狐のおまわりさん   作:無名の作者

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また来週とか言いましたが書いてるうちに楽しくなってきたので早めに投稿しちゃいます。
今後も週に1~2話ペースでの投稿になると思うので待っててくれると嬉しいです。


第二項

 

お昼休憩が終わるこの時間はちょうど人通りが閑散となってくる、不良やスケバン連中も流石にヴァルキューレの本校舎前では大人しくしているのか滅多に見かけない。

 

本校舎の入口には常に2人の警備局の担当が常駐している、まぁほとんどは顔パスだし市民の往来もあるのでよほどの事がない限り止められることは無い。

警備員に一瞥だけ送り中へと進む、1階は交番としての機能もしており多くの市民が訪れていた。

 

わざわざ受付で許可取る必要も無い、そのままエレベーターに乗り込み最上階の8階のボタンを押す。

公安局が使用する6階以上は指紋認証が必要になるがボクのものもまだ生きていた。

 

シャフトが巻き上げられる音を上げながらぐんぐんと上昇していく、目的の階に到着し扉が開くと無機質な廊下が続いていた、各部屋に防音施行が施されており静まり返っている。

そのまま廊下を進み、突き当たりのT字になっているところにある正面の扉をノックせずそのままノブに手をかける。

 

「お邪魔するね」

 

「来たか…とりあえず座ってくれ、長話になるだろうからな。コーヒーは?」

 

室内では公安局のジャケットを羽織った強面がコーヒーの入ったマグカップ片手に立っていた。

 

ヴァルキューレ警察学校公安局局長の尾刃カンナ、実質的なここの最高責任者。

厳格な性格と堅苦しい空気で周囲からは狂犬としてその強面含め恐れられているがジェットコースター等の絶叫系アトラクションが苦手といった可愛らしい側面もある。

 

去年アケミの捕縛に向かった際に組んで以降なにかと交流することが増えた、主に向こうからの要請ではあるがボクを嫌っている人間と組むよりは楽だったのでよく共に行動していた。

 

今回のSRTからの編入に関してもカンナが手配してくれた。

当初は公安局への配属になる予定だったのだがあのSRTにいた時にも感じたジトジトした雰囲気が受け付けず生活安全局に配置換えしてもらった。

おかげで今では失われていた青春とやらを取り戻すことが出来ている。

 

執務用の立派な机の前に置かれた来客者用の机とソファ、尾刃とは反対側に腰を下ろす。

 

「今回はやめておくよ…それで、今日はなんの用?やっぱり公安局に来いとかは無しだよ?」

 

「安心しろ、今回は別だ…先日の矯正局脱獄事件についてはどこまで把握している?あの日はサクラも交番にいただろ?」

 

「どこまでと言われてもね、あの日は運悪く当番で逃げ回る市民を誘導したり不良達を相手にしてたくらいであとはニュースでやってたことくらいしか知らないよ。そっちではなにか掴んでないの?」

 

「残念ながら有益な情報は無いな、今手元に来ている報告書といえば脱獄者のリストとそれぞれのD.U地区で確認された防犯カメラ映像、あとは被害報告くらいだ」

 

ふと机の方へと視線を向けると大小ふたつの書類の山が見えた、おそらくあっちのサンクトゥムタワーが被害報告だろう。

 

「サクラなら誰か一人くらい居場所を知っていてもおかしくは無いと思っていたんだが」

 

「今はただの交番勤務だしわざわざそんな面倒事に自分から首を突っ込むわけないじゃん」

 

「そうか…それにしても、私が推薦したとはいえお前が交番勤務とはな。平和な日常に飽き飽きしてきたところじゃないのか?」

 

「まさか、市民と向き合いながら職務に励むのも思いのほか悪くないよ、少なくとも汚職まみれの職場で管理職やるよりはよっぽどマシ」

 

「私だってやりたくてこんな役職に着いているわけじゃない…っと、話が逸れたな」

 

そう言ってコーヒーを一口啜る。

その表情はかなり疲れ切っておりここ最近は事後処理におわれていたのだろう、本当に公安局に入らなくてよかったと思いつつもさすがに心配になる、お労しや公安局長殿。

 

「追跡をしようにも学園内はボロボロ、臨時で他校に派遣している部隊を集めて対応しているが復旧作業で精一杯で七囚人に回せる戦力がないのが現状だ」

 

「それでボクを前線に立たせようと?」

 

「話が早くて助かる、七囚人を追う以上生半可な人選では返り討ちにあう。その上、連邦生徒会長が失踪し各校の内部情勢や思惑が全く読めない現状、ことを荒立てずに事態の鎮静化を謀る必要がある…ヴァルキューレでそんなことが出来るのはサクラ、お前しかいない」

 

「嫌だよ面倒くさい、カンナがやってよ」

 

「出来るならそうしたいが、これだからな」

 

顎で書類の方を指す。

被害報告だけでこれなのだからこの後増えるだろう計画書や通常業務の書類のことを考えるとこちらまで胃が痛くなる。

 

「それに私は回りくどいことが苦手だ、そういうのに向いていない」

 

「だからって生活安全局のボクにそんな大役振る?ただでさえ公安の連中から変な目で見られてるのにこれ以上目立ちたくないんだけど?」

 

「安心しろ、今じゃ公安局だけじゃなくて他の学園も目を光らせているからな」

 

「今のどこに安心する要素があったのかな?」

 

「お前の場合、複数から見られている方が都合がいいだろ?連中も下手に手が出せないし交番勤務だったのも一人で動く時間を減らすためだったからな」

 

「…え?そんな中ボクはこれから単独で放り出されるの?」

 

「報告も兼ねてしばらくは本部を拠点にして動いてもらうことになるが…まぁ基本は単独での行動になるな、頑張れ」

 

「頑張れじゃなくてさ!?警護つけるとかないの?」

 

「残念ながら警備局もボロボロでな、施設の警備に人員を割くので精一杯だな」

 

「警備ならお得意のカイザー様にでも任せればいいんじゃないの?」

 

「いつもであればそうしていただろうが今回は連邦生徒会関連施設での被害がほとんどだ、連邦生徒会内部からの反発もあり今回はヴァルキューレだけでの対応になっている」

 

「どうせ会長以外大した仕事もしていないんだからそこまで気にすることかね?サンクトゥムタワーだって一時的に機能停止してたんでしょ?キヴォトスの中央組織が聞いて呆れるよ」

 

カンナは顔を少し歪ませる、お上の陰口は耳を通したくないらしい。

内心苦笑しながらお労しき中間管理職様の話に耳を傾ける。

 

「またお前は…仮にも上司なんだから私の耳に入るところでそんなことを言うな。とにかく、脱獄した七囚人共の行動を把握を第一に可能なら巻き起こされるだろう事態を沈静化させろ」

 

「とは言っても相手は化け物揃い七囚人だよ?ただのお巡りさんに任せるには荷が重いと思うんだけど」

 

「元SRTを付け忘れるなよ?なんのためにわざわざお前を呼び出したと思っているんだ、それにこれは防衛室長からの命令でもある」

 

防衛室長…たしか今は不知火カヤとかいう一年生の頃から連邦生徒会に所属し今年度から室長へと抜擢された自称超人が就任していたはずだ。

 

防衛室ということもありSRTにいた頃はよく彼女についての話を耳にしていた。

七囚人確保のためのSRTとの共同任務立案やD.U地区内の治安維持活動の一環で企業との連携強化と言った活動が評価され今の地位に座っている。

 

企業相手への政略に強く大人や有識者からの評判は悪くなく連邦生徒会内でも彼女を慕う声は少なくない。

ただしカイザー辺りから口添えがあれば直ぐに従うといった弱腰な部分も見られるため一部生徒からは自称超人やらタヌキと呼ばれている。

残念ながら私はその一部だ、彼女の放つ胡散臭い空気感がどうも苦手で関わると面倒事が起きる気しかしない、この手の勘はだいたい当たる。

 

「…めんどくさい」

 

「諦めろ、下手に逃げれば今度こそ公安局行きだ」

 

「わァ…ぁ…」

 

「泣くな」

 

「ヒン」

 

「装備についてはサクラの部屋に置いてあったものをそのまま送って貰っているからそれを使用してくれ」

 

そう言われ差し出された大型のライフルケースへと渋々手を伸ばし中身を取り出す、ボクの部屋にあったということはあの小銃だろう。

 

削れてほぼ原型のとどめていない小隊エンブレムが入ったの416式自動小銃、SRTで支給される制式小銃であり先輩から譲り受けたもの。

 

ピカティニー・レールシステムが標準装備されているので様々な状況をこなす上ではとても頼もしい相棒となった。

特に気に入っているのはその耐久力で、動作テストでは泥水に漬けた直後でも普通に動くという脅威の耐久性能を見せていた、ストックでぶん殴っても簡単には壊れない。

 

横には弾倉が5つ、1つは弾丸が詰められた状態でそのまま置かれており他は当時使用していたタクティカルベストにナイフやその他小道具と共に装着されている。

 

薬室が空なのを確認しチャージングハンドルを何度か引く、動作やトリガーを引いた感じに違和感は無い。

肩付けしてみても慣れ親しんだバランスとなっている、一応後で中も見てみるが銃身等も加工された感じは無さそうだ。

 

そして小銃の横に弾倉と共に置いてある拳銃、これは見覚えがなかった。

 

「こっちは?」

 

「P9式拳銃、防衛室長からの贈り物だ」

 

あの防衛室長から?

なにか企んでいる可能性もあるがまぁいい、貰えるものは病気と面倒事以外貰っておく。

 

レッグホルスターに収められた拳銃を抜く、濃い胡桃(くるみ)色の本体に各所に黒のカスタムパーツ。

フレーム下部にはレールが設置されておりレーザーサイトが装着されている、フレームにはヴァルキューレの校章が刻印されていた。

 

公安局で使用している第17号と比べるとかなり無骨で同系統の拳銃と比べても少し重たい、私好みだ。

本体も握りやすいグリップとなっておりレーザーサイトの重み加わっているためリコイルを十分吸収してくれるはずだ、懸念点があるとすればコンパクトな方ではあるがサイズ感ゆえの秘匿携帯の難しさと取り回しの悪さだろうがさほど問題にはならない。

 

「銃本体の特徴についての説明は省くぞ、感覚派だったろ?」

 

「まあね、後で射撃場で数発試し撃ちさせてもらうよ」

 

「申請はこちらで通しておく、バックストラップは自分の手にあったものを選んでおけ」

 

「了解、ところでどこの部隊の拳銃なの?初めて見る拳銃なんだけど」

 

「警備局で使用している第45号の後継拳銃として採用されたものでまだ百艇程しか導入されていないレア物だ、私も全ての配備先を聞いている訳では無い」

 

「そんなレア物をくれるなんてね、俄然やる気が湧いてきたよ」

 

「いつもの口先だけのやつだろう?まぁ、期待している」

 

レッグホルスターを右足に装着し再度拳銃をセットする。

自動小銃に関してはケースへとしまい込みロックする、点検等はは家に戻ってから行う、どうせ準備やらで忙しくなるだろうからその時にでも行う。

 

「あぁ、それともうひとつ伝えておくことがある」

 

「え…まだなんかあるの?もうおなかいっぱいなんだけど…」

 

「連邦捜査部シャーレに警戒しておけ」

 

「シャーレ?…あぁ、ニュースでやっていたやつね」

 

連邦生徒会長が失踪前に設立した機関で先日訪れた先生と呼ばれる大人を顧問とする強大な権限のもとにあらゆる規約や法律による規制や罰則を免れる超法規的機関。

 

中立組織として活動するとのことだが連邦生徒会直轄の詳細不明な組織、あらゆる学園への介入が可能な点から三大校を始めとした各有力校にとっては警戒されている。

 

ネット上では連邦生徒会長不在の混乱を何とかしてくれるかもしれない救世主として持ち上げられていたが各校上層部はそういう訳にも行かないのだろう。

 

「かなり胡散臭い組織だとは思うけど、現段階でなにかする必要は無いと思うけど?もしかしたらネットで言われているように良い大人かもしれないしさ」

 

「いい大人かどうかも含めて会うことがあったらよく見ておいてくれ、そういうのは得意だろ?」

 

「ボクが人のあま心を読めるとでも思っているのかな?」

 

「似たようなものだろ、ただし手段は選んでくれよ」

 

「わかっているよ…まぁ、会うことがあったら軽く話してみるさ」

 

そう言って席を立つ、これ以上面倒事が増やされるのは御免だ。

七囚人の脱獄に加え正体不明の大人が率いる超法規的組織、SRTにいた時の方がまだ楽だったな。

 

「では早速動いてもらうが、七囚人の行き先に検討は着いているのか?」

 

「うーん…とりあえず友人たちに会いに行ってくるよ、暴れ回ってる連中ならすぐに足がつくだろうし」

 

「そうか、では気を付けてな」

 

「ただのお巡りさんに期待しすぎないでくださいよ」

 

不満そうに言い捨てて局長室を後にする。

七囚人については放っておいてもいいが連邦生徒会に来た大人については情報が無さすぎる、一度接触する必要があるとは思っていたので丁度いい。

 

懐かしい感覚にライフルケースを持つ手に力が入る、さっさと終わらせて平穏な交番生活に戻らせてもらうとしよう。

 




ぶっちゃけ過去編先にやった方がいいのかなーと思いながら書き進めてるんですが区切りのいいところです少しづつ出していこうと思います。
謎解き要素多めの番外編もそのうち描きたいですねぇ。
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