とある地点のとある村。
そこでは幾人かの少女が戦っていた。
一人は青い髪の夏侯淵…真名を秋蘭。
巨大な鉄球を振り回す少女の許緒…真名を季衣。
体中に古傷をつくった楽進…真名を凪。
豊満な胸を隠さない、豪快な関西弁が特徴の李典…真名を真桜。
二刀流を携え、女の子独特の格好の于禁…真名を沙和。
その五人はその場で結託し、黄巾党と戦っていた。
最初、本軍がその状況を聞き、救援に向かう。
あまりに分が悪すぎる。
指揮官が優秀でも数が多すぎる。
だから陳留から軍を大量投入した。
大群を率いるは陳留の勅史の曹操…真名を華琳。
華琳の右側に控えるは夏侯惇…真名を春蘭。
左側には荀イク…真名を桂花。
三人は秋蘭を救出すべく村に向かったのだが…
「……もう一度言って…」
「…はい……我々が戦闘を開始した直後に……黄巾党が爆発しました……」
「……秋蘭…まさか貴女からそんな報告を聞くなんて…貴女も疲れてるようね…」
目頭を押さえて唸る華琳に春蘭も桂花もうろたえる。
そんな中、秋蘭はすぐ近くで控えていた凪に言う。
「……黄猿殿を連れて来てくれないか…?」
「はい…!」
凪は素早く動いた。
黄猿? 誰だ? 殿…男なのか?
皆がそんな事を考えていると…
「こっちやで。おっちゃん」
「早く来るの〜」
聞き慣れない声が聞こえ、曹操たちが声の発信源を辿ると…
「心配しなくても逃げないよ〜」
思考が吹き飛んだ。
(((……巨人!?)))
後からの登場組は思わず見上げた。
身の丈2メートルの大男が腰を曲げ、顎を撫でながら華琳達をジロジロ見る。
「な…なんだ…」
「ちょっ…見ないでちょうだい!」
春蘭と桂花はプレッシャーを感じるが…華琳は堂々としている。
「…君が…この軍の頭か〜い?」
「あら? 何故かしら?」
「何故って…君がこの中で威厳があるからだよ〜」
「見る目はあるのね」
華琳と黄猿が話していると、横から春蘭と桂花が割り込む。
「貴様! 華琳さまに近寄るな!」
「そうよ! あんた黄巾党かもしれないじゃない! その服も黄色いから!」
「違うよ〜…だってほら…」
黄猿は背中を向け、コートの『正義』の字をみせる。
「ほら…こんな感じだよ? わっしは」
「「もっと怪しい!!」」
「ヒドイよね〜」
そんなやり取りをしていると、春蘭は我慢の限界を超えた。
「ええーい! もういい! 切り捨ててくれる!!」
「なんでそうなるのぉ?」
あまりの理不尽さに黄猿も面倒になっている。
華琳も忠臣に呆れ、止めようとするが…
「コワイねぇ~…剣…抜くんだぁ…」
『!!』
身体が震えた。
殺気を向けられた春蘭だけでなく、周りにいた桂花や華琳にまで伝わってしまった。
(何だ!? これは…!)
春蘭は自分に何が起こったのか理解できなかった。
しかし、その疑問もすぐに氷解した。
殺気を追っていくと、その先には黄猿。
(この男…)
未だ笑みを浮かべる黄猿に華琳は思った。
強い。
今まで会ってきた猛者の中にも想像を超える強さを持った者もいた。
しかし、その強さも今、更に濃厚な強さに埋まっていく。
そんな重い空気の中、黄猿は言う。
「じゃあさぁ…」
黄猿は殺気を収める。
すると、周りの緊張が切れ、地面に膝を付く者が出てくる。
そんな中、黄猿は言う。
「一回…斬られてあげるよぉ」
「!!」
「なに!?」
男の一言に衝撃を受けた。
「……あなたは自分が言っている事を理解しているの…?」
「勿論だよ~。それで? やるのぉ? やらないのぉ?」
華琳と話した後、黄猿は春蘭にいつも通りの笑顔で挑発する。
その態度に春蘭は…
「……どうなっても知らんぞ!!」
その一言に春蘭が黄猿に斬りかかる。
「春蘭!!」
華琳が止めるが、もう遅かった。
既にモーションに入り、黄猿の首を切断した……
はずだった……
「……え?」
「な!?」
「!?」
華琳、春蘭、桂花は驚愕した。
なぜなら、切断したはずの首は傷が付く所か無傷のまま通り過ぎた。
「な…何よ……これ…」
「そんな……手応えも…無い……」
「……」
三人は黄猿に畏怖の籠った視線をぶつけるが、本人は飄々としながら華琳に聞く。
「そういえばさ~、黄色い布を頭に巻いた奴等って……全員死刑でいいんでしょ~?」
「え……えぇ……」
そう言った瞬間、黄猿の体が光ったと思ったらその場にはいなかった。
しかし、すぐ近くの民家の裏が光る。
「おぉ~…仲間にでも置いて行かれたか~い?」
そこには十人くらいの黄巾党がまだいた。
どうやら隠れてやりすごした、と思っていたらしい。
賊たちは黄猿の出現に頭の回転が追いつかずに呆然と見ているだけであった。
そんな賊に黄猿は……
「速さとは重さ…光の速度で蹴られたことはあるかぁい?」
そう言って賊の一人を蹴り飛ばす。
すると、蹴られた賊は民家を次々となぎ倒しながら華琳たちの傍まで飛ばされ、止まる。
全身の形は最早原型を留めてはおらず、首、腕、膝、足がありえない方向に折れ曲がっており、まるで踏み潰された人形の様になっていた。
「「なっ!?」」
「ひぃ!!」
華琳と春蘭は賊を見て驚愕し、桂花は人とは思えない形のそれに悲鳴を上げた。
そして、民家を倒した際に起きた砂埃が晴れていくと……
「ここの人は出会い頭に突き刺す人が多いんかねぇ~?」
そこには五人の賊に刺されて平気を装う黄猿がいた。
そして、黄猿は何も言わずに人差し指を突き出して賊に向ける。
ピシュン
それは一瞬だった。
黄猿の指から出たビームは賊の胸を貫く。
「がは!」
そう言いながら賊は剣を離して倒れる。
剣はそのまま音を立てて地面に落ちる。
「うわぁ!!」
残りの賊達は黄猿から跳び起きて逃げた。
もはや恥も外聞も無く叫びもした。
「光から逃げられるとでも……思ってるのかぁい?」
そう言って光る足を振り上げてビームを放つ。
すると、ビームは賊に当たり、大爆発を引き起こし、周りの民家と共に紙のように吹き飛ばした。
「「「「「「「「「………」」」」」」」」」
その場にいる全員は戦慄し、指を動かすことさえ忘れていた。
その時…
ピシュン
「!!」
「なっ…!」
「ひっ!」
突如、黄猿が光と共に春蘭たちの前に現れた。
それには全員が動けなくなった。
恐怖。
見たことも無い術、剣で突き刺しても死なない体、そして家を軽々と吹き飛ばす脅威の力。
それを目の当たりにした華琳たちのショックは計り知れなかった。
「あ……あなたは……一体……」
「わっしはピカピカの実を食った光人間。ロギアだよ~?」
「ろ…ぎあ…?」
相手が何を言っているか分からない。
本来ならここで春蘭が嘘をつかれてると思って噛みつくはず。
しかし、今の春蘭には恐怖で倒れないように堪える余裕しかない。
そこへ黄猿の追い討ちが来る。
「もしよかったら~、君たちの素性も教えてくれないかね~?」
「……知ってどうするの?」
華琳はなんとか聞き返すが、黄猿は構わずに続ける。
「わっしの仕事は悪人をやっつけるのが仕事だからね~。……もし君たちも市民を脅かす存在ならば……」
その瞬間、黄猿の表情により一層深い影が差した。
『『『!!』』』
それと同じように更に濃い威圧が華琳たちを襲う。
「全員……ここで…死ぬよぉ…今……ここで死ぬよぉ……?」
それを聞いて思った。
嘘をつけば殺される。
華琳はサングラス越しの目を見てそう思った。
私の素性を見てもらえば襲ってはこないだろう……
それにこの力……欲しい…
……仕方無い……少し危険で早計だが……これで行くしかない。
「…それならば私の城に来ない?」
「「華琳様!?」」
案の定というか、春蘭と桂花は信じられないといった表情で私を凝視する。
まあそれが当然かもしれない。
まだ彼の…黄猿の人柄を把握した訳ではないが、少し分かった。
だから大丈夫なはずだ。
「おぉ~…いいのか~い?」
「ええ…私の部下も貴方を斬ってしまった…そしてこの村を救ってくれた…少しのもてなしくらいはさせてもらうわ」
「それは助かるね~…え~っと…」
「私の名は曹猛徳よ。曹操と呼んでも構わないわ」
「そっか~曹操ちゃんか~。ならわっしの事も教えておくよ~?」
黄猿は飄々と答える。
「わっしは海軍本部大将の黄猿ぅ。黄猿のボルサリーノだよ~」
こうして後の『乱世の奸雄』は大陸で噂の『光の正義』と共に歩みを進める。