じ運命を辿るのだからな」

 

「何をするつもりか知らないけど、動いたらすぐに首を刎ねるからね」

 

「はあ……随分と笑わせてもらったし、聞きたいことも聞けた。春麗、東仙は任せたからな」

 

「……ふっ、首を刎ねる……か。出来ればの話だがな」

 

 

藍染の方へと歩いていた雷山だったが、東仙が呟いた一言を不審に思い振り返った時だった。

突然、落雷が起きたのだ。それは誰の目にも明らか、東仙が目くらましのために鬼道を使ったのだった。

 

 

「ケホッケホッ……何のつもりかは知らないけれど、これくらいの鬼道じゃ―――……」

 

 

落雷自体には攻撃性はなく狐蝶寺にダメージは無かったが、一瞬だけ視界が塞がれたことによって東仙が斬魄刀を鞘から抜いていることに気付くのが遅れていた。

 

 

「”卍解”―――――――

 

 

東仙が”卍解”呟くと同時にドームのようなものが展開され、東仙を抑えていた狐蝶寺とギリギリ卍解の範囲内にいた雷山が巻き込まれた。

狐蝶寺も雷山も東仙の”卍解”という言葉が聞こえた次の瞬間には視界は闇に包まれていた。

 

 

鈴虫終式(すずむしついしき)閻魔蟋蟀(えんまこおろぎ)』。お前たちがどう予想していたかは知らぬが、私に近づいたことは浅慮(せんりょ)だったな。見ての通り、私の卍解は空間展開型だ。まあ、すで耳に届いてはいないだろうがな」

 

 

自嘲気味に話す東仙の眼前では雷山と狐蝶寺が辺りを見回すようにキョロキョロとしていた。しかし、東仙の卍解の能力によって視覚、聴覚、霊圧知覚、嗅覚まで封じられているため、自身がどこにいて、どうなっているかを知ることは叶わなかった。

 

 

『なんだこれは……?何も見えないし、何も聞こえない……』

 

『これはもしかして、101年前のあの時と同じ……』

 

 

百戦錬磨の雷山も急に戦いに必要な感覚を奪われ頭の理解が追い付いていなかった。一方で狐蝶寺は101年前に一度経験しているため自身の置かれた状況を理解したが、そんな中、東仙の刃が二人に迫っていた。

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

「雷山さん!春麗ちゃん!」

 

 

幸か不幸か、唯一東仙の卍解を逃れた銀華零は声を上げていた。中の状況がうかがい知ることが出来ず、2人の安否が分からなくなったためである。

 

 

「心配なら行ってもええよ?」

 

「バカなことを言わないでください。あなたを自由にする方がよっぽど危険ですよ」

 

 

虚勢を張る銀華零だが、2人が心配なのは隠しようもない事実であった。市丸はそんな銀華零の心に揺さぶりをかけていたのだ。

 

 

「そう易々と僕の揺さぶりには乗らへんか。大した精神力やね」

 

「生意気な口を聞かないでください」

 

「さすがは要だ。僕が最も行ってもらいたかったことをすぐに実行に移してくれるとは」

 

 

銀華零が目を向けると雷山に掛けられた幾重もの縛道を全て解いて歩いて来ている藍染の姿があった。

 

 

「藍染惣右介……」

 

「ギン、そのまま彼女を抑えておいてくれないか」

 

「分かりました。藍染隊長」

 

「すまないね、阿散井くん。どうやら時間が無くなったようだ。荒っぽい手段となるが手短に済ませてもらうよ」

 

 

ザシュッ――――――!!

 

 

直感的に来ると感じ取った阿散井だったが、藍染の実力は卍解を会得した阿散井をまったく寄せ付けない程であり簡単に斬り伏せられてしまった。

 

 

「恋次!!」

 

「さあ、立つんだ。朽木ルキア」

 

「ルキア!!」

 

 

阿散井が斬り伏せられてからおよそ1分、身の丈ほどの大刀ではなく、漆黒の斬魄刀を握った一護が現れた。一護は斬り伏せられている阿散井を見て怒りを見せている様子だった。

 

 

「……黒崎一護か。遅かったね」

 

「てめぇ、ルキアから手を放せ!」

 

「断る……と言えば?」

 

「てめぇを叩斬(たたっき)る!」

 

「出来れば君には大人しくしていてもらいたかったんだが、仕様がない子だ」

 

 

一護は藍染に斬りかかった。しかし、次の瞬間一護は驚愕することになる。

藍染が渾身の一撃である自身の攻撃を涼しい顔をして人差し指1つで防いでいたからだった。

 

 

「……おや、腰から下を切り落としたはずだったが、浅かったか」

 

 

藍染は人指す指を静かに一護の刀に置くと同時に、腰のあたりで一刀両断しようとしたが、一護の踏み込みがわずかに甘かったために、腰を斬り落とすまではいかなかった。

 

 

「あーあ、だから言わんこっちゃない……ってあら?」

 

 

市丸は腰辺りで一刀両断されかけた一護と斬り伏せられた阿散井の二人を見てそう言ったが、気が付けば自身を抑えていたはずの銀華零がいなくなっていることに気が付いた。

 

 

ガキンッ!!

 

 

銀華零の姿は藍染のもとにあった。黒崎が斬られたことで、対処すべき優先順位が市丸から藍染に移ったと判断したために斬りかかっていたのだ。

しかし雷山と狐蝶寺のことで動揺していたためか、銀華零の斬撃は藍染に簡単に防がれてしまっていた。

 

 

「判断を誤ったようだね。そこに転がっている旅禍(りょか)の少年と阿散井くんが倒れた時点で君はもはや動くべきではなかった」

 

「動くべきではなかった、と?」

 

「分からないのかい?要に捕らわれた2人を欠いた今、この場で戦力で数えられるのは君ただ1人だ。この状況下で旅禍(りょか)の少年と阿散井くんを守りながら戦うことは君にも出来まい」

 

「……ふふっ、ナメられたものですね」

 

 

その時、先ほどまでの動揺は何処へ行ったか、銀華零は口元を緩ませて笑みを浮かべていた。藍染もその笑みにすぐに気づくことになるが、先に藍染が言った通り、不利とも言えるこの状況下で笑っている銀華零の不気味さをすぐに思い知ることになった。

 

 

「……何が可笑しいんだい」

 

「いいえ、何も。ただ、雷山さんから【十四番隊・第五将”大将”】を仰せつかるこの私が2人を守りながらあなた方の相手が出来ないと思われているとは――――――

 

 

 

”―――――― 心 外 で す”」

 

 

 

藍染と市丸はその時、明らかに寒気を感じた。それは体感温度が低く凍えると言う寒さよりも、圧倒的強者に殺気を向けられた時に生じる悪寒のようなものだった。

それは藍染が初めて経験することでもあり、気が付けば銀華零の霊圧が徐々に上昇しており、明らかに雰囲気も変わっていた。

 

 

「後ほど、情報が必要になると捕縛優先と考えていましたが、やめます。あなた方は今この場で首を刎ねさせてもらいます」

 

 

その時の銀華零は清々しい程の笑みを浮かべていたが、その笑みは優しさと言うものを一切含んでおらず、”恐怖”と言う二文字しか見えなかった。

 

 

「”友鏡(ともかがみ)(うつ)して、万象(ばんしょう)見取(みと)らん”『銀鏡(ぎんきょう)』」

 

 

斬魄刀を解放した銀華零の手には何も持たれていなかった。しかし、藍染と市丸は確かに銀華零の”解号”を聞いたために、この状態が始解なのだと判断していた。

 

 

「まずは応急処置としましょうか。銀鏡(ぎんきょう)・”()()らせ”『粉吹雪(こなふぶき)』」

 

 

銀華零が解号を唱えると同時に、隣に全身が映るほどの大きさの鏡が現れた。銀華零は鏡の中に手を突っ込むと同時に一気に引き抜いた。すると銀華零の手には『銀鏡(ぎんきょう)』とは別の斬魄刀が握られていた。

 

 

「これで失血死の心配はひとまずないでしょう」

 

 

銀華零は阿散井と一護に向けて斬魄刀を振るっていた。振るうと同時に刃から飛び出た氷が2人を覆っていた。

一見すると攻撃だが、銀華零は2人の傷口を氷で凍結して止血するためにあえて放った攻撃だった。

 

 

銀鏡(ぎんきょう)・”鮮血(せんけつ)()()ち、桜花(おうか)()(みだ)れ”『紅桜(べにざくら)』」

 

 

銀華零は藍染らに向かい合うと同時に新たに解号唱えた。隣に鏡が現れた。そして先程と同様に鏡の中に手を突っ込むと今度は脇差(わきざし)程の丈をした斬魄刀が出てくると同時に、銀華零の背後に大きな桜の樹が召喚されていた。

 

 

「さあ、どう対処するかお見せください。藍染惣右介、市丸ギン」

 

「……ギン、任せていいかい。僕は要件を済ませる」

 

「ええんですか?」

 

「ああ、予想を大きく超えていた。これ以上の時間はかけれまい」

 

「分かりました、藍染隊長。”射殺(いころせ)せ”『神鎗(しんそう)』」

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

「朽木ルキア。君は知らぬだろうが、君の霊体の中にとある物質が埋め込まれていてね。僕がわざわざ双極による処刑を選んだのはそのためなんだ」

 

 

銀華零の対処を市丸に任せた藍染は自身が目的としてたことを済ませるためにルキアを首輪に手をかけ引っ張っていた。

 

 

「その物質の名は『崩玉(ほうぎょく)』。死神と(ホロウ)の境界を取り払うことが出来る代物だ。これを作り出したのは、浦原喜助。だが、同時に彼は『崩玉(ほうぎょく)』の危険性にも気づいたのだろう。破壊を試みた。しかし、それは叶わずにある方法へとシフトしたんだ。それは『崩玉(ほうぎょく)』を魂魄の中に隠す方法だった」

 

「…………?」

 

「何を言っているか分からないと言った顔だね。まあ、無理もない。君は現世で浦原喜助にこう言われたことがあるはずだ。”困っているのならば、義骸を貸そうか”と」

 

 

その時、ルキアの脳裏には一護と出会った直後の記憶が流れていた。現世にて(ホロウ)のから傷を負わされた時、たまたま居合わせた浦原に義骸の貸与を打診されたときの記憶。

 

 

「分かったかな。彼は君を『崩玉(ほうぎょく)』の隠し場所に選んだんだ。彼は過去に霊子を含まない義骸(ぎがい)を作ったことがある。そしてその義骸(ぎがい)は中に入る死神の魂魄を徐々に分解していき、行くは死神からただの人間の魂魄へと成り下がらせる。彼は君に手を貸したのではなく、君を人間にすることで『崩玉(ほうぎょく)』の所在をくらませようとしていたんだ」

 

「……!」

 

「魂魄に埋め込まれた物質を取り出す方法は2つある。1つは、双極のように超高度の熱破壊能力で外殻である魂魄を蒸発させる方法、そして2つ目が何らかの方法で直接魂魄に介入して強制的に分離させる方法だ」

 

 

藍染はそこまで言うと同時に、懐から筒のような()れ物を取り出した。カチッと音がなると同時に藍染とルキアを囲むように爪のようなものが生えてきた。

 

 

「くっ……!『銀鏡(ぎんきょう)』!!」

 

「ッ!!」

 

 

ルキアの周囲が異常な状況だと判断した銀華零は市丸を無理矢理に退かしてルキアのもとへ急いだ。

 

 

「これがその答えだ」

 

 

しかし一歩遅くルキアは藍染の腕に貫かれていた。しかしルキアにダメージはなく同時に藍染の手には多角形の防壁が張られた『崩玉(ほうぎょく)』が握られていた。

 

 

「これが、『崩玉(ほうぎょく)』……」

 

 

藍染が手に入れた『崩玉(ほうぎょく)』に目を落としていた時だった。

突如、轟音が辺りに響いたのだった。

 

 

 





銀鏡(ぎんきょう)

【十四番隊・第五将”大将”】銀華零白の持つ斬魄刀。

解放すると同時に斬魄刀が消え、変わりに宙に浮かぶ鏡が1つ現れる(大きさは人の全身が映る程度)。この鏡は普段は実体を持たない概念みたいなもので、能力を行使するときのみ実体を持ち常に銀華零の1メートル以内に存在している。そして如何なる攻撃を用いても割ることが出来ないし、例え割れたとしても時間が経てば元に戻る。
ちなみにこの時点での斬魄刀本体はモヤのようなものであり、銀華零自身もちゃんと姿を見たことがないという。
『他者の斬魄刀の始解のみを鏡に映して使用できる能力』を持つ。使用できる能力は1つまでで、銀華零自身が見たことがあり、且つ名前を知っていることが絶対条件。解号を知らずとも使うことが出来るが、解号を唱えた方が能力の精度や技の威力は上がる。
能力を行使する時は、使いたい斬魄刀の名前(出来たら解号も)を唱えることで鏡の中からその斬魄刀が現れる仕組みで、使用する斬魄刀を変えたいときはその都度名前(解号)を唱える必要がある。使える斬魄刀は本来の所有者の生死は問わないが、銀華零が”最後に見知った時点”での強さ、能力で映されるためごく稀に誤差が起きる。この斬魄刀はその性質上、ありとあらゆる斬魄刀に通ずる斬魄刀と呼ばれている。
解号は『友鏡(ともかがみ)(うつ)して、万象(ばんしょう)見取(みと)らん』


その他用語

・”()()らせ”『粉吹雪(こなふぶき)
かつての護廷十三隊・副隊長が使っていた斬魄刀で氷雪系に分類される。その能力は、
『霊力を雪に変化させ操る能力』。
所有者本人は自身の霊力消費を(かえり)みずに、相手の周りに大雪を降らせて生き埋めにする使い方をしていた。


・”鮮血(せんけつ)()()ち、桜花(おうか)()(みだ)れ”『紅桜(べにざくら)
かつての護廷十三隊・隊長が使っていた斬魄刀で生物系に分類される。その能力は、
『斬りつけた相手の血と霊圧を奪い取る能力』。
一度に奪い取れる量は平隊士の死神1人分であり、それ以上の霊圧を持つ者の霊圧や血をすべて奪うためにはその都度相手を斬らねばならない。背後に召喚される桜の樹と手に持つ斬魄刀がリンクしており、奪った血と霊圧は桜の樹に貯蔵される。血や霊圧のMAX貯蔵量は隊長格3人分ほどであり、MAXまで行くと紅い花の桜が咲き誇る。なお、始解して一定時間(平均にして30分)血や霊圧を奪えずにいると使用者自身の血と霊圧をどんどん吸い取っていってしまうデメリットがある。



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