「皆さんこんにちは~。シンボリルドルフ担当、大和綺羅と」
「エアグルーヴ担当、飛鳥真ですよろしくお願いします―」
真がシリウスを担当にしてしばらくたった日、また生徒会トレーナー達のチャンネルに動画が上がった。
「今日はね、この場にいない人にドッキリ仕掛けてきたから、それをみんなで見ようって感じの動画になるよ」
綺羅が言うと、真がフリップを取り出した。
「そのドッキリの内容ってのが、こちらになります!」
ジャジャン、と真が言うとフリップの内容が現れる。
「「アスラン、何だかんだ歌える説~~!」
「ということなんだけど、知らない人のために言っておくと、ナリタブライアンの担当、明日沢藍、通称アスランは歌が苦手と過去に公言しているんだ」
綺羅が言うと、真が補足する。
「付き合いが長い自負はありますけど、確かにアスランが歌ってるところは俺見たことないです」
「というわけで、今回のドッキリにつながるんだけど、今日はアスランにカラオケに来るよう伝えてあるんだ」
「なんて言ってアイツを誘い込んだんです? 下手な言い訳じゃ通じないと思いますけど……」
「そこはね……こんな感じ」
綺羅はそう言うと、真に藍とのLANEを見せた。
「アスラン、お歌の時間です」
「綺羅、突然どうしたんだ?」
「またライブに使われる曲が増えるらしいから、そろそろ君にも歌えるようになってもらわないと困るんだよね。毎回生徒会全員集めてボーカルレッスンやるわけにも行かないでしょ?」
「……まあ、確かにその通りなんだが……」
「それとも、自分の音痴がついにバレるから怖いの?」
「……舐めるな!」
「というわけで、ドッキリの仕掛けの段階は終了だよ」
「アイツ、本当に乗せられやすい性格してますね」
「だからこのドッキリが通じるってこともあるからさ。ひとまず、撮れた動画を確認しよう」
『某日、カラオケまね〇ねこにて……』
画面にテロップが流れる。
「どうも、予約している明日沢です」
「はい、伺っております、では〇〇号室になります」
「ありがとうございます……」
『今回使われる映像は、店舗の許可を取った上で、プライバシーに配慮して撮影されています』
画面右下にテロップが流れると、同時に右上にワイプが現れた。
「随分とアスラン落ち込んでませんか?」
「まあ、僕に啖呵を切ったのはいいけど実際の腕前を思って嘆いてるんじゃない?」
綺羅たちが話していると、藍が部屋に到着した。
「ここか……俺は何でこんなところにいるんだろう……」
番号を確認して、藍が部屋へと入る。部屋は暗く、藍が電気をつけると、そこには思いもよらない人物がいた。そして、その瞬間、ある曲のイントロが流れ始める。
「!? ナリタブライアン! お前がなぜこの部屋にいる! 俺は人前で歌うのは無理だといったはずだ!」
「あーたしさくらんぼ!」
「ヌォォォォォォ!」
流れていたのは大〇愛の、さくらんぼ。まずこの段階でワイプの綺羅と真は思わず笑ってしまった。
「始まりから不安だなあ……!」
「なんでブライアンがいるんですか!?」
「僕が協力を頼んだよ」
「こっちまで驚かせないでくださいよ!」
二人が言っている内に、ブライアンがマイクをもう一本、藍に向けた。
「ここまで来たんだ。……逃げないよな?」
「くそ、何でこんなことに……! 仕方ない、明日沢藍、行くぞ!」
そうして、藍がマイクを受け取り、Aメロが始まった。
「てェッ! 長うおおおおおひラクと、もおおおおお! ニねェェ! んッ!? たァ! 通なぁあ! あ”でええ!」
「やああ!あ”!ぱぁぁ!Gぃぃい還するネェェ!なんだかデェェ!れたりす。ルゥ! ネェェ!」
この段階で、既に綺羅と真の腹筋は崩壊した。
「歌じゃないよこれ!」
「なんでアイツ、生身で音MADみたいな歌い方してるんですか!」
そして、地獄はまだ続く。
「そおイヤアアア! ヒどいことモ下れた真!ヒどいこともユった真!!!」
「馬鹿実がァァ!イーいぱい!トゥ!あたぁぁ!甘いあ“”ぁまいもの。デェェス! JUSTICE!」
もうめちゃくちゃである。
「なんだかんだアスランも乗ってきてるじゃないか!」
「アドリブなんか入れちゃって……。もうブライアンも笑いをこらえきれなくなってきてる!」
Bメロに入ると、さらにカオスは加速していく。
「な↑き↓な↑きのいチにチヤアァァ! Gデェェん斜のたビーヤア! かキあラァァァ!わぁあああ!せレないダァァ!ってお“お”お“インダモウヤメルンダ!」
サビに入るときですらも突然のアドリブを入れてしまう。ブライアンはついにおなかを抱えて崩れ落ちた。ワイプの二人も、何も言えずに笑いが止まらない。
「くぅ~! キィィ! ミィィ! いとぉぉ!通ぅぅぅながァァ! 撤ッ退ィィ~」
「モウ真!あの向こおおおオニ見えェ!ルゥゥ!モォォ!のがあるなら〇し合うぅぅぅぅ!
ふう“う”!タァァ!あ“リ、トゥ! 真!!!!!! あわせのぉぉ! そラァァ!!」
「トゥ!なァァ!りどうし綺羅!零!真!!!!!!とあ“あ”あ“たしアスランウ”ォォォォ!」
輪をかけて無茶苦茶になる歌に、思わず二人はツッコミを入れた。
「殺、って言ったよね! まずい放送できるかな!」
「まあ大丈夫でしょうけど……! シって文字が入るときだけ迫真の度合いが違うなあ」
二人が言う中、画面の中の藍はタッチパッドの操作に入ろうとした。
「ふう、何とかなったようだな……そろそろ止めてもいいだろう? それで、わけをきっちりと聞かせてもらうぞ」
「もう一回!」
「バカヤロー!!!!!!」
笑いの止まったブライアンがこう告げると、藍は慌ててマイクを取り、高速で地団駄を踏む。
「キィィ!ミィィ!いとォォ!だァァ!きアァアァ!デェェ!退ィィ~」
「モウ真!!!!!!とおいミラァァ!いヲォォ!よおそオォォォする!のなラァァ!」
「愛し合うゥゥゥゥ!ふぅ“ぅ”ぅ“たァァ!あ”り! Two!いぃぃいぃぃつのとキィィいモォォ!トゥ!なァァりどうしあぁぁ!なぁぁ!たぁぁッ!とお“ぉ”あ“ぁ”あ“ぁ”たしアスランウ”ォ”ォ”ォ”ォ”!」
ブライアンの腹筋は再び崩壊し、口からは声にならない息が漏れ、倒れ伏したソファをタップし続けている。
「くそ!俺は綺羅たちに踊らされている!……なんで俺は静かな世界にいられないんだろう」
そこで動画は暗転した。
「……これは、ひどいね……!」
「こりゃ確かに人前に出せねえや。さすがにお労しいなアスラン」
ここで、カメラマン的ポジションのミスターシービーのトレーナー、不羅雅が綺羅たちに告げた。
「一応、このあとの顛末も撮影してあるんだが、見るか?」
「まあ、どうせなら最後まで見ましょうよ」
真の言葉に、不羅雅は動画を流した。
「しかし、何でブライアンがここに……?」
「会長のトレーナーに頼まれてな。……しかし、アンタのあの歌い方、一体どうやったら身につくんだ?」
「やはり、綺羅の仕業か。あと、あの歌い方については触れないでくれ。俺も気が付いたらあんな風にしか歌えなくなったんだ」
「安心しろ。アンタがなんとあのトレーナーに言われてきたか知らんが、私にボイストレーニングはいらないからな。なんなら、私がアンタに教えてもいいぞ?」
「……はぁ……。恨むぞ綺羅、真!」
そこで動画は切られた。
「ちなみに、この後別室にいた俺が見つかったんで、見逃してもらう代わりにこの撮影がどこで行われるかを教えておいたぞ。そろそろ来る頃なんじゃないか?」
「「なにやってるんですか!?」」
二人の脳内で警鐘が鳴り響く。とにかく、まずはこの部屋から脱出しなければならない。そうして、二人が部屋を出ようと、この部屋唯一のドアに向かうと、二人の手がノブに触れる前に、ドアが開いた。
「あ、ああ……」
真は、ドアの先にいた人物に戦慄した。
「嘘だろ、速すぎる!」
ここまで至っても、綺羅は抗う姿勢を崩さなかった。
「ブライアンの予定は早めに終わったんでな。……覚悟しろよ、二人とも!」
トゥ!ヘアァー!
「ぃやめろぉぉぉぉ!!!」
「ぐあああああ!」
アスランの掛け声とともに二人の断末魔が響いた。
「それじゃ、今日の動画はここまで。最後の締めは、ミスターシービー担当、室谷不羅雅だぜ? 俺も、見つかる前に逃げねえと!」
この動画は、アップロード一週間で、50万再生を突破し、その切り抜きも生まれた。そのため、ウマ娘のファンの間では、音痴アスランというワードがバズった。
というわけで、あすらんぼでした。これについては楽曲コード云々の話がわからないので一応さくらんぼの方だけ乗せときます。
明日沢藍(ブラトレ)
今回の被害者(ドッキリ的な意味で)。なんだかんだ綺羅たちの前では歌う事を避けられていたが、そのレベルが知られていない故にドッキリに引っかかった。たぶん別世界での呪いとかそんなレベルで治らない音痴。石田彰さんのせいではなく、モウヤメロイドの呪い。
ナリタブライアン
今回の被害者(腹筋的な意味で)。本人から自称音痴とは聞いていたが、ここまでとは思っておらず、現場で腹筋をやられた。ちなみに、ボイトレを理由にこれからカラオケデートを敢行するも、そのたびに腹筋をやられている。
大和綺羅(ルドトレ)
最大の加害者にして肉体的な被害者。綺羅としても、藍の歌声は予想外。さすがに折檻に巻き込まれた真にはあとで謝罪した。
飛鳥真(たわけ/シリトレ)
巻き込まれ系被害者。勝利者などいないとは言ったもの。なぜか歌詞のシのとこだけずっと名前を呼ばれていたので違和感が凄い。