201X年 聖龍伝説 神話復活 出逢いの章 作:セイントドラゴン・レジェンド
アニメタウン郊外から発掘された古の鏡の発見から、Mrフェイクの逃走劇をジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールが追っていきます。
異次元の狭間を通って逃走するMrフェイクを追って、ジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールは様々な出会いを得ます。
それと同時に、異常者(ヒール)収容所から、異常者と認定されているキャラ達に謎の存在が接触します。
[アニメタウンの現状]
現政奉還によって、世間は新世代型二次元人を受け入れながらも、同時に彼らへの恐怖感を抱いてしまう。
これにより、2014年以降に新たに生み出された多くの新世代型二次元人には制限であるリミッターが付け加えられる事となる。それは新世代型二次元人は決して三次元人には戦闘では勝てない様にするという屈辱的なものだった。
しかし聖龍隊率いるアニメタウン改め二次元政府は、これを承諾。それと同時に変わらず新世代型二次元人を自分達でも監視するという名目で、新世代型二次元人を庇護したのだ。
それと同時に、国連総長である足正義輝の能力で小田原修司が垣間見た前世の記憶、それは小田原修司が古の英雄であるスサノオであり、アニメタウンがあの古代国家の邪馬台国なのではないかというものだった。
これによりアニメタウンが古代の王国・邪馬台国の可能性があるとして、考古学者達はアニメタウン付近の山々で発掘を行った。
考古学者達による発掘チームが今日もアニメタウン郊外のとある山の発掘現場で発掘調査を進行する。
と、チーム一丸となって発掘現場で調査を行っていた、その時だった。
「! 教授! 何かが土中から……!」
一人のスタッフが土中から何かを発見し、調査を指揮する考古学者を呼んだ。
呼ばれた考古学者が、刷毛を用いて丁寧に土中から出てきた物品の表面を覆う土を払い除けると、その土中から出てきた物が全容を露にした。
「これは………………」
考古学者達による発掘チームが土中から発見した物、それは一枚の銅鏡だった。
そして時と場所は変わり、此処はアニメタウンを見渡せる野山。
一見すると草木が自生していない茶色い地面がむき出しの禿山に見えるが、この野山の内部には数多の設備や軍事施設が設けられており、通称を聖龍隊総本山と名称されている聖龍隊の本部である。
今日も基地でもある本部は慌ただしく活動しており、強固たる要塞でもある総本山に入れる数少ない手段の一つである山頂のヘリポートに、移送ヘリが着陸して中から数人の男女が降りてきた。
「ようこそ、聖龍隊の本部である総本山に! 聖龍隊の新人隊士になる君たちに、見学許可が降りている区画を案内しよう」
移送ヘリから降り立った数人の若い男女を、黒スーツを着込んだ茶髪の男性が率先して総本山内部を案内するらしい。
そして総本山内部の聖龍隊基地を徒歩で移動しつつ、時おりエレベーターを使って下の階に降りながら案内人が説明していく。
「聖龍隊はアニメタウンという国家の治安や防衛などの有事の際だけでなく、時には異世界にまで進出して更なる交流の輪を深めるという役目も担っている。異世界の悪政や悪習を正し、正しい世界いや社会へと導くのも活動の一環としている」
更に案内人は聖龍隊の軍備についても語った。
「中には周知している者もいるが、聖龍隊は未だにアメリカのライフル協会と結託して多くの銃火器を輸入して装備させている。未だに現大統領をも暗殺できる程の権力を持つライフル協会との繋がりは簡単には断ち切れないでいるのが現状……また、防衛する為の軍備として遠方のミサイル基地だけでなく、アニメタウン海岸の地下にも多数のミサイルを配置している」
案内人は更に聖龍隊の思想をも語り明かす。
「聖龍隊の思想、それは平等なる理想郷の実現だ。未だに獣人や能力者、そして二次元人なんかが差別や迫害の対象にされている現状を打破し、心正しき者なら誰もが平等に幸せに生きていける社会に満ちた世界を実現するのが聖龍隊の目標とされている」
そして案内人を先頭に、一行はエレベーターで聖龍隊本部の最下層の階まで下りて、案内を再開された。
「だが……未だに三次元人や、時には同じ二次元人から恐怖の象徴として恐れられている問題がある。それこそが
案内人の視線を追うと、確かに今いる階層には強化ガラスが張られた小部屋に閉じ込められているサイレンヘッドやスレンダーマン、そして水槽の中のニンゲンが多く観察対象として飼育されていた。
そんな観察対象とされている数多くのUMAの横を通過する新人達に、案内人が続けて説いた。
「無論、
そして案内人の先導の元、一行は現役の聖龍隊士の訓練場に赴いた。
「ここは聖龍隊の隊士が訓練なんかを積む訓練場だ。周知の通り聖龍隊の隊士は一部の二次元人が扱う特殊な武器以外にも、特例として日本刀を常備帯刀する事が許されている。此処では、そんな日本刀を用いた訓練はもちろん、銃火器や素手に寄る格闘術の特訓なんかも行われている」
そう説明を受けた新人達が注目してみると、ちょうど円形の闘技場をイメージする場所で素手に寄る格闘技を用いた訓練が行われていた。
円形状のフィールドには、一般の隊士も装着するフルフェイスヘルメットを頭に被った人物を取り囲むように、端に立っている二次元人たちの姿が見受けられた。
するとフィールドの端に立って取り囲んでいた二次元人たちが、一斉にヘルメットの男へと襲い掛かる。
「このッ!」
腕を思いっきり振り回して殴り掛かっていく【七つの大罪】のメリオダスの攻撃を男は容易くかわすと、素早く反撃に転じてメリオダスをラリアットで吹っ飛ばす。
「ぐッ!」
フィールドを囲む鉄柵に激突して悶絶するメリオダス。その間も、男に向かって【僕のヒーローアカデミア】の緑谷出久が攻める。
しかし男は出久の攻撃をも回避すると、素早い立ち回りで出久の背後に回って足を払って転倒させた。
それからも男は一方的に、数では圧倒している出久やメリオダスの攻撃に対して俊敏に反応して回避すると同時に反撃し、返り討ちにしていく。
そして最後に残った【七つの大罪】のバンに鋭い打撃を浴びせて瞬殺してしまう。
『………………………………』
有名な二次元人たちを素早く倒してみせたヘルメットの男の戦いぶりに、新人達は唖然と立ち尽くすばかり。一方で乱戦の中、唯一無傷のヘルメットの男は毅然と中央で立っていた。
そんなヘルメットの男に打撃で倒されたメリオダスや緑谷出久たちが辛うじて起き上がる。
「ッ……相変わらず、手加減してくれないんだからな」
「もっと……もっと、頑張らないと……!」
痛みに耐えながら起き上がるメリオダスや出久に続いて、同じく乱戦に参戦してたディアンヌや麗日お茶子も起き上がった。
「っ~~……き、厳しすぎます」
「能力も封じられているから、ホントに生身の状態で戦わなきゃいけないから困っちゃう」
すると、このお茶子の発言にヘルメットの男が厳しく言い付ける。
「お茶子、いつ如何なる時に能力が使えなくなるか分からない。各自、各々の能力を使えない状況でも戦えるよう体を鍛えておくように」
『はいッ!』
ヘルメットの男からの言伝に強く返答する一同。すると男は更に続けて出久にも告げた。
「それと出久、個性という能力が使えないお前は余計に自身の身体能力の向上をメインに特訓しろ。素手でも犯罪者相手に戦えるようになれば、十分に聖龍隊の隊士以前にヒーローとして活動できる筈だ」
「は、はい! ありがとうございます、教官!」
教官であるヘルメットの男に指摘され、緑谷出久は敬礼のポーズで敬意を示した。
こうして、今日もまた二次元人の人権や未来を守る為にも聖龍隊の隊士達は活動または訓練を怠らず行っているのであった。
[最高顧問兼特別教官:小田原修司]
そして激しい乱戦での取っ組み合いによる訓練を終えた聖龍隊士たちが休憩を取っていると、先ほど訓練を観てた案内人と聖龍隊の新人達が歩み寄ってきた。
「ご苦労さん。今日も激しい組手だったみたいだな」
「あ、お疲れ様です。はい、教官は今日も手を抜かずチームで組手の相手をしてくれたので……」
案内人からの問い掛けに、組手と称する訓練に参加したお茶子が返答する。
「でも、男女関係なく、激しく攻撃してくるんですのよ。もう身体の方が持ちませんわ」
「ふふ、ディアンヌも他のみんなもご苦労様」
打撲だらけで休むディアンヌの横で、彼女やメリオダス達を労りながら優しく声をかけるエリザベス。
と、そんなお茶子にディアンヌにエリザベスと言った、豊満な女子の体を凝視する案内人の視線に素早く気付く存在が。
すると案内人がエリザベスの尻に手を添えようとした瞬間、一発の銃声がその場に響いた。
皆が何事かと一斉に目を向けてみると、視線の先には頭を拳銃で吹き飛ばされる案内人の姿が。
案内人の頭が粉砕し、床に倒れ込むと拳銃を向けて発砲した教官が発した。
「おい、新入りにもセクハラすんじゃねえ」
案内人に此処まで連れて来られた新人達が唖然と硬直する中、なんと頭を撃ち抜かれたはずの案内人が立ち上がり自分を撃った教官に文句を言い出した。
「おいおい、事情も何も知らない新人達がいるんだぞ。何より、いきなり拳銃で頭なんか撃つな。オレだって驚くんだぞ」
『………………………………』
頭を撃ち抜かれても平然と立ち上がった案内人を前に驚愕して固まる新人達。そんな彼らを前に、案内人の体がぐにゃりとゲル状に変化していく。
やがてスライム状に変化した体は、褐色の肌に三角形の様な頭部、金色の瞳を持つ所謂怪獣ギャオスに近い容姿の獣人へと変わった。
驚く新人達は、容姿が変わり果てた案内人を目の当たりにして更に驚いた。案内人の正体は、聖龍隊総長のバーンズ・ウィングダムズ・キングズその人だったからだ。
「バーンズ、訓練中のセクハラはやめろ。特に今の時代、軽い気持ちでのセクハラも訴訟が起きやすい事例なんだぞ」
「はは、悪い悪い。いつ見ても、エリザベス達の体は眼福なもんで」
教官に対してへらへら笑いながらも謝罪するバーンズ。するとお茶子が苦笑いしながら教官に述べる。
「ま、まあまあ、修司さん。そんなカッカしないで……」
と、このお茶子が発した名前を聞いて、新人達はまたも驚愕した。
「おいおい、聖龍隊に入ったばかりの新入りの前で迂闊に修司の名前を言うなよ……」
お茶子の軽はずみな発言に、バンは呆れて顔を手で押さえ込んでしまう。
するとバーンズが連れてきた新人達に正体が判明してしまった事で、男はヘルメットを外して素顔を明かした。
「……ふぅ、やっぱりヘルメットは蒸れて暑いぜ」
そう顔中の汗を手拭いで拭き取る小田原修司を前にして、新人達は一驚する。
そんな新人達にバーンズが説いた。
「……確かに、修司が此処に居るなんて驚きだよな。先の現政奉還の時に、国連総長足正義輝と共に世界中を混乱させた修司……その時の罪を、オレたち聖龍HEADが擁護した事で、修司への罰則はアニメタウンからの出国禁止令、すなわちアニメタウンという檻の中に隔離するという形で収まった」
現政奉還という大混乱を起こした小田原修司の大罪を庇護した事で、小田原修司は事実上アニメタウンという牢獄に囚われた現状である事を説明するバーンズは、更に説き続けた。
「……だが、今では乱世の元凶でもあった新世代型二次元人とも和解した修司を手暇にさせるのも考え物でな。オレの権限で修司に聖龍隊の最高顧問の役職を与えて、HEADの相談相手にもなってもらってる。それだけでなく、時にはこうして直々に新世代型二次元人の新人達を指導する特別教官にも就いてもらっているんだ」
バーンズが説明する傍らでは、当の小田原修司は腕を交差させたりとストレッチを淡々と行っていた。
新世代型二次元人は小田原修司のクローンにもあたる新時代の二次元人。そんな自分のクローンである新世代型二次元人の存在を許し受け入れた修司は、足正義輝と共謀した戦犯として裁かれたが、クローンである新世代型二次元人を生み出された事からなる情状不安定だったとして聖龍HEADが修司の減刑を求めた事から、修司はアニメタウンからの「出国禁止令」を言い渡されて、アニメタウン国内に軟禁される罰則に落ち着いたという。
しかし自分のクローンである新世代型二次元人と共生させるべく、聖龍隊の二代目総長バーンズは修司に次世代の指導を兼ねた聖龍隊の最高顧問に就かせたのだ。
すると説明を終えたバーンズに、汗を拭い切った修司が訊ねる。
「おい、バーンズ。この新人達、まさか……」
「ああ、その通り。お前と同じ三次元人だ」
なんとバーンズが今まで案内していた新人が、自分と同じ三次元人だと知った修司は一瞬で険しい顔付きへと変わった。
そんな修司の一変した様子に唖然と固まる新人達の前まで、修司は歩み寄ると新人達を前に話し出した。
「三次元人、か……」「どうした、不服か?」
三次元人である新人達を前に険しい顔を浮かべる修司にバーンズが問い掛けると、修司は険しい顔で述べ出した。
「ふぅ……同じ三次元人である俺が言うのもアレだが、あまり多くの三次元人を二次元界に入れるのは心苦しい」
すると修司は新人達に、なぜ三次元人を大勢二次元界に入らせる事を躊躇っているのか訳を話し出した。
「今では二次元界だけでなく、三次元界の人間達の間でも周知ではあるが……二次元人がスレンダーマンやサイレンヘッドなどのUMAに突然変異して暴れ回る、
そう長々と説明する修司は、更に続けて話す。
「それ故に、俺はあまり三次元人の人間を聖龍隊に加盟させるのは気乗りしないんだ。すまないな……」
申し訳なさそうに述べる修司の台詞に続いて、バーンズがそんな修司に言う。
「おいおい、修司。そんな辛気臭いこと言うなよ。コイツらは、ちゃんとオレが見定めた心身ともに潔白な三次元人なんだ。少しは快く受け入れてやってくれよ、お前のクローンである新世代型二次元人を受け入れた様によ」
「………………………………」
「それに……二次元人と三次元人の蟠りや溝を少しでも減らす為にも、三次元人の新人を導入する流れがHEADの間で取り決められたんだ。解ってくれ」
「……分かったよ、バーンズ」
バーンズの説得に渋々ながら納得する修司の反応に、三次元人の新人達は複雑な心持だった。
だが、そんな新人達をバーンズは更に紹介する。
「それにな、修司。この新人達は、ただの三次元人じゃない。将来、漫画家など物語を創作する事を夢見ている若者達なんだ! 未来の漫画家や小説家と仲良くやるのは、聖龍隊だけでなく、この二次元界にとっても有益になると思わないか?」
「将来、本当に漫画家や小説家として成功すればの話だろ」
「それを言うなよ~~」
現実的な思想を持つ修司の発言に悲観するバーンズだった。
と、修司達が休憩がてらバーンズと彼が引き連れてきた新人達と会話していた時。バーンズの通信機が鳴った。
「ん? 此方バーンズ。ふむふむ……そうか……なるほど了解した、すぐ向かう」
バーンズは通信機からの受信に受け答えすると、その場にいた皆々に言った。
「悪い、急な用件が入った。新人達、お前らは別の者に案内させるから各々の個室で待機。修司は引き続き、新世代型二次元人の新人達の教育を続けてくれ」
「分かったよ。それでバーンズ、お前は?」
修司の質問にバーンズが答える。
「オレはこれからジュニアと一緒に、発掘現場で発見されたっていうのを調査する。何だか、不思議な代物らしい」
そう言い残して、バーンズは訓練場を後にした。
[謎の銅鏡]
三次元人の新人達の案内を外して、バーンズが赴いたのは聖龍隊の科学調査機関の区域だった。
「あ、バーンズ来てくれたか」
「ジュニア、何か発掘現場で見つかったのか?」
機関でバーンズを出向かえてくれた聖龍隊参謀総長のジュニア・J・プラントに訊ねると、二人はそのまま会話しながら移動する。
「実は、発掘現場で不思議な遺物を発見したと報告が入って、聖龍隊の調査機関に運び込まれたところなんだ」
「確か、修司が足正義輝から見せられた前世の記憶からの情報で……オレ達が今暮らしているアニメタウンが古の国家、邪馬台国だという説を確かめる為に郊外の山々を発掘しているんだったよな」
「ああ、発掘してみたら意外とゴロゴロと昔の遺物が見つかっているから驚かされているよ。それで今日、持ち込まれた遺物がひと際摩訶不思議な代物らしくて……」
「何が見付かったんだ?」
「それが……銅鏡らしいんだけど」
「? おいおい、銅鏡なんて昔からある遺物だろ? まあ、邪馬台国を治めていた卑弥呼は鏡を好んでいて、当時の中国大陸から大量に銅鏡を贈与されたって話は有名だが」
「それが、どうやら普通の銅鏡じゃないらしいんだよ。まあ実際、見てみれば解るよ」
そうしてバーンズとジュニアは発掘現場から見つかった謎の銅鏡の許へと移動した。
「これが、その問題の銅鏡だっていうのか?」
「ああ、そうだよ」
ジュニアからの紹介で、問題である銅鏡を凝視するほど観察するバーンズ。
「改めて説くと……銅鏡というのは、銅合金製で作られた近代で使われているガラス製の鏡とは違う奴で、広くアジア各地そして古代エジプトでも主に宗教や祭祀の用具として使われていた青銅製の鏡の事だ」
「詳しい説明ありがと、清麿」
説明を述べてくれた高嶺清麿に礼を述べ返すバーンズ。そのまま清麿は説明を続けた。
「……だけど、本来古代の銅鏡は長い年月の間に酸化して鏡面の反射面が物体を反映しなくなるんだが、この発掘されたばかりの銅鏡の鏡面は綺麗なままなんだ」
「ふーーむ、普通なら酸化していて鏡面は綺麗じゃなくなるのか」
「それだけじゃない、この銅鏡の鏡面は、今現代の科学力で作られた普通のガラス製の鏡と同等で綺麗な反射面をしているんだ」
「古来の銅鏡なのに、現代の科学力で作られたかのような鏡面をしている訳か……」
清麿の説明を聞いて、バーンズもジュニアも更に銅鏡を凝視する。
「それだけじゃない。確かに、この銅鏡は青銅製と思われるんだが……全く未知の金属も検出されているんだ」
「つまり何か? この鏡は何の金属……いや、どんな青銅製の合金とかで作られているか解らないのか?」
清麿の説明にバーンズが驚いていると、ジュニアが語り出す。
「それに……この鏡、なんだか普通のとは感じが違うというか……普通ではない不思議な力を感じる気がするよ」
「もしかすると、魔法界とか、この世界で作られた鏡じゃなかったりな」
ジュニアの説明に清麿が冗談半分で話すと、バーンズが手をポンと叩いて閃いた。
「よし! 此処はいっちょ、鏡のプロという奴にでも視てもらうか」
「「鏡のプロ?」」
バーンズの提案に、ジュニアと清麿は不思議がる。
そしてバーンズは、その鏡のプロという人物を招いて、銅鏡を視てもらった。
「どうだ?」
「うーーーーん………………確かに。この銅鏡は現代で使われているガラス製の鏡みたいに、明確に物体を反映させられる代物だし……何より、不思議な力を感じるぜ」
「不思議な力? やっぱり、鏡の国の魔力なのかい?」
バーンズに呼び出されて、わざわざ銅鏡を視てみた鏡の国の王子である姿桐雄ことキーオの観察を前に、ジュニアが鏡の国の魔力なのか訊ねるとキーオは返答した。
「いや、魔力とは違うな……俺にも全く解らない未知の力、エネルギーが感じられる」
キーオが銅鏡を持ち上げて凝視しながら観察してると、其処に客人であるキーオの分も含めて自分達のコーヒーを運んできた清麿も会話に入る。
「鏡の国の魔法で作られたって訳でもないのか?」
「ああ、そもそも俺たちの国は二次元界や三次元界など、鏡って代物があれば、その多くの世界を観察できる特別な世界。正直に言うと、アッコみたいにコンパクトを渡したりとか、外界に接触する事は中々ない」
「出たよ、どの世界も監視できちゃう鏡の国の現状」
清麿からの質問に、鏡の国は普通なら外界とは接触しない多くの世界を観察できる世界と述べるキーオの説明を聞いて、鏡の国は他の世界を監視できてしまう現状を呆れながら皮肉るバーンズ。そんなバーンズにキーオが言う。
「悪かったな。でも、鏡の国は、実際鏡を通して色んな世界を見渡せちまう世界なんだ。だから滅多に外界の人間とは接触を避けているんだよ」
「それにしちゃ、アッコさんにコンパクトを渡したり、僕ら聖龍隊と深く関わっているよね」
「……母上がアッコにコンパクト渡しちまったり、修司が二次元界に来た事で色々と事情が変わっちまっているんだよ」
バーンズの皮肉に理由を述べるキーオに対し、それでも色々と外界と干渉する様になってると説くジュニアにキーオは事情が変わっている現状を不満気に述べる。
「まあ、どっちにしろ、この銅鏡と鏡の国は無関係って事で良いのか?」
コーヒーを啜りながら訊ねる清麿に、キーオは答えた。
「無関係とは思うんだが……でも、この銅鏡が普通の代物じゃないって事だけは確かだ」
「うーーん、未知の金属で作られた上に、現代科学で作られたガラス製の鏡に匹敵するほど鏡面が磨き上げられた銅鏡………………ますます疑問が残るぜ」
キーオの説明に、バーンズも誰もが首を傾げる。
アニメタウン郊外の山中の発掘現場から発見された不思議な銅鏡。
青銅製ではあるが、未知の物質も検出されていて、古の銅鏡にしては鏡面がかなり明確に物体を反映する謎の銅鏡。
この謎の銅鏡に対して思わず考え込んでしまうバーンズや高嶺清麿たち。
と、四人が揃って考え込んでいると、そのうちの一人であるキーオが手首に装着している鏡の国製の通信機が鳴った。
「ん? ちょっと済まねえ」
そう言うとキーオはバーンズ達から少し離れ、背を向けて通信機で密談を始める。
「俺だ、キーオだが………………なに!? ホントか? ……分かった、すぐに戻る」
何やら動揺してる様子のキーオは通信機を切ると、バーンズ達に話した。
「すまない、ちょっと俺は急用で鏡の国に戻る」
「どうかしたのか?」
バーンズが訊くと、キーオは険しい顔で話し出す。
「それが……どうやら、外界から鏡の国に不法に侵入した輩が居るらしくてな。しかも鏡の城で見張りをしていた兵士を殺して、城内に忍び込んだらしい」
「え! 鏡の城って、確かキーオや鏡の国の女王が住んでいる、鏡の国の拠点じゃないか! しかもアッコさんのコンパクト同様に、重要で強大な魔力を秘めたアイテムも保管されているっていう……」
キーオの説明にジュニアが驚愕してると、キーオはすかさず答えた。
「ああ、俺も城内に秘蔵している魔法アイテムの事が気になってる。侵入者が外界に持ち出したりしてるのが一番不安だ」
そしてキーオは「それじゃ!」と言い残して、その場でミラーゲートを展開して鏡の国に帰還していった。
「ふう……キーオも今じゃ鏡の国の王家を継承する立場ゆえに結構忙しそうだな」
「そうだね。妹のミラールは、すっかり今じゃ聖龍隊で
キーオが鏡のある世界なら何処だろうと通じるミラーゲートを使って鏡の国に帰っていったのを目の当たりにし、バーンズとジュニアはキーオの現状を思い返す。
と、キーオが鏡の国に帰っていったのを同じく目の当たりにした高嶺清麿が、ふとバーンズとジュニアに訊ねた。
「そう言えば……今じゃ、すっかりミラール以上でキーオ王子と同等に鏡魔法の使い手に成長しているアッコちゃんに、この銅鏡を視てもらわなくて良いのか?」
この清麿の質問にバーンズが答える。
「ああ、アッコなら今は新世代型二次元人の新人達と一緒に出動している最中だ。まーーた二次元人がUMAに変異して猛威を振るっているみたいだぜ」
「相変わらず、二次元人がUMAなんかの異形に変異する現象が発生してるんだな。……それで、今回はどんな現象で、どんなUMAが発生したんだ?」
再度清麿が訊ねると、今度はジュニアが答えた。
「最近、多くなっている現象なんだけど……産まれたばかりの乳幼児がジャージーデビルに変異して、周りの人間を見境なく攻撃するって報告だよ」
「ジャージーデビルって……アメリカのニュージャージー州発祥のUMAもしくは悪魔といわれている、あのジャージーデビルか?」
「ああ、リーズ家の母親が産んだ13番目の子供が、突如として怪物へと変異したと言われているUMAまたは悪魔の俗称だね。最近の報告では、ほぼ産まれたばかりの乳幼児が突然変異してしまう事で、変異した子供の母親がショックで正気を失ってしまう悲しい事例が報告されてて……胸が痛いよ」
ジュニアの説明を聞いて、彼と同じく清麿もバーンズも胸が締め付けられる様な心痛を感じずにはいられなかった。
[運命と抗戦する聖龍隊]
その頃、とある公園では。
『うわーーっ!』『きゃあーーっ!』
老若男女と大衆が、自分達に襲い掛かる異形の怪物から逃げ惑っていた。
体長1~1.8m程度、馬や羊や鹿に似た面長の顔付きをしており、真っ赤な目と細長い尾を持ち、胴体は黒っぽい毛で覆われていた。後足は馬のそれに似ており、背中にはコウモリを思わせる翼が生えており、空を飛んで上空から人々を群集で襲撃。
そんな異形の生物ジャージーデビルから人々が逃げ惑う中、現場に駆け付けた聖龍隊が対処に奔走していた。
「ッ、数が多すぎる!」
「飛び回るから狙いが定まらない……!」
得物である銃器で周辺を飛び回るジャージーデビルを狙撃しようとするものの、素早い動作で飛び回るジャージーデビルに狙いが定まらず困惑する聖龍隊スター・ルーキーズの総部隊長ミラールとプロト世代の新人である【SAO】のシノン。
「キリがありません!」「諦めるな!」
互いに背を合わせて周辺のジャージーデビルを狩り続ける【ノブナガン】の小椋しおとアダム・ミューアヘッド。
「く、来るな~~ッ!」「ヒィ~~」
群れで襲い掛かるジャージーデビルに戦意を喪失して逃げ惑う【ヒーローバンク】の豪勝カイトと財前ミツオ。
「一体一体は大した事ないのに、群れで襲ってくるのが厄介だ!」
周辺を飛び交うジャージーデビルに【血界戦線】のレオナルド・ウォッチも苦戦の様子。
「完全に囲まれたぞ!」「落ち着け! 一体ずつ対処していくんだ……!」
各個撃破で状況を突破しようと互いに声掛けする【マジンボーン】の竜神翔悟とルークたち。
そんな新人達を指揮しながら、懸命にジャージーデビルに抗う蒼き衣を纏った聖女の姿が現場で見受けられた。
「みんな、諦めちゃダメ! 一体ずつ確実に倒して、少しずつ数を減らすのよ!」
短刀であるミラーソードを武器に、懸命にジャージーデビルを斬り捨てていく魔鏡聖女ミラーガールの勇姿が其処にあった。
ミラーガールは確実に、一体ずつミラーソードで周辺を飛び交うジャージーデビルを倒していき、その数を少しでも減らして戦況を有利に進めようと画策する。
しかしミラーガール達の上空を飛び交うジャージーデビルは、群れを成して彼女達はもちろん逃げ惑う大衆へと襲い掛かる。
「早く早く! 安全な場所まで!」
「我々、聖龍隊が誘導するので逃げてください!」
民間人を避難誘導する一般の隊士にも襲い掛かるジャージーデビルを、ミラールとシノンが撃ち抜いて誘導を補助する。
「赤ちゃんが、赤ちゃんがっ!」「私の赤ちゃん、私の赤ちゃん……っ!」
一方で、戦闘を展開する聖龍隊の様子を、片隅で泣き崩れながら手を伸ばす母親たちの様子が。彼女達は自分がお腹を痛めて産んだ我が子が突然ジャージーデビルに変異した現実に泣き崩れていた。
そんな泣きじゃくって飛び交うジャージーデビルに手を伸ばす母親達の存在に心を痛めながらも、ミラーガール達は果敢にジャージーデビルを撃破していく。
そして苦戦の末、少しずつ空中を飛び交うジャージーデビルの数が減少していき、残り数体まで倒し切った、その時。
一体のジャージーデビルが、混戦状態のリーベルトの死角を衝いて突撃してきたのだ。
「リーベルト!」「!」
仲間の翔悟の声に気付くものの、ジャージーデビルはリーベルトの死角から彼女へと一直線に突撃し、襲い掛かる。
誰もがリーベルトの危険を察した、次の瞬間。
リーベルトに襲い掛かろうとしていたジャージーデビルに鋭利な刃が突き刺さる。それは逸早くリーベルトを助けようと必死でミラーソードを突いたミラーガールの一突きだった。
ミラーガールの突撃は、そのまま刺突したジャージーデビルを勢い余って公園の駐車場に停車されてた車のフロントガラスへと突っ込んだ。
ミラーガールの刺突で刺殺されたジャージーデビルを彼女のミラーソードは貫通し、車のフロントガラスをも貫いた。
誰もがミラーガールの活躍でリーベルトが助かったと安堵した、その時。悲しい情景が。
なんとミラーガールが刺突して車のフロントガラスに突っ込んだジャージーデビルが、瞬く間にその容姿を変化させて元の乳幼児へと戻ったのだ。
ミラーガールが突き刺したミラーソードを伝って、乳幼児の死体から血が車内へと滴り落ち、それと同時にミラーソードの刃も紅く染まる。
唖然とするミラーガールは、ジャージーデビルだった乳幼児の死体からミラーソードを引き抜いて呆然とする。
「赤ちゃん、私の赤ちゃーーん……!」「離れて! 近寄らないでください!」
と、そこにミラーガールが刺殺したジャージーデビルだった乳幼児の死体に駆け寄って泣き崩れる母親を、聖龍隊の一般隊士が感染の危険を考えて懸命に乳幼児の死体から引き離そうと母親を押さえる。
こうしてミラーガール達の活躍でジャージーデビルは全て処分された。だが同時に、多くの乳幼児の命も奪った現実に彼女達は苦しむのだった。
ジャージーデビルの大群を苦戦の末に全て片付けたミラーガールたち聖龍隊。
だが、乳幼児に手をかけた事実に落ち込むミラーガールは駆け付けた聖龍隊の軍用車の後部荷室に腰を下ろして苦悩していた。
「大丈夫? アッコさん……」
そんなミラーガールを心配して声をかけるのは、同じ聖龍HEADのナースエンジェルだった。
「ええ、大丈夫よ……」
自分を心配してくれるナースエンジェルに、ミラーガールは強がってみせるのだが、誰が見てもミラーガールが苦しんでいるのは明白だった。
「赤ちゃーーん、あああ……っ!」
「どうして……どうして……」
「………………」
その一方で、我が子がジャージーデビルに変異した末に殺処分された現状に泣き崩れたり茫然自失してしまってる母親達の存在が心苦しかった。
「我が子が突然、怪物に変異してしまうなんてな」
「痛ましい現象よね、
「一番の被害者は、あの母親たちね」
愛する我が子が突然ジャージーデビルに変異した現実に泣き崩れて苦しむ母親達を見て、リーベルトやタツマキとフブキ姉妹も心を痛めた。
だが母親達の心情を察しながらも、聖龍隊はミラーガール達が倒したジャージーデビルだった乳幼児の死体を一体ずつケースに納めて厳重に運んでいく。
「待って! 待って……! 赤ちゃん、私の赤ちゃん返して……っ!」
「………………………………」
しかし聖龍隊の職員は母親の必死の訴えを聞きながらも、心を押し殺してジャージーデビルに変異していた乳幼児の死体を運び出す。
そして全てのジャージーデビルだった乳幼児の死体を収納して研究機関へと輸送した後、聖龍隊は怪我人や心神喪失状態の母親達のケアをしてから本部へと帰投するのであった。
[聖龍隊:装備品開発機関]
ジャージーデビルとの乱戦、そして我が子が怪物に変異した現象に絶望して阿鼻叫喚を上げる母親達の実情を体感したミラーガール達は、心労を抱えたまま聖龍隊本部へと帰投した。
「お疲れ様……アッコちゃん」
「セレニティ……」
「ふふ、今はうさぎで良いわよ。辛かったね」
「………………」
帰ってきたミラーガール達を悲しそうな笑顔で出迎えるネオ・クイーン・セレニティことセーラームーンにミラーガールが顔を向けると彼女は本名の月野うさぎと呼んでと返す。
「大変だったわね。また
「え、ええ………………」
セレニティに問い掛けられたミラーガールは思わず口を噤んでしまう。
「………………」
そんな悲痛なミラーガールの面持ちを見て、自分も悲痛な表情を浮かべるセレニティの肩を、後ろから夫であるキング・エンディミオンが軽く叩く。
「あ、まもちゃん……」
「うさぎ、アッコちゃん……いや、ミラーガール達は疲れてる。少し休ませてあげよう」
「う、うん、そうだよね……」
夫のキング・エンディミオンの言葉にセレニティが頷くと、ミラーガールが思わず反応した。
「あっ、だ、大丈夫よ、これぐらい! ……これぐらいで、休んでいられないわ」
「「………………」」
(ミラーガール、今は総長職を引退して色々と重荷を外した修司に代わって、色んな重責を背負い込もうとしているな。全く、自分を大切にしない部分まで似る必要ないと思うんだが)
何かと重責を背負う覚悟で無理をするミラーガールの言動に、セレニティとキング・エンディミオンは悲愴な面持ちを浮かべるが、エンディミオンはミラーガールが小田原修司と同じで重責を背負う事を心中で懸念してた。
と、其処にジャージーデビルの騒動を片付けてきたミラーガール達の所に、バーンズが先ほどまで修司と特訓をしていた新人達を引き連れてやって来た。
「よっ、アッコお疲れさん」「バーンズ……」
明るくいつも通りに振舞うバーンズに対しても、ミラーガールは心痛な面持ちを浮かべたまま。
「……何だか暗いな、お前ら。民間人に死者は出ず、軽症者だけで済んだって聞いてるけど」
「バーンズ、ミラーガール達はいくら
「あ、衛さん。良いのよ、別に。バーンズの言う通り、変異していない民間人に死者が出なかったのは不幸中の幸いだわ……」
「「「………………」」」
バーンズの素っ気ない言動にエンディミオンが注意すると、それにミラーガールが大丈夫と返した。この彼女の反応に、バーンズもエンディミオンもセレニティも表情が重たくなった。
「ふぅ、それにしても……こっちの世界と交流する様になってから、ウチらの世界でも
思わず愚痴を零す【七つの大罪】のメリオダスの発言に、他の新人達も頷いて反応してると、一同の横を聖龍隊の一般隊士が二人並んで話しながら通り過ぎる。
「スレンダーマンにサイレンヘッドだけでも厄介なのに、今度は乳幼児がジャージーデビルに変異する現象まで発生するなんてな」
「まったく。お陰で、ジャージーデビルに変異した乳幼児を殺したり、死体を持ち帰ってる俺たち聖龍隊を目の敵にする親まで出てくる始末だし……ホント
そんな何気ない会話をする二人の隊士の話に耳が傾く一同だったが、そんな隊士の一人が発した台詞に誰もが敏感に反応した。
「良いよな、新世代型は……バケモノにならずに済むんだから」
新世代型二次元人だけは、
「ッ! 陰口なら誰も居ない所で言いやがれってんだ」
一般隊士の台詞に苛立ちを覚える【七つの大罪】のバン。
そんな苛立ちや激情を覚える新世代型二次元人の新人達に、バーンズが事実を述べた。
「それもこれも……お前達がリアルの三次元人と遺伝子構造が近いから、
「何もかも全部……俺達が小田原修司のクローンだから、三次元人に近いって言われてるんだろ」
バーンズが述べる仮説に、バンは不満そうに愚痴を零した。
「
ふと自然に呟いた【盾の勇者の成り上がり】のラフタリアの疑問に、【僕のヒーローアカデミア】の緑谷出久が答えた。
「確か……二次元人の感情の情状不安定さや、三次元人からの憎悪やマイナスな思想に対する感化での肉体の突然変異。それらの要素が重なって、
「おうッ、流石は新人達の中でも勉強や知識の収集を心掛けているな、出久!」
何ゆえ二次元人から
その後、ミラーガール達はセレニティやキング・エンディミオンそしてバーンズ達と合流して聖龍隊本部内を進んだ。
そしてミラーガール一行が自然と足が赴いたのが、聖龍隊の装備品開発機関。此処は聖龍隊の隊士達が扱う武器や道具の研究や向上、そして一般隊士に配備される装備品の開発などに着手している機関。
何よりミラーガール達が何ゆえ、この開発機関に足を運んだかと言うと。
今現在、この装備品開発機関に何度も足を運んで新アイテムの開発に協力している聖龍隊関係者と話をするため。
その人物とは。
「よーーしよしよしッ……この電撃グローブは中々面白いな」
その人物の顔を見て、ミラーガールが思わず声をかける。
「修司っ!」
そう、装備品開発機関に出入りして新アイテムの開発に協力しているのは前聖龍隊総長にして初代アニメタウン市長でもあった、ミラーガールこと加賀美あつこの婚約者、小田原修司だった。
「おお、アッコ、それにバーンズにうさぎと衛、それに新人達も来たか」
ミラーガールに声をかけられた修司は、両手に装着してたグローブを外すと彼女達の目の前まで歩み寄る。
「聞いたぜ、また二次元人がUMAなんかの危険な
「え、ええ……今度は、産まれて間もない乳幼児の子たちが変異したわ。ジャージーデビルってUMAに……」
「そうか………………二次元人が何らかの形でUMAなんかの異形に変異して、暴走する事例は後を絶たないな」
修司からの問い掛けに、悲痛な面持ちで答えるミラーガール。彼女の返答を聞いて修司は思慮に耽っているとキング・エンディミオンが話し掛けてきた。
「修司、また新アイテムやガジェットの試作品のテストを受けているのか?」
「ああ、そうだぜ衛。俺達が聖龍隊を創設した頃と違って、聖龍隊という組織は大きくなった。それに伴い、新アイテムやガジェットの開発をしてくれる装備品開発機関は非常に心強い! 俺が使ってみて、かなり使える装備品は即座に大量生産して多くの隊士達に支給したいと思ってる」
「ふぅ、ジャッジ・ザ・デーモンの時といい……戦闘にも使える装備品の開発には協力的だな、お前は」
半ば修司の行動に呆れながらも、キング・エンディミオンは修司が一般隊士達にも支給できる装備品の開発に協力している現状を内心喜んでいた。
それから修司とミラーガール達は、装備品開発機関の中を通りながら目的地へと向かった。
「ユート、ワンダ。いつも新ガジェットの開発、ご苦労」
「任せてください、修司さん!」「任せろケン!」
聖龍隊の装備品開発機関に属する【カミワザ・ワンダ】の神谷勇人とワンダに声をかける修司。
そんな装備品開発機関に関与するスタッフや技師達の姿を観ながら通過する修司に、彼の後を着いていくバーンズが問い掛けた。
「ところで修司、お前は聞いたか?」
「なにをだ?」
「アニメタウン郊外の発掘現場で見つかった銅鏡の事だ」
「ああ、確か考古学者でもある清麿が指揮している発掘現場だったな。邪馬台国の痕跡があるかどうか調べる為の」
「その発掘現場で見つかった銅鏡だが……鏡のエキスパートであるキーオにも見せたんだが、キーオにも判別できない様な不思議な力が秘められた銅鏡らしい。これはいよいよ、アニメタウンが太古の王国である邪馬台国だって証明に繋がるかもしれない」
「ハッ、どうだがね」
この他人事の様な反応を見せる修司に、キング・エンディミオンがすかさず問い掛ける。
「おい、修司。アニメタウンが現代の邪馬台国であるという証明は、お前の前世を知れる数少ない手掛かりなのかもしれないぞ。それ以上に、アニメタウンが邪馬台国が発展した国だって証明できれば、二次元人の権限も少しは強まるかもしれないってのに……」
このキング・エンディミオンの発言に、修司は真顔で答えた。
「最早アニメタウンが太古の国家であった邪馬台国だというのは、神話レベルの仮説だ。神話とは、所詮三次元人が自分達が信仰してる神々を崇め奉る為に創った大昔の創作そのものだと俺は思っている」
『………………』
「それ以前に……俺は別に前世の自分が何者だったかどうかなんて、くだらない事は考えてもいない」
「く、くだらないって……!」
思わずセレニティが怒り出そうとするが、それより早く修司は言い返す。
「俺はセーラー戦士みたいに、前世とかそういうのには拘らない。前世は前世、今の俺は今の俺って考えで、俺自身は深く考えちゃいねえよ。どんな前世だったとしても、今の俺が変わる事はないだろうからな」
『………………』
「……相変わらず、自分の信念は曲げないと言うか、我が強いというか……」
修司の返答を聞いて、多くの面々が唖然とする中、キング・エンディミオンは修司の我の強さに少々呆れてしまってた。
そして一行は、そのまま目的地である聖龍隊本部の最深部。一部の隊士や関係者しか入れない区間、デーモンハビタットへと赴くのであった。
[盗まれたミラーゲート・リング]
デーモンハビタットに到着した一行。其処では既に多くの聖龍隊のスタッフが、毎夜闘い続けるジャッジ・ザ・デーモンの為に装備を整えてくれていた。
「ウッズ、状況は?」
「はい、修司様。デーモンスーツはもちろん、ジャッジラングやその他の装備品も手入れは行き届いておりますよ」
修司に問い掛けられたウッズは、普段は前市長である修司の要望で今やアニメタウンの市長に就任しているのだが、修司が再びジャッジ・ザ・デーモンとして活動する様になってから、再び修司のバックアップを再開してた。
そんな再び自分の支援に就いてくれたウッズの返答を聞いて、修司は時計を見て発する。
「……もう時間だな」
そう言うと、修司は手入れをしてもらったデーモンスーツの前に歩み寄り、脚から順に胴体、両腕、そして最後に頭部を完全に覆う程のマスクを装着してジャッジ・ザ・デーモンへと姿を変える。
「それにしても……まさか、以前まで連続殺人鬼として指名手配もされてたジャッジ・ザ・デーモンが、俺たち新世代型二次元人の始祖である小田原修司とは。何だか複雑だな」
寡黙なジャッジ・ザ・デーモンという異端な存在へと変わった修司を前に、修司のクローンである豪勝カイトは複雑そうにジャッジ・ザ・デーモンを見詰める。
「少し体を慣らしておくか……」
そう思い立ったジャッジ・ザ・デーモンは、一人自分専用の訓練場まで赴いて、皆の観衆の前でジャッジラングを投擲したりなどの自主練を行った。
「それにしてもよ……アンタ、小田原修司からアニメタウンっていう国家を担う市長にまで成り上がったっていうのに、未だに小田原修司、いや、ジャッジ・ザ・デーモンに仕えているんだな」
「私は本来、人に仕えたりするのが性に合っているんですよ。昔から、修司様はこれと決めたら最後まで曲げない信念の強さを持っております。私は、そんな修司様だけでなく、修司様が創設なさった聖龍隊の方々に少しでも助力できるのならばと今でも支援しております」
アニメタウンという国家のトップを担ったウッズに問い掛ける【七つの大罪】のバンからの質問に、ウッズは仕えるのが性に合っていると真顔で答えた。
と、ジャッジ・ザ・デーモンの自主練を皆が観ていると、バーンズの通信機が突然鳴り響いた。
「ん? なんだ? もしもし、此方バーンズだが……ああ、キーオか、どうかしたか? ………………なに、それはホントか!? ……分かった、ちょうどデーモンハビタットにみんな居る。ジャッジ・ザ・デーモンも交えてテレビ通話に切り替える」
そう言って通信を切ったバーンズのすぐ近くには、彼とキーオとの通信の一部始終を聞いたジャッジ・ザ・デーモンも自主練をやめて立っていた。
「デーモン、みんな。ちょっと急な案件が舞い込んできた。ウッズ、ちょっとデーモンハビタットのテレビ通話を借りたいんだが」
「お好きに使ってくれて構いませんよ」
ウッズからの了承を得て、全員デーモンハビタットのテレビ通話の画面の前に並んで鏡の国と通話を開始。テレビ画面にキーオの姿が映し出される。
「どうしたキーオ。なんか急用か?」
バーンズが問うと、キーオは焦燥した様子で話し始めた。
「バーンズ、みんな、ちょっと鏡の国で緊急事態が発生した。さっきバーンズ達にも伝えていたんだが、鏡の国に外界から不法侵入者がやって来て、見張りの兵を何人か殺害してんだ」
「ちょっと、殺害って……」
ミラーガールがキーオの話を聞いて唖然とするが、キーオは話を続ける。
「問題は、そいつが誰で何をしたかって事だ。ハッキリ言うと、鏡の国に不法侵入した上に見張りの兵を殺害したのは………………Mrフェイクだ!」
「Mrフェイク!」『!!』「………………」
キーオが発した不法侵入者の名前に、バーンズも他の皆も驚愕する中、ジャッジ・ザ・デーモンだけは一人落ち着いていた。
「俺も驚いている。Mrフェイクの奴、どうやってかは不明だが、何らかの方法で鏡の国に入って来たみたいでな」
「Mrフェイクの知識と今現在の科学力を用いれば、上手く鏡の国に侵入できるのかもしれん」
キーオの疑問にジャッジ・ザ・デーモンが答える一方、キーオは話し続ける。
「それで恐れていた事だが……Mrフェイクの奴、やっぱりと言うのもアレだが、鏡の国が厳重に秘蔵していた魔法のアイテムを一つ持ち出しやがったんだ」
「な、何ですって!? 鏡の国の魔法アイテムは、どれも高度な魔法が使えちゃうアイテムでしょ! それを寄りにもよってMrフェイクが盗んだなんて……!」
兄キーオの話を聞いて、妹ミラールは動揺する。
「それでキーオ、盗まれたアイテムってどんな魔法アイテムなの?」
ミラーガールが問い掛けると、キーオは難しい顔を浮かべて話した。
「それが……普通のミラーゲートでは行けない、並行世界や多くの物語の世界にも自由自在に行き行きできるアイテムで、使い方一つで大混乱が発生するかもしれないから、それが恐ろしくてよ……」
「普通のミラーゲートでは行き行きできない並行世界や物語の世界に行けるというのか」
キーオの説明を聞いて、ジャッジ・ザ・デーモンは考え込む。
「それでキーオ! Mrフェイクは今どこに?」
ミラーガールが問うと、キーオは険しい面持ちで答えた。
「おそらく、そのアイテムを使って、まだ聖龍隊が開拓していない異世界や並行世界へと行っちまったんだと思う」
「分かった、Mrフェイクを追跡して、アイテムの奪還とMrフェイクの捕縛は俺がやる」
キーオの話を聞き、ジャッジ・ザ・デーモンがMrフェイクからアイテムの奪還と捕縛を一任すると言うと、キーオがすかさず言った。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! Mrフェイクが使ってるアイテムは、普通の科学力で作られた道具では追跡が困難だ!」
「それじゃ、どうするんだ?」
ジャッジ・ザ・デーモンが問い返すと、キーオは難しい顔を浮かべて一言。
「……ちょっと待ってくれ。今そっちにミラーゲートで行って直接説明した方が早い」
すると次の瞬間、皆の真横にミラーゲートが現れて其処からキーオが姿を見せる。
「キーオ、詳細を」
そんなキーオにジャッジ・ザ・デーモンに扮してる修司が訊ねると、キーオは詳細を述べ始めた。
「Mrフェイクが盗んだのは、ミラー・ゲート・リングといって、普通の人間でも自由自在に異世界や並行世界へと行けちまうアイテムなんだ」
「なるほど。それで、Mrフェイクを追跡するのが困難だというのは……」
ジャッジ・ザ・デーモンが再び問うと、キーオは二つの指輪を皆に見せて話し出す。
「腕輪であるリングが何処の異世界などに行っても、その後を追えるのは、この指輪だけしか手立てがないんだ」
「なるほど、この指輪でしかMrフェイクを追跡できない訳か」
「ああ、そうだ。だからジャッジ・ザ・デーモン、此処は俺が一緒に……」
と、キーオがジャッジ・ザ・デーモンに同行すると言い出した瞬間、ミラーガールが言い放つ。
「ちょっと、キーオ! あなたは鏡の国の統治を女王様から引き継いでいるんでしょ? 何より、Mrフェイクが侵入して混乱している城内や国内を静められるのは、王子であるキーオの責務じゃないの?」
「だ、だが……あのリングが悪用される訳にはいかないし……」
キーオも誰もがミラーガールの言葉に困惑する中、ミラーガールは此処で突拍子もない事を言い出した。
「そうだわ! なら、私がキーオの代わりにジャッジ・ザ・デーモンに同行して、Mrフェイクを追うわ! それなら問題ないでしょ」
このミラーガールの発言に、その場の誰もが一驚した。
「だ、だがミラーガール。異世界や並行世界に、どんな脅威や危険があるのか解らないんだぞ。それ以上にMrフェイクは危険極まる人間、そんな奴をいくら俺と一緒に追うとはいえ危ない気がするが……」
「大丈夫よ! 私だって、長年戦闘ヒロインを務めてきた賜物よ。どんな危険だって乗り越えてみせるわ!」
「だ、だが……」
「それに。修司と……ううん、ジャッジ・ザ・デーモンと一緒なら大丈夫って自信があるから平気よ平気よ!」
「………………」
ミラーガールの勢いに押されて、ジャッジ・ザ・デーモンは何も言えなくなってしまった。
「ふぅ……相変わらず、言い出したら聞かないな、アッコは。ホント誰に似たんだが……」
「なんか言ったか」
「いいや」
思わず零すキーオの呟きを耳にしたジャッジ・ザ・デーモンが問い詰めるも、キーオはしらばっくれる。
そして渋々ながらキーオもジャッジ・ザ・デーモンも、ミラーガールがジャッジ・ザ・デーモンに同行してMrフェイクを追跡する事を了承するのだった。
「これがミラーゲート・リングを追跡できる指輪だ。念の為に、二つ用意しておいた」
キーオから手渡された指輪を、それぞれジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールが受け取る。
「よし、俺はこの指輪をスーツのベルト部分に仕舞っておく」
「私は普通に指にはめておくわ」
「すっぽり抜け落ちて、無くすなんて事するなよ」
「分かってる」
そうジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールが指輪をそれぞれ身に着けると、指輪から光が照射され、二人の目の前に異次元空間への出入り口であるミラーゲートが開口された。
「二つの指輪が指し示すゲートの先に、リングを持っている筈のMrフェイクが居る筈だ」
「分かった、なるべく早く戻ってくる」
「そうせっかちにならないの。貴方の悪い癖よ」
キーオから説明を受けて返事するジャッジ・ザ・デーモンにミラーガールが彼のせっかちな癖に呆れてしまう。
そして二人がミラーゲートを通ってMrフェイクを追尾しようとすると、二人を見送る皆の前に立つバーンズがジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールに告げる。
「武運を祈る」
この小田原修司の代から受け継がれた言葉に対し、ジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールは力強くバーンズ達に向かって頷くとミラーゲートへと入って姿を消していった。
「大丈夫かな、ジャッジ・ザ・デーモンにミラーガール……」
「大丈夫だろ。あの二人は何だかんだ言っても、聖龍隊で最も信頼し合ってる関係でもあるんだからな」
思わず不安を零す緑谷出久に、バーンズが不安を消し去るように言う。
こうしてジャッジ・ザ・デーモンとミラーガール、二人はMrフェイクが盗み出したミラーゲート・リングを奪還する為にも異次元空間へと出向き、数多の異世界や並行世界へと旅立ったのであった。
[悪党達の時間]
ジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールが異次元空間へと出発したその頃、当のMrフェイク本人は。
「フフフフフ……この完成したエアライドに鏡の国から盗み出したリングを組み込めば……!」
何やら自製の高速飛行可能なエアライドに盗み出したミラーゲート・リングを組み込んでいた。
そして、Mrフェイクがリングを組み込んだエアライドに電気エネルギーを注入すると、エアライドは宙に浮いて起動。
「よっし!! これでボクちゃんお手製のエアライドは自由自在に色んな物語の世界や未開拓の異世界にも移動できるようになっちゃったぞ。これで更にエアライドをパワーアップしつつ、ボクだけの物語を創れちゃう訳だ!」
自分だけの物語を創る為に、自由に異世界を航行できるようエアライドを改造したMrフェイクは、早速改造したエアライドに飛び乗って運転する。
「よーーし! それじゃ発進! 出発! ゴーーゴーーゴーーッ!」
そうして今まさにMrフェイクがリングを組み込んだエアライドで異世界に向けて発進しようとした、その時。
Mrフェイクが搭乗してるエアライドの真後ろからミラーゲートが出現し、その中からジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールが颯爽と現れた。
「っ!? これはこれは……ジャッジ・ザ・デーモンにミラーガールじゃないか」
「Mrフェイク! あなたの好き勝手にはさせないわ!」
最初は戸惑ったものの、すぐに本調子で愛想を振りまくMrフェイクに、ミラーガールが睨みを利かせて言い放つ。
すると同時に、ミラーガールと同行しているジャッジ・ザ・デーモンが紅く大きな瞳からのスキャナーで、Mrフェイクが搭乗しているエアライドに盗まれたミラーゲート・リングが組み込まれている事に気付く。
「ミラーガール、リングはあのエアライドの中に組み込まれている!」
「何を企んでいるの!? Mrフェイク!」
ジャッジ・ザ・デーモンに告げられ、ミラーガールが問い詰めると、Mrフェイクは嬉々とした笑顔で答えた。
「フフフ、もちろん……思ったように、好きな様に異世界旅行に出かけようかなと思ってね! それでちょいと、鏡の国からリングを拝借した訳さ!」
「リングを返しなさい!」
「ダメダメ。このボクが色んな世界を面白おかしく、引っ掻き回して遊ぶんだから返せないね」
ミラーガールと言い合っていると、Mrフェイクはエアライドを運転して異世界へと飛び立とうとする。
「それじゃ、ボクは早速、異世界とか色んな物語の世界に旅行に行くね! 君たちも着いてこられるなら、一緒にどうだい? 旅は道連れ世は情けって言うしね! フフフ……」
そう言い残すと、Mrフェイクはエアライドを運転して単身異世界へと発進してしまう。
「俺達も行くぞ、ミラーガール!」「ええ!」
Mrフェイクの後を追う様に、ジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールも異次元空間へと突入するのだった。
一方、此方はアニメタウンの
「おい、やめろ! これ以上、私達を侮辱するなら後々後悔するぞ!」
収容施設内を、髪を引っ張られたりと粗暴な扱いで連れ回される
「おい、入れ! 此処がしばらく、お前らが暮らす豚箱だ!」
看守は乱暴に囚人達を不衛生な牢屋に放り込んでいく。
「こんな臭い部屋に押し込めないで!」
「貴様ら……! こんな真似して、タダで済むと思ってるのか……!」
文句を言うマルティ=S=メルロマルクとギーラだったが、そんな二人に看守は容赦のない暴力を振るう。
「きゃっ!」「うッ!」
看守はマルティの頬を殴り付け、ギーラの腹部に膝を打ち込んで悶絶させる。
「さっきから聞いてりゃ、好き放題言いやがって……いいか? お前達はいつ殺処分されても文句の言えない
そう怒鳴ると、看守はマルティとギーラを無理やり牢屋へと放り込んだ。
「まったく、
そう言い残して、看守達は牢屋から離れていく。
「っ、っ……もう嫌……こんな生活……!」「おお、娘よ。なんて連中だ」
泣きじゃくるマルティに、実父であるオルトクレイ=メルロマルク32世が宥めつつ看守達を恨む。
「クソっ、本当に俺たち豚小屋で飼育されているブタじゃないか」
「いいや、豚より格下だ……家畜の方が大切にされているからな」
ハウザーが文句を言うと、その隣のレボルトが呟く。
「このままでは我々、本当に正気を失いかねんぞ!」
ドレファスが怒鳴ると、ヘンドリクセンが思わ訊ねた。
「そう言えば……我々以外の囚人は、結局どうなった? あのタナトス・アサイラムでの一件以来、見てないが……」
そう訊ねると、レボルトが憔悴し切った表情で語り出した。
「八神飛鳥は弁護士に依頼して、今は仮釈放で自由の身。竹内元教師や川井みきに島田一旗、植野直花と広瀬啓祐達は、紫京院ひびきと一緒に能力者じゃないからって此処より緩和な刑務所に移転された。トガヒミコは脱走。タクトとマクギリスとラニ・アリステスはGODの副作用が未だにあるらしくて、治療施設に運搬されたみたいだぞ」
覇気すらも失い、意気消沈で語り終えるレボルト。
誰もが看守からの暴力に劣悪な環境での生活に憔悴し切っていた。
と、その時だった。
「此処から出たいか」
その声に、誰もが自然と声の方へと視線を向けた。
すると牢屋の中の一同の前に、頭から足元まで全身を黒いローブで覆い隠した謎の人物が立っていたのだ。
『うわっ!』
突然、何の前触れもなく牢屋の中に現れた謎の存在に誰もが驚愕する。
「お、お前は……!?」
ギルサンダーが一驚した顔で問い掛けると、謎の存在は顔を見せる事無く、平然と問い掛け続ける。
「もう一度訊こう……此処から出たいか?」
突如として
「自由を得たければ……我の下に集うがよい」
「そ、そなたは……一体……!?」
オルトクレイ=メルロマルク32世が恐る恐る訊ねると、謎の存在はこう名乗った。
「我が名は………………ヒルコ」
それから数分もしない内に、名立たる悪人達が牢屋内から姿を消した。
マルティ=S=メルロマルクとオルトクレイ=メルロマルク32世の親子、ドレファスとヘンドリクセンとヘルブラムとギルサンダーとギーラとジェリコとハウザーの聖騎士達、そしてレボルト。
彼らの姿は牢屋内から忽然と消え去ったのであった。