201X年 聖龍伝説 神話復活 出逢いの章   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 鏡の国から数多の異世界や物語の世界に移動できるミラーゲート・リングを盗み出したMrフェイク。
 そんなMrフェイクを追跡するべく、キーオから腕輪であるリングを追跡できる指輪を手渡されたジャッジ・ザ・デーモンとミラーガール。
 鬼と聖女のコンビは、Mrフェイクを追って数多の異世界や物語の世界を転々としていきます。
 今回はドラマで有名になった、偽善者ばかりのアンチヒーローしかいない、あの物語にMrフェイク共々やってきます。



【聖龍伝説】出逢いの章:偽善の英雄達【神話復活編】

[偽善の英雄しかいない世界]

 

 Mrフェイクを追って別世界を旅するジャッジ・ザ・デーモンとミラーガール。

 そんな二人が辿り着いたのは、とある深夜帯の建物の屋上。

「此処はどんな世界なのかしら……?」「まずは情報収集だ」

 別世界へと辿り着いたミラーガールとジャッジ・ザ・デーモンは、自分達が降り立った建物に侵入して情報を収集した。

「此処は………………どうやら、アメリカらしいな」

 壁に貼り付けられたメモやテーブルに置かれている新聞を見て、ジャッジ・ザ・デーモンは自分達が辿り着いたのは別世界のアメリカであると推理する。

「でも、何なのかしら? 壁一面に貼られた、この新聞記事は……」

 と、ここでミラーガールは壁一面に添付された新聞記事を見て戸惑う。どれもこれも多くが、ある一人の白人男性の写真が目立っていたからだ。

 

 と、ジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールが建物内を探索していたその時。

「動くな!」「「!」」

 突如、部屋の物陰から小銃を構えてジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールに銃口を向ける人物が現れた。

「わっ、わわわ……!」

 思わず動揺するミラーガールを尻目に、最初に現れた男性に続き、別の男性と少女合わせて三人がジャッジ・ザ・デーモン達を取り囲む。

「待ってくれ、俺たちは敵ではない。此処に忍び込んでしまった事は悪かったが」

 動揺するミラーガールに反して、ジャッジ・ザ・デーモンは自分達を取り囲む三人を前に冷静に対応する。

 だが男は半ば興奮しながら銃を向け続ける。

「騙されるか! お前ら、ヴォ―ト社のヒーローで回し者だろ!」

「? ヴォ―ト社?」「………………」

 ミラーガールもジャッジ・ザ・デーモンも何の事か理解できず困惑するばかり。

 そして興奮してる男が銃の引き金を引こうとした、その瞬間。

 ジャッジ・ザ・デーモンは二人の男が所持してる銃器に向けてジャッジラングを投げ付け、ジャッジラングで銃口を塞いだ。

 だが、これを切っ掛けにジャッジ・ザ・デーモンと三人の交戦が始まってしまい、ミラーガールは戸惑ってしまう。

 ミラーガールが戸惑ってる間、ジャッジ・ザ・デーモンは素早い動作で二人の男の腹部に鋭い拳を叩き込んで戦意を喪失させていくが、少女の方はそうはいかなかった。

「!?」

 なんと少女は死角からのジャッジ・ザ・デーモンの攻撃を回避し、更には常人以上の動作でジャッジ・ザ・デーモンと交戦を始めたのだ。

 ジャッジ・ザ・デーモンは驚きつつも、少女と交戦を開始するのだが、そんな所にミラーガールがやっと動く。

「ちょ、ちょっと待って二人とも! ねえ、私達は悪意も無ければ、敵意もないの! お願いだから、争うのはやめましょう」

 ミラーガールが格闘し合うジャッジ・ザ・デーモンと少女に呼び掛けるが、先ほどジャッジ・ザ・デーモンに倒された男の一人が立ち上がり、睨み付けながら言った。

「だ、騙されるか……! お前ら、ヴォ―ト社の外道共には屈しない……!」

「さ、さっきからヴォ―ト社ってなに? 私達は無関係なんだけど……」

「ウソをつくな! そんな目立つコスチューム着てる時点で、ヴォ―ト社専属のヒーローなんだろ!」

 と、男と言い合いになるミラーガールは、次第に激しくなるジャッジ・ザ・デーモンと少女の格闘を見過ごせなくなり、手首に装着しているコンパクトを擦って魔法を使用した。

「二人とも! 一旦闘うのはやめましょう」

「!?」「ッ!」

 ミラーガールが使用した魔法陣は、それぞれ少女の振り上げた拳とジャッジ・ザ・デーモンの蹴りを空中で固定して一時的に動けなくさせた。

「な、なんだ? この技は……」「す、スゲエ……!」

 ミラーガールが使った魔法を前に、男たちは思わず凝視する。

 そしてミラーガールは魔法を消して、ジャッジ・ザ・デーモンと少女の拘束を解く。

 唖然とする少女とジャッジ・ザ・デーモンを視認して、改めてミラーガールは周りの三人に言い渡す。

「私達は敵ではないし、争いも好まない。どうか話だけでも許してくれないかしら?」

 このミラーガールの冷静沈着な対応を前に、二人の男は話し始める。

「な、なあ、ビリー。この二人、見た目はアレだけど、どうやらヴォ―ト社とは関係なさそうに感じるんだけど……」

「そ、そうだな。とりあえず、この二人の事をスーザンとグレイスに報告しよう」

 こうしてミラーガールの起点により、衝突は収まったのであった。

 

 

[悪徳企業に飼われるヒーローの存在]

 

 ジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールは、三人に建物の奥の小部屋へと案内され、そこで座らされた。

「今確認したんだが……スーザン達によれば、この二人の様なヒーローはヴォ―ト社には不在してないみたいだ」

「さっきから言っている、そのヴォ―ト社とは何なのだ?」

 小部屋に入って来た男にジャッジ・ザ・デーモンが問い掛けると、男を含めた三人はジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールを凝視する。

「ジャッジ・ザ・デーモン、まずは私達から名乗るのが道理でしょ」

 ミラーガールはまずは自分達が自己紹介するべきだとジャッジ・ザ・デーモンに述べてから、自分とジャッジ・ザ・デーモンについて話した。

「は、初めまして。私はミラーガール、こっちはジャッジ・ザ・デーモン。私達は、ある人物を追って、その……信じられないかもしれないけど、別世界から来たんです」

「は? 別世界だあ?」

 ミラーガールの発言に男は厳つい顔を浮かべる。

「信じられないのは解かる、だが事実だ。俺たちはMrフェイクと名乗る犯罪者を追って、この世界にやって来た」

「「Mrフェイク!?」」

 ジャッジ・ザ・デーモンが述べると、男二人はMrフェイクの名を聞いた途端に顔色を一変させた。

「……Mrフェイクを知っているのか?」

 ジャッジ・ザ・デーモンが問うと、男二人は顔を見合わせて話し始めた。

「な、なあビリー、この二人の言っている事が正しいのなら……」

「ああ、正体不明のMrフェイクについても、あらかた説明がつく」

 そんな話をする二人に、ジャッジ・ザ・デーモンが訊ねる。

「俺たちの事は話した、今度は其方が話してもらいたいのだが」

 このジャッジ・ザ・デーモンの問い掛けに、一人の気弱そうな男が名乗り始めた。

「お、俺はヒューイ、ヒューイ・キャンベル。こっちはビリー・ブッチャー」

「よろしく」

「それでさっき、君と闘っていた少女がキミコ・ミヤシロだ」

「あら、私も日本人なのよ」

 自己紹介したビリーに続き、厳つい顔で挨拶するビリー、そして紹介があったキミコの名を聞いてミラーガールが反応する。

「あんた達はMrフェイクについて何か知ってるのか?」

 ジャッジ・ザ・デーモンが再び問うと、ヒューイとビリーも再び顔を見合わせてから答えた。

「あ、ああ、アイツは突然この世界の表舞台に出たんだが……いや、その前にこの世界の現状について話しておくよ」

 するとヒューイは悲愴な面持ちで語り始めた。この国、この世界の腐敗し切った現状を。

 

 アメリカ軍と裏取引もしている腐敗した悪徳企業ヴォ―ト・インターナショナル社。実はこの企業はナチスの科学者だったフレデリック・ヴォ―トが設立していた。

 ヴォ―ト社は自社が開発したコンパウンドVという強化薬で、投与すれば様々な超能力を得られるというものだった。

 ヴォ―ト社はこのコンパウンドVを胎児から幼児期の段階で投与した上で様々な超能力を得た人口のヒーローを生み出した。

 コンパウンドVによって生み出されたヒーロー達は、表向きは健全な英雄として称賛されているが、その本心は実に外道でサイコパスな面を持っており、そんなヒーロー達の行動で多くの罪なき一般人が苦しんでいるという。

 だが、ヴォ―ト社の圧力や隠ぺい工作によって、ヒーロー達の不祥事はもみ消され、被害者親族は泣き寝入りするしかないのだという。

 そんな中、CIAのグレイス・マロリーが創設した組織「ザ・ボーイズ」が設立され、ヴォ―ト社の下で活動してるヒーロー達に反旗を起こしている。

 グレイスと同じCIAのスーザン・レイナーは昔の同僚であるビリー・ブッチャーをザ・ボーイズに引き入れ、続けてヒーローの行動で恋人を亡くしたヒューイ・キャンベルも加わり、更に過去にヴォ―ト社のコンパウンドVを投与された事で超人的能力を得たキミコ・ミヤシロも加わったのだという。

 

「……酷い話ね、ヒーローを人工的に生み出した上に、それで私腹を肥しているなんて」

「確かに外道なヒーローも許せないが、諸悪の根源は強化薬で強引に超人を生み出しているヴォ―ト社じゃないか」

 話を聞いて、ミラーガールとジャッジ・ザ・デーモンは下を俯いて嘆いてしまう。

「大企業が会社の権威を強めるために軍との契約を推し進め、障害となる政治家や要人を排除・暗殺・恐喝するなどして、民間人を力で支配している現状が今まで続いていたんだ」

「? 今まで?」

 ヒューイの説明を聞いて、ジャッジ・ザ・デーモンが首を傾げる。

「そう言えば、あなた達はMrフェイクを知っているみたいだけど……まさか彼もヴォ―ト社に関わっているんじゃないでしょうね?」

 ミラーガールが問い掛けると、ヒューイとビリーそしてキミコは顔を見合わせる。

 そして意を決するかのように語った。

「……ああ、Mrフェイクは突然表舞台に出てきたよ。ジャクソン・グレイシスがヴォ―ト社の筆頭株主になったのを皮切りに」

「「!? ジャクソン・グレイシス!?」」

 ヒューイが口にしたジャクソン・グレイシスの名に、ジャッジ・ザ・デーモンもミラーガールも愕然とした。

 

 そしてザ・ボーイズの二人は語り始めた。

 ジャクソン・グレイシス、そしてMrフェイクの暗躍について。

 

 

[ヒーローのMrフェイク]

 

 ある日のこと、ヴォ―ト社のVIPしか使用できない豪邸にてパーティーが開かれた。

「えーー、本日は……我がヴォ―ト社の新筆頭株主になられたジャクソン・グレイシス氏主催のパーティーによく来てくれた! ヒーロー達よ、今日だけは心行くまで飲み明かしてくれ!」

 ヴォ―ト社のCEOスタン・エドガーに紹介された新たな筆頭株主のジャクソン・グレイシスは、目の前に集まったヴォ―ト社専属のヒーロー達を前に明るい顔でお辞儀をする。

 そして乾杯の後に、ヒーロー達もジャクソン・グレイシスが用意した酒や飲み物などに手を付け、思う存分楽しんでた。

 だが、これがジャクソン・グレイシスの企みだと誰もが予想してはいなかった。

 

 後日、アメリカのあらゆる都市や街中で、警察官達が一斉に抗議デモの行進を始めた。

 内容は「ヒーロー達によって仕事が荒らされる」といった内容だった。

 この警察官達の抗議デモは、あっという間に国中に拡散していき、大きな社会問題となった。

 抗議デモを制圧しようと、ヴォ―ト社は行動に移そうとしたが、その直前でヴォ―ト社に衝撃が走った。

 なんと今までヴォ―ト社がもみ消していたヒーロー達の不祥事や犯罪行為が何処からか露見し、更にヴォ―ト社がそれらを揉み消していた事が明るみになる。

 遂にヴォ―ト社は追い詰められるが、ヒーロー達はそんな抗議デモを自分達の力で制圧しようとデモを行う警察官達を襲うのだが、此処で更に衝撃の展開が。

 なんと強化薬コンパウンドVを投与されて、超人的な力を得ていたヒーロー達の特殊能力が消えており、警察官達を襲撃したヒーロー達は瞬く間に取り押さえられ、拘束されてしまう。

 この事態に急ぎヴォ―ト社は調査した結果、なんとジャクソン・グレイシス開催のパーティーで出された飲み物の中にコンパウンドVの効果を消滅させる薬が入っており、それを飲んだヒーロー達は超能力を失ってしまう結果となってたのだ。

 更にヴォ―ト社が裏でコンパウンドVを投与してヒーローを人工的に生み出し、会社利益の為に使っていた事。そしてそのコンパウンドVを軍隊やテロリストに売り渡していた事もジャクソン・グレイシスが故意に流出させて白日の下に晒したのだ。

 ヴォ―ト社は早速、ジャクソン・グレイシスを連邦警察に圧力をかけて指名手配にしてもらうのだが、既にジャクソン・グレイシスは影も形も消しており、同時にヴォ―ト社の株も一円の価値もない紙切れ同然にされてしまう。

 

 そんな混乱の中、未だに悪逆非道の限りを尽くそうとするヒーロー達が民衆を相手に猛威を振るう中、そんなヒーロー達の前に現れた一人の人物の登場で更に事態は変化する。

「ハァーーイ、みんな! 外道な殺人鬼共は、このボクが倒して警察に引き渡しちゃうね!」

 マスクを付けた笑顔の、赤い目立つスーツを纏ったシルクハットの男の登場に、悪行を働くヒーロー達も、そんなヒーロー達に苦しめられる民衆も注目する。

「お前は誰だ?」

 悪行を働くホームランダーが問い掛けると、エアライドに乗って宙を飛行する男は明言した。

「ボクの名はMrフェイク! 君たち、罪なき民衆を苦しめる鬼畜ヒーロー共を叩きのめす、正真正銘のヒーローさっ!」

「Mrフェイクだあ?」

 目の前に現れた意味不明な言動を口にするMrフェイクの登場に、ホームランダーは眉を吊り上げる。

「フフフ、キミが旅客機を破壊したり気に入らない人間は次々に殺しちゃったりしてる残念なヒーローのホームランダーだね。でも、そんな横暴も今日までさ! このボク、Mrフェイクが君の様な外道なヒーローを一人残らず倒しちゃうんだから!」

「……どうやらお前……死にたい様だな」

 Mrフェイクの発言に不愉快極まったホームランダーは、Mrフェイクに向かって目からレーザービームを放った。

 だが、Mrフェイクが搭乗してるエアライドはホームランダーのレーザーをバリアーではね返し、全くの無傷。

 ホームランダーは一瞬驚いたが、すぐに飛び上がってMrフェイクを直接撲殺しようと襲い掛かる。

 が、Mrフェイクはホームランダーが目前まで迫った瞬間を狙って、エアライドから鋼鉄製の網を発射してホームランダーを捕獲、更に網には強力な電撃が仕掛けられており、前々から謎の薬で能力が弱体化していたホームランダーは忽ち痺れて気絶してしまった。

 黒焦げになって気絶したホームランダーを目の前に、そんなホームランダーに威圧されてた他のヒーロー達がホームランダーに代わって名声を得ようとMrフェイクを襲撃するが、Mrフェイクは自製の装置やトラップでヒーロー達を次々に気絶させて倒していく。

 そんなMrフェイクの活躍を目の当たりにした民衆は、今までホームランダーの様な外道ヒーロー達の洗脳が解けた様に、一瞬でMrフェイクを称え絶賛した。

 一方のMrフェイクは一般人からの拍手喝さいを浴びて、大手を振って人々にウインクなどのサービスを返してた。

 後にMrフェイクを世論は「ホームランダーの様な外道偽物ヒーロー達を完膚なきまでに叩きのめした正真正銘の英雄」と報じ、Mrフェイクは名実ともにヒーローへと祭り上げられた。

 

 その後、ホームランダーの様な外道なヒーローたちは刑務所に投獄されるか、またはヴォ―ト社の精神科病棟セージグローブ・センターに強制的に収容される。

 一方のホームランダーたち人工のヒーローを生み出していたヴォ―ト・インターナショナル社は、ヒーロー達の悪事が露見しただけでなく、ヴォ―ト社がナチスの科学者によって設立された企業だった事も明白となり、更にジャクソン・グレイシスによって株が無価値に至った経緯などから経営不振となり倒産。

 ヴォ―ト社と内密な関係を築いていた軍は手の平を返しヴォ―ト社に見切りをつけ、コンパウンドVに代わる戦力増強の手段をホームランダー達を倒したMrフェイクに依願する様に。

 軍に依願されたMrフェイクは、平和的にそして平等に、世界中の軍隊に自作の薬を格安で提供していった。

 その結果……

「上官、見てください! 我が国最強のミサイルが直撃しても、戦車には傷一つ付きません!」

「これは凄い! Mrフェイクの薬品を塗っただけの戦車が、世界最強の戦車へと生まれ変わったぞ!」

 と、軍人達は大いに目を丸くして喜んだ。

 更にMrフェイクは世界中の砂漠や緑が減った大地に、自作の薬品を散布する事で緑溢れる大地へと変える偉業まで成し遂げた。

「これは凄い……! Mrフェイクの薬で、砂漠が一瞬にして緑の楽園に生まれ変わったぞ!」

 多くの学者達が目を見張る中、Mrフェイクは更に自作の薬品を世界に売り捌いた。

「これは人間の寿命を延ばす、いわば長寿の薬。これを多くの人生の大先輩であるご老人方に格安で売りましょう!」

「Mrフェイクの長寿の薬、どんなに大金がかかろうと絶対手に入れてやるぞ」

 テレビコマーシャルでMrフェイクが紹介した長寿の薬を知って、世界中の裕福な高齢者達は挙ってMrフェイクの薬を買い求める様に。

 

 ホームランダーたち外道なヒーローを倒した上、世界中に自作の薬を提供して巨万の富を得ていったMrフェイクは、更に名声をも手に入れていく。

 彼が脚本・演出を手掛けた映画や舞台が大ヒット、Mrフェイクの人形などのオモチャやグッズも大量販売される。

「ボクはMrフェ~イク、世界こそ欺瞞に満ちている~~♪」

 Mrフェイク本人が手掛けたキャラソング「世界は欺瞞に満ちている」も意外な歌唱力でバカ売れした。

 

 これ以降、Mrフェイクは世界各地何処に行っても大歓迎される護衛付きの大スターへと成り上がったのであった。

 

 

 

[ヒーローに飽きちゃった]

 

 以上、ジャクソン・グレイシスがヴォ―ト・インターナショナル社の筆頭株主になった直後から、Mrフェイクが世界中から英雄視されている現状を包み隠さずジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールに打ち明けた「ボーイズ」の面々。

 ジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールは話を聞いて、愕然とするばかりだった。

「……なんてこった。Mrフェイクめ、偽善の英雄とその英雄達を生み出した企業を一掃して、自分が新たなヒーローに成り上がったという訳か」

「ああ、おそらくヴォ―ト・インターナショナル社の株を買い占めたジャクソン・グレイシスとMrフェイクは裏で繋がっているんだろう。二人の協力が無ければ、ホームランダー達はもちろんヴォ―ト社も破滅に追い込まれなかっただろうから」

 複雑な心境で語るヒューイに、ジャッジ・ザ・デーモンが衝撃の事実を打ち明ける。

「お前達は何も知らないみたいだが………………Mrフェイクとジャクソン・グレイシスは同一人物だぞ」

「「ッ!?」」「!」

 ジャッジ・ザ・デーモンが明かした事実を聞いて、ヒューイとビリーそしてキミコは驚愕した。

 すると其処に、一人の女性がやって来て驚いた顔でジャッジ・ザ・デーモンに問い詰める。

「今までの話は本当なの? ジャクソン・グレイシスとMrフェイクが同一人物って……!」

「? アンタは誰だ?」

 ジャッジ・ザ・デーモンが問い返すと、ビリーが代わって答えた。

「コイツは俺のCIA時代の同僚で、今はその副長官をしているスーザンだ」

「スーザン・レイナーよ。初めまして、ジャッジ・ザ・デーモン、そしてミラーガール」

 ビリーの紹介に名乗ったスーザンは手を差し伸べ、ジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールと握手を交わす。

「それで、本当なの? Mrフェイクやあなた達が別の世界から来た一件と、Mrフェイクとジャクソン・グレイシスが同一人物なのは……」

 神妙な面持ちで訊ねるスーザンに、ジャッジ・ザ・デーモンは真面目に返答した。

「ああ、俄かには信じがたいと思うが、俺とミラーガール同様Mrフェイクもこの世界とは別の世界の人間だ」

「……それで合点が付いたわ。Mrフェイクの正体を調べようとも、彼に関する情報が一切CIAに入ってこなかっただけでなくジャクソン・グレイシスという人物についても経歴や個人情報が全く掴めなかったのよね」

「更にMrフェイクは多重人格者だ。元の人格だったジャクソン・グレイシスという人格と異常性犯罪者であるMrフェイクという人格を今では使い分けている」

 スーザンの疑問に答えていくジャッジ・ザ・デーモンの話を聞き、ビリーが一驚する。

「おいおい、多重人格者って……マジでサイコパスじゃねえか!」

「しかもジャクソン・グレイシスは、俺たちの世界では元々はアメリカ軍の将軍でもあった」

「将軍だって!?」

 ビリーへ返答するジャッジ・ザ・デーモンの発言に、ヒューイも驚愕してしまう。

「俺達はMrフェイクを捕縛して、元居た世界に連行しなければならない。スーザン、あんた達CIAに元同僚であるビリーが在籍しているボーイズの面々にも協力してもらいたい」

「た、確かにあなた達の話が本当なら協力したいのは山々だけど……Mrフェイクは今現在は、世界中が認めたヒーローであり、アメリカ政府も重宝するほどの天才。オマケに今では世界各地を飛び回ると同時に腕利きの護衛も就けられているVIPなのよ。簡単に逮捕はできないわ」

 ジャッジ・ザ・デーモンからの要望にスーザンがMrフェイクの現状を説明しながら困惑すると、ジャッジ・ザ・デーモンも考え込んで語り出す。

「まあ、確かに。この世界に来てからのMrフェイクは法も罪も犯してない。故に、世間が認めたヒーローである以上、捕縛も困難という訳か……」

 考え込むジャッジ・ザ・デーモンに、ミラーガールが口を開いた。

「ねえ、Mrフェイクは今は何処で何してるの?」

 これにビリーが答える。

「確か、今夜は……ロサンゼルスのテレビ局で全米生中継の状態で出演する予定だって、テレビ欄に報じられてたぜ」

 

 一方その頃、ビリーの話に出てきたロサンゼルスのテレビ局の一室では。

「………………そろそろかな」

 陰鬱な顔で鏡と向き合うMrフェイクが、何やら呟いていた。

「もう薬も効果が無くなって来たし……何より、もう……」

 そんな鏡と向き合って独り言を呟くMrフェイクの楽屋のドアを叩く音が響くと次に呼び声が聞こえてきた。

「Mrフェイク! 番組が始まりますよ! 準備、お願いします!」

 番組スタッフの声に反応し、Mrフェイクはやや元気がなさそうな雰囲気で赤いタキシードの襟を正すと楽屋を出てスタジオに向かう。

 そしてスタジオでは、今まさにMrフェイクが出てくる瞬間を司会者や観客達が待ち侘びていた。

「さぁーーて! 本日のメインゲスト! 今や外道ヒーローだったホームランダーたちを完膚なきまでに痛め付け、世界を救った正真正銘のヒーロー……Mrフェイクのご登場だ!!」

 司会者が話し終わると同時に、客席の観客達は全員一斉に立ち上がり、歓喜に沸くと同時にMrフェイクの名を何度も呼び続けた。

『Mrフェイク! Mrフェイク! Mrフェイク! ……』

 そんな生中継の番組を、遠く離れたボーイズの拠点でヒューイやスーザン達と共にジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールも番組を注視する。

 そして遂に観客達の合唱に呼ばれて、Mrフェイクが舞台裏から姿を現した。

「キャーー、Fさまーーっ!」「Mrフェイク、ばんざーーい!」「世界の英雄!」

 Mrフェイクの登場に、観客達は各々に興奮し、中には興奮のあまり失神してしまう女性も多数続出していた。

 だが、そんな観客達の歓声を浴びながらも、Mrフェイクは何処か空しそうにスタジオに用意された自分の席へと着席する。

「いやぁ、いつもながら人気絶頂ですね、Mrフェイク! あのサイコパスヒーローのホームランダーたち外道ヴォ―ト社専属の人造超人とは違う違う!」

「はぁ……」

 捲し立てる司会者に反して、Mrフェイクには相変わらず覇気が感じられない。

「? どうしたのですか? 今日は元気が無さそうですが? 今夜は少しでも世間への悪評を払拭したいと、畜生ヒーロー達を生み出したヴォ―ト・インターナショナル社のトップ三人をゲストとして呼んでるんですよ」

 司会者が熱弁すると、カメラが三人の人物を映し出す。ヴォ―ト社のCEOだったスタン・エドガーに副社長だったマデリン・スティルウェル、そして広報担当だったアシュリー・バレットの三人だった。

 だが、この元ヴォ―ト社の重役三人が紹介された次の瞬間、スタジオの観客席からは大ブーイングが飛び交い、重役だった三人に対してバナナの皮や空き缶などの物を投げ付けるといった暴動が起こる寸前だった。

 スタジオの警備員が急いで逆上する観客達を抑えつつ、司会者がMrフェイクに話を振る。

「Mrフェイク、あなたは下種なホームランダーたちを倒しただけでなく、此処に居る悪名高い三名が重役を担ってたヴォ―ト社に代わって世界中の軍事力を増強する薬などを開発して平和に貢献してきましたが、今度はどんな功績を成し遂げるお積りですか?」

「……はあ~~……」

 司会者からの問い掛けに対しても、大きなため息で返事するMrフェイクのいつもと異なる様子に、スタジオは一瞬騒然とした。

「……Mrフェイク? 今日はホントにどうしたんですか?」

 司会者が番組を進行する為に質問すると、Mrフェイクは悲愴な面持ちを上げて話し始めた。

「いやね、ちょっと昔を思い出しただけだよ。そう、昔の事を……」

「? そ、そういえば……Mrフェイクの過去って、みんな知らないけど、どんな幼少期などを送ってこられたんですか?」

「……そうだね、この場を借りて、この機会に話そうかな。ボクはそう、アメリカ軍と深い関係を持っている軍人家系の名家で生まれ育って……」

 司会者の問われたのを切っ掛けに、Mrフェイクはスタジオの生中継の機会を借りて自分の幼少期からの思い出を語り始めた。

 

 Mrフェイク、彼は幼少期から名門軍人家系の名家で生まれたが、同時にその虐待紛いの軍教育で心身を比叡していた事を。

 そして幼いMrフェイクが最もトラウマとして抱えたのが、大好きなアメコミヒーローのグッズや本を押さない本人の前で焼却して処分され、彼の趣味を真っ向から全否定されたという悲しい幼少期。

 そんなMrフェイクの幼少期を聴かされ、観客席の人々は蒼然とする者もいれば、Mrフェイクに同情して涙を流す人々も視認できる。

「ウッ、ウゥ……」

 遂には自らも泣き出してしまうMrフェイク。そんな彼の肩を司会者が優しく叩いて励ましてあげる。

「辛かったでしょうね。確かに漫画やアニメ好きのオタクは偏見を持たれがちですが、だからといって幼い子のオモチャや好きな趣味を真っ向から全否定した挙句、それを本人の目の前で燃やしてしまうなんて……」

「ち、父や祖父は口を揃えて言ってました……「アニメや漫画のヒーローが世界を救うのではない、アメリカの軍人が世界を救うのだ」と。「軍人たるもの、漫画やアニメの様な低俗な趣味を持つんじゃない」とも何度も何度も怒鳴られました」

 涙ながらに語り明かすMrフェイクの話に、観客席の人々も貰い泣きするばかり。

「もう泣かないでください、Mrフェイク。あなたが苦しかったのは誰もが理解できます。あなたは、そんな逆境を乗り越えて世界を救った本当のヒーローへと成長できたんですね」

 司会者がMrフェイクを宥めながら番組を進行していくと、ここで泣いていたMrフェイクが突然立ち上がり無理やり笑顔を作って語り出した。

「まっ、ボクが言いたいのは……ヒーローと称賛される人間には、そのほとんどは陰鬱だったり凄惨な薄暗い過去があるって事だよ! あの一時ばかし世間から称賛されてたホームランダーだって、コンパウンドVを投与されて怪物にさせられた直後は精神病棟に隔離されて、余計にサイコパスに変えられたって言うからね! ねっ、元ヴォ―ト社の重役さん達♪」

「「「………………」」」

 Mrフェイクから指摘されて、スタジオ中の冷たい視線を一身に浴びるヴォ―ト社の元重役たちは険しい顔で黙り込む。

 元重役たちが黙り込む中、Mrフェイクの話は続く。

「まあ、ボクが最近思ってたのは、周りからヒーローヒーローと、あのホームランダー達と同じように称賛を浴びて昔の自分を思い出していただけじゃないんだよね」

「と、言いますと?」

「うん、実は……」

 司会者からの問い掛けに、Mrフェイクはハッキリと明言した。

「ヒーローって、もう飽きちゃった」

『!?』

 突然のMrフェイクの発言に、スタジオ中が唖然とした。

「あ、飽きたって……?」

 司会者が唖然としながら返すと、Mrフェイクは右手にコップを持って中のコーヒーをグイっと飲み干すとスタジオに呼ばれている元ヴォ―ト社の重役であるCEOだったスタン・エドガーに歩み寄りながら語り続ける。

「いやね、ヒーローと世間から称賛されるのも悪くなかったんだけど、どうもしっくり来なくてね。これじゃまるで……あなた達が飼い慣らしてたホームランダーみたいだなって」

「!?」

 突然話しかけられて困惑するスタン・エドガー。

 するとMrフェイクは空になった陶器製のコップを右手に持ちながら語り続ける。

「やっぱりボクはヒーローと称賛されるよりも、世間からアッと言われるほど正真正銘のヒーロー達を脅かせるような……異常者(ヒール)として活動する方が適役かなって」

「ひ、ヒール?」

 Mrフェイクの発言に困惑するばかりの司会者。

 するとMrフェイクは陶器製のコップを持ったまま言い放った。

「そう、例えば………………このコップで、スタン・エドガーの頸動脈を抉っちゃうみたいにね」

 次の瞬間、Mrフェイクは右手のコップを机に叩き付けて半分ほど壊すと、空いている左手でスタン・エドガーの襟を握り捕まえて、そのままコップの断面でスタン・エドガーの首筋の頸動脈を抉る様に切り裂いてエドガーを殺害してしまう。

「うぅ……!」

 頸動脈を切られたスタン・エドガーはそのまま床へと倒れ込み、絶命する。

『きゃあっ!』

 Mrフェイクの凶行を目の当たりにし、スタジオ内は騒然とした。

 すると現場に、元ヴォ―ト社の重役達が派遣した武装集団が雪崩れ込み、Mrフェイクを包囲する。

「う、動くな!」

 動揺しながらもMrフェイクに警告する隊長。だがMrフェイクは喜々と笑顔で言った。

「おやおや、ヴォ―ト社の重役だったクズ共はまだ自分達を警護してくれる人間を雇えたんだね。でも、そんなオモチャ同然の銃でボクを殺せるかい?」

 Mrフェイクの挑発を聞いて、唖然とする護衛達。

「い、いいから撃ち殺すのよ!」

 焦った元副社長だったマデリン・スティルウェルが護衛達にMrフェイクの射殺を命ずると、護衛達は引き金を引いた。

 が、Mrフェイクに向けていた銃口から吹き出したのは実弾ではなく色とりどりの造花だけだった。

「フフフ、だから言ったじゃないか。そんなオモチャじゃボクは殺せないって」

 前もって護衛達の装備している銃器を全て偽物にすり替えておいたMrフェイクは腹を抱えて笑い飛ばす。

「いいかい、本当に人を殺すってのはね……こうするんだよ」

 と、Mrフェイクは右手を頭上よりも高く揚げて指を鳴らした。

 すると次の瞬間、スタジオ内に謎の気体を噴出しながらMrフェイクを模したビニール製の巨大人形が飛び込んできて、スタジオ内に謎の気体が充満する。

 謎の気体が充満し、Mrフェイクが高らかに笑う中、その気体を吸ったマデリンに元広報担当であったアシュリー・バレットが苦しみ出し、目から血の涙を流しながらもがき苦しみながら絶命した。

 ハッと気体の正体が毒ガスだと気づいた司会者は口を塞いでガスを吸い込まない様にするが、既にガスはスタジオ内に充満しており、Mrフェイクを包囲していた護衛達も死に絶え、観客たちもドアから必死に脱出を試みようとするものの、ドアに生爪で引っかいた血の跡を残したまま絶命していた。

 そして司会者も、ずっと呼吸を我慢する事はできず、一瞬ばかりガスを吸い込んでしまったが為に、もがき苦しみながら血の涙を流して転げ回り、死んでしまう。

 そんな惨状をMrフェイクは笑いながら見渡して喚起する。

「ハハハッ、これだよこれ。この狂気こそ、このボクMrフェイクそのものだ!」

 一時はヒーローと称賛されながらも、本来の狂気に塗れた自分こそ本当の自分だと自覚したMrフェイク。

 

 この夜を境に、Mrフェイクの凶行は世界中を震え上がらせた。

 

 

 

[解放された偽善の英雄たち]

 

 Mrフェイクが自身のヒーロー活動を飽きた事で、テレビスタジオ内で凶行を働いてから数日後。

 テレビのニュースではMrフェイクの凶事はもちろん、世界中で頻発しているMrフェイク関連の事件が報道された。

「皆さん、いま世界は大変な事態に陥っています! Mrフェイクがロサンゼルスのテレビ局で大量殺人を行ってから数日が経過していますが、現在世界中ではMrフェイクが開発した薬によって大混乱が引き起こされています! Mrフェイクの強化薬を塗って強固になってた戦車は、今では使用前よりも脆く、壊れやすくなっており、更に錆が発生しやすいという欠点で各国の軍事力は弱体化! 緑の楽園に生まれ変わった大地は、以前よりも草木が枯れ果てた不毛の土地へと一変してしまいました。そして、Mrフェイクの薬を飲用した人々は体調を崩すなどの悪影響が目立っています。今や、Mrフェイク自作の薬品によって世界は大混乱に陥っています!」

 世界の混乱状況を実況するキャスターの報道を視聴し、ボーイズの拠点でテレビを観ていた面々が騒ぎ始める。

「おい! Mrフェイクの奴、スタジオ内で大量殺人をしただけでなく、自身が作った薬で世界中を混乱させてるぞ!」

 ボーイズの中心人物ビリーが問い詰める中、ジャッジ・ザ・デーモンが冷静に話し返す。

「ああ、Mrフェイクは遂に悪事を仕出かした。完全に法に触れた以上、奴を庇護する存在が無くなった今なら捕縛の機会はある筈だ」

 ジャッジ・ザ・デーモンが話し終えたところに、CIA副長官のスーザンが駆け込んできた。

「ジャッジ・ザ・デーモン、ミラーガール聞いて! Mrフェイクの凶行を止める為に、ホワイトハウスがホームランダーとブラック・ノワールの二人を一時的に釈放したわ」

「何だと!? 政府め、いくらMrフェイクが止められないからって、あのサイコパス野郎共に仕事させるとは終わってんな」

 スーザンが持ち込んだ一報を聞いて、ビリーは苛立ちが抑えられなかった。

「ちょ、ちょっと待って? 確か、ホームランダー達はMrフェイクの作った薬で強化薬の効果が切れて常人に戻っているのよね?」

 するとスーザンは険しい面持ちで答えた。

「それが……ヴォ―ト社が作っていたのよりは劣っているけど、軍が極秘裏に改良した新しいコンパウンドVを投与された事で、一時的とはいえスーパーパワーが戻っているみたいなの」

「なんだって! アイツらにパワーを戻したんじゃ、危険すぎるってのに……!」

 スーザンの話を聞いてヒューイが愕然とする。

 そんなスーザンにジャッジ・ザ・デーモンが問い掛けた。

「スーザン、それでMrフェイクの現在地は判っているのか?」

「いえ、でもホームランダー達が血眼になってMrフェイクを探していて、彼らの会話と現在地は念の為に首に装着している起爆首輪を通して傍受できる様になってるわ」

「起爆する首輪って……何だかアメリカも、ヴォ―ト社と変わりないわね」

 ジャッジ・ザ・デーモンの質問に答えるスーザンの返答を聞いたミラーガールは呆れてしまう。

 そしてスーザンからMrフェイクを探しているというホームランダー達の現在地と会話を傍受できる情報を聞いたジャッジ・ザ・デーモンは明言した。

「よし、それなら俺達もMrフェイクを追うぞ! ホームランダー達の事だ、一度とはいえ自分達のスーパーパワーや名声を奪ったMrフェイクを殺しかねないからな」

 そう言うと、ジャッジ・ザ・デーモンはミラーガールと共に行動に移す。

「行くぞ、ミラーガール!」「ええ!」

 するとミラーガールは、手首に装着してるコンパクトから現世界の鏡を通してMrフェイクの居場所を突き止める。

「居たわ、Mrフェイクよ!」「よし、頼んだミラーガール」「うん!」

 次にミラーガールは別地点へと移動できるミラーゲートを展開してMrフェイクの潜伏先へと移動する準備を整えた。

「す、スゲエ! 魔術とか魔法みたいじゃねえか!」

 ミラーガールが開いたミラーゲートを目の当たりにし、ビリーは目を見開いて驚愕する。

「いや、魔法みたいじゃなくて、実際にこれ魔法なのよね……」

 ミラーガールが語ると、それを聞いたビリーは更に驚く。

「おいおい、マジか! って、いうか魔法って本当にあるんだな」

「まあ、この世界ではどうか分からないけど、私達の世界では普通に魔法も科学も発達してるわよ」

「これは……本当に凄いわ」

 ミラーガールの返事を聞いて、スーザンも目を丸くしてミラーガールの魔法を凝視する。

 そんな皆が注目する中、ジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールはミラーゲートを通ってMrフェイクの潜伏先へと向かった。

 

 その頃、Mrフェイクはというと。

「フッ、フフフフフッ……♪ やっぱりボクはこうでなくっちゃ! 狂気と混乱、それを世界というキャンパスに描く犯罪という名の芸術家それがMrフェイクなのだ!」

 鼻歌を歌いながら、自分の手で世界中を混乱に陥れている現状を喜々と噛み締めていた。

「フフフ、何よりボクが作った薬は使い続けなければ効力は継続できないから、薬の効果が切れた途端に何もかも滅茶苦茶になっちゃうんだけどね」

 そう得意気に語るMrフェイク。

と、そんな感じに鼻歌を歌いながら夜の都市を眺めてるMrフェイクの目の前に、ミラーゲートが突如として開いて其処からジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールの二人が姿を現す。

「Mrフェイク! まさか別世界でも世界中を巻き込む大犯罪を犯すとはな」

「Mrフェイク! ちょっと今回は度が過ぎるわよ!」

 ミラーゲートから出るや否や、Mrフェイクに文句を言うジャッジ・ザ・デーモンとミラーガール。そんな二人を前に、Mrフェイクは喜々と笑顔で反論する。

「いやいや、今回はボクだって最初は普通に本当に真実のヒーロー活動を頑張ってたんだよ。ホームランダー達の様な下種な偽善者を生み出すヴォ―ト社を倒産に追い込み、偽善者ばかりのヒーロー達は全員刑務所か精神病棟に放り込んたんだからさ」

 更にMrフェイクは二人を前に弁明を続ける。

「でもね……次第に、本当のボクってこんなんで良いのかなって思い始めちゃって。ボクは本来、ヒーローやヒロイン達に試練や逆境を与える悪役としての異常者(ヒール)が従来の姿なんじゃないかってね。それで初志貫徹、本来の異常者(ヒール)に戻ったって事さ」

「ホントに呆れるわね……」「まったくだ」

 Mrフェイクの弁明を聞いて、ミラーガールもジャッジ・ザ・デーモンも途方に暮れて呆れ返ってしまう。

 と、その時だった。

「Mrフェイク……!」

 なんとその場に、上空からホームランダーが舞い降りて登場し、同時に俊敏な動きで駆け付けるブラック・ノワールの二人が現れた。

「ッ! (こんな時に……!)」

 ジャッジ・ザ・デーモンは、Mrフェイクを恨んでいるであろうホームランダーの登場に事態が悪化するのを恐れていた。

「? 誰だ、この二人は? 見た事もないヒーローだが……」

 と、ホームランダーは初見であるジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールに顔を向ける。

「ホームランダー、色々とMrフェイクに思う所はあると思うが……こいつは俺達の世界から、この世界へとやって来た犯罪者。身柄を引き渡してくれないか?」

「別世界だと!?」

 ホームランダーは俄かには信じられないといった表情を浮かべる。

 そんなホームランダーは、表情を戻すと険しい顔付きでジャッジ・ザ・デーモンに告げた。

「……まあ、Mrフェイクやお前らが何処から来たのかなんて関係ない。俺達は俺達で、Mrフェイクに色々とお返しやお礼をしなきゃ、気が済まないんだ。邪魔するなら、Mrフェイク共々お前ら二人も殺すぞ……!」

 ドスの効いた脅し文句で捲し立てるホームランダーを前に、ジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールは警戒する。

 と、そんなホームランダーとのやり取りを前に傍観していたMrフェイクは、ニヤニヤと笑顔を浮かべて言い放った。

「まっ、此処は頭のイカれたサイコパスヒーローモドキの相手はジャッジ・ザ・デーモン達に任せますか! ボクは一足先に別世界に逃げちゃうからね! そもそも、もうこんな世界に興味の欠片もないしね!」

 そう言うと、Mrフェイクは現場に自機であるエアライドを呼び出して、内部に組み込んでいるミラーゲート・リングの力で別世界へと移動できる出入口を開いて、自分だけ別世界へと逃げ去ってしまう。

「待て! Mrフェイク!」

 ジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールが追おうとするが、Mrフェイクは一足先に別世界へと逃げ果せてしまう。

 すると、その様子を目撃したホームランダーは怒りの矛先を失って爆発寸前に。

「ッッッ……! アイツのせいで俺達の地位や名声は丸つぶれだというのに……!! お前らが……! お前らが、あのMrフェイクを捕えておかないのがいけないんだッ!!」

 怒り狂ったホームランダーは目から赤いレーザー光線を発射して攻撃してきた。

 が、ホームランダーのレーザーを、ミラーガールがミラー・シールドで間髪入れず防いではね返す。するとはね返されたレーザーはホームランダーの眼球に直撃して、彼の眼球を焼き潰してしまう。

「ぐぎゃあああっ!」眼球が焼かれて悶絶し、絶叫するホームランダー。

 すると今度はホームランダーと同行していたブラック・ノワールが、ジャッジ・ザ・デーモンに襲い掛かって来た。

「フッ、肉弾戦で俺に敵うと思うなよ。このバットマンモドキが」

 ジャッジ・ザ・デーモンは瞬時にブラック・ノワールの攻撃をかわすと、彼の頭部を掴んで自身の膝に激しく叩き付ける必殺の「ヤシの実砕き」をブラック・ノワールに喰らわして激痛を与えて悶絶させる。

 

 と、ホームランダーが眼球を焼かれ、ブラック・ノワールが頭を抱えて悶絶していた時だった。

「動くな!」「ヒーロー共は一人残らず取り押さえる!」

 アメリカの特殊部隊が現場に雪崩れ込んで、ホームランダーやブラック・ノワールたち以外にもジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールをも拘束しようと迫る。

「此処は撤退するわよ、ジャッジ・ザ・デーモン!」「ああ」

 ミラーガールは即、ミラーゲートを開いてジャッジ・ザ・デーモン共々その場から立ち去って姿を晦ます。

 一方で、ホームランダーとブラック・ノワールは特殊部隊に痛め付けられた上で完全に取り押さえられてしまった。

「くそ……クソーーーーッ!!」

 ホームランダーは様々な激情で叫ぶが、それも特殊部隊の騒音でかき消されてしまうのだった。

 

 

 

[英雄の居ない世界]

 

 ホームランダーとブラック・ノワールが取り押さえた報告を受け取ったホワイトハウスでは。

「……やっと、あのサイコパスな英雄もどき達を合法的に全員、収容施設に押し込めるな」

「はい、大統領補佐官。後ろ盾であるヴォ―ト社も、その主要人物達も全員この世から消えた事で、サイコパスな能力者達を護る輩も壁も不在の状況ですからね」

 ホワイトハウス内の一室で話し合う要人達は、それからも話を続ける。

「本当に真の英雄というのが居るのであるのなら、それは世界の警察である我々アメリカだという事実を世論に認めさせなければならない」

「その通りです、大統領補佐官」

 

 それからアメリカ政府は、政府の特殊部隊がMrフェイクを射殺し、同時に収容施設から逃亡したという名目でホームランダーとブラック・ノワールを拘束したと報道。

 ヴォ―ト社が人工的に超人を生み出し、様々な犯罪に手を染めていた事実を一部歪曲して、全ての責任をヴォ―ト社やホームランダーたちヒーローに科した事で世論を落ち着かせた。

 

 そして世間にヒーローが不在となり、世論も落ち着いた頃。ジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールはこの世界から去り、Mrフェイク追跡に戻る事に。

「すまなかった、ほとんど何もできなくて」

「いや、良いんだ。むしろ、皮肉だけどMrフェイクのお陰でヴォ―ト社もヒーロー達も世間から一掃できた」

 互いに熱い握手を交わして別れの挨拶をし合うジャッジ・ザ・デーモンとヒューイ・キャンベル。

「この世界のヒーロー達は最悪だったけど、誰もが勇気というスーパーパワーで本当のヒーローになれるという事だけは胸に留めておいて」

「ああ、留めておくよ。ミラーガール」

 ミラーガールからの力説に、ビリー・ブッチャーもキミコ・ミヤシロも頷く。

「もう行ってしまうのね……まあ、元々この世界の住人ではないけど」

「スーザン、Mrフェイクを止めなければ更に混乱が起きる。早々に奴を追って、捕まえなければ」

 スーザン・レイヤーに返事するジャッジ・ザ・デーモン。

「ところで……ホームランダー達、ヴォ―ト社専属のヒーロー達はどうなるんだ?」

 ジャッジ・ザ・デーモンが質問すると、スーザンがそれに答える。

「ホームランダーも他のヒーロー達のほとんどは、強化薬であるコンパウンドVの副作用で精神に異常が見られて、今では政府管轄の精神科病棟に収容されているわ」

「そう………………やっぱり、ホームランダーも多くのヒーロー達も、その強化薬で人生が狂わされた被害者なのね」

 スーザンの説明を聞いて、ミラーガールがしんみりする。

 

 そうしてジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールはこの「ザ・ボーイズ」の世界から立ち去ろうとする。

「それじゃ、俺達はこれで」「さようなら」

「ああ、さようなら」

 別れを告げるジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールに、ヒューイが返事するとジャッジ・ザ・デーモンが彼に言い残した。

「ヒューイ、そしてボーイズのメンバーに言っておきたい」

『?』

「確かに時には英雄的存在も必要なのが世情というものだろう。だが、本当に平和というのはヒーローという存在ではなく、人が人を護れる世界や社会こそが素晴らしい理想郷なのだと俺は思うぞ」

 このジャッジ・ザ・デーモンの発言に、誰もが衝撃を受ける。

 そんな中、ジャッジ・ザ・デーモンとミラーガールは自分達が持つ二つの指輪が指し示す別世界へと向かうのだった。

「ヒーローではなく、人が人を護れる世界こそ、本当に素晴らしい……か」

 ヒューイ・キャンベルは、ジャッジ・ザ・デーモンが言い残した台詞に感銘を受けて固まっていた。

 後にこのジャッジ・ザ・デーモンの台詞を受け止めたヒューイ・キャンベルが大統領にまで出世するのは別のお話。

 

 

 

 一方、その頃。

 アメリカ政府管轄の元ヒーローであるコンパウンドV投薬者専用の精神科病棟では。

「コカインを……! なんでもいい! 麻薬をくれーーっ!」

「SNSがしたいの……! スマホを触らせてっ!」

「パワーがほしい……コンパウンドVをくれッ!」

 精神科病棟に収容されている多くのヒーロー達は、精神に異常を来たして隔離されていた。

 そんな中、ある強固な鋼鉄製の一室では一人、腰を下ろして寡黙に過ごすホームランダーの姿があった。

 生まれながらにコンパウンドVを投与され、ヴォ―ト社に自分の人生を好き勝手にされたホームランダーは何を思い、そして沈黙を貫いているのであろうか。

 

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