宮廷遊撃部隊・十四番隊   作:らりるれリッター

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 (うれ)必要(ひつよう)はない

 何故(なぜ)なら

 そこに信念(しんねん)があるからだ


              浮葉 刃



第3話 虚心の信念

 

 

十四番隊発足より61年後(山吹雷花が加入より12年後)

 

瀞霊廷内の一角にある一番隊隊舎、さらにその内部にある隊長執務室。

そこに二つの影が向かい合うようにして立っていた。1人は護廷十三隊一番隊隊長であり総隊長、山本元柳斎重國。

そしてもう1人は、

 

 

「……それは、熟考した上での申し出としても良いのかの。三番隊隊長・浮葉(ふよう)(やいば)よ」

 

 

- 浮葉(ふよう)(やいば) -

現護廷十三隊三番隊隊長で銀華零白の後任に当たる人物。

銀華零(ぎんかれい)が隊長だった頃の副隊長でもあり、銀華零が狐蝶寺(こちょうじ)と同時に隊長職を降りたために、山吹雷花とほぼ同時期に隊長へ昇格した過去がある。

 

 

「はい、私は副隊長の影内(かげない)(わか)を次期三番隊隊長へ推薦し、引退したいと考えております」

 

「理由を問おう」

 

雷山(かみなりやま)隊長と同じ理由です。かつて雷山隊長はおっしゃいました。”今の瀞霊廷は今の護廷十三隊が守っていくべきだ”と、私ももう隊長に就任して100年近く経ちました」

 

「それで、”そろそろ自分も後進に譲るべきではないのか”……と、そう考えたわけじゃな」

 

「はい、山本総隊長のおっしゃる通りです。すでに影内には可能性程度の話はしてあります。あとは山本総隊長のご判断次第です」

 

 

元柳斎は12年前に山吹(やまぶき)雷花(らいか)が【宮廷遊撃部隊】へ異動したとき、いずれは同時期に隊長に就いた浮葉にもこの日が来ることを予感していた。

そして、それと同時に山吹が隊長引退の最後の挨拶に来ていたときに言っていたことを思い出していた。

 

 

 

 

 

〜 12年前 〜

 

 

-- 瀞霊廷・一番隊隊舎内 --

 

 

「今までご指導のほど、ありがとうございました。山本総隊長」

 

「うむ、これからも日々精進すると良い」

 

「はい!……あっ、山本総隊長。1つだけ頼みごとをしてもよろしいでしょうか?」

 

「何じゃ?」

 

「いつの日か、浮葉隊長も隊長職を引退する時が来ると思われます。その時は、浮葉隊長もあたし同様に【宮廷遊撃部隊】へ勧誘していただきたいのです」

 

「話を浮葉隊長に通すことは可能じゃが、最終的な判断は本人、そしてその説得は十四番隊が行うものとなる。それでも良いというのなら、話を通そう」

 

「はい、その時はあたしが責任と信頼を持って浮葉隊長と話をします。」

 

 

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            ・

 

 

 

「…………」

 

 

元柳斎は”引き留める”選択肢も頭に過ったが、その時に交わした山吹との約束を果たす時が来たと感じた。

 

 

「浮葉刃よ。その話、相分かった。しかし、その話を受ける前に一度、おぬしに会わせたい人物がおる」

 

「会わせたい人物……ですか」

 

「その者を召喚するまで、しばしここで待ってはもらえぬか」

 

「承知しました」

 

 

 

それから1時間ほど経ったとき、外から声が聞こえてきた。

 

 

 

「山本総隊長、お待たせ致しました!」

 

「……この声は」

 

 

外から聞こえてきたその声に浮葉は聞き覚えがあった。それはかつて同時期に隊長へと昇進し、共に切磋琢磨して先に門出を見送ったはずの人物。

 

 

「入れ」

 

「失礼します。お久しぶりですね、浮葉隊長」

 

「やほり雷花隊長でしたか。……その羽織は?」

 

 

浮葉は山吹が身に纏う隊長羽織を指して聞いていた。通常、隊長を引退すれば斬魄刀と共に羽織も返却となるはずだったからである。

 

「これは“十四番隊“の隊長羽織です。ほら、背中の文字も【十四】となっているでしょう?」

 

 

そう言って山吹は振り返ってみせた。

そこには山吹の言う通り背中の中央辺りにある◇の中に十四という文字が刻まれていた。

 

 

「早速、本題に入りますが浮葉隊長。【宮廷遊撃部隊】・”十四番隊”に属してはもらえませんか」

 

「【宮廷遊撃部隊】……ですか?」

 

 

その時、浮葉は12年前のことを思い出していた。

それはいつも凛としている山吹雷花が何か思い詰めて悩んでいる表情を浮かべていたために相談に乗った記憶だった。

 

 

「……成程。12年前のとある組織と言うのは、そういうことでしたか」

 

 

浮葉は【宮廷遊撃部隊】の話と、12年前に山吹が語っていた”とある組織”、そして相談に乗った出来事と合わせて、合点がいった様子だった。

 

 

「あ、あれは友人の話ですよ!」

 

「そうでしたね。失礼しました」

 

「話を戻しますが、”十四番隊”に属してはもらえませんか?浮葉隊長」

 

「……構いませんよ。貴女が私を誘うと言うことは、私の実力を買ってくだり自信を持っているということですから。しかし、その前に、雷花隊長。貴女はその”十四番隊”に属してどう感じてきたかを教えてください」

 

「え、あたしがどう感じたかですか?」

 

「ええ、なんでも良いです。先に勧誘を受け、そして属することとなった貴女の率直な感想が聞きたいのです」

 

「そうですね……率直に言えば、まだあたしが十四番隊で狐蝶寺隊長や銀華零隊長、雷山隊長に迷惑をかけないかの心配がないかと言えば嘘になります」

 

 

山吹はかつて浮葉に吐露した心情が未だにあると語った。

いくら狐蝶寺からの信頼に覚悟を持って応えたとしても12年程度では心の奥にあるその気持ちは払拭出来ないと、

 

しかし、それでもなお十四番隊に属して、今度は山吹が自信を持って浮葉を誘っている確固たる理由があると山吹は語った。

 

 

「しかし、先に挙げた御三方は信念と誇りを持って職務に当たっておられます。そこにあたしが迷惑をかけるなどと戯言を挟む余地はありません。きっと何があろうと迷惑などと思わずに解決に導いてくれるでしょうから。その御三方が信念を持つ限りあたしもついて行く、そうあたしは考えています。……まあ、まだまだ若僧のあたしが言うのも烏滸(おこ)がましいですけどね」

 

「……ふっ、真面目な雷花隊長がそう言うのであればそうなんでしょうね。分かりました。【宮廷遊撃部隊】の話は正式に引き受けます。三番隊の引き継ぎが終わり次第必ず属すると約束します」

 

「ありがとうございます!お待ちしてますよ、浮葉隊長」

 

 

その後、浮葉と山吹は一番隊隊舎を後にした。束の間ではあったが、”同期の隊長”として他愛ない会話をしながらそれぞれ帰路へ着いた。

 

 

 

 

-- 瀞霊廷・十四番隊詰所 --

 

 

 

 

「山吹雷花、只今戻りました」

 

「おっかえり♪」

 

「おお、戻ったか。急な呼び出しみたいだったが、元柳斎はいったい何用だったんだ?」

 

「それをご報告するにはまず、12年前あたしが隊長引退の最後の挨拶に山本総隊長の元へ行った時に遡らないといけないのですが……」

 

 

山吹は12年前に元柳斎と交わした約束のことを雷山たちに話した。

雷山たちは”あの元柳斎がそんな口約束をするとは意外だな”と言いたげな顔をしていたように山吹は見えた。

 

 

「それで、今ちょうど一番隊隊舎に浮葉隊長が来ているので、話をするというのならどうだと召集を受けた次第です」

 

「……成程な。大方の流れは理解した。それで浮葉はなんと?」

 

「三番隊の引き継ぎが終わり次第必ず、と言っておりました」

 

「いいねいいね♪これで5人目だし、かつての三番隊と十三番隊コンビが揃ったね♪」

 

 

その時、銀華零は1人顎に指を当てて何やら考えている様子だった。

一頻(ひとしき)り考えたあと、名案を思いついたと言いたげに笑みを浮かべていた。

 

 

「雷山さん、1つ提案があるのですが、少しよろしいですか?」

 

 

銀華零からの唐突に言葉を投げかけられた雷山は思わず、

「提案?」

と間の抜けた声を出してしまった。

 

 

「ええ、これで5名体制となるわけですし、そろそろ役職名というか、誰が何を主として担当するかを決めるのはどうでしょうか?」

 

「はいはーい!それなら雷山くんは”宮廷遊撃部隊長”って役職がいいと思いまーす!」

 

「はぁ!?勝手に決めんなよ。”部隊長”って言うなら、白の方が似合うだろ」

 

「私は雷山さんが担ったほうがいいと思いますけれど……昔からまとめ役は得意でしたでしょ?」

 

 

銀華零は護廷十三隊隊長時代に、3人で作戦行動をする際は決まって雷山がそのまとめ役を務めていたことを指して言っていた。

雷山本人は一切得意ではないと言い張ってはいるが、その際の戦績は凄まじく作戦失敗や負け戦になったことは、一度たりともないと言われているほどである。

 

しかし、雷山はそう言った指揮する立場ではなく、自ら前線に赴いて戦う方が性に合っていると自覚しているため、積極的にまとめ役はやりたがらず、元柳斎から過去に総隊長の話を打診されたときも断ったほどである。

 

 

「でしたでしょ?じゃないわ。俺はそんなトップじゃなく、前線で戦ってるのほうが性に合うんだよ」

 

「まあまあ、そう言わないでくださいな。それで役職名の方ですが、」

 

「おい、スルーかよ」

 

「山本総隊長がご教授なさってた剣道から着想を得たものにするというのはどうでしょうか?」

 

 

銀華零はかつて元柳斎から剣道と言うものを習った際に聞いた団体戦におけるポジション名を当てはめるのはどうだろうかと言っていた。

具体的には、”先鋒(せんぽう)” ”次鋒(じほう)” ”中堅(ちゅうけん)” ”副将(ふくしょう)” ”大将(たいしょう)”の5つである。

 

 

「おおー!いいじゃないの♪響きもかっこいいしさ」

 

「人数増えたらどうするんだよ。それに俺を仮に部隊長にするなら1人足りないだろ」

 

 

雷山の言う通り浮葉が加わったとして5名体制、その中で雷山を部隊長に据えれば、残り4名となり5つのポジション名が1つあふれる計算となっていた。

しかし、そんなこと銀華零も分かっており、残り1人についても当てがあるような様子だった。

 

 

「その時はまたその時に考えましょう。それに、最後の1人はもう半分決まっているようなものじゃないですか」

 

 

その時、その場にいた全員はある1人の死神が頭に思い浮かんでいた。

その死神はかつて雷山が隊長を担っていた頃の副隊長であり、62年前に代替わりで五番隊隊長に就任した人物。

 

 

「白、お前いずれはあいつを十四番隊に引き入れるつもりだったのか」

 

「あら、雷山さんは考えていなかったのですか?」

 

「……まあ、隊長を引退するってなった時に声をかけてやろうかとは思っていた。あいつはこういう話は大好きだし、何より声をかけなければ後でブーブーうるさいからな」

 

「ふふっ」

 

 

銀華零はかつての五番隊コンビの情景を懐かしむように笑っていた

 

 

「相変わらずですね、雷山さんは」

 

「ほっとけ」

 

 

 

 

この約半年後、護廷十三隊三番隊隊長・浮葉刃は、異動して

十四番隊(じゅうよんばんたい)第一将(だいいっしょう)先鋒(せんぽう)”】

に就任した。

 

【宮廷遊撃部隊】発足62年、浮葉(ふよう)(やいば)ここに加入――――――

 

 

 

 

 

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