「まあ、そういうわけでアスランはナリタブライアンに追いかけられてたってわけ」
『なんでそこそこの間逃げきれてたんです????』
『やはり最強はアスランか……!』
先日の騒動から数日たった日の夜。真の個人チャンネルでの配信が行われ、そこで真はウマチューブに投稿された逃走劇の顛末の説明をリスナーに求められていた。
「俺も他の人に比べたら速く動ける自身はあるけど、ウマ娘ほどとは行かないからな。癪ではあるけど、アスランはやっぱ強いや……あれ? こんな時間に誰だ? 今日はUberも頼んでないんだけどな……。ちょっと配信このままで失礼するな」
真が話している最中、インターホンが鳴ったので真は玄関へと向かった。
「え、ちょ、エア!? なんでこんなところに?」
ひとまず外に放置するわけにもいかず、真はエアグルーヴを部屋へと入れた。
「何、しっかり片付いているかの抜き打ち点検だ」
『担当キターーーーーーー!』
『なんで担当ウマ娘がトレーナーの部屋を点検してるんですか?』
『察しの悪い現場猫おるな?』
突然の来襲にコメントが沸き立つ中、真は胸を張った。
「配信中だから部屋には入らないでほしいんだけど……ほら、きれいなままだろ?」
ドアが映る方にはカメラを置いていないので、入口でエアグルーヴをとどめて中の様子を見せた。いくら掃除が趣味な担当だろうと、いつまでも頼りない場面を見せてはいられないのだ。
「……そのようだな。迷惑をかけたな。では私は失礼する」
『姿は見えないのにすっごく悲しそう……』
『なんでこういう時に限ってたわけしてないんだたわけ!』
『たわけ、どうにかしろ!』
画面越しにエアグルーヴの異変を感じ取ったリスナーがコメントを流す。真はこの時画面を見ていなかった。だが、同じく真もエアグルーヴが気落ちしていることには勘づいていたので、何とかリカバリーを図った。
「あー、そういえばリビングの方は微妙だったナー」
「……自覚があるのならしっかりしろたわけ! では私は掃除に入るぞ!」
『すっげえ元気出てきてる』
『あんまりにもハッキリしすぎてて草』
『やればできるじゃねえかたわけ!』
真の声には少し棒読みも混ざっていたが、無事にエアグルーヴのやる気をあげることに成功した。この手腕にはリスナーからも称賛の嵐であった。
「……さて、さすがに担当に掃除させてるときに呑気に配信してられないよなー……」
エアグルーヴがリビングへと向かった後、真は再びカメラの前に戻って言った。
『もう終わりですか?』
『担当との絡みを見せてくれるだけで助かる命があるんですよ?』
『せっかくだから料理とかふるまってみたら?』
配信の終わりを惜しむ声もある中、真は一つのコメントに目を付けた。
「料理配信か。じゃあ久しぶりにやるか!」
そうして真は機材をキッチンへと移した。
リビングでは一仕事終えたエアグルーヴがソファに座っていた。
「こちらはもう掃除を終えてしまったが、どうしたんだ?」
「ああ、これから料理配信をすることになったんだ。ぶつぶつ言ってるとは思うけど許して」
「ふむ、たわけの手料理と来たか。……私の分はあるのか?」
「あるある! 担当をハブって飯食べるトレーナーがいるかよ。ちなみになんかリクエストとかない?」
「せっかく配信をしているんだ、リスナーに尋ねてみてその中でできそうなものを作ってほしい」
「あい了解。……そういうわけで、何か作ってみてほしい物とかある?」
真がリスナーに尋ねると様々なコメントが流れ出した。
『前に作ってた飛鳥家のカレー作って!』
『そろそろ暑くなってきたので冷やし中華とか?』
『暑いときこそ熱いラーメンじゃね?』
『ちくわ大明神』
『誰だ今の。リクエストはチャーハンで』
「うわ、なんかコメントがカオスなことになってる……えーっと、この材料なら……卵使っちゃいたいな。ならチャーハンか? いや、けど肉は鶏しかないんだよなあ。しかもネギないし」
『オムライスを作れ、とガン〇ムは言っている』
「別にガ〇ダムは言ってねえよ。なら、オムライス決定で」
そういって真はエプロンを取り出した。それは、有名なドラゴンのエプロンだった。
「おい待てたわけ! なんだその、……大人が着るにはアレなエプロンは!」
「失礼だな、男の憧れ、ドラゴンだぞ? ……エアが買ってくれたエプロンは今洗濯して干してるところなんだ」
『久しぶりのドラゴンキター!』
『俺も持ってたな。今はさすがに着てないけど』
『出た! 高校生になると一回恥ずかしくなるけど大学生になってもう一回かっこよく感じるドラゴンシリーズ!』
「……あまり理解できないな。何故そんなにドラゴンに興奮するのだ……? まあいい。何か手伝うことはあるか?」
「いや、エアは今日はゆっくりしときなよ。生徒会、最近忙しいんだろ? 休めるときに休まないとな」
「そうか、ではその言葉に甘えておこう」
「……さて、じゃあ調理開始。炊飯器オン!」
この後も配信は続く。
「取り出したるは包丁、銘をアロンダイトという。そこにビームシールド的なまな板も合わせれば……シン・アスカ、デスティニー! 行きます!」
『やっぱりシン・アスカで草』
『ジャスティスだったら負けそうっすね』
『物まね上手っすね』
「別に物まねをしてるわけじゃないんだけどなー」
(何かのアニメなのだろうか……シン・アスカと。……アニメに落とし込んだようなたわけと思えばほぼ同一人物ではないか!)
『今日は分身しないんですか?』
「ちょっと今日は分身の調子が悪くて……良くてもこの部屋の中じゃあんまり制御が効かないし」
『なるほど、今は寝ぼけた分身なんだ』
「リスナーも何故たわけが当たり前のように分身ができると思っているんだ??」
『エアグルーヴさんの躾の結果じゃないの!?』
「私がしつけられるような分身をしているなら、既にレースに使っているでしょうね……」
「オリーヴオイルは! こうやるんだああああああ!」
『もこみ〇スタイルのオリーヴオイルかよォォォォォ!!』
『今日のこうやるんだああ、いただきました』
「オリーヴオイルの使い過ぎだ、たわけ!」
『たわけノルマも!?』
『別に今日で初めてのたわけじゃねェだろうよ』
「最後の方はナチュラルにエアも配信に映ってたな」
「私としてもこういった機会は貴重でな。私も配信初めてみるか……?」
「そうなったら人気が出そうだな、っと。さて、完成したから、最近見かけたヤツやるか」
「最近見かけたヤツ、だと……?」
ドゥンドゥンドゥンドゥン……ドゥンドゥンドゥンドゥン……
『あっ、これは……』
『総員、防御姿勢!!』
(流れ出す音割れMeteor)
(引きと寄せを繰り返すカメラワーク)
『オムラ↑イスだったんだ、俺は……』
『今回はアスランいないだろ!?』
「……何事なんだ??」
一部カオスな配信となったが、今は落ち着いて、真とエアグルーヴは二人で出来上がったオムライスを食べていた。
「途中あまりにハイテンションだったので、驚いたぞ」
「まあトレーナーのマンションってことでURAに紹介された物件で、防音性が確かめられてなかったらこんなに騒いではいられなかったよ。……結構上手に出来たな」
『うまそう(小並感)』
『二人の子供に生まれたかった。絶対いい家族になるやんけ』
「……あまりそう恥ずかしいことを言うな!」
エアグルーヴが赤面し、真は何か変なコメントが流れたのかとパソコンを操作しだした。
「え、何々コメント? セクハラならモデレーター頼む。まずいな見逃した!」
「たわけには一番見られると困る!」
「なんで????」
コメントを見ようとする手をエアグルーヴが止めると、真はクエスチョンマークを浮かべた。
「さて、それじゃ今日の配信はここまでにしようかな。配信終了のボタンはそこだから押しといてくれ。あとついでに、せっかくだから、エア締めといて」
「急に無茶ぶりを振るなたわけ! ……まあ、なんだ。次回もたわけの配信をよろしく頼む」
『おつー』
『おつかれー』
そうしてエアグルーヴは画面を操作して、キッチンで洗い物をしている真の方へと向かった。
「お、終わらせたか?」
「ああ、言われた通りに操作したぞ」
「そかか。なら――おいで?」
『あれ、まだ終わってない?』
『あーっ! 女帝がたわけの肩に顔のせてるー!』
『あら^~』
「最近やっぱりお疲れみたいだな」
「ああ。ファン感謝祭もそろそろ近づいてくるからな。貴様にこうして甘えられる時間も少ない」
『しっぽまで巻き付けてる……』
『ウマ娘の生態博士、これは一体……?』
『尻尾ハグですね。端的に言うなら愛情表現になります』
「……あれ!? カメラまだついてるな!?」
「何だと!?」
……その後、大慌ての真の手により配信は終了した。それはそれとして尻尾ハグの場面はしっかりと切り抜かれた。
この世界にもガンダムはあるし、ガンダムSEEDはあります。制作環境が全く同じかはさておき……。あと音割れMeteorのくだりはアスランクッキーと検索すれば見られます。
登場人物
飛鳥真(たわけ)
小学校の家庭科で作ったものは大概ドラゴン。大人になったら昔を懐かしむ製品と化している。CVまでシン・アスカとなっている。ニュータイプではないけど人の機敏には結構鋭い。
エアグルーヴ
女帝だって甘えるときくらいある。今回の件のせいでガンダムSEEDにはまりかけている。いずれ生徒会に広めるつもり。男子高校生テンションにおいてかれちゃったかわいそうな娘。多分10数年すれば分かる。