「あらあら、わたしの家を壊しといてトンズラなんて調子ぶっこいてるのかしら~ん?」
カマ口調で喋る貂蝉の足元にはボロボロになった白装束が大量に転がっている。
「にしてもホント強いわねエースちゃん。わたしより…阿部よりも強いじゃない」
さっきまで影からエースが繰り広げていた戦いを思い返しながら呟く。
巨大な風穴を空けた炎を思い出しながら呟く。
そんな時、彼女?(彼)に近寄る影があった。
「久しいな貂蝉」
「? あら〜…卑弥呼じゃないの〜。どうだった?」
貂蝉の前に白髪の純白の褌を身につけたガチムチなオヤジ・卑弥呼が現れた。
「やっぱり予想通り、于吉の差し金じゃった」
「な〜る…じゃあさっき撤退させたのは…」
「あの火のおのこの実力を見たかっただけ……のはずが」
「実力を読み違えて撤退させたって感じよねぇ?」
二人はいい気味だと言わんばかりの憎たらしい笑顔を見せ合う。
「雅の分からん奴等の悔し顔が目に浮かぶわい」
「そうねぇ……それともう一人気になるのが…」
「貂蝉……儂をストレスという名の凶器でなぶり殺す気か…」
「あらヤダ」
貂蝉の話題に先程までのホクホク顔が一気にやつれる。
それにギョっとした貂蝉は少し自分の師に同情した。
「大丈夫なの? 一瞬でしぼんだわよ?」
「ちょっと美少年分が欲しい……なにか力になりそうなものを…」
「はい、水嶋ヒロ写真集」
「フヒヒ…クンカクンカ」
「美少年というより美青年だけど、本を嗅ぐくらい気に入ってもらえてよかったわん。このまま話続けるわね」
卑弥呼が本に顔をうずめて機嫌がよくなるのを確認すると、貂蝉は本題に入る。
「それで阿部はどうするのよ。あのレイプ野郎見張ってたのにさ、左慈ちゃん達が余計なことしてくれたおかげで見失っちゃったわよ」
「そう慌てるな。大体の奴の行き先など見当はついてる…レロレロ…」
「そうねぇ…奴はエースちゃんしか頭にないようだし……とりあえず健業に先回りするわね? それと本は読むためにあるの。だれが舐めるつったよ」
舌がブレて見えるほどの速さで本を舐める卑弥呼に貂蝉も口調が段々とオヤジ化していく。
そんな貂蝉に卑弥呼は普通に返す。
「そう急ぐことでもなかろう。すぐに手を出すわけでもなし。それに、あの反漢野郎はあのおのこには勝てぬよ。身の程をわきまえるじゃろう」
「ん~~…そうだといいけどね~ん…あれのしつこさはゴキブリ以上だからね~…」
「まあ、なんとかなるじゃろう」
「……それもそうね…それに左慈ちゃんや于吉ちゃんも阿部には勝てないし、大丈夫よねん」
「そうとも、そうと分かれば儂等もエースを追いかけよう」
「ええ」
二人はスキップしながらその場を去っていく。
彼等の通り過ぎる度に草木、空気が淀むのなんて気にしない。
彼等にはすべきことがあるのだから。
「それと、貂蝉。お主がここにいる間に新しいおのこ……ダーリンが儂等の仲間になったぞ」
「んま! な~に抜け駆けしてんのよ~ん。わたしにも紹介して~ん!」
二人とまだ見ぬもう一人は己が使命のため、健業へと歩みを進める。
「ふむ……健業か…そこにあのエースたんが……」
「き…貴様……」
洛陽から遠く離れた無人地帯にその男・最強にして最凶の管理者(仮)の阿部がいた。
その足元には下着をはぎ取られ、白目を剥いた白装束が泡を吹き、悲壮感を漂わせて倒れていた。
そんな中、一人だけ残った心の強い者が忌々しげながらも股間を抑えながら阿部を睨む。
「な…なぜ我等と同じ同胞である貴様が悪に手を貸す……ぜぇ…」
「答えは単純明快至極当然、エースたんを婿にするためだ」
臆面も無く、とんでもない発言をする阿部にげんなりしながら今でしか言えないことを言う。
「貴様もわかるはず…はぁ…我等、外史の管理者は世界の異常を正す責任が…あふぅ!」
「おれにとって外史の管理よりも良い男の監視が重要だ」
「なにを世迷言を…ぎゃふぅ!」
「それはそうと、お前も中々の逸材だな」
自身の体をなぞる阿部のこの一言に白装束も頭が真っ白になった。
―――今……なんて……
それしか浮かばない頭に更に特大爆弾を打ちこまれた。
「お前は……今日のオカズ決定だ」
「ぐああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
全てを理解した白装束は体をくねらせてその場から逃げようともがく。
しかし、それも叶わずに間も無く、阿部に馬乗りにされて抑えられる。
そして、阿部の息が荒くなっていくのを感じると、頭の中の警報がさらに大きくなっていく。
そんな中、倒れている白装束にも必死に声をかける。
「ちょっ…! マジ助けて!」
「……」
「起きてるのは分かってるんだよ!! 貴様等の口周りから吐息出てるの見えてるぞ!! ちゃんと任務を果たせ!!」
「……」
「テメー等狸寝入りもいい加減にしろコラァ!!」
もがきながら死んだフリしている仲間に手を伸ばす。
しかし……
ペチ
その手は呆気なくも払われた。
「……」
「いただきます」
「いや! ちょっ、まっ…!」
ッアーー!
この洛陽でも建業でもない、世界のどこにもない黒い空間に彼等はいた。
「うわぁ!」
「どうした于吉!!」
「いえ…一瞬だけ阿部の顔を…」
「……坑鬱剤持ってくる」
不吉なシンパシーを受けた于吉と左慈が薬を飲んでいた。
「というか于吉。あれだけの部下を火拳に当たらせたんだ。何か打開策は見つかったのか?」
「それが……ですね…」
軽く狼狽する于吉に左慈は睨みながら問い詰める。
「そうか…まだ見つけてないと言いたいのか?」
「そう睨まないでください。奴の戦闘能力を測りきれていないのですから…」
疲れた感じで呟く于吉に左慈がイライラした口調で進める。
「早くしろ。脅威は火拳だけじゃねえんだぞ」
「分かってますよ…貂蝉、卑弥呼、そして……はぁ…目の上のタンコブですよ…」
「まったく面倒な…特に阿部を思い出すと寒気がする…」
「なら私が暖めてあげます。男同士、裸で暖め合いましょう。カムヒア」
「一生ありえねえよ…くそったれ…」
毎日と言っていいほどの相方の本気のプロポーズに左慈もゲンナリしてスルーする。
これより先に待ち構えるは自分の相方よりも最強で最凶、管理者の中でも百年に一人いるかいないかの鬼才でありながら卓越した戦闘能力。
そして、常人の理解を越えるエロと行動力を兼ね備えるホモラー。
それを考えると、左慈の胃がキリキリと痛んで仕方無かった。
「どうしました? そんなに景気の悪い顔をして…」
「…阿部がいるってのに呑気な奴だ……阿部の怖さを忘れられるお前の豆腐並の頭が羨ましいぜ……」
「違いますよ……いくら辛い先のこと考えても気が滅入るだけです。本当の勝者は毎日“今日だけ”頑張れる人なんですから」
「それは福本先生がカイジで使うから重みが出るんだよ。お前が使っても誰も納得しねえよ」
「でも、私の左慈に対する愛は重いですよ」
「重くてどうする……人に好かれたいなら愛を強くしろ。お前の愛が強くなってもおれは嫌いだけどな」
「いいですね……左慈に罵られるのもこれはこれでイイ…」
「今すぐ消して~…」
涎を垂らして鼻息を荒くする于吉に絶望しながら、左慈はこれからの使命を胸にしまう。
たとえそれが、毎回繰り返される逃れられない運命だとしても……
そう思いながら左慈は曇った感情を振り払い、ただ暗い天井を見上げるだけだった……
「結婚しましょう」
「なんでこのタイミングで言った? 前言撤回、お前の頭プリン並だ。よかったな」
「酷いですね左慈……そんなこと言っていると私は付いて行きませんよ?」
「その方が都合がいい」
「そんなこと言わないでくださいよ!」
「気持ち悪いんだよ!! 頼むからもうどっか行ってくれよマジで!!」
すり寄ってくる于吉の顔面を足で抑えながら、これか抗鬱剤をもっと買おうと心に決めたのだった。
今度からはパートナー選びは慎重に行おう
同時にそう悟った左慈だった。
そして、放浪の旅を始めていたエースは……
「腹減った~~~~…」
体を木の棒で支えながら宛てもなく荒野をさまよっていた。
お約束の「腹減った~」です。
ルフィの代名詞をエースに使わせてみました。