魔都のとある地点。
漆黒の瓦礫に、異様な「死」が焼きついていた。
廃墟の広場の中央、巨大な醜鬼の死骸。
頭部は撃ち抜かれ、四肢の関節部には無数の殴打痕。体液はすでに半乾きで、辺りには焦げた臭いと、見慣れぬ蹄跡の列。
そこに現れたのは――魔防隊「第七小隊」。
「……これは、俺たちのやり口じゃねえな」
和倉優希が静かに呟く。
その視線の先には、地面に深く食い込んだ奇妙な円陣状の足跡と、巨大な棒状の鈍器の痕跡。
「この打撃痕……まるで、棍棒で殴り殺したみたいですね」
と、同僚の隊士が言う。
「それに、これを見てください。蹄跡。バイクでも戦闘車でもない……これは“動物”の足跡です」
「魔都に、獣がいるはずがない。ましてや――」
京香が一歩前へ進み、無言で鬼の肩に突き刺さった異様な弾を摘み上げる。
「これは……弾丸?」
「旧式の火器……それも、鉛弾だな。誰がこんなものを――」
優希が辺りを見回し、目を細めた。
「……誰かが、ここにいた。魔都に、俺たち以外の“戦士”がいるってことか」
「本部に報告しましょう。これだけの規模、何かある」
京香が短く頷いた。
そして、隊は魔都通信網を介して本部へと情報を送信し、その場を離れた。
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――場面2:異文化の祝祭、醜鬼の調理
夕暮れ。
戦の後の静けさの中、タスケン・レイダーたちが部族式の焚き火を囲んでいた。
醜鬼の死体はすでに横たえられ、その周囲にはナイフを持った戦士たち。
解体が始まっていた。
「グルゥ=ハ、アクァ!(腱を切り離せ、毒は避けろ)」
アリフの指示のもと、戦士たちは醜鬼の外殻を裂き、可食部を慎重に取り出す。
魔都の生物に関する知識などあるはずもない。だが、砂漠で育った彼らには「食えるもの」「食えぬもの」を見極める鋭い感覚があった。
毒腺らしき部分を外し、赤黒い筋肉を捌く。
香草代わりに、魔都の壁に生えていた香気のある苔を火にくべる。
煙が立ち上り、血と獣の匂いが部族の間に広がった。
バンサたちには内臓が与えられ、ゴロリと食べながら静かに座している。
「グルアッ、アリフ=ザムッ(お前の一撃は見事だった)」
一人の若き戦士にアリフが声をかける。
彼は黙って頷き、焚き火の奥、焼かれる肉の変化に目をやる。
ジュウッ、と脂がはぜる音。
鉄板などない。ただ焼石の上に乗せて焼く。それだけだが、部族の誰もが黙ってその瞬間を待っていた。
これは勝者の証であり、命を奪い生を繋ぐ、砂漠の祝祭だ。
「グァァアァッ!(我ら、此地でも狩り生きる!)」
戦士たちが棍棒を空に掲げ、勝利と生存を祝う雄叫びを上げた。
その声は、魔都の夜に異様に響き、静寂を裂いていく――。