個性的なトレーナーの短編集   作:B&B

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個人的には久しぶりにこちらの章を更新します。あと、タイトルをこうつけましたが、レース描写はする気がないのでanger要素は少ないです。お兄さん許して。


怒れる女神たち

「へえ、VRでの練習と来たか! サトノは随分と面白い物を作ったみたいじゃねえか!」

 トレーナー達に配られた書類には、メガドリームサポーターというものについてのお知らせが書かれており、それをみた龍治が大声で言った。

「ある先輩から聞いたことがある。確かもともとVRウマレーターという物はあったらしいが、それを発展させたのがこれになる、とか」

 祐介がそれに補足する形で言う。

「三女神を名乗るAIとは、また恐ろしいものを作り上げたな」

 和彦が率直な感想を言った。すると、龍治が反論する。

「まあそういうなって。名前がどうこうってわけじゃないけど、ホントの三女神の走りを模倣してるなら、すげー経験値になるってことだろ!? ちょっと見るのが楽しみになってきたぜ、俺は!」

「俺はあくまでシンギュラリティとかそういう事を言いたかったわけで……! なんというか、俺も走りを観れるならわくわくするぞ?」

 無論、俺の走りが通用するかも試せるのなら試したい、と和彦は心の中で思った。

「しかも、VRでの経験は現実の肉体にフィードバックが可能と書かれているな。なら、これからはVRも現実のトレーニングもやっていくのが主流ということになるな」

 祐介が言うと、三人はすぐにそのVRの使用申請を書き始めた。この日、確かにトレセン学園で何かが変わったのだ。

 

「さて、それでようやく申請が通ったわけだが、どうだカフェ? 何か異常はないか?」

「ええ、私の感覚としても、現実の世界と何も変わらないですね」

 カフェと和彦が二人で技術力に驚いていると、そこに三女神が現れた。

「この、感覚は……!?」

 和彦の中のウマソウルが、確かに感じ取ったのは、目の前にいるのがAIだろうが、確実に三女神の名を名乗るにふさわしい存在であるということだった。

「うん? おかしいな、今一瞬だけウマ娘の反応が二つあったような……?」

「阿呆が。目の前にいるのはトレーナーとその担当だ、二人目なぞ存在するはずがない」

「まあまあ、それはさておき、二人に挨拶しないと!」

「……何というか、随分と分かりやすい色分けですね」

 現れた三人を見て、カフェがぽつりとつぶやいた。確かに、赤青黄となれば、かなり見分けはつきやすくなる。

「まあ、そういう特徴だったんだししょうがないんだけど……まあ、今言われた通りにいうなら、俺が赤のダーレーアラビアンで」

「わたしが青のゴドルフィンバルブで!」

「……言わなければだめか? 黄のバイアリータークだ。そういうわけでよろしく頼む」

「随分と気の利いた自己紹介をありがとう。俺が阿倍和彦、そしてこちらが」

「担当のマンハッタンカフェです、よろしくお願いします」

 そうして邂逅を果たした後、カフェはバイアリータークと併走トレーニングを始めた。

「やはり、三女神の名にふさわしい走りだな……!」

「そう言ってくれるならうれしいな、子羊くん」

「こ、子羊……? まあ、いいか」

 和彦はダーレーアラビアンから珍妙な呼び名をもらったが、それを受け流した。

 そうしてあたりを見回すが、同じくメガドリームサポーターを使っている龍治や祐介の姿も見えない。

「もしかして、今サポーターを使っているペア同士は隔離されているのか?」

「まあ、そういうことになるわね」

 ゴドルフィンバルブが答えると、和彦は胸の奥から立ち上る炎を感じた。

「なら、あの姿になれても、なれなくてもいいんだが……これでッ!」

 いつもの通り、和彦がウマソウルを活性化させると、耳と尻尾の幻影が現れる。

「ん!? やっぱり! ウマ娘の反応だよ、これ! 一体何をやったんだい子羊くん!?」

「まさか、さっきのはミスだと思っていたのに、ホントにあってたなんて」

「やはりできたか! よし、折角他の誰にも見られない場所が増えたんだ、ちょっと慣らすか!」

 その場で少し準備体操し、和彦は地を蹴り、駆け出した。

「速い! 本当になんなんだあの子羊くんは!」

「あんなの見せられたらこっちも我慢できなくなってきたわね……!」

 そして、その後ろを場に残された女神たちが追いかけ始める。

 

「後ろから……! 来ましたね、アベンジカース!」

「アベンジカース……? なっ、何故あのトレーナーが走っている!?」

 気配を感じたカフェがそういうと、バイアリータークが後ろを振り向き、何が起きているのかを把握した。

「どうしたカフェ! いつもよりも随分スローペースだぞ! 爪の調子が悪いわけでもないだろう?」

「いえ、こちらも三女神AIの力を見せてもらおうと思っただけです。それにしても、随分と、ハイテンションですね……」

「ハッハッハ! 誰にも見られないコースが現れたんだ! 全力で楽しまねば損というものだろう! では失礼するぞ! 悔しければ着いてこい鈍行!」

「さすがにキレますよトレーナーさん!!!」

 和彦の言葉に怒ったカフェが金の眼を光らせながら加速していく。

「おいダーレー! 何がどうなっているのだ!?」

「俺に聞かないでくれ! こっちも状況が把握出来てないんだ!」

「というか、カフェさんに鈍行と言ったという事は、今彼女とほぼ同じステータスに設定してあるわたしたちのことも鈍行と言ったことになるのでは……?」

「「「……絶対に負かすッ!!!」」」

 和彦の言葉を婉曲的に捉えたゴドルフィンバルブの言葉で、三女神一同もまた怒りを覚えた。この結果、カフェとバイアリータークの併走のはずだったトレーニングは、和彦バーサス怒りを覚えたウマ娘4人という代物に変わった。

 

「それで? 何か言い残したことはありますか?」

 結局AIたちが設定したゴールラインを全員が超えた後、カフェは立ち止った和彦に詰め寄った。その顔から怒りを感じ取り、また自分が担当になんと言う事を言ったかを思い出して自然と正座した。

「あー、一応言い訳をさせてほしいんだが……。あの言葉は俺が言った言葉じゃないんだ」

「……詳しく聞きましょうか」

「どういうことなの……?」

 冷静になったカフェが何が起きていたか想像できたのに対し、和彦の事情を知らないゴドルフィンバルブは疑問符を浮かべた。

「三女神のウマソウルの元になった馬の子孫の魂どもが、祖先に良いところを見せようといきり立って、同調していた俺の精神状態が無理やりレースしてた時のそれまで持っていかれました」

「そんなに重症だったんですか!?」

 驚くカフェの前に、和彦に宿ってたウマソウルたちが白く光るヒトガタとなって現れ、カフェに土下座し始めた。

「どういう空間なんだ!? AIが判定できない状況って何なんだ!?」

 AIが状況理解をあきらめ始めたので、和彦は自分を取り巻くウマソウルの状態を三女神たちに明かした。

「ウマソウルについては論文などでも仮説の段階としてしか触れられていなかったが、まさかその実証となる人物が現れるとは、驚いたな……!」

「何というか、面白いデータなのは確かなんだが、このデータを明かすわけにも行かない、かといって捨てるには惜しい。……どうするッ!?」

「つまり、私たちの内誰かの子供という事でよろしいですか? 頭、なでましょうか?」

「AIなら情報をきちんと精査して受け止めてください。甘やかしは不要ですから落ち着いてくださいゴドルフィンさん。あと誰かのたうち回っているバイアリーさんを止めてあげてください、この際ダーレーさんでも良いので」

「なんで俺だけ少し他より頼りない、みたいな評価を受けているのかな?」

 ……しばらくして落ち着かせ、今回、そしてこれから取れる和彦のデータは真っ黒の影のようにして隠しキャラ的データとして保管されることになった。

 そうして、メガドリームサポーターの使用時間の期限が来たので、和彦とカフェはVR空間から出た。

 

「お、祐介、和彦が来たぜ?」

「そのようだ……何故カフェちゃんにそんな腕をつねられているんだ?」

「色々俺がVRの中でやらかしてな。俺の名誉のためにカフェには黙ってもらうが、その埋め合わせを今度することになった」

「「今度は何をやらかしたんだ?」」

「やめろ、真顔で言わないでくれ。俺が何をやらかしてもおかしくないという顔をやめろ」

 和彦は腕にカフェが引っ付いた状態で、先に帰路についていた祐介・タキオンペアと龍治・ポケットペアと合流した。

「おやおや、随分とやらかしたらしいね、カフェのトレーナーは」

「だからって、あんなになるのか、カフェが?」

 タキオンとポケットはその光景を遠巻きに見ていた。

「いいぜ? どうせこの後飲み会なんだから、今度こそお前を酔わせて聞き出してやる!」

「龍治、ここは共同戦線と行こう」

「前々から決まっていたことだから、頼むから離してくれカフェ!」

 そこでようやくカフェは和彦の腕から手を外し、和彦に挨拶してタキオンたちの方へと向かっていった。

「まあ、時間も時間だ! ポッケ、俺たちもここで別れることにするわ!」

「すまないタキオン、俺たちもここで別れよう」

 祐介と龍治がそういうと、和彦の右腕、左腕をそれぞれロックし、そのまま和彦を連れ去って言った。

「やめろ、ハ・ナ・セ! そんなことされなくても俺は飲み会行くぞ!」

 うおおおおお! と叫びをあげていく和彦をカフェは見送った。

 

「どうしてモルモット君は一人だと落ち着いてるのに、三人になると一気にボケ始めるんだろうね?」

「それはめっちゃわかるぞタキオン。おれのトレーナーも普段めっちゃ頼もしいのに、あの三人になるとあまりにも男子高校生みたいなノリになるっていうか……」

「私のトレーナーさんもその傾向にありますね。やはり、三人組というか、複数人集まるとテンションが上がるものなのでしょう」

 トレーナーと別れて歩く三人は呆れる様子を見せた。

 ――でも、まあ。

(そこが面白いところだ!)

(いつか、おれもあのくらいの笑顔を浮かばせてやる!)

(そこがトレーナーさんのいいところなんですけどね)

 担当も担当で、そんなトレーナーのことを存分に気に入っていたのだ。

 




阿倍和彦(カフェトレ)
 三馬鹿その一。担当ウマ娘に史上最悪の暴言を吐いてしまった男。実は重要なところで未練を抱えたウマソウルを制御しきれないという爆弾を抱えている。そのため、昂っているときには口調が迷子になる。ちなみに飲み会では9杯ほど飲まされたが、やはり酔う事はなかった。

マンハッタンカフェ
 トレーナーに史上最悪の暴言を吐かれたかわいそうな子。なお5人でレースした結果は、和彦の勝利であった。目標は、お友だち、そして和彦の撃破となった。

三女神
 今回の話は、パパに良いところを見せようとした息子が、年下をダシにしたときに同時に親の地雷を踏んだ、ということでまとめられる。三年間の先にある最終レースでは、アベンジカースも同時に迎え撃つことを決断した。

坂田祐介(タキトレ)
 三馬鹿その二。タキオンには毎日お弁当を作っているが、それを始める時に、料理の基礎を和彦から教わっている。今回の飲み会は4杯飲んでダウンした。

坂本龍治(ポケトレ)
 三馬鹿その三。ポケットとはなんだかんだ良い関係を築けている。それはそれとして、和彦が秘密にしたことを暴こうとしてる。今回の飲み会は6杯飲んで限界を察し、打ち止めとなった。
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