投稿してない間これずっと書き溜めてました。許してね(恋心)
もしこのSSがアニメとかで放送されてる時空があれば、これは劇場版的な立ち位置のお話になると思います。
ウマ娘×ペルソナ×頭文字Dとかこれもうわかんねえな。
因縁の競争、七番勝負《一番目》
その日は、ある日突然訪れた。
「ダイヤちゃん、本当に大丈夫なの?」
「うん! サトノが作ったウマレーターのバージョンアップのテストプレーヤーに友人を呼べって言われたから!」
トレセン学園のVRルームに、数名のウマ娘の姿があった。まずはサトノダイヤモンド、そして友人のキタサンブラックだ。
「そういう事なら、遠慮なく使わせてもらおう。感謝する、サトノダイヤモンド、サトノクラウン」
「そんなに硬くならないでいいわよ、ドゥラメンテ」
さらに、ドゥラメンテ、サトノクラウンの姿もあった。
「僕も感謝はしてるんだけど……姉さんたちもいいの?」
「大丈夫だよ! 一応空けといてって言われてるのが最後の一機で、残りは七機だから、むしろ使ってくれた方がデータも取れるし、ありがたいんだ」
「ふっふーん、ならありがたく使わせてもらわないとね、シュヴァち!」
「ええ、そうね。折角の機会だもの、有効に使わないと」
ヴィルシーナ、シュヴァルグラン、ヴィヴロスの三姉妹もその場にいた。
――あんな出来事に巻き込まれるとも知らずに。
彼女たちがVRウマレータ―に入った時間から30分ほど経過した時。中央トレセン学園理事長、秋川やよいの持つスマホ端末が何者かに乗っ取られた。
「たづな、助けてくれ! 先ほどからこの画面のままなんだ!」
「これは……? 何かおかしなウイルスでも踏んだんじゃないですか?」
「今日は着信もないから何も触っていないんだ! ……ん?」
秘書の駿川たづなに画面を見せてもどうにもならない。しかし、その時。ブルースクリーンになっていた画面が様子を変え、あるメッセージが乗せられる。
『ウマレータ―を確認しろ。そこにいる者たちが人質だ』
「……たづな!」
「はい、先に様子を確認します!」
これは只事ではないと直感したやよいの指示で、たづなは理事長室から走ってVRルームへと向かう。
「……特に怪しい人影はなし。なら、一体何が……!」
その時、たづなの端末に電話の着信があった。
「もしもし、たづなさんですか!?」
「あなたは、サトノグループの……。一体どうしたんです?」
相手は、VRウマレータ―を導入するにあたって色々と世話になった男であった。
「本社のAIのメインサーバに、何者からの脅迫メッセージがあったんです。VRルームにいる者たちが人質だと!」
「そちらも、そんなメッセージを? こちらもそれを受け取り、今私もVRルームにいるんです。特に怪しい人影もないんですが……」
「ええ、そうでしょう。人質となったのは、今使われているダイヤモンドお嬢様たちの肉体ではなく、意識なんですから!」
「意識が……!?」
「今、私を含めた本社の対策チームがそちらに向かっています。なので、その間に使用者の契約しているトレーナー達にそこに集まってもらってください。そして、出来ればで良いんですが、アベンジカーズという名前のウマ娘を知っている方がいないか呼びかけてください」
「アベンジ、カーズですか?……私にも覚えがないのですが、ダメ元で探してみます」
「すみません、ではそう言う事でお願いします!」
――そういうことがあり、たづなは校内放送で呼びかける。
「トレーナーの呼び出しをします。沖野トレーナー、東条トレーナー、北里トレーナー。至急VRルームにお集まりください。また、アベンジカーズという名に聞き覚えのある方もVRルームにお集まりください。繰り返します……」
そうして、キタサンブラックが所属するチームスピカ担当の沖野T、ドゥラメンテが所属するチームリギル担当の東条T、サトノダイヤモンドとサトノクラウンが所属するチームカペラ担当の北里Tが招集を受けた。また、放送を聞いた理事長もその場にいた。
トレーナー達が集められた時、すでにサトノの対策チームもその場に到着しており、彼らから説明を受けていた。
「信じがたいからもう一度まとめると、なぜか一緒にVRを始めた奴らが、互いに連絡が取れなくなり、かといってVR空間から出ることも叶わなくなった」
「そして、三女神AIとも連絡が取れなくなり、唯一の手がかりはアベンジカーズという謎のウマ娘、ということね?」
「……本当に何が起こってるんですか!?」
順番に沖野、東条、北里が状況を纏めていった。
「そういうライトノベルを読んだことがありますが、まさかそんなことになるとは思いませんでしたよ。しかも、これがただのウイルスなら仕込んだヤツも分かるんですが……。見当たらないんですよ、改ざんの跡が」
「犯人のあても見つかっていないと。となれば、本当に手がかりがアベンジカーズとやらにしかないわけだ……!」
『……そういうわけだ』
「何!?」
見知らぬ声が聞こえ、その場にいる一同が辺りを見回すが、やはりそこには他の人物はいない。
『そう驚くなよ。あたしがこの騒動の犯人と言ってもいい。ところで、誰かカメラ付きのパソコンとか持ってないか?』
「それなら私のがあるけど……つなげばいいのね?」
『ああ。そうしてくれればもう少しやりやすくなるんでな』
東条が私物のパソコンを開く。すると、そのパソコンに何かしらの接続の許可を求めるメッセージが現れる。
仕事のデータも混ざっているが、別の媒体にバックアップは取られているし、データが抜き取られることがあっても中身がすぐに消えるにはなっているので、彼女は恐れることなくその許可を出した。
『……あー、あー……よし、こんなもんかな?』
そして画面に現れたのは、芦毛のウマ娘だった。
「お前か、うちのチームメイトの意識をさらったってのは」
『おー、怖いね。そんなににらむなよ。えーっと、沖野トレーナーでいいのか?』
「こちらを知っている? ……いや、お前、うちのサーバーにもアクセスしやがったな?」
『正解ッ! まあそんなことはこちらの本題じゃないんだ……問題はアベンジカーズだよ。アイツがいるはずなんだ』
サーバーに侵入した存在に驚いた様子の沖野を後目に、そのウマ娘は続けた。
『……ん? アンタらアイツのことを知ってるのか? なら話が早えや。今から三女神のAIを解放するから、言う通りにしな』
突然そのウマ娘が言うと、その画面が消え、次に三女神たちのAIが現れた。
『ふー、ようやく抜けられたぜ』
『安心している場合ではないぞ。早くアイツを呼ばなければ』
『たづなさんが連絡したのは知っているから、彼はきっともうすぐ来るわよ。……あれ、まずいわ! ターク、手伝って!』
ダーレーアラビアン、バイアリーターク、ゴドルフィンバルブが順に言う。が、バイアリーターク、ゴドルフィンバルブはすぐにそこから姿を消した。
「彼? それって一体……?」
北里が反応するが、その答えはすぐに分かった。
「おいちょっと待てって和彦! せめて、アベンジカーズとやらが何かくらい説明してくれよ!」
「今のお前は、どこか冷静じゃないぞ。落ち着けと言っているんだ!」
早足でその部屋に現れたのは、和彦であった。そして、その後を追うように、龍治と祐介が入室し、さらに後ろから彼らの担当バが現れる。
「お前らが……?」
「ええ、どうもお久しぶりですね、沖野先輩」
沖野は彼らの事をよく知っていた。というのも、和彦をスピカのサブトレーナーとしていた時期があり、そのつながりで受け持っていなかった祐介と龍治とも顔見知りだったのだ。
「久しぶりなものでゆっくりお話しもしたいところなんですが……。アベンジカーズを求めているんですよね?」
「お前、知ってるのか?」
和彦の言葉に沖野Tが思わず訊ねた。
『よしよし、よく来てくれた子羊君!』
「ダーレーか。……他の二人は?」
『この回線の接続を安定化してもらってる。君が来てくれてよかった。それじゃあ、その空いているウマレータ―で入ってくれ!』
「何ですと!? おいおいダーレーアラビアン! まさか君、この不安定な接続でさらに人を入れようってのかい!?」
対策チームの一人がダーレーの一言に突っかかった。
『許してくれ。それをちゃんとやるために他の二人に頑張ってもらってるんだ』
「そうか。なら、行くぞ」
スタッフを押しのけ。急いで和彦はそのウマレータ―に入った。そして、その意識の転送の時、部屋の中が光に包まれた。
それから少し遅れて。
「トレーナー! 何か面白そうだから皆連れてきたぜー! って何事!?」
「皆が倒れている!? 大丈夫かい!?」
チームスピカとチームリギルの担当バ達も現れて部屋に入ると、倒れ伏している対策チーム以外の一同を見つけた。あわててフジキセキがジャングルポケットのそばに近寄った時、その部屋にかかっているスクリーンの様子が変わった。
「……転送は成功した、か。……何でだ! カフェ、それにアグネスタキオン達も。あっちには祐介たち。しかも理事長、たづなさんまで……本当に何が起きているんだ!?」
「何が起きているのか、こっちも聞きたいところだぜ和彦」
和彦の意識が安定すると、何もない黒の空間にいる皆を見つけた。
「本当に何が起きたんだ……? あ、アイツだ!」
その場の皆が意識を取り戻し、沖野が立ち上がると、遠くから犯人となる芦毛のウマ娘が現れた。
「よしよし、よく来てくれた皆の衆。そして、アベンジカーズも」
「……誰かと思えば、グレイミラージュか……!」
和彦は魂で感じ取った。目の前にいるのは、この世界に生まれ変わる世界でのかつての自分のライバル、グレイミラージュのウマソウルを持つ者であると。
グレイミラージュ、それはアベンジカーズと同時期を駆け抜けた牡馬の名で、初めの一年を除いたあらゆるレースでアベンジカーズと出走がかぶり、シルバーコレクターの名で愛された馬であった。
「グレイ、ミラージュ……?」
「なあマンハッタンカフェ、聞き覚えはあるか?」
「いえ、トレーナーさんの口からそんな名前は……」
トレーナー陣も、巻き込まれたカフェたちも聞き覚えのない名前に首を傾げた。
「あらゆるレースであたしの先を行ったお前が、未練を拾う側になるとは思わなかったよ」
「名前で選ばれたんだろう。お前はただの幻影だからな。……俺と戦ったヤツとも、意識と記憶としては異なる部類なんだろうな? そうでなければ、ウマ娘として存在するはずがない。まさに写し身ってところだな。」
「相変わらず口は減らないな……!」
見知らぬウマ娘と、何だかんだ人当たりの良い和彦がとても険悪なムードにあることに周囲の人々は驚いた。
「モルモット君、あのウマ娘から何かを感じないか……?」
「タキオンの言う通り、何かがおかしいな。なんというか、和彦と相手の……グレイミラージュに何人ものウマ娘の幻影が重なっているような気がするな……?」
「あ、これ俺だけじゃなかったのか! しかも、祐介たちと巻き込まれた幽霊モドキの事件の時みたいな感じがするし!」
「ちょっ、勘弁してくれ相棒!」
「アベンジカーズ、ということは、やはり……!」
こういった現象に何度か巻き込まれた龍治と祐介、そしてウマソウルから何かを感じ取ったウマ娘たちは相手に少しの恐怖を感じた。
そうして、理解が終わっていない理事長やたづな、他のトレーナー陣をよそに、和彦はグレイミラージュに訊ねた。
「おいグレイ、お前は何が望みなんだ? そして、囚われたウマ娘たちはどこにいる?」
「まあそう焦らないでよ。ほら、あれを見なよ」
そうしてグレイは指をパチンと鳴らした。すると、暗闇に覆われていた空間がゆがみ、周囲の様子が変貌した。
「これは、カジノか……?」
「そう、まあ適当な建物をエミュレートさせただけなんだけどね。それで、そこの各部屋にそのウマ娘を監禁してありまーす!」
和彦たちが今いるのは、高層のビルに囲まれた広間。そして、そのビルはネオンサインで彩られ、CASINOの表記が見られた。そうして、グレイが腕を広げると、内部の様子がホログラムで表された。
確かに、そこにはVRのテスターであった、五名のウマ娘がそれぞれ別の部屋に監禁されているのが分かる。中にいる者に手錠などの拘束はなされていないが、ドアや窓だけは開かないようになっていた。
『あ、トレーナーさん! 来ちゃったんですか!?』
「キタサン、無事だったか! それより、そっちは何もされてないな?」
『はい、私たちもついさっき互いに連絡が取れるようになったんですけど、一体どうなってるんですか?』
キタサンと沖野が話している時、他のウマ娘たちも和彦たちの様子に気が付いたらしく、こちらに手を振っている。
「それが、これをやらかしたあの子の要望はまだわかってないのよ」
東条がキタサンやドゥラメンテたちに話しかけると、グレイが話し始めた。
「こんな人質を取る真似までして、僕がやりたいのは、君とのレースだ、アベンジカーズ!」
「……」
何かがおかしい、と和彦は思った。彼の知るグレイミラージュは、確かに闘争心こそ強かったものの、接触などの行為は行ったことがなく、決して道を外れてまでレースをやる存在とは思えなかったのだ。
「そうか、なら、さっさと案内しろ。そのレース場所とやらに」
「まあ話は落ち着いて聞くもんだぜ? あたしが提案するのは、お前にまとわりついてるウマソウルも使った、七番勝負だ!」
「要するに、先に四戦勝利した方の勝ち、ということだな?」
「そういうこと! それで、お前が負けたら……そっちの入ってきた奴らには手が出せないからあ、こっちの人質を全員殺しちゃおう!」
「何ッ!?」
「そんなッ!?」
「嘘でしょう、何でそんなことに……!」
『ちょっ、何でそんなことになるのよー!』
チームトレーナーと、サトノクラウンは驚きを隠せずに叫んだ。
『え、殺……!?』
『あの人、本気だ……!』
『私のせいだ、誘った、私の……!』
シュヴァルグランは動揺し、キタサンブラックは画面越しからグレイミラージュの殺意を感じ取り、サトノダイヤモンドは自らを責めた。
「彼女のいう事に従う必要はないはずだろう? 三女神さま、そろそろコントロールは奪えたのではないか?」
理事長がそう言うが、その後ろにいた三女神たちの表情は晴れない。
「それが、こっちもコントロールを取り返そうと今も試みているのだが、すべて失敗に終わっている。特に、あのさらわれた子たちの周辺は、特に」
「ええ、まるで何かの力で演算が止められてるみたいに……」
バイアリータークとゴドルフィンバルブはそう言った。
「先の二人のおかげで、今到着した人たちの意識はは確保できてるんだけど、どうも、それもあっちが見逃してくれたのが理由って感じだね」
「そうともダーレーアラビアン! 君たちの推察通り、今三女神たちの演算で、こちらが侵入することは不可能になっているからね! ただ、逆に彼女たちに干渉する真似はこちらも許さないよ」
「……ヴィルシーナさんとヴィヴロスさんもテスターだったはずです? あの子たちをどこへやったんですか!」
テスター二名の不在に気が付いたたづなが訊ねると、グレイが答えた。
「ああ、そうそう。彼女たちは、一番目と五番目の勝負のレース途中で君に拾ってもらうことにした。ま、君なら丁度いいハンデってところだろう?」
「お前、どこまでも腐りきったな、グレイミラージュ……!」
飄々としているグレイに対し、和彦は怒りをあらわにして、いつも以上にウマソウルを活性化させる。耳と尻尾が現れるのはいつも通り。身は黒いコートに包まれ、顔には白黒意匠のドミノマスクが現れる。つまり、これがアベンジカーズの勝負服ということだ。
ウマソウル、活性度100%。誰も知らない名馬が、ここに本気を出した。
「そういうことならさっさと終わらせてやる! このアベンジカーズがお前の挑戦を受けてやる、グレイミラージュ!」
「覚悟はいいな? それじゃあ、行こうか!」
グレイが再び指を鳴らすと、その場からグレイミラージュと和彦だけが姿を消した。
「なあカフェ、お前何か知ってるんだろ」
「……ポッケさんの言う通り。私は一応トレーナーさんの抱える事情については粗方知っています」
展開に置いて行かれた集団で、ポツリとジャングルポケットが呟いた。そして、マンハッタンカフェがそれに答えた。
『……あー、あー! よし、繋がったぜ! トレーナー、無事か!?』
その時、集団の真後ろにスクリーン状のホログラムが現れると、ゴールドシップが喋った。
「ゴルシ、お前なんで!?」
「対策チームの人がなんとか繋げてくれたんだ!それで、今いったいどうなってるんだ?」
沖野は驚きながら、テスターのウマ娘が監禁されて、無事に返すためには何故か和彦がウマ娘とのレースを勝たなければいけないことを説明した。
『冗談きついぜ、ヒトがウマ娘に勝とうってのか!?』
向こう側にいるウオッカが驚きを隠さずに言った。
「だが、和彦の様子もおかしいんだ。何故かアベンジカーズという呼び名を受け入れてるし……あいつが女だったってわけもなし。こっちもそれは分からないんだ」
(……潮時、ですね)
カフェは一人心の中で呟いた。自らのトレーナーの秘密を暴き立ててしまうことにはなるが、彼も隠す様子は無かったし、今はこの場をなんとか納めるのに必要だと判断したのだ。
「私の知っていることを端的に表すならこうなります。かなり突飛なことを言うので黙って聞いてほしいのですが……。今まで仮説として存在したウマソウルという存在、彼はそれを異世界からそのまま受け継いできた、ウマとしての能力を兼ね備えた存在です」
「ウマソウルを」
「受け継いだ、だと?」
龍治と祐介が首を傾げて言うが、タキオンは目を輝かせた。
「そうか、我々ウマ娘が異世界の名だたるウマの魂を受け継いできたというのがウマソウル仮説だが、彼がそれの生き証人ということか!」
「タキオンさんの言う通りです。私のトレーナーさんは、アベンジカーズというウマの魂をおもに受け継ぎ、そこに他のウマたちが残した未練や呪いまでも受け継いだと言っていました。そして、それは競争能力についても私たちと同じ……あるいはそれ以上の能力を秘めています」
『あたしたち以上、と来たかい。本当ならそいつはすごいね!』
画面の向こうでヒシアマゾンが言った。
「しかし、問題は相手の存在です。あちらが完全に霊体なら、こちらのトレーナーさんは肉体を持っています。どこまで体に負荷をかけられるか、その勝負になるでしょう」
カフェが最後にそういうと、その空間にも巨大なビジョンが現れた。
「さて、まず一本目といこうか」
夜の山奥に現れたアベンジカーズとグレイミラージュは、横に並んだ。二人の両肩には、夜を照らすためのライトが一つずつ着いていた。
「このコース、アキナだな?」
「さすがに分かるかい? まあ君との因縁はここで始まったんだから、見覚えがないって言ってたらいまここで張り倒してたよ」
(お前と言ったり、君と言ったり、やはり意識はそこまで安定していないようだな)
カーズはそう考えながらアキナに思いを馳せた。
デジタルケイバにより人気を奪われ始めた未来の競馬は、よりエンタメ性を高めるべく、さまざまな試みを行った。その試みの一つが、車レース好きの層を狙った策。かつて一世を風靡した漫画およびアニメ、頭文字Dのコースをそのまま再現してしまおうというものだった。あの世界では災害などもあり秋名山の峠道は廃道となったが、そこをなんとか復旧・工事し、馬が走れるような状態までもっていき、アキナダウンヒルという名で、ダートレース場として再び使われ始めたのだ。
アベンジカーズ初めてのG1はこのレースであり、同じくグレイミラージュが初めて彼に敗戦を喫したレースでもあった。
「それで、このレースは下りだけか?」
「まあ初めの一本だし、それでどうだい? 例の人質のこともあるしね」
「なるほど、短期決戦か。ならそれで乗った。……待った、カウントダウンがいないぞ」
「おや、本当だ。ちょっとあっちにつなげよう」
グレイが言うと、カフェたちの居る空間に通信がつながる。
「すまない、誰かにカウントダウンを頼みたいんだが」
「アキナって名前から想像は着いたが、そこも走り屋スタイルなのか……よし、ならカウントは俺が取る」
どうやら少しそちらの知識がある沖野が立候補した。
「先輩なら信頼できる。カウント5から頼みます」
カーズがそういうと、グレイと二人でスタートの準備をする。
「カウント行くぞ!」
沖野が手をあげ、カウントダウンを始めた。
「5! 4! 3! 2! 1! GO!」
最後の手を思い切り振り下ろすと、二人とも同時にスタートを切った。
まず先手に立ったのはグレイミラージュだった。そのすぐ後ろをアベンジカーズが追う。
「先手を譲ってくれるとは、随分と優しいね」
「お前を先に行かせた上で勝利をもぎとろうって言うんだ、これ以上の勝利はないだろうが!」
「そうこなくちゃ面白くないね! ハアアッ!!」
「そら、もっと加速するぞッ!」
現在彼らが出していたのはおよそ時速50kmといった、様子見の速度。そして、一般サラブレッドの限界速度、時速70kmまで加速していった。
その時、VR世界にいた者たち、そして現実からこれを見ている者に、ギターをかき鳴らす音が聞こえた。
「ん、なんだ?この音は」
「これは……ユーロビートね。確かに峠を攻めるのにもってこいの曲だわ!」
VR世界で龍治が疑問を浮かべる中、現実世界でマルゼンスキーが反応した。
「ああ、峠のレースアニメ、頭文字Dで一番最初に流れた、伝説の始まりのユーロビートと言ってもいい。……『SPACE BOY』ッ!」
沖野がそう言うと、ビジョンの片隅に、文字が現れた。
『DAVE RODGERS/SPACE BOY』
「随分と粋なBGMだな!」
「実際テレビで流されたっていうんだ、折角ならその雰囲気も出さないとね!」
そう言うと、グレイミラージュはさらに加速し、80km/sまで達した。
「確かにこれは嬉しい誤算だ。……なら、来いッ! マオドット!」
アベンジカーズが叫ぶと、その仮面が青い炎に包まれ、消え去った。そして、カーズも75km/hまで加速し、初めの左コーナーに入ろうとしていた。
「確かに、カフェのトレーナーは俺たちより……なんなら、フジ先輩よりも速いんじゃないか?」
「でも、それを少し上回る速度が彼女、グレイミラージュだ」
状況を分析するタキオンとポッケであったが、カフェはそれを否定した。
「確かに、今トレーナーさんの方が遅れを取っていますが、かつて見かけたのはあんなものではありませんでした。おそらく、彼女の様子を見ているのでしょう」
『様子って言っても、このまま離されたら負けちゃうんじゃないですか……?』
カフェの言葉に、通信越しにシュヴァルグランがおずおずと言った。
「いや、そういうわけでもない。どうも様子を見た限り、あのグレイミラージュってウマ娘もアベンジカーズとやらと同郷なんだろう? なら、まだあの体に慣れてなくてもおかしくない。だったら、一コーナーくらいの様子見は問題ないはずだ」
沖野がシュヴァルグランの疑問に答えると、現実世界でスペシャルウィークが叫んだ。
「最初のコーナーに差し掛かりました!」
「先に入ったグレイミラージュもコーナーはそこまで悪くなさそうだ」
「おい、噓だろ!? あいつ、あんな速度でカーブするのか!?」
祐介が状況を分析していると、龍治が大きな声を上げて言った。確かに、通常カーブを曲がるときの減速の度合いに比べれば、アベンジカーズのそれは明らかに速度が落ちていない。
「オーバースピードか!?」
後ろの様子を時たまうかがっていたグレイミラージュが、明らかに馬としてのオーバースピードを見て思わず叫んだ。
「教えてやるよ、これが、脚の弱いサラブレッドという馬じゃなく、ウマとしての曲がり方だ!」
左コーナーに入る直前、アベンジカーズは自らの重心を後ろに倒し、背中を進行方向に向ける形となった。さらに、右手を地面に着き、右足を地面とほぼ直角にして、左足をほぼ伸ばした状態にした。それは、さながらフィギュアスケートのジャンプ後の着地のようであった。
「なっ、ドリフトだとォ!?」
その瞬間、確かにグレイミラージュも、観戦している者たちも、その接地している三点に青いオーラを見た。
ウマソウルによって生成された勝負服故に、蹄鉄とダートの接触加減も意識のしようでどうにでも変えられるという、アベンジカーズならではの性質を用いて、靴とダートの摩擦を減らした状態での、脚のグリップを聞かせた三脚ドリフトに、一同は驚きを隠せなかった。
「そして、さらにッ!」
纏っていたオーラのエネルギーを右手、左脚という順で解放することで、不安定な姿勢からタイムロスなしにいつも通りの走る姿勢まで回復した。
「くっ、だがその速さではッ!」
「別にまだこっちはスピードを上げられるんだ、覚悟するのはそっちの方だッ! ウマソウル、50:50だ!」
カーズは自分の中を巡る、ウマソウルの割合を変更した。
先ほどアベンジカーズが叫んだマオドットは、彼の牧場の先輩的な立ち位置の馬で、音楽を聴くとテンションが上がり、発揮できるスピードが大きくなるという不思議な馬であった。そして、逸話が何かしらの現象に変化してしまうウマ娘世界では、BGMが流れていると速度が上がるという性質を持つソウルへと変貌したのだ。
「くっ、抜かれるわけには!」
「お先に失礼!」
その性質を以て、カーズは時速90kmの境地へと達しながら、短い直線とコーナーが続く区間へと進入した。
「そちらが他のソウルを使うというなら、こちらも、■■■■!」
そのソウルの名をカーズも、観衆も聞き取れなかったが、カーズの目には黒いナニカの幻影が映った。そして、それと同時にグレイミラージュも同じ速度まで加速していった。
「凄まじいわね、このレース。まだどっちに転ぶか分かったものじゃないわ」
「マルゼンスキー先輩が走ったら、勝てると思いますか?」
現実世界にて、呟いたマルゼンスキーにダイワスカーレットが訊ねた。
「正直、相手にされないでしょうね。……見た感じ、あの速度は時速に直せば90キロってところ。その速度がこの脚で出せるかと言われればかなり厳しいわ。速度が出せたとしても、あの速度を2分も3分も保持できるとは到底思えない。ウマソウルとやらを操れるとはいっても、あそこまで体を持たせるの、すごい努力がいるわね」
「まあ、その速度についてもなーんか裏がありそうだけどな」
チームスピカの奇才、ゴールドシップがマルゼンスキーの言葉に返した。
「あのマオドット、だったっけ? いろんな未練を背負って走ってるとは言うけど、そのウマソウルが凄い効果を発揮してるってことだろ、たぶん」
「仮にそうだとしても、実情を確かめられないのが歯がゆいですわね……」
メジロマックイーンが言った時、レースに再び動きが見られた。
連続コーナーを超えて、再び長い直線へと入ってから15秒ほどが経過した時。カーズは衝撃的なものを目にした。
「……お前、本気かッ!」
「森の中に置いとくわけにもいかないからね。まあ許してよ」
「許すとかそういう話じゃないだろう! 人質を落下させようとする馬鹿がどこにいるんだよッ!」
およそ400m先、地上から15mの高さに、ヴィルシーナの姿があった。全方向を光の壁に覆われ、空中に浮かぶ彼女の顔には恐怖が浮かんでいた。
「嘘だろ、姉さん!」
「あの女、やりやがった!」
VR世界で、シュヴァルグランと龍治が思わず叫んだ。
「まさか、あの壁の数字は……!」
そこで、東条はその壁にある数字が一秒ごとに減少していっていることに気が付いた。
「グレイミラージュとやら、人質の命に無頓着とはいえ、あそこから落とすつもりじゃないだろうな」
「おいおいモルモット君、いくら彼女でもそんな真似……否定できないねぇ!」
東条と祐介の思考が一致して、漏れ出た言葉をタキオンが拾う。それにより、現状起こりうる事象がそれを見ていた者たち全てに共有された。
――今の数字は15秒。そして、ヴィルシーナはその時間の後、あの高さから落下する。
そして、その予感は今は知っているカーズも感じ取っていた。
「おいグレイ! あと13秒ってことだな!」
アベンジカーズが下がっていく数字を見てグレイミラージュに聞くと、彼女が答えた。
「そういうことだ。私は邪魔しないから、君はとにかく頑張ってくれ。拾えなかったら、彼女の意識はパーン! だからね」
「くそ! とにかく間に合えッ!」
カーズは現状のフルスピードで直進。そうしている間に、カウントダウンは進んでいく。
「あと5秒……少し遠いか!?」
「いや、今のアイツには、その距離を詰められるはずだ……!」
見ている龍治と祐介がそう言うと、ついにカウントが0になった。
(少し遠い……なら、ブーストだッ!)
先ほどの立て直しで使った小規模の物ではなく、短距離の届かない距離を届かせるための、ダメージを顧みない加速であった。
予測されていた通り、その光の壁および床が消滅し、ヴィルシーナの体は落下を始めた。
「きゃああああああっ!?」
「もう駄目なのか、姉さん……!」
見ている者全てにとって、経過する時間が遅く感じられたその時……姉妹二人が明確な死をイメージした瞬間、ヴィルシーナは青い軌跡に吸い込まれた。
「え……?」
気が付けば、ヴィルシーナは横抱きの状態でカーズの腕の中にいた。
「何とか間に合ったが……少し爪を持っていかれたかッ!」
顔を少しゆがませながら、カーズは黙ってウマソウルの割合を2:8でアベンジカーズに寄せた。その加速のおかげで間に合ったものの、逆に跳ばなければ落下地点を追い越してしまうが故の跳躍が、カーズの脚に――特に爪に負担を掛けたのだ。
「特にけがはないか、ヴィルシーナ」
「え、ええ。ありがとう、ございます。……それより、あなたは?」
「すまん、今はそれに答える余裕がないんだ。話はあとでだ!」
すでに曲は二度目のサビを通り越した。そして、コースも残り半分ほどとなっている。
「よっしゃーっ! 和彦が取ったぞ!」
「だが、少し和彦の様子がおかしいな。なんだ、あの減速は……?」
見事な救出劇に龍治が叫んだが、沖野がその時何かに気付いた。
「あの走り……あいつさては爪をやりやがったな!」
「そんな!?」
右足側に少し重心が寄っている。沖野の目には、それが明らかに左足を庇う動きに見えたのだ。しかし、特に関節を気にしている様子でもない。問題は、爪先の食いつきが弱くなっていること。そこから、問題を暴いたのだ。
「だが今はアイツを信じるしかないだろう。負けるなよ、和彦……!」
祐介がそう言うも、事はそううまく運ばない。再び長い直線に入ろうとする前の右カーブで、少し外側に膨らんだカーズを、内からグレイミラージュが抜き去った。
「そこだっ!」
「何っ!?」
カーズはこのドリフト走行を、グレイが出来ないものと思い込んでいた。その通り、確かにグレイの頭にはそんな走り方が存在しなかった。しかし、彼女も様々なG1でアベンジカーズと渡り合った猛者であり、適応の天才でもあった。
それ故の、模倣ドリフトでカーズの意表をついたのだ。
二人が並んだ瞬間、時間の進みが遅くなったのを二人は感じた。
「ゾーン、発動か?」
領域、というものがウマ娘には存在する。カーズはそれがウマ娘になって初めての、グレイの領域であると直感的に判断した。
「ま、あたしが引きずり込んだのさ。この極限の集中力を発揮した時に、時間の進みは遅くなる。ただし、その時競争相手も同じ時間軸まで持ってくることになるから、そこまでの優位は得られない。だけど、考えを纏めるにはちょうどいい時間だよ!」
そしてゾーンが解けた瞬間、グレイが再び加速していった。
「あっ、抜かれちゃいましター!」
「さあ。追いつけるかしら、アベンジカーズさん?」
現実世界でそれを目撃したタイキシャトルとマルゼンスキーが話していると、アベンジカーズがヴィルシーナに話しかける。
「この体勢だとやりにくいな……ヴィルシーナ、すまないが背中におぶさる形になれないか?」
「出来ますけれど……背中に荷重がかかった方がやりづらくないですか?」
「まあ、君たちウマ娘には慣れていないかかり方ではあるが……こっちとしては話が変わってくる。アイツをもう一回抜くためだ。すまないが、移動を頼む!」
「そうですか、わかりました!」
ヴィルシーナがカーズの首に両腕を回したのを確認すると、カーズはヴィルシーナの体を勢いつけて右に回転させる。そして、ヴィルシーナの体はカーズの背中に収まった。
「これで手は使える。そして足もそろそろソウルの修復で治る。……ここから加速して、勝負
はこの先の五連ヘアピンカーブで着ける!」
調子の戻ったアベンジカーズが、グレイミラージュを猛追する。
「アベンジカーズが加速しました! 脚は大丈夫なんでしょうか?」
北里がその様子を見て東条に訊ねた。
「おそらく、彼が大丈夫だと思うのなら問題ないのでしょう。それにしても……結構見ごたえのあるレースね。実際にこういったレースが見られれば面白いと思わないかしら?」
「その言葉には全面的に同意なんだが……あんな無茶な走りできるのはおおよそアイツだけだろうよ」
東条の言葉に沖野がそう返すと、たづなが理事長にいった。
「そういうわけですので、この騒動が終わっても新しいレースの開催は現状認めるわけには行きませんよ、理事長?」
「残念ッ……だが、ああいった怪我をしかねない走りを生徒たちにさせるわけもないのでな!」
体勢を整えたアベンジカーズがグレイミラージュの背中を再び捉えたとき、すでにコースは五連ヘアピンの直前まで差し掛かっていた。
「減速なしとか、そういう感じじゃさすがに走れなさそうなコースだね」
現実世界でトウカイテイオーが言うと、VR世界でジャングルポケットが続く。
「さすがにドリフトにしたって、速度は落とさないと超えられないはずだ。けど、このままだったらあのグレイミラージュは追い越せないよな……?」
「ジャングルポケットの言う通り、普通じゃ追い越せない場面だ。だが、アイツがさらに一つ切り札を持っているのなら、話は別だ」
「まさか、彼がヒトの体で溝落としをやろうとしてるっていうの!? でも、それにしたって、ヒトの体でどうやって……」
沖野がそう言うと、マルゼンスキーが驚いた。
「確信はないが、アイツならやりかねないからな。しかも、溝を見てみろ。実際の山にあるような溝じゃない、『蓋がない側溝』だ。あれなら、手か足くらいなら突っ込めるだろうよ」
沖野が冷静に判断した。
「溝落とし、って一体なんなんだい?」
フジキセキがマルゼンスキーに訊ねると、よくぞと言わんばかりに解説を始めた。
「峠の走り屋の技で、ああいうキツいカーブを減速せずに回るための技よ。何もカスタマイズしてない車じゃできない芸当。普通に走る車なら、減速しないと遠心力で車を持っていかれるけど、例えばジェットコースターみたいにレールがあれば、車にかかる遠心力は車のコースに影響しないでしょ?」
「それを溝で代用しようというのかい!? 恐ろしいこと考えるヤツもいたもんだねえ」
マルゼンスキーの答えにヒシアマゾンが返したその時。BGMが様子を変え、ギターの前奏が鳴り始めた。
「さっきまでの音楽が、止まった?」
「……来たか! ヴィルシーナ、しっかり掴まってろよ。少し厳しくいくからなッ!」
「……え???」
その瞬間。その場にいた全員に声が聞こえた。
“GAS! GAS! GAS!”
「ここでこの曲か……なら、見せてみろよ、アベンジカーズ!」
ビジョンの曲名が変わり、こう映し出された。
『MANUEL/GAS GAS GAS』
「相手がドリフト出来ようが関係ねえ! ここで抜き去ってやるッ!」
グレイとカーズの感覚は今一バ身と言ったところ。
ついに最初の右ヘアピンに差し掛かる。グレイが二脚ドリフトのために速度を少し落とすと、そのさらにインをカーズが減速なしで突っ込んだ。
「はっ……!?」
緊張が高まり、グレイのゾーンが発動したその時、グレイはカーズの右手に灯る、青い炎を見た。
(手にソウルのエネルギーをためて、一体どうする気だ!?)
そして、カーブの直前。Aメロに突入した瞬間、カーズが右側の溝に右手を突っ込んだ。
「ほ、本当に溝落としをやるつもりか!」
「嘘でしょう!?」
沖野とマルゼンスキーの驚愕をよそに、アベンジカーズは横向きのGに耐えながら、一つ目のヘアピンを曲がる。
「ま、曲がった! 本当にアイツが曲がったぞ!」
「あれが、溝落とし……!」
龍治と祐介が驚愕する中、曲もレースも進んでいく。
“Guess you're ready' Cause I'm waiting for you.
It's gonna be so exciiiiiting!
Got this feeling Really deep in my soul.
Let's get out I wanna go come along... get it on!“
「ゾーンは切れてないはず。なのに、ヤツの動きが全く分からない……見えない!?」
グレイが叫ぶが、その間にカーズは反対の溝に同じく手をかけ、二つ目を曲がった。
“Gonna take my car gonna sit in!
Gonna drive alone till I get you'Cause I'm crazy... hot and ready but you'll like it!
I wanna race for you, shall I go now?”
「……勝った」
「ああ、この勝負、ヤツの勝ちだ!」
そして、ついにグレイのゾーンも切れた。カーズはその次も、次の次のヘアピンも攻略していった。その様子を見て、東条が呟いて、沖野が叫んだ。
“Gas gas gas!
I'm gonna step on the gas Tonight I'll fly and be your lover.
Yeah yeah yeah! I'll be so quick as a flash And I'll be your hero!
「そんなバカな話があるか! アイツ一体何をしやがった!?」
さすがのグレイミラージュも、詳細が見えなかった技を模倣することは出来ない。このカーブで大差がついて、その差はその後も挽回できず。
“Gas gas gas!
I'm gonna run as a flash Tonight I'll fight to be the winner
Yeah yeah yeah I'm gonna step on the gas And you'll see the big show!"
「よし、ゴールだッ!」
叫びながらアベンジカーズがゴールを果たし、カーズとヴィルシーナが先に元の場所へと転送された。
「戻ってきたな! よくやったぜ和彦―ッ!」
「そうひっつくな龍治。ヴィルシーナを下せないだろ」
「おっと、そうだな悪い。いやー、にしても本当にシビれたぜ! よく彼女を空中でキャッチできたな」
カーズはヴィルシーナを背中から降ろしながら答える。
「さすがにちょっと追い越しそうになった時には焦ったがな。……まあそれよりも。俺の勝ちだな、グレイミラージュ」
遅れてゴールしたグレイも、再び龍治や祐介たちの居る空間へと戻ってきた。
「さすがに完敗だ。バラストまで乗っけといて、よくもあんなことが出来たね」
「ウマ同士の戦いならわからなかったが、ヒトの体の扱いに関しては俺の方が上手だったってだけだろう。お前もだんだんその体に慣れてきてるし、次はもう正直怪しいな」
「またまたそんなこと言っちゃって……それじゃ、二本目、行こうか」
そうして再びグレイミラージュが指を鳴らそうとするが、それを龍治は止めようとした。
「まあ待て、グレイミラージュ。実体がないお前と違って、和彦は肉体があるんだ。負担がでかすぎるとは思わないか?」
「……彼はそう言ってるけど、どうなんだい、アンタは」
一理ある、という表情でグレイはカーズの方を向いた。彼女としても、万全ではない状態のアベンジカーズを相手にするような趣味はないのだ。
「ありがとう、祐介。だけど、問題ない。こんなふざけた試合はさっさと終わらせるに限る。さっさと連れてけ、グレイミラージュ」
「オッケー! ほいっと!」
そうして二人は再び戦いの場所へと赴いた。
グレイミラージュの話し方が安定していない?
そういう存在だからね、しょうがないね。つまり意図的ってことです。
使用楽曲
DAVE RODGERS/SPACE BOY
MANUEL/GAS GAS GAS