火拳は眠らない   作:生まれ変わった人

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能力説明

「エースさん!! もうちょっと周りの目も考えてくださいよ!!」

「悪かったって……周りにはバレてねえだろ…?」

「誤魔化すのにどれだけ神経使ったとおもってるんですかーーー!!」

 

案の定、鈴仙から説教を喰らっちまった…

 

まあ、流石に久々のノリでやっちまったおれにも非はあるけど……問題は…

 

「頼みますエース様!! どうか行かないでください~!!」

 

おれの腰に凪がひっついてる。

 

どうしてこうなったかというと、火事が起きた五時間前に遡る。

 

 

〜五時間前〜

 

おれは凪とボウズを救出し、外に出てみると、なんだか静かだな…

 

でも、んなことよりも凪とボウズの手当てだろうが。

 

何もしない村人たちに内心毒づきながらとりあえず聞いておこう。

 

「よう。ここに医者はいねえか?」

『『『腕が燃えとるーーーーーーーー!!!!』』』

 

いや、そんなに騒ぐ前に医者呼べよ。

 

とりあえずおれは辺りを見回して…っと一番前に出てるのが母親っぽいな。

 

「ほれ、ボウズなら煙の吸い過ぎなだけだ。すぐに手当てしてやんな」

「あ……ありがとうございます…それよりも…燃えてる…」

「ん? ああ…宿ならまだ燃えてるけどいずれ消えるだろ」

『『『いや、オメーが燃えてんだよ!!』』』

「ていうか医者呼んでやんな。早くしねえと手遅れになっちまうぞ?」

『『『もっと重傷な奴がいんだろ!!』』』

「何っ!? まだ中に誰かいんのか!?」

『『『オメーの話だよ!!』』』

 

なんだこの村の奴等は!? 村ぐるみでコント集団やってんのか?

 

んなことよりも…!

 

「真桜ー! 沙和ー!」

 

何故かあいつらもおれを見て動かねえから呼ぶ。

 

おれはそこに向かって…

 

「チェストーーー!!」

 

向かっていったけど、鈴仙が人ごみ押しのけておれに水をぶっかけてきた。

 

「ぶわ!?」

 

いや!…何してんだコイツ!?

 

「鈴仙! お前何を…!!」

「エースさん大丈夫ですか!?(棒)」

「大丈夫って…何が?」

「大変! 腕火傷してますよー!(棒)」

「おい…うお!?」

 

そのまま鈴仙に腕を取られて連れてかれた。

 

その時は凪を落とさないことも忘れない。

 

勿論、途中で呆けてた真桜と沙和も捕まえて…

 

 

 

そんでおれ達は今、一旦街から外れたわけだけど…

 

「まったく……少しは自覚持ってなきゃだめだよ…」

「いや~…ついいつものようにやっちまった」

「笑うとこじゃないよ…」

 

溜息を吐く鈴仙に少し悪いと思った。

 

「まあ、凪が無事で良かった。それで良いじゃねえか」

「……エースさんが嫌われるんだよ…?」

 

鈴仙は浮かない表情でおれの腕に包帯を巻く。

 

これはおれが火傷したというカモフラージュだけどな。

 

「んな顔すんなって。おれは嫌われるのに慣れてる。お前には迷惑かけねーよ」

 

安心させるために鈴仙の頭を撫でてやるけど、それでも表情が晴れない。

 

それどころか泣きそうになる。

 

「……ふえ…」

 

包帯を結ぶ手が震えるのが伝わってくる。

 

参ったな…ルフィみてえな単純な奴なら扱いも慣れてんだけどよ…こいつみてえなのはどうしたらいいんだ?

 

「あの〜…お二人さん?」

 

そんな様子を見ていた真桜が遠慮がちに尋ねてきた。

 

「とりあえず…色々教えてほしいの…」

 

沙和も同じく遠慮がちに聞いてくるけど正直、この二人…三人になら教えても問題は無いと思う。

 

それにこの雰囲気もなんとかしてえしな。

 

「その話なら凪が起きてからでいいだろ。あいつはおれの能力を見たしな」

 

鈴仙以外の二人は首を傾げる。

 

そんな所へもう一人の声が響く。

 

「それなら心配には及びません」

「「凪!」」

 

すぐ傍で寝かせられていた凪が目を覚ましていた。

 

「凪ちゃん。大丈夫?」

「意外と早く起きたな。気分はどうだ?」

「大丈夫です。エース様が私を助けて下さったおかげです」

 

穏やかに応える凪に対してエースはいつもの通りに切り出す。

 

「何か聞きてえってツラしてるぜ? 今なら答えてやる」

 

すると、凪の穏やかな表情が引き締まる。

 

「そうですね…私は知りたいです。あなたが炎となって私を助けたこと、炎の壁を造って爆発を防いだこと、指先から炎を飛ばしたことについて、です」

「「え? え?」」

 

凪の質問に真桜と沙和は頭に?を浮かべる。

 

鈴仙が何か言おうとするが、エースによって御される。

 

そして、エースは手を凪達に向けて…

 

「これが答えだ」

 

一言告げて自分の腕を燃やす。

 

「な!?」

「うわ!!」

「ふえー!?」

 

凪、真桜、沙和は大層驚く。

 

そんな彼女達のために色々話した。

 

自分は元はただの人間であり、海賊だったこと、悪魔の実を食べたこと、悪魔の実を食べて自分は炎人間になったこと、そんな悪魔の実が世界中にあることなど……

 

全てが逸脱した話に彼女達はなんともいえない表情だった。

 

主に、驚愕が大半を占めていた。

 

それもエースは予想できてはいたが…

 

「…なんや…エラい話やな…」

「本当にそんなことあるんだー…」

 

真桜と沙和は唖然とするが、凪はそのまま思案顔か…当然っちゃあ当然だな。

 

いくらこいつらでも鈴仙のように思うわけねーか…

 

「まあ、そんなおれが怖いならおれと別れる…どうするにせよお前等の自由だ」

 

突き放す様だが、ここははっきりさせた方がいい。

 

仲間のままでいきたいなら禍根なんて残しちゃいけねえのさ。

 

おれがそう言うと、凪達はしばらく考え込み…

 

「エースさんは……無闇に人を襲ったことが…?」

 

真剣な表情で凪が聞いてくる。

 

こういう時は正直に答えるのが一番だな。

 

「少なくともおれは男だ。男として生まれたからには弱い奴から奪ったり、力に屈する様になるつもりはねえ」

 

これがおれの本心。

 

力でねじふせられ、ほどこしで生かされるなら死んだ方がマシ。そもそも弱い奴を支配するなんざハナから興味がねえ。

 

おれは自由に生きるだけだ。

 

「……その言葉に嘘偽りは?」

「この背中のドクロに誓って」

「……」

 

おれの答えを聞いた凪はしばらくおれに鋭い視線を浴びせ…

 

「………ふぅ…」

 

フッと表情を戻した。

 

「それを聞いて安心しました」

「そんな簡単に信じていいのか?」

「はい。今のあなたの目は嘘をついてるとは思いません。それに…」

「?」

 

なんだ? 急に凪の目が輝いたんだけど…

 

そう思っていると、凪が急におれの手を握ってきた。

 

「私は確信しました! 私と子供を助ける慈愛の心! そして天界の術! やはりあなたは天の御遣いなんだと!」

 

凪がおれの手を握って力説する。

 

「おおう凪ぃ。いつもより積極的やな」

「大っ胆」

 

すっかりいつも通りの真桜と沙和のちょっかいに珍しく凪は引っ掛からない。

 

「む…」

 

鈴仙の目つきが鋭くなったのに気付かないまま、ひっつく凪を引きはがそうとする。

 

「おいこら! 分かったから離せ! 真桜と凪も手伝え!」

「いいんやないの〜? 凪は嬉しそうやでぇ?」

「女の子が甘えてくる時は受け止めてあげるのー」

「おもしろがってんじゃねえテメー等!!」

 

こんな凪が珍しいのか二人は凪を見ておもしろがってやがる。

 

「…く〜…(わた、私だってそんな思いっきり握ったことないのに…!)」

 

鈴仙が涙目で頬を膨らませて睨んでくる。

 

垂れていた付けウサ耳もピンと張っている…ていうか本当にアクセサリーか? それ…

 

恐くはないけど、別の意味で厄介だった。

 

「お願いします! このまま是非、私を強くしてください! あなたの全てを私に教えてください!」

「ああ、それなら問題ねえぞ?」

「(ブチッ)」

 

この時、何かがキレる音がしたのは聞き違いじゃないだろう。

 

「エースさん! そんな簡単に安請け合いして、わたしはどうなるの!」

「お前にも教えるって。そう怒るなよ」

「怒ってない! 大体エースさんは…!」

「エース様! 何卒よろしくお願いします!」

 

こうして時間が過ぎ、今に至る訳だ。

 

そして、話は急転直下を迎え…

 

「こうなったら、どちらがエースさんに相応しいか勝負しましょう」

「臨むところです」

 

鈴仙と凪が拳を握って戦闘体制に入る。

 

「なんでこうなった?」

 

二人の奇行に頭を悩ませていると、真桜と沙和がニヤニヤして近付いてきた。

 

「それだけ愛されとるっちゅうことや」

「憎いね〜。この〜♪」

「へっ、それでも限度がある。あいつらはがっつきすぎだ。修業に順番もねえだろ…」

 

せめて仲良くしてもらいたいんだが…

 

「いや、そういうことだけじゃあらへんよ」

「そうだな……あいつらの闘い方は同じだからな……ライバル意識があるのも分かるけどな……互いに高め合ったことに越したことはねえんだけど……」

「兄さん…ホンマに気付いとらんの?」

「? 何が?」

「いや、こりゃあ凪もやけど二人共苦労する思ってな」

 

まあ確かに二人は強く、真面目だけどあそこまで仲が悪いんじゃな〜

 

「どうやったら二人は仲良くなるんだ…?」

「全然分かってないのー」

 

なんでだ? なんか間違ってるのか?

 

……まあ後から考えて直していくしかねえな。

 

それより……

 

「オメエ等はおれのことなんとも思ってねえのか?」

「いや~…最初は……正直な、怖かってん」

「でも~…なんかピンとこないというか…いつもと変わらないというか…」

「せやな~…いつもの兄さん見てると警戒するのもバカらしゅう思って…」

「それにお兄さんは天の御遣いだからー」

「逆に納得してもうて…」

 

……やべ…不覚にも少し嬉しい…

 

少しは覚悟してたつもりだったけど……やっぱこうやって仲間に受けいられて変わらずにいてくれるのが何よりも嬉しいし、どんな宝にも代えがたい物だな…

 

「お前等ぁ…」

「「??」」

 

感極まっておれは両腕を真桜と沙和の首に絡めた。

 

「おれ、やっぱお前等のこと好きだわ!」

「「おぉう!?」」

 

二人は抱きついた衝撃を堪えた後、顔を赤くさせておれの背中を叩く。

 

「兄さん!! ちょお落ち付き!!」

「苦しいのー!!」

 

二人がジタバタしておれから離れる。

 

「なんだよツレねえな」

「いやぁ、別に嫌な訳無いんやけど…」

「こんなところを二人に見られ…」

 

その瞬間、何かの塊がおれ達のすぐ横を通り過ぎ、爆発した。

 

シュン ドカーン

 

「「「……」」」

 

おれ達が固まっていると、おれ達の後ろから声が聞こえてきた。

 

「真桜…沙和…!」

「二人は一体何を…?」

 

ゆっくりと、しかし、威圧感が増している二人は腕を組んで笑っていた。

 

「凪…鈴仙…ちょお落ち付いて…」

「二人共…エース様と……何をしていた?」

「凪ちゃん…そんなドスを利かせないでほしいの…」

「アラアラ…マサカコンナトコロニモ“テキ”がイタンデスネ?」

「アカン…鈴仙が嫉妬のあまり壊れたで…」

「そんなことよりも真桜ちゃん……」

「分かってる……このまま一気に…」

 

二人が脱兎の如く逃げようとするが……

 

「猛虎蹴撃!!」

 

凪は足に光の弾を作ってそれを蹴る様に足を振るって飛ばす。

 

「ぎゃあ!! 凪!! ちょお待たんかい!!」

「問答…無用!!」

「鈴仙ちゃんも壊れたのー!!」

「沙和!! 撤退や!!」

「ガッテンなの!!」

「「逃がさない!!」」

 

こうして凪達の鬼ごっこが始まった。

 

やっぱこいつ等面白くて……良い奴だからな

 

 

……何が何でも守ってやる…

 

今度こそ…おれが守ってやるんだ…

 

自惚れかもしれねえが、それができるのはおれしかいねえから…

 

これからも目的も見えずにダラダラと放浪するかもしれない…そんな中、仲間になる奴とも出会うかもしれない。

 

おれは……そいつ等無しじゃあ生きていけない……鬼の子だから…失わせねえ…

 

だから、今だけは……

 

「はっはっは……何してんだよお前等!」

「「元凶が笑うな(なの)ーーー!!」」

「「逃げるな!!」」

 

少しくらい……楽しんでも罪にはならねえよな…

 

 

 

 

 

 

 

こうして決意を再び固めたエース達の夜は更けていく。

 

「「エース様(さん)にもお話させていただきます!!」」

「え”?」

 

海賊の受難も一晩続くのであった。


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