狐のおまわりさん   作:無名の作者

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全身日焼けだらけでヒリヒリする…なぜ私は半袖短パンで船に乗っていたんだ…
みなさんも外に出る時は日焼け対策と水分補給しっかりね


第十一項

 

ヒナの登場に各所でザワつき始める風紀委員たち。

いつにも増してすごい気迫だ、そりゃまぁヒナ目線からしたら雷帝関連のネタをエサにいいように動かされたように見えるわけだから仕方ないと言えば仕方ないか。

 

⋯あれ、ボクこの後しばかれる流れじゃね?

 

「こ、これは便利屋の4人を捕まえようとして⋯」

 

「便利屋?私にはサクラとアビドスの生徒、そして先生と対峙しているようにしか見えないのけれど?」

 

「いえ、便利屋ならそこに⋯」

 

視線を先生たちの方へ戻すと便利屋の4人は既に撤退した後のようだった、ヒナが来るまでは気配もあったはず、ヒナに気を取られた隙に逃げられてしまった。

これが終わったら矯正局にでもぶち込んでやろうと思っていたが⋯まぁいい、素性は割れている、すぐに見つかるだろう。

 

「いつの間に逃げたのですか!?前線にいた部隊は何をして⋯」

 

「アコ」

 

「は、はい!」

 

「詳しい話は帰ってから聞く、通信を切って反省文の準備をしておいて」

 

「はい⋯」

 

アコとの通信が切られ現場を沈黙が支配する。

極度の緊張状態、主にボクに向けられての圧だろうがヒナレベルとなると周りにも相当な効果を及ぼす、こんな状況で舐めた発言なんてできるような猛者はここにはいな⋯

 

「じゃあ、改めてやろうか」

 

いたわ。

 

「ちょっと待ってください!ゲヘナの風紀委員委員長と言えばキヴォトスでもトップクラスの実力者ですよ!?ここは一旦交渉しましょう!」

 

「ご、ごめん⋯」

 

「えっと、こちらはアビドス高等学校対策委員会です。ゲヘナ風紀委員長さんで間違いありませんね?この状況については理解されてますでしょうか?」

 

「⋯えぇ、事前通達無しでの他学園自治区周辺で兵力の運用、及び他学園生徒との衝突と言ったところかしら」

 

「そうよ!おかげで商店街もボロボロ、街のみんなだって今は逃げて遠くに⋯」

 

「けれど、そっちが先にこちらの公務を妨害してきたのも事実⋯違う?」

 

「そっ、それは⋯」

 

「ちょいちょいヒナちゃん、相手は1年の子だよ?もっと優しく行かないと。ボクなんて怖くて怖くて仕方ないんだか⋯グェ」

 

低く響く発砲音と同時に1発の弾丸がボクの頭部をぶち抜く、めちゃくちゃいてぇ⋯

 

「あなたには後で話を聞くから黙ってて」

 

「ヒャイ⋯」

 

"大丈夫なの⋯?"

 

「生命力なだけならその辺のゴキブリよりもしぶといから大丈夫よ」

 

「比較対象ゴキブリなんだ⋯」

 

「それで今回の件についてだけど⋯大人しく手を引いてくれる気は無いかしら?互いに不手際があったのは事実、これ以上争う必要は無いと思うのだけど?」

 

「それはそうだけど、街をこんなことにした責任はとってもらう」

 

「私たちの意見は変わりませんよ?」

 

「便利屋もサクラさんもいないのにどうしてそんなに好戦的なんですか!もう⋯こんな時ホシノ先輩がいれば⋯!」

 

「⋯ホシノって、小鳥遊ホシノのこと?」

 

「え?」

 

「うへ、こりゃまた随分とすごいことになってるじゃ〜ん」

 

「ホシノ先輩!」

 

背後から気の抜けた声と共にホシノが欠伸をしながら散歩でもしているかのように現れた。

その様子は場違いとも言えるようにも見えるが内心穏やかではないのかいつもより気配がピリピリしている、ヒナもなぜかイライラしていることを考えると今ここで怪獣大戦争が始まってもおかしくない状況ではある、早く帰りたい。

 

「いやぁ〜昼寝してたら少し遅れちゃってさ」

 

「こんな時に呑気に昼寝!?」

 

「ん、でもゲヘナの奴らは全員倒した」

 

「まだ全員では無いですが⋯サクラさんがある程度倒してしまいましたね」

 

「いやぁサクラちゃんもありがとね〜⋯んで、そのサクラちゃんはなんでそこで伸びてるの?」

 

「やられ千葉ァ」

 

「そっかァ〜、まぁとりあえずこれで対策委員会も全員集合したわけだし、改めてやり合ってみる?」

 

相変わらずやる気満々なアビドスの一味に対し⋯と言うよりはホシノに対してヒナは少し驚いたような表情を浮かべている。

今の隙に少し離れ⋯あ、銃口こっち向いたままじゃん。

 

「⋯1年前とは人違いかと思うくらいには人が変わったわね」

 

「ん?おじさんのこと知ってるの?」

 

「情報部にいた頃に各自治区の要注意人物についてはある程度把握していたの、サクラやあなたについては特に徹底的にマークされていたわ」

 

「うへ、おじさんも有名になったものだねぇ」

 

「でもあの事件以降、その話も聞かなくなってからはアビドスを去ったと思っていたのだけど⋯あぁ、なるほど⋯だからシャーレが⋯」

 

後半はほとんど独り言のように呟いていてほとんど聞き取れなかったがヒナなりにこの状況について理解ができたらしい。

 

「イオリ、チナツ、撤収準備」

 

「えぇ!?」

 

「帰るんですか?」

 

「事前通達無しでの兵力の運用と自治区の近くで騒ぎを起こしたこと、これらの事案についてはゲヘナ風紀委員会の委員長である私から正式に謝罪させてもらう」

 

そう言って頭を下げるヒナ、アビドスの面々もその様子に毒気を抜かれたのかそれ以上何かを言及するような様子は無かった。

 

「でも便利屋の奴らは⋯」

 

「イオリ」

 

「うぅ⋯」

 

一睨みでイオリを含めた風紀委員達が即座に撤収を始めた、当の本人は先生の元へ向かい何か話している様子。

銃口が外れている今がチャンス、逃げるなら今しかない。

 

「んじゃ、ボクもこの辺で失礼するよ」

 

「はい、今日は本当にありがとうございました⋯サクラさんがいなければどうなっていたことか」

 

「ん、次来た時は勝つ」

 

「なんで戦う気満々なのさ⋯それと、柴関の大将はアビドスの中央病院の方に搬送してあるから見舞いに行ってあげてね」

 

「そうよ!大将は無事なの!?」

 

「軽いやけどを負った程度で特に問題は無いよ、周辺の通行人もみんな無事だったし」

 

「そう⋯」

 

「それじゃあみんなでお見舞いに行かなきゃですね!お店を建て直すことになったら皆さんでお手伝いしましょう♪」

 

どうやらあそこの土地問題についてはアビドス側も把握していない状態にあるらしい、余程慎重に動いていたのだろう。

理事だけでそんなことが出来るのか?もしかしたらプレジデントまでもが動いている可能性もある、こちらからも一歩踏み入った対応をする必要があるのかもしれない。

 

「サクラちゃん、ちょっといい?」

 

くいくいと袖が引かれたかと思うとホシノがこちらに向け小さく手招きをしていた、耳を貸せということだろう。

 

「どしたん?」

 

「この状況、サクラちゃんの仕業?」

 

「いや、まじで今回は被害者側、ラーメン食べに来たら大爆発とか、ホントついてないよ」

 

「なら尚更、なんでまだこんなところにいるの?」

 

「誰だかさんがいなくて面倒事になりそうな気がしたからとかかな、そっちこそ何してたのさ」

 

「さっきも言ったじゃん、ちょっと一眠りしようと思ったら寝すぎちゃってさ」

 

あくまでシラを切るつもりか。

別に無理に聞き出そうとも思っていないため深くは言及しない、と言うよりホシノがこんな騒動を放っておく程の案件と考えるとそれなりに面倒な内容のはず、触らぬ面倒事に祟りなし。

 

「まぁいいけどさ、ただでさえ厄介なことになってるんだから後輩の面倒くらいちゃんと見てよねぇ」

 

「うへ、おじさんはみんなのママじゃないよぉ〜」

 

踵を返し帰路へと着く。

明日はカンナのところに行かなきゃ行けないし本来の目的だった七囚人に関する情報はゼロ、いつになれば平穏な交番生活に戻れるんだ⋯

 

まぁいざとなればゲヘナの万魔殿に今日のヒナが頭を下げている写真でも流してやれば情報集めの一つや二つは簡単にイダダダダダダダタ

 

「ちょっ、頭を鷲掴みにするのはやめてくれないかなぁ!?」

 

「なんか変なこと考えてたでしょ」

 

「ソンナコトハナイヨ」

 

「⋯まぁいい、あなたの話はこの後ゆっくり聞かせてもらうから」

 

「ボクは無実だ!離せ!権力なんかには屈しはしなアガガガガガガ」

 

そのまま小さい体躯に見合わない怪力で頭を鷲掴みにされ地面を引きずられていく、先生たちも苦笑いしてないで助けてくれても良くないかな!?一応ボク今回の功労者だよね!?

 

 

 

「グォヘァ」

 

アビドスの一団が見えなくなったところで人気の無い路地へと放り込まれる、ゴミ袋じゃないんだぞ。

 

「やめて!ボクに乱暴するつもりでしょ⋯ハーメ〇ンの18禁小説みたいに!」

 

「乱暴はするかもしれないわね」

 

「ヒン」

 

「⋯まったく、結局またあなたにいいように使われたわけね」

 

「いや、今回に関してはまじの偶然、雷帝の遺産についても嘘では無いよ」

 

「だといいけど⋯それで?あそこにいたってことは先生にはもう会ったんでしょ?」

 

「別の用事のついでではあるけどね、まぁいい人なんじゃないかな?詳しく詮索する気は無かったから勘だけど」

 

「あなたの想定していたような面倒事にはならないと?」

 

ここでゲヘナに先生を警戒させておくメリットは無い、むしろ先生サイドに付けておいた方が今後の先生の活躍次第で動かしやすくなる。

ヒナ相手に通用する技ではないがアコや万魔殿相手ならば十分リターンが見込める。

 

「ならないどころかそういう事件とは対になる存在だろうね、超が付くお人好し⋯と言うよりは生徒想いのいい人だよ、多分生徒のためなら足でもなんでも舐めるタイプ」

 

「あなたがそういうなんて珍しいわね」

 

「あれだけいい人オーラがダダ漏れだとねぇ、ヒナちゃんだって話したならわかるでしょ?」

 

「少ししか話してないから分からないわよ⋯あなたみたいに無駄に経験を積んでる訳じゃないの」

 

「無駄とは失礼だなぁ⋯ま、困ってるようだったら助けてあげてよ、恩を売っといて損は無いと思うよ」

 

「考えておくわ」

 

ヒナの事だから一方的に先生を利用してやろうだとか手駒にしてやろうだとかは考えないはず、ヒナには先生と友好な関係を築いていただき後ろ盾にでもなってもらいたい。

 

問題はミレニアムとトリニティ、前者に関しては動きがないようだし静観の姿勢を取るつもりなのだろう、下手に動いてリスクを犯さず他校の動きを見ていい所に差し込む、実にアイツらしいやり方。

 

トリニティに関しては既に動いているとみて間違いない、今頃各派閥の下っ端たちがどうやって先生を取り込むか試行錯誤し奔走している頃だ。

トップ層が出てきて札束ビンタしていないだけまだ平和か、どの道エデン条約を控えているこのタイミングで手札を増やさない手はない、直に動く。

 

「それよりも、小鳥遊ホシノについてはどうなっているの?」

 

「どうなっているとは?」

 

「あの事件以降小鳥遊ホシノには動きが見られなかったはず、1年間も姿を見せなかったから転校でもしたのかと思えばまだアビドスにいたなんて⋯」

 

「そんなことボクに聞かれてもねぇ⋯少なくとも、ここを離れてなかったからまだアビドスは存続している訳なんじゃない?廃校寸前なのは変わらないけど」

 

「ゲヘナの情報部が小鳥遊ホシノを見過ごすとは思えない、それこそ治安維持活動で外を回っていたなら尚更ね」

 

「それどころじゃなかったんでしょ、雷帝の失脚で忙しかっただろうしヒナちゃんも風紀委員に異動したから詳しく知らないんでしょ?なら別にいいんじゃない?今は他校のことに首を突っ込んでるほど余裕がある訳でもないでしょ」

 

「…ここでもまたあなたが1枚噛んでるってわけね、あなたは何を知っているの?2年前のあの日、あなたもあの場にいたんでしょ?」

 

「言えるようなことは何も」

 

ヒナを煽って動かしてやるのも手だが先生やエデン条約といった面倒事が控えている以上さらに負担をかけるのは効率が悪い。

あの怪物もそれなりの痛手を負ったのかここ最近は話を聞かない、急ぎ対処する必要も無いはずだ。

 

立ち上がりスカートに着いた砂を払う、乾いたアビドスとはいえ路地は若干湿度を帯びていたのか少しへばりついている。

ヒナもこれ以上の言及は無意味と察したのか体に見合わないマシンガンを肩にかけ直した。

 

ボクも装弾されたままになっていた拳銃の薬室を空にしてホルスターに戻す、続けて小銃の方に手をかけたところでヒナが不思議そうにこっちを見ていることに気が付いた。

 

「…別に奇襲してやろうとか考えてないよ?」

 

「いえ、そうじゃなくて…前まで使っていた狙撃銃はどうしたの?」

 

「ん?あぁ…実はこっちの目はもう使い物にならなくってさ」

 

「それって…」

 

「いやいや、失明とかじゃないよ?見えてはいるんだけど視力が落ちたって言うかボヤけるって言うか…まぁ歳だね、うん」

 

「よくそんな状態であれだけ戦えていたわね、一応メインの主力部隊だったのだけど」

 

「見てたならもっと早くに助けて欲しかったな…まぁかなりギリギリだったね、統率力のある良いチームだよ。あのまま放置されていたらさすがに不味かったんじゃないかな?」

 

「本気を出していないくせによく言うわね」

 

「割と本気だったんだけどね」

 

呆れたような表情向けるヒナを他所に排莢を済ませる。

蒸し暑い路地をから出ると乾いた風が優しく肌を撫でた、同じ気温なら少しでも湿度が低い方が幾分かマシだな。

周囲に風紀委員の影はない、既に全員撤退済み、さすがはヒナ風紀委員長様と言ったところか。

 

路地に背を向け柴関だった場所へ戻るとアビドスの面々も既に帰ったのかたくさんの空薬莢と瓦礫の山だけが残されていた。

 

爆破の影響で広範囲火災にならなかったのは不幸中の幸いか、厨房付近を見てみても大規模に爆発した痕跡はなく黒焦げになっていたのは裏にある勝手口の近くだけ。

厨房の反対側とはいえこれが忙しいお昼の時間帯だったらもう少し被害も広がっていたはず、この乾いた気候のことも考えれば少しで済んでいなかった可能性もある。

 

軽く現場を物色しているとその裏口付近に旧式の携帯と内部から破裂したと思われる粉々ゴミ箱の残骸が目に付いた。

あの手に持っていた起爆装置と周囲の被害から見るにゴミ箱にありったけの爆薬を仕掛け簡易的な携帯電話式の起爆装置で起爆させたのだろう。

 

容量100Lと仮定した場合、起爆装置とカモフラージュの分を考えても50kg以上の爆薬を仕込むことが出来る、建物1件吹き飛ばすなら十分な威力になる。

それだけ大量の火薬をどこで入手したのかは疑問に残るところではあるが…まぁいい。

 

騒ぎが収まるのを待っているであろう消防に現場のブツを全て吹き飛ばされる前に起爆に使われた携帯電話と爆心地付近の残骸の回収と現場の撮影だけ済ませて駅の方向へ向かう。

 

カイザーもコソコソ動き回っているようだしこちらもそろそろ手をつけ始めなければならないか。

胸ポケットから携帯電話を取りだし連絡先を開いた、少しばかりズルをさせてもらう事にする。

 




ここだけの話なんですけど…番外編は百鬼夜行の夏祭りで行こうとしてたんですよぉ…
夏イベ来ちゃった…なんなら着物立ち絵まで出ちゃった…どうしよ…
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