異界《魔都》に迷い込んだアリフの部族は、警戒しつつも静かに廃墟の谷間を進んでいた。
バンサの足音がアスファルトに重く響き、冷えた空気が彼らの砂塵まみれの装束を撫でる。
アリフの目が細められる。鼻をつく異臭。腐敗した肉と、焼けた金属のような臭い。
やがて、建物の影から異形が現れた。
全高三メートル近い異形の鬼——醜鬼(しゅうき)。
皮膚は灰黒く、内側から赤黒い光を放っている。背中には骨のような棘が隆起し、腕には槍のような爪が生えていた。
その姿を見た瞬間、アリフの瞳が赤く光った。
「グァルッ、ガアアアァッ!」(戦闘陣形!第一槍隊、右に展開!)
号令一つで、タスケン・レイダーたちは一斉に散開する。
騎乗していたバンサから次々に飛び降り、静かに、だが迅速に動き出す。
――戦術:流砂の陣
アリフが採用したのは、砂漠でサンドワームなど大型獣を仕留める際に用いる包囲狩りの布陣。
醜鬼を中心に、**サイクラー・ライフル隊(後方狙撃)とガダッフィ・スティック隊(側面突撃)**が円を描くように展開する。
アリフ自身は正面中央。最も危険な位置に立つのが部族長の務めであり、誇りだった。
「クラル=アッ!(囲め)」
右側の狙撃手が弾丸を装填。
タスケンのサイクラー・ライフルは旧式ながら強烈なスラッグ(鉛弾)を撃ち出す。標的の皮膚を容易に貫くことはできないが、関節部を狙えば動きを封じられる。
狙撃手の1人が息を潜めた。
「ヴォ…ヴォ…(……風、読め)」
パンッ!
弾丸が空気を裂く。醜鬼の左膝に命中。肉が裂け、膝がわずかに折れた。
「今だ!」アリフが駆け出す。
「ウゥゥゥアァァッ!」
アリフのガダッフィ・スティックがうなりを上げ、醜鬼の側頭部へと振り下ろされる。
棍棒の先端に仕込まれた鉤が皮膚を裂き、煙が上がる。だが鬼も反撃する。槍のような爪が、アリフの胸元を掠め、砂煙が吹き飛んだ。
「グアァッ! ガァル=シュッ!(側面、入れ!)」
左翼の突撃隊が突進。ガダッフィの回転打撃で鬼の背中を連続で叩く。
連携は完璧。1人が鬼の足を狙って膝を崩し、もう1人が背に飛び乗って棍棒で頸椎を殴打する。
醜鬼の咆哮が鳴り響いた。
だがその瞬間、遠距離の狙撃手が再装填を終えていた。
「タクァ=ハッ!(止めろ)」
パンッ! パンッ!
2発のサイクラー弾が、醜鬼の目元を撃ち抜く。
異形の巨体が、轟音とともに崩れ落ちる。
――沈黙。
――そして、タスケンたちの咆哮が魔都にこだました。
「ガァーーーァァッ!!」
アリフはガダッフィ・スティックを高く掲げる。
彼の目は、次の戦いを見ていた。
補足・部族戦術
部隊名、武装、任務
・槍隊(近接)
ガダッフィ・スティック
接近して側面・背面から打撃戦
・狙撃隊(遠距離)
サイクラー・ライフル
弱点狙撃・関節封じ・援護
・騎兵隊(機動)
バンサ・投槍
陣形維持・運搬・奇襲支援