火拳は眠らない   作:生まれ変わった人

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天の御使い

今回はすげえ短いです。

しかし、これから長編になりますが、読んでる人も読んでない人も応援及び感想をお願いします。

 

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周りの反応

 

「愛紗ちゃ~ん。疲れた~」

「桃香様…まだそんなに歩いては…」

「お姉ちゃんはダメダメなのだ」

「うぅ~…」

 

荒野の真ん中を歩く三人組の少女たちは一つの思いを胸に歩みを進める。

 

その目的は革命。

 

腐敗した国に憂いを抱き、行動を起こしたのが彼女達である。

 

しかし、彼女達に社会的地位は無い。

 

故に、現在では国に士官するための旅を続けている。

 

そこで名を上げ、いつの日か……

 

「そういえばここから北西の村で天の御遣い様がいたんだって」

「天? あぁ…自称大陸一の占い師の予言…でしたっけ?」

「うん。どこからともなく火を出してドカーンって黄巾党っていう盗賊をやっつけてくれるんだって」

 

ピンク髪の少女が両手で誇張する。

 

そんな子供っぽい姉を見て黒髪の少女は呆れて溜息をもらす。

 

「聞いたことありますが……とてもそんなことができるとは思えません」

「でもでも、皆そう言ってるからいるんだよきっと!」

「はぁ…でも…背中に白いひげを結わえた骸骨…ですから…」

 

黒髪の少女はイメージするも、とても天からの使者とは思えなかった。

 

そこで虎の髪飾りを付けた幼女が元気に言う。

 

「でも、その御遣いって人、火事から子供を助けたって聞いたのだ」

「やっぱりいい人なんだよ!!」

「まあ…鈴々もそう聞いただけだから…まだそんなの分からないのだ」

「鈴々の言う通りです。直接会ってもないのに決めるのは早計かと」

「うーん…人助けしてくれてるから良い人だと思うんだけど…」

 

ピンク髪の少女が首を捻っていると、黒髪の少女は思い出した様に言う。

 

「それに、その噂では黄巾党の間では恐怖の象徴として呼ばれている二つ名があるんです」

「二つ名?」

「どんなのなのだ?」

「えっと……確か……」

 

これからの世代を担うために国の礎を一から築く若き王も…

 

 

 

 

 

「天の御遣い?」

「はっ。どうもそう噂される者が賊を討伐しているらしいのです」

「へぇ……秋蘭。その者の足取りは?」

「華琳様! その様な者がいなくとも我等だけで充分です!!」

 

大声で主と思しき金髪のツインテールの少女に力説する黒髪の少女。

 

しかし、主の少女は彼女をイジワルそうに諭す。

 

「あら春蘭? 妬いてるの?」

「うぐ……それもありますが(ボソ)……どう考えても怪しいです。火を操るなど」

 

そんな二人に青い髪の少女が述べる。

 

「それこそ賊達の誇張も入ってるかもしれん」

「そうだろう? 充分怪しいだろう?」

「そうね…今はどうでもいい話。だけど実際に見てみたいわね…そいつ…」

「正気ですか?」

「ええ。春蘭と秋蘭はその御遣いがなんて呼ばれてるか知ってる?」

 

そう聞かれると、二人は首を傾げる。

 

知らないと知った主は答える。

 

「民からは畏敬の、賊からは畏怖の念を込められて呼ばれている名は……」

 

乱世を予感し、着々と準備を進める英雄も……

 

 

 

 

 

 

 

「天の御遣いを捕まえるわよ♪」

「…雪蓮?」

「ちょっ冥琳…そんな怖い顔しないでよ〜…」

 

ある屋敷の庭では自由奔放そうな女性が眼鏡をかけた参謀の女性に凄まれている。

 

「策殿…仕事のやり過ぎで…おいたわしや…」

「ちょっと祭〜? 私はそんなヤワじゃないわよ。失礼しちゃうわ」

「ほほ〜う。それならまだ仕事にも余裕があるということだな?」

 

話を振った妙齢の女性はからかう様に言ってきたから言い返すも、参謀からも含みのある笑みで反撃を食らい、顔を引き攣らせてしまった。

 

「あはは…と、とにかく私は天の御遣いに会いたいの!!」

((逃げたな))

 

わざとらしく繕う女性に二人も呆れる。

 

「それで? なんでそんなことを…」

「知りたい? どうしても知りたい? どうしよっかな〜?」

「…話せない理由なら、部屋に監禁して椅子に縛り付けて仕事へ精を絞り上げる方が有益だと思うのだが?」

「じょ…冗談よ冥琳…教えるから落ち着いて?」

「して、何故そのようなことを?」

 

妙齢の女性の助け舟で参謀からの追求を逃れた女性は心の中で礼を述べながら唐突に喋る。

 

「冥琳と祭は天の御遣いの特徴は聞いた?」

「あぁ…最近噂になっている背中のひげの骸骨…」

「どこからともなく炎を出すのじゃろ?」

「「胡散臭い(のう)」」

 

二人は馬鹿馬鹿しいと思っているようだけど、女性はおどけた表情から一変し、妖しい笑みを浮かべる。

 

「…最近、蓮華から手紙が届いてね…読んでみて?」

 

女性が一通の手紙を渡すと、二人は更なる疑問を募らせる。

 

「これが?」

「百聞は一見に如かず。いいから見てよ」

 

二人はとりあえず言われた通りに紙を開いて中身を読んでいく。

 

「……ほう…」

「これは…」

 

何気なく読んでいた二人は目を丸くする。

 

二人は内容に興味を持った様だ。

 

「どう? 凄いでしょ?」

「なるほど…大体お前の考えてることは分かった…」

「なんで呆れるのよ〜。結構良いと思ってるのに~」

「だから捕まえるのか? それよりも仕事してもらいたいのだが?」

 

二人が喋っている中、妙齢の女性が手紙を見て感心に似た声をもらす。

 

「それにしても権殿自らが武人を推薦するとは……」

「しかも、なんとその人物は最近話題の天の御遣いの疑いあり!! ってね♪」

「あの思春を丸腰で降すなど……並の武芸者では済まされますまい」

「それを聞いてピーンってきたの! これはもう呉に引っ張るしかないってね」

「祭殿、雪蓮を煽るのを止めていただきたい」

 

参謀が溜息を吐いて悪ノリに制止をかける。

 

それに対して女性は不敵に笑って返す。

 

「でもね、私はこの御遣いの子と一番近しい位置にいると思うの」

「確かに…一度顔を合わせている蓮華様からなら相手も多少信用するじゃろうな」

「そういうこと。そしてその後は…」

「その御遣いの血を我等孫呉に受け継がせる。そうだろう?」

「さっすが冥琳ね~。分かってる~♪」

 

心底楽しそうな親友に苦笑する参謀。

 

苦労人オーラを醸し出す彼女を尻目に女性は嬉しそうに…新しいオモチャを見つけた子供の様に話す。

 

「それでね、その子って賊からは…」

 

牙を隠し、しかし確実に研ぎ澄ませる覇王も……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうじゃ貂蝉。新たな遭難者は」

「んふふ~…私のタイプよ~ん。ちょっと会ってくるわねん」

「居場所は分かるのか?」

「大丈夫よ~ん。最悪の場合は黄巾党から聞けばいいんですもの~」

「ほう…儂も少し興味が湧いた。その者の名は?」

「えっとね……」

 

 

 

 

 

「くそ……どこの馬の骨とも知らん奴が外史に入りやがって…」

「どうします左慈?」

「もちろん始末しろ。できれば俺が自ら殺したかったがな…」

「相手のことは何も分かってないですから……とりあえず僕でも送っておきましたよ?」

「ふん……だったら奴がどの世界から来たか早く割り出せ」

「はいはい……まったく、せっかちな男は嫌われますよ? まあ、私はそんな左慈が好きですから///」

「だったらその好きな相手に殺されるのも本望なんだろ? 今すぐ殺してやるから来い」

「おっと、それは魅力的ですが、まだまだ私は殺されずにあなたを……アッーーー!!」

「(相方じゃなかったら今殺せたのに…)聞け。ターゲットのことは聞いてるな?」

「ええ。そいつは世間からは…」

 

世界と世界の狭間に位置する番人達も……

 

 

皆、その男に注目している。

 

表舞台に立つ準備は整いつつある。

 

これから起きるのは歴史を揺るがす戦いの嵐。

 

能力の無い者が消え、有能な者だけがモノを言う時代。

 

 

 

 

 

 

 

とある場所で、賊達は縄張りを張っていた。

 

近隣の村を襲い、奪った食料で腹を満たし、連れ去った女性で欲望を満たす毎日を続けていたのだが……

 

「そんな……仲間が……二百人もいたのに……」

「悪いな……これもおれ達が生きるためなんだ」

「お……お前は一体…」

「おれか? そうだな……あえて言うなら…」

 

男は口を吊り上げ、よく聞こえる様に言った。

 

 

 

 

――――――火拳――――――

 

この名はこれからの荒れ狂う時代の中でどう響いていくのか……

 

まだ誰にも分からない…


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